恋姫♰無双 紀霊の章   作:秋月 了

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6話 行動の代償

汜水関攻略に乗り出した袁術軍と孫策軍は汜水関に取りつき

梯子を使って壁を上り壁上にいる董卓軍と戦っていた。

私はそれを後方から指示を出して見ていた。

すると後方から味方の兵士が走ってきた。

 

「張勲大将軍様、大変です!」

 

「どうしました?そんなに慌てて」

 

「紀霊隊長が矢で撃たれました」

 

「は?」

 

信じられなかった。だってあの紀霊さんだ。

黄巾のころからその名は有名だったし何より周りには黒髪の山賊狩りや幽州の青龍刀と呼ばれる

関羽雲長や神槍、趙雲子龍がいるので私にはにわかに信じられなかった。

しかし紀霊さんは真面目な方。

とても嘘を部下に言わせるとは思えなかったしわざわざ危険な戦場まで来て

笑えない、へたすれば現場が混乱しかねない冗談を言う理由はない。

 

「詳しい状況を、話して貰えますか?」

 

「はっ、紀霊隊長からもそのように仰せつかっております」

 

兵士達から、紀霊さんが怪我を経緯を聞かされた。華雄将軍と一騎討ちをして、

痛手を負わせたこと。勝利の寸前で劉備さんの所の兵士が矢を放ち、

華雄さんを討ち取ろうとしたこと。

紀霊さんが華雄さんを庇い、助けたことで怪我したこと。

そして華雄さんが降伏したこと

すべを聞いた私は紀霊さんの容体を聞く。

 

「現在は天幕にて治療を受けているとの事ですが詳しくは私も」

 

「わかりました。紀霊さんには治療が終わり次第、

汜水関に来るように伝えてください。後無理をしないように注意することも」

 

「はっ」

 

あえていつもと変わらぬ調子で返答した。汜水関はもう間もなく落ちるだろう。

汜水関を越えれば、次は虎牢関を攻略するための軍議が開かれる。

劉備さん、私は彼と違って優しくありませんからね…?

 

 

 

 

 

 

戦処理を終えた愛紗と星は天幕に向かう。

 

「識/識様」」

 

「おう、星、愛紗」

 

「戦処理は終わりました。それでお怪我は?」

 

「大したことはない」

 

「軍医よ、どうなのだ?」

 

「矢の刺さり方が浅かったので傷自体は問題はありません。

しかしお聞きした限り出血が多かったのでそこは注意すべきかと」

 

「な、大したことはないだろ?少しは信じろよ」

 

「そうだな。だがあまり無茶はするな。私はお前を失いたくはないぞ」

 

「そうです」

 

「悪かったよ、星、愛紗。そういえば汜水関は落ちたのか?」

 

「はい。先ほど落ちたようです。張勲殿より無理せずに汜水関に入ってほしいと

連絡が来ております」

 

「わかった。すこし休んだら汜水関に向かうか」

 

 

 

 

 

 

しばらくして汜水関に入った俺はそのまま軍議が開かれる大天幕に入る。

待っていれば諸侯が集まってくる。

どの諸侯も俺の包帯姿を見て驚いていた。

 

「ではこれより、虎牢関攻略「すいません袁紹さん、ちょっと待って頂けますかぁ?」

何ですの、張勲さん? 邪魔をするのでしたら、ここから出て行って下さらない?」

 

「いえいえ、これは。連合軍の為にも話しておかないといけない事なんですよぉ。

ねぇ、天の御遣いさん?」

 

その瞬間一刀は気まずそうな顔をする。それは劉備も同様だった。

 

「お尋ねします。なぜ華雄さんと紀霊さんの一騎打ちを邪魔したんですか?

そしてなぜ紀霊さんごと矢で攻撃したんですか?

まさか紀霊さんが華雄さんと一騎打ちしていたことを知らなかったとは

言いませんよね」

 

私の一言で、諸侯達の視線が劉備さん達へと突き刺さる。

 

「そんなこと俺は「ちなみに複数の紀霊さん貴下の兵士が丸に十字の牙門旗を確認しています。

そんなこと知らないとは言わせませんよ」くっ」

 

張勲が一刀の言い訳を先んじて止めた。

大方自分は知らない。部下が勝手にやった事だろうとか言うつもりだったんだろう。

 

「その場にいた兵達の報告によると、紀霊さんが一騎討ちで勝利を

収めようとした時に、劉備さんの軍の部隊が手柄を奪おうとして

矢を放ったそうじゃないですか? おかげで、今はうちの制度上客将とは言え、

うちの大事な戦力である紀霊さんが矢傷を負ってしまったんですよ?

