恋姫♰無双 紀霊の章   作:秋月 了

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23話 曹操の徐州攻略

紀霊が演説している頃許昌では

 

「やっと着いたの」

 

「ひどい目にあったで」

 

夏侯惇をはじめ、李典、于禁たちが許昌に帰還した。

その姿は全員がボロボロで夏侯惇や于禁にいたっては服の所々が焦げていた。

夏侯惇はそのまま華琳の前にひざまずいた。

 

「敗北で終わったわね。春蘭」

 

「華琳様の兵をお預かりしておきながらこの失態。

合わせる顔もございませぬ」

 

「報告は聞いたわ。敵に引き付けられて火で囲まれて惨敗したそうね」

 

「はっ。どのような罰でもお受けいたします」

 

「いいわ、勝敗は兵家の常。それを咎めていては優秀な将は育たないわ。

次の戦でその恥をそそぎなさい」

 

「はっ」

 

「今日は部屋で休みなさい」

 

「はっ」

 

夏侯惇はその場を辞した。

 

「十万を超える軍勢なら春蘭が暴走してもどうとでもなると思っていたけど

これは私も紀霊を甘く見ていたのかもしれないわね。

いいわ。この期に徐州を攻略しましょう。

全軍を招集するわ。第一陣は春蘭、秋蘭、香風、。

第二陣は霞、季衣、流琉、柳琳。残りは第三陣に。各隊十万人ずつ動員しなさい。

私が第三陣を指揮を執るわ。準備に取り掛かりなさい」

 

『はっ』

 

全員が動き出す。もともと準備が整っていたようなものなのですぐに準備が整った。

 

「出陣!」

 

『おう!』

 

夏侯惇の合図で第一陣が出陣して徐州に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紀霊は曹操の第一陣が徐州に入ったという報告を美花から聞いていた。

 

「ぎりぎりだったな」

 

「はい」

 

俺たちは今徐州の南、下邳城に来ていた。

あの後賛同者全員とその家族を連れて大移動を開始し、現在は荊州牧劉表の州内通過の許可の

返答待ちだったんだが使者が帰ってこない。

 

「しかし、遅いな」

 

「襄陽まで行って戻ってくるんだもの。時間はかかるわ」

 

焦りを察したのか隣に座る蓮華が落ち着くように言ってくる。

 

「そうだな。少し焦っていたのかもしれない」

 

その時使者が帰ってきた。

 

「遅くなり申し訳ありません」

 

「どうだった?」

 

「はい、劉表様は紀霊様ならばと、通行を許可してくださいました。

さらに一時拠点として新野を貸し出すとも」

 

「そうか。わかった」

 

最悪だ。劉表は俺を取り込みたいんだ。

今の劉表陣営は蔡瑁が取り仕切っていると言っていい。

その蔡瑁だって指揮能力でも武勇でも他陣営の人間と渡り合えるかと言われれば

はっきり言って不可能だ。断言できる。なんだったら袁術や張勲に

いいように操られていたような奴だ。

本来なら黄祖が指揮を執るのだがその黄祖は先の呉との戦で討死している。

次席として黄忠もいたが彼女も敗退の責任を問われて荊州を追放されて

今は益州の厳顔の下に身を寄せている。

江夏水軍は完全に呉に下った。

そんな中で曹操の南方攻略の噂が流れている。

曹操にとって目下最大の敵は呉の孫策だろう。

荊州を手に入れる事で孫策を包囲し追い詰めたいと考えているだろうし、

それは劉表自身も分かっている。

だから俺達を緩衝材にしたいっていうのも分かるが非常に面倒くさい。

しかも荊州は今後継者問題の真っ最中だった。

後継者を劉表の前妻の息子である劉琦か現妻で蔡瑁の姉である蔡夫人の

息子の劉琮でもめているのだ。

しかもどちらの後継者にも問題がある。

劉琦は病弱で劉琮は幼すぎる。

どちらが付いたとしても曹操には太刀打ちできないろう。

そんなもんに関わりたくはない。なんだったらいっそ荊州を乗っ取ってしまおうか。

そう本気で考えていたりする。

 

「とりあえず、荊州の新野に向かう。朱里、雛里、全軍にそのように指示を」

 

「「はい」」

 

二人と入れ替わるように一人の兵士が駆け込んできた。

 

「ご報告します。徐州で戦が起こりました」

 

は?

 

「どういうことだ!いったい誰が動いた?」

 

「はい、それが・・・・」

 

兵士は言いよどむ。まさか

 

「まさか、あいつらか?」

 

「はい。殿の演説の際に徐州残留を表明した者たちです。

さらにそこに同様に徐州残留を決めた太守たちが加わり戦が起こったと」

 

くそっ、あいつらは俺のところから離れる時何かを決意した目をしていたが

そう言う事か。

 

「主戦場は?」

 

「琅邪郡です」

 

「わかった。報告ご苦労だった。下がれ」

 

「はっ」

 

「朱里、雛里」

 

「「はい」」

 

「聞いての通りだ。我々は急ぎ、荊州に向かう。急いで準備を整えさせろ」

 

「「はい」」

 

二人は駆けていく。

俺も準備を整え始める。

 

「なぜですか?なぜ、救援を出さないのですか?」

 

声を上げたのは桃香だった。

優しい彼女からしたらここで見捨てる選択をした俺が理解できないのだろう。

 

「だからこそです」

 

「あなたなら助ける事もできるはずです。それを「そんな事、言われなくても分かっている!」」

 

ああ、状況も相まって相変わらずのお人好しさにイラつく。

 

「彭城で俺の話を聞いてなかったのか⁉曹操軍は強大なんだ。勝てるはずがない。

そんな事彼らも分かっている。そんな彼らがなぜ曹操相手に戦を挑んだと思う!

彼らは俺たちが逃げる時間を稼ぐ為に決まっているだろう!

それを俺たちが戻って何の意味がある?

それはただ彼らの決意と覚悟と死を踏みにじる行為だ。

俺が彼らの覚悟に報いる方法はただ一つ。

生きてこの国を平和にする事だけだ。

決して引き返して彼らを救うために曹操と戦う為じゃない」

 

そうだ。引き返す事は出来ない。

俺はこの国を統一し平和な世にすると決めたんだ。

引き返していいはずがない。

 

「わかったらあなたも準備を」

 

「はい」

 

すまない、桃香。俺の怒りは半ば八つ当たりだ。

彼らを見捨てた罪は俺が一生背負う。

そして彼らに天から見せてやる。

平和で誰もが笑って最低限暮らせる世を。

平等とまではいかないまでも最低限理不尽な差のない世界を。

俺は決意を新たに荊州へ軍を進めた。

 

 

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