恋姫♰無双 紀霊の章   作:秋月 了

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ひっさしぶりの投稿です。
よろしくお願いします。


26話 荊州占領緒戦

新野を治め初めて一か月が過ぎた。

 

「どうもうまくいってないな」

 

美花が送り込んだ間者の報告を読みながら同じように報告書を見ている紀霊は

朱里と雛里につぶやく。現在、一刀を中心に先日決めた事を行っているようだが

どうもうまくいっていない。

 

「蔡瑁か、蒯越か。あるいは両方か。とにかくこの状況は良くないな」

 

「はい、これは恐らく」

 

「ああ、内応の約束が取り付けられている。それも中枢の奥深くまで」

 

「戦ですか?」

 

雛里はおどおどしながら紀霊に聞いてきた。

 

「少なくとも一刀はそう言ってきている。一度荊州の治世を洗濯したいと」

 

「洗濯ですか」

 

「ああ。だが甘いな。俺ならそうはしない。俺ならこのまま破壊する。

破壊の後に創造ありだ」

 

「そこまでしなければいけませんか?」

 

「朱里は反対か?俺の予想が正しければ蔡瑁は曹操を恐れている。

それに劉表の命も風前の灯火だ。恐らく年は越せない。

そこで劉表の後釜にまだ幼い自分の甥でもある劉琮を付けてその後見人になる気だろう。

そのうえで後々曹操が南勢を始めれば降伏してより良い地位に着く。俺達を手土産にな。

ま、曹操は河北四州の制圧に徐州の掌握と忙しい。

いくら軍師が有能つっても全てが片付くのは早くて12月、つまりは年内は無理だ。

今は十月。こちらももたもたしていると雪で戦どころじゃなくなる。

すぐに戦準備を始めろ。それと俺達を監視している蔡瑁の手の者を片付けろ」

 

「「はい」」

 

二人は出ていく。

紀霊は手紙を書き、美花に託す。

 

「これを一刀に。他の者には決して気取られるな」

 

「はい」

 

美花は部屋を出ていく。

もう一通の手紙を書くとそれを蓮華に渡す。

 

「これを孫策殿に頼んでいいか?」

 

「ええ、でも私でいいの?」

 

「本来はダメだろうな。だが孫策殿が話を断った場合、

説得できるのはお前しかいないだろうしな」

 

「そのまま帰ってこないかもしれないわ。それにあの話の事も」

 

「もしその気があるならこの場では話さないだろうな。

それに密告する気ならわざわざ徐州からここまでついてこない。

それに俺は自分の妻は夫を裏切るような女じゃないと信じてる」

 

「もう」

 

蓮華は顔を赤くして紀霊を見る。

紀霊はこういう事を素で言える。

 

(人誑しの才能って本当に恐ろしいわね)

「わかったわ。姉様には必ず話を飲ませる」

 

「頼む」

 

蓮華は部屋を出て翌朝には護衛と共に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

襄陽の一室。

美花はそのまま新野を出て一刀の部屋に来ていた。

一刀は紀霊からの手紙を見て少し考えて答えを出した。

 

「話は分かった。でもこれは僕一人で話を決める事は出来ない。そうですよね劉琦様」

 

すると部屋の襖から一人の女性が出てきた。

美花は焦った。

下手をすれば裏切られたかもしれないと。

手紙を受け取った劉琦は内容を目を通す。

 

「なるほど話は分かりました。なら我らは沈黙を貫きましょう。

それと孫乾と言ったか。これを紀霊殿に渡してほしい」

 

そう言って劉琦はある手紙を美花に手渡した。

 

「それは父から紀霊殿に荊州を任せるという内容の手紙。必ず紀霊殿に渡しなさい」

 

「わかりました。では失礼いたします」

 

美花はすぐに部屋を出て新野に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉、建業。

蓮華は謁見の間で孫策に紀霊からの手紙を渡した。

内容は今回の戦への不干渉。

その代わりに呉が交州を攻める際は援軍を出すという物だった。

 

「使われたわね。蓮華」

 

「はい」

 

「いつから紀霊に入れ込むようになったのかしら?」

 

「それは」

 

「夫婦だもの。それが正しいのかもしれない。

でもあなたはあくまで呉の人間である事を忘れてはいけないわ」

 

「はい」

 

「まぁいいわ。内容はわかったわ。今日中には返事を書くから

貴方はそのまま紀霊の妻として彼の傍にいなさい。

そして彼の動向を報告するように」

 

「はい」(姉様、ごめんなさい。それでも私は識に掛けているのです)

 

蓮華は謁見の間を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

自室で孫策は紀霊への返事を書いていた。

そこに

 

「雪蓮」

 

「何?冥琳」

 

「蓮華様の事」

 

「わかってるわ。蓮華は完全に紀霊の味方になってる。

勿論、紀霊だって私と同じような事を考えているに違いない。

それでも蓮華は紀霊の味方に付く。それは仕方がない事よ」

 

「ならこのまま、蓮華様を捕える事も出来たのではないのか?」

 

「それでどうするの?紀霊への交渉に使う?

無駄よ。紀霊は交渉の席にすらつかない。

平気で蓮華を見捨てるわ。そして蓮華もそれは理解している。

足枷にはならないと言って自分の命を絶つかもしれないわね」

 

「そうか、それほどのものか」

 

「ええ、そうよ。あの子は変わった。変えたのはあの子を紀霊の下に私よ。

紀霊と接する間に蓮華は変わらざるを得なくなった。

これは私の負けね」

 

孫策は本気で紀霊と仲良くしていたかった。

それは紀霊も同じだったが紀霊はその裏で色々と考えを巡らせていた。

それに孫策は一切気づいていなかった。

だから妹を紀霊の下に送り込みうまく運んで自身の盟友として共に

泰平をと考えていた。

知らず知らずのうちに孫策も紀霊に取り込まれていたのだ。

それも孫策自身も気付かないうちに。

 

「本当に化物ね」

 

「そうだな」

 

孫策と周瑜は自重するように笑った。

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