恋姫♰無双 紀霊の章   作:秋月 了

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27話 荊州平定とその裏

紀霊による荊州攻略が始まった。

指揮を務めるのは紀霊本人とその軍師として雛里が同行していた。

そして星、愛紗とその配下の兵士達計五千ほど。

対する荊州軍は蔡瑁、蒯越率いる本軍一万。

数の上では負けていた。

だが雛里が考案した策によって襄陽近くで行われた戦いはわずか一刻で決着がついた。

荊州軍一万は壊滅。

蔡瑁は逃亡、蒯越は星よって討ち取られた。

紀霊はその勢いで南下を進める。

だがただ南下するのではなく

荊州が置かれている状況を流布し、住民に危機感を煽りながら南下を始めた。

住民たちはその噂を真に受けて恐怖し、その責任を蔡家に問いただした。

結果、蔡家は住民からの信頼を失い、逆に紀霊たちは住民から受け入れられた。

そして紀霊は襄陽城に入城。

その政治を取った。

まず、曹操に内応していた者たちを全て処刑、または牢獄に送られた。

その中には蔡瑁の姉、蔡夫人も入っており、彼女も他の者同様、打ち首となった。

そして肝心の劉琮に関してだが当初はその責任を問われる事となったが

ここで劉琦が止めに入った。

 

「なにとぞ。我が弟の命、御救い下さいませんか?」

 

そう言って劉琦は劉琮の前で膝を付き助命嘆願を行った。

 

「我ら、姉弟は政治の世界から退きます。

例えこの先、何があろうと政治には関わりません。ですのでどうか」

 

「いいだろう。ただし、二人には我らの目の届く場所で生活していただく。

それとこれに署名を」

 

「はい」

 

差し出された紙には今後いかなる場合においても決して政治、軍事に一切関わらない事が

明記されていた。またこれを破った場合、命を差し出すとも。

劉琦は迷うことなくこれに署名した。

実をいうとここまでの流れはあらかじめ紀霊と劉琦の間で決めていた事だった。

例えどの様な結果になろうともその命がある限り、曹操に狙われて利用されるのは明白だった。

主に大義名分として。だからと言って死ぬ訳にはいかない。

そこで二人は一芝居うつ事となった。

劉琮の命を危険にさらし、それを劉琦が助命嘆願する事で

政治、または軍事に関わらない事を盟約化させたのだ。

これでたとえ、曹操が劉琦と劉琮を使って荊州を攻めようとしても

自ら退いたという事でその大義名分は失われる。

勿論、中央の権力を持つ曹操ならいくらでも大義名分を得る事が出来るがそれはそれだ。

可能性を一つ潰せた。これが紀霊たちにとっては大きかった。

そして助命された二人は黄承彦という荊州の大豪族の男の下で生きていく事になる。

この黄承彦は劉琮にとっては伯父にあたる人物だった。

そして荒れていく荊州に危機感を感じる一人でもあった。

勿論義理とはいえ妹を殺した紀霊に思うところはあった。

だがその思いは妹が行っていた所業と朱里の説得によって霧散した。

元々朱里は徐州出身だったがある事情から住む場所と両親を失い、荊州に流れてきた。

そしてある理由から朱里を気に入り、彼女に住む場所を与えたのがこの黄承彦である。

偶々彼にも朱里と歳の近い娘がおり、共に水鏡塾に通わせた。

それが今の朱里の下地となった。

その事もあり戦を雛里に任せて朱里は一人、黄承彦の下に向かい、彼を説得して見せたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐州平定を急ぐ曹操も紀霊が荊州を手に入れた事を知った。

 

「そう、荊州は紀霊の手に落ちたのね」

 

「はっ」

 

目の前の郭嘉の報告を聞いて曹操は一人納得していた。

 

「また出てきたわね。紀霊」

 

曹操としては今すぐ、攻めて、紀霊が地盤を構築する前に潰したかった。

だがそうはいかない事情があった。

徐州の平定にはあとひと月はかかると報告が来ており、

そして冀州の袁家討滅も終わっていない。

河北四州の内三州を平定したが未だ冀州の平定がうまくいっていない。

袁家の生き残りが幽州を奪還。

さらにアルタイ語系遊牧民族である鳥丸族が加わり今もそこで粘っているのだ。

更に行方をくらましていた袁紹が指揮に復帰。

それによって袁家は勢いを取り戻した。

彼女も決して無能ではなかったという事だ。

現在、夏侯姉妹、張遼を中心に攻略を進めているが

年内は難しいという報告も受けていた。

 

「しばらくは無理ね。これ以上、戦線は増やせないわ」

 

「申し訳ありません」

 

郭嘉は曹操に謝罪する。

計画が完全に振出しに戻るどころか、完全につぶされてしまったのだから。

それも盤面事ひっくり返すような形で。

 

「仕方がないわ。それよりも今の内から涼州の攻略案をまとめておきなさい。

それと青州を完全に平定するわ」

 

「「「はっ」」」

 

曹操は再び思考の海に自身を沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紀霊が荊州を攻略したという話は益州にいるこの人物にも話が入っていた。

 

「紫苑、荊州が紀霊の小僧が手に入れたそうだ」

 

「桔梗。それは本当なの?」

 

厳顔、真名を桔梗という女性が一人の女性に声をかけた。

彼女は黄忠。字を漢升。真名は紫苑である。

彼女はかつて、荊州の将だった。

だが今は呉による荊州攻略の際に、黄祖を失い、劉表に責任を問われて荊州から追放され

現在、友人である桔梗の下で厄介になっている。

桔梗は先ほど間諜が手に入れた情報を紫苑に聞かせていた。

 

「それで劉表様は?」

 

「それはわからん。だがその妻は打ち首となったようだ。

どうやら曹操とつながっていたようだな」

 

「州牧の妻が敵対者とつながるなんて」

 

「それもあり得んと言えないのが今の世よ。

だが子供たちは助命され黄承彦殿の家に転がり込んだようだな」

 

「そう」

 

「それでどうするつもりだ?」

 

「どうするとは?」

 

「今なら、荊州にも帰れるだろう。帰るのなら手助けはするぞ」

 

「無理だわ。荊州から来た時も思ったけど今の璃々には山越えは厳しすぎるわ」

 

「そうか。璃々嬢には厳しかったか」

 

「ええ、本人は荊州に戻りたいと思っているでしょうけど」

 

「住み慣れた故郷に戻りたいと思うのは当然の事じゃ。儂として返してあげたいが」

 

「わかってるわ。劉璋様の取り巻きを見張らないといけないものね」

 

「すまんな。また成都で良からぬ動きがあるというから行ってくる」

 

「あまり無茶をし過ぎ内で」

 

「わかっておる」

 

桔梗はそのまま部屋を出て行った。

紫苑はそれを静かにそれを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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