恋姫♰無双 紀霊の章   作:秋月 了

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20話 覚悟

仕事をかたずけていると侍女が駆け込んできた。

 

「紀霊様。劉備殿がお目覚めになりました!」

 

「わかった。それでそんなに慌ててどうした?別に慌てるほどじゃないだろう」

 

「それがこちらと劉備殿の言ってることが嚙み合わないのです」

 

ああ、なるほど。

 

「わかった。とりあえず俺が行こう」

 

劉備が寝ているはずの部屋に向かう。

部屋の前には愛紗や星、朱里、雛里や月たち旧董卓軍の主だった人たちが来ている。

 

「どうした?」

 

「いや、入りづらくてな」

 

「お前にしては珍しいじゃないか。星。まぁいい、俺が入る。

ああそうだ。入る前に言っとく。たとえ真名を呼ばれても今回だけは許してやれ」

 

「どういうことですか?」

 

「とりあえず、言った通りにしてくれ。劉備殿入りますよ」

 

「はい」

 

中から声が聞こえて扉を開けて中に入り、

ベットに座る劉備に視線を合わせるように跪く。

 

「劉備殿」

 

「識さん。私はなぜここで寝ていたんでしょう?ここは白蓮ちゃんの城ですか?黄巾党は?」

 

「落ち着いて聞いてください。ここは徐州の彭城の城です。それと黄巾はすでに討滅されました」

 

「徐州?彭城?なぜ私はそのような所に?私は愛紗ちゃんや鈴々ちゃんや一刀さんと一緒に

桃園で盃を交わしていたはずなんですが」

 

そこから記憶がないのか。厄介なことしてくれたな、于吉。

 

「まずは俺の話を聞いてくれますか?」

 

「はい」

 

俺はこれまでの事を話した。

黄巾党との闘い。

その中で起こった軍内の問題。

反董卓連合での事。

徐州でのこれまでの事

そして劉備殿の身にあった事。

最初からかなり驚いていたが次第にショックを受けたように

顔が青くなっていく。

 

「ははっ、私の知らない間に私、大変なことしてたんだ。

もう何もなくなっちゃった。理想も仲間も信頼も全部」

 

自身の体の状況を心配する前に周りの事を心配するあたり

劉備殿らしいと思う。

隠すこともできたが俺はあえて隠すことをせずにすべて話した。

催眠状態の中で劉備殿は于吉と何度もやっているのだ。

聞いた話だけなので正確な回数はわからないが少なくとも

1日に十回はしていたと言う話もある。それをあの桃園の誓いの日から三か月間だ。

よほど種が薄くない限り確実に妊娠しているだろう。

隠しても時間の問題だし、要は遅いか早いかの違いでしかない。

 

「私、どう償っていけばいいの?」

 

劉備殿にとってはつらいところだろう。理想を掲げ、その理想の元、義勇軍を結成した。

だが自称天の御使いの詐欺師にあっさり騙され催眠を掛けられ道を踏み外した。

それは裏切りと変わらない。

その結果が今だ。催眠を掛けられていたからでは済まされない。

彼女はその結果に打ちのめされ二度と立ち上がれないかもしれない

だがチャンスは誰にでもあっていいと俺は思ってる。

 

「なら共に乱世を終わらせませんか?」

 

「え?」

 

俺は立ち上がった。劉備は顔を上げて俺を見る。

 

「あなたはあなたの理想を信じ、あなたの為に死んだ兵士たちを裏切った。

それは事実だ。もう組織の長には戻れないだろう。

だが俺に、いや俺達にその理想をみんなが笑顔で暮らせる世界を作るという理想を

継がせてほしい。もちろんその理想を完遂するまでに多くの血が流れるだろう。

多くの屍の山を築くだろう。それでもなお完遂することが出来ないかもしれない。

それでもだ。お前らも聞け!俺は今日、この日からこの大陸の王、皇帝を目指す。

腐りきった漢を滅ぼし、曹操を孫策を従え、この国を統一する。

覚悟を決めろ!思考を巡らせろ!覚悟が出来たら俺についてこい。

見せてやる。俺たちの理想を実現した未来をな!」

 

俺の宣言に誰もが黙る。そしてみんなが跪いた。

 

『ハッ!』

 

これでいい。これこそが俺の取るべき道だ。

俺が言った事は矛盾だ。

誰かが幸せになるってことは誰かが不幸になるってことだ。

大半はな。それでもここで俺が虚勢を張ることに意味がある。

あとは、

 

「それでお前はどうする?蓮華」

 

ただ一人、蓮華だけが立っていた。

そりゃそうだ。言ってみれば近い将来、この同盟を俺から破ると

本人から言っているのだから。

この話を蓮華は姉に報告するだろう。

だがそれがどうした。すればいい。

それでこの関係が白紙になっても別にいい。

それだけのものがおれにはあるからな。

 

「なぜ、それを私の前でそれを言ったの?姉様に報告するとは思わなかったの?

それを聞けば姉様が怒って攻めてくると思わなかったの?」

 

「したきゃすればいい。反董卓連合の時のように今度は大陸の全兵力が俺に向くだろう。

まさに出る杭を打つようにな」

 

「死ぬわよ」

 

「構わねぇ。こいつらの命預かって頂点に立とうって言ってんだ。

何を今更自身の命を、力を惜しむ理由がある!?」

 

蓮華は黙って俺を見る。

沈黙がその場を支配する。

 

「わかったわ。私もあなたの理想に手を貸す。その代わり絶対に理想を現実にしなさい」

 

「当然!」

 

その後正式に劉備が加入し張飛が劉備の説得に応じて紀霊軍に入った。

こうして紀霊軍は俺を中心に一つにまとまった。

 

 

 

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