荊州占領の後、劉表殿が亡くなった。
俺に「後は頼む」と言葉を残して。
荊州の体制作りは急ピッチで進める。
戸籍の再調査に生産量の算出、物流の管理。
更に今も残っているかもしれない曹操の手の者たちの排除。
やることは山ほどある。
それに一か月ほどを要した。
使える人材は、隠居や政治から離れた人間だろうとを一時的に呼び戻してフルで使い、
とにかく年内に全てを終わらせる事を目標に据えて行動し、
そしてかねてから考えていた作戦を実行した。
これによって黒だった太守たちは軒並み裁かれた。
そして新ためて俺や軍師たちの人選で俺をトップに据えた中央集権体制が確立された。
いずれこれを広げる事を視野に入れつつ稼働していくつもりだ。
「いやー。マジで疲れた」
年末も差し迫る中、一段落ついて久々の酒に口をつける。
「お疲れ様です」
「おう、一刀もどうだ」
俺は一刀にお猪口を差し出す。
「ありがとう」
一刀はそう言ってお猪口を受け取り注がれた酒を一気に飲み干した。
「いい飲みっぷりじゃないか」
「補佐をしていたら飲む機会はいっぱいあったからね。
紫苑さんや黄祖さんとも何度か飲んだし」
「そうか」
黄祖殿や黄忠殿にはぜひ荊州でその力を発揮してほしかった。
尤も黄祖殿は孫策に討たれて、黄忠殿は益州だ。
無い物ねだりしても仕方がない。
「それより桃香さんの事」
「ああ、聞いた。やっぱデキてたらしいな」
これは先日の事だ。仕事中にわけもなくイライラしていたり、
食欲がなくなったりめまいやふらつきがあると報告があった。
まさかと思い、医者が検診してみるとやはり出来ていた。
医大生なのにお前が検診しないのかって?
俺がやるとその知識をどこでって言われるだろう。
話がそれた。
この時代に中絶は難しく下手すれば命に係わる。
そこで桃香は産むことを決めた。
いくら父親に騙されたとはいえ、子供に罪はないのだから。
最悪、その手の施設を建設予定だからそこに預ければいいと考えている。
俺達に子供は無理だ。国で精一杯だからな。
「俺も協力するつもりです」
「何で?というのもおかしいかもしれないが何でお前が責任感じてんだ?」
一刀は責任を感じているような顔をしていた。
俺にはそれがわからなかった。
「だって俺が衣服を奪われなきゃ彼女だって「あほか」いてっ」
俺は軽くチョップを食らわせた。
「お前が衣服を盗まれなくてもあいつは劉備に近づいていただろうよ。
どうも劉備を好いていたようだからな。まぁ、普通に言えばいいのに
己の力に振り回された結果、収拾突かなくなっただけだ」
「でも」
面倒になってきたな。
「そんなの責任感じるならもういっそ妻にしてしまえばいい。
お前も男なら嫁の一人いても問題ないはずだ」
「それは」
どうも煮え切らないような態度の一刀。
「お前、変に似てるよな。あいつと」
「そうですか?」
「ああ、優柔不断なとことかそっくりだよ」
「うっ」
「しっかりしろよ。男だろう。俺なんか既に三人だぞ」
「すごいですね。孫権に関羽に趙雲」
「まぁな。ほとんど成り行きだがな。それでもそうしないと生きていけなかったのは事実だし、
後悔自体はしてない。」
孫家と同盟を組まないと下手すれば徐州軍と呉軍から挟撃を受けていたかもしれないし、
うま味は大きかった。一時は危なかったがこれで対等に戻れただろう。
「あとは益州だな」
「どう落とすつもりなんですか?」
「益州は荊州以上にガタガタだからな。まともなのが厳顔とその周辺しかいない。
ガタつかせるのは簡単だ。問題は」
「南蛮と羌族ですね」
「羌族に関しては恋も動員してでも叩き潰す。
噂だがかなり派手に荒らしているようだからな。
だが南蛮はわからん。どうも情報があいまいでな」
「そこは現地を見てからという事ですか」
「ま、そう言う事だ」
「そう言えばなんですが」
「ん?どうした?」
「黄巾の時、どうしてたんですか?」
「ああ、そうだな」
そこから俺は語った。黄巾の乱での事を。