それについてはどうお考えですか?」

 

「それはそいつが勝手に前に出たからだろう。俺たちは華雄を討ち取ろうとしただけだ」

 

「先ほども言いましたが複数の兵士による証言と見分であなたが紀霊さんごと

討ち取ろうとしていた事はわかっています。

そもそも戦において一騎打ちを邪魔することは決していけない事です」

 

「まったくだわ。あなたにどのような思惑があったのかは知らないけど

あなたのしたことは二人の武人の誇りを土足で踏みにじったも同じ事よ」

 

これは意外だった。

まさかの孫策殿が張勲を援護するとは。

 

「伯符のいうとおりね。

紀霊が静かにしていることをいいことにうやむやにするつもりだったのかもしれないけど

本来ならここにいる事自体おかしなことよ。よくこの場に何食わぬ顔で来れたわね」

 

おお、さらに曹操殿まで。

諸侯達の視線も、より一層きついものへと変わっていく。

でも一刀は分は間違ったことはしていないのにみたいな顔をしていた。

 

「では責任を取ってくださいね。具体的に言えば私達の軍が負った損害について、

何かしらの形で賠償してもらいたいんですけど?」

 

ま、当然と言えば当然だわな。

 

「ちょ、ちょっと待てって! 北郷だって知らない事はあるんだから、

今回はお咎めくらいで良いじゃないか!? それとこの戦が終わるまで、

こいつらは私の下でちゃんと面倒見るから、今回の件は多めに見てやってくれないか?」

 

ここで公孫賛殿がかばいに入る。

これには一刀もあからさまな安堵の表情を浮かべる。

だが甘いよ、公孫賛殿。袁家の軍師がそんなことで収まるわけがない。

 

「別にそれでも良いですよぉ? その代わり、伯珪さんが賠償して

下されば良いだけの話ですから。でもうちは貴女のとこと違って、

そこそこ大きな勢力ですので、その分お金もかかるんですよ。

なので、最低でも伯珪さんのとこの三年分の予算くらいは一括で払って

頂きますけど、それでも劉備さんを庇うつもりですか?」

 

「うっ!? …ごめん桃香、北郷、さすがに民の生活がかかると、私でも庇いきれない…」

 

「…白蓮ちゃん」

 

ほらぁ、変にかばうから。

 

「まぁ、お二人には悪いですが武人云々は天の国出身者にはわからないのであれば

置いておくとしても味方を撃ったことは事実です。

それに対してどう責任をお取りになられるおつもりですか?」

 

ここで張勲が少し妥協しつつも避けようがない事実を一刀に突き付けた。

そもそも知らないで済ませる問題じゃないのだ。

ここまで追い込まれればもはや言い訳出来ないだろう。

と思っていたら机を思いっきり叩いた。

 

「そもそもそいつは俺達を裏切って関羽と趙雲をたぶらかして逃げた裏切り者だ。

それにもかかわらず偶々矢に当たったからと言ってなぜここまで責められないといけない。

そしてそんな奴をなんで俺たちが気を配らないといけないんだ」

 

こいつ開き直りやがった。

一刀のこの言葉に諸侯は一斉に俺や張勲を見る。

仕方がないか。

 

「その件は張勲殿には詳しく話していませんでしたので俺から説明させてもらいます。

俺は黄巾の乱が起きていた頃、確かに劉備殿が起こした義勇軍に参加しておりました。

しかし義勇軍内でも比較的新参で対して何も出来ず何もしないにも関わらず、

義勇軍内で劉備殿と同等の権限を持ち、さらに風紀を乱し続ける御使い殿や

それらを一切咎める事もせずなあなあにしようとする劉備殿に不満がございました。

それにより私は乱の終結後袂を分かちました。

また関羽殿と趙雲殿の件についてですが

私と同様の不満を感じており、私同様に袂を分かった次第にございます」

 

「要は見限ったわけね」

 

「曹操殿のおっしゃる通りでございます」

 

「嘘をつくな!」

 

「必要でしたら関羽、趙雲、さらにあなたに不満を持ち共にこの地に

来た部下たちをこの場に呼んで証言させましょうか?

色々いますよ。尻や胸を触られただの、口説かれただの、

夜に閨に誘われただの、彼女もしくは妻を寝取られただの」

 

これには諸侯がごみを見るような目で一刀を見る。

諸侯の八割が女性なのだ。完全に女の敵扱いだった。

ここで今まで静観を決め込んでいた袁紹が口を開く。

 

「どうやらこの場に相応しくない方が紛れ込んでいらっしゃるようですわね。

一刀さん、今すぐ出て行っていただけます?

そして二度と自身の天幕から出ないように命じますわ」

 

「待ってくれ!」

 

「聞こえませんでした?あなたのその耳は飾りですか?

本来ならばこの場で打ち首もやむなしでしょうに。

それともそれがお望みなので?」

 

「しかし」

 

「もうよろしいでしょう?顔良さん、文醜さん。

申し訳ありませんがそこの鼠を追い出していただけます?」

 

「「御意」」

 

こうして一刀は天幕の外に追い出された。

 

「それと劉備さん。今回の件の追及はここで終わらせていただきますわ。

ですが何らかの形で袁術さん、ひいては紀霊さんに償ってください」

 

「わかりました」

 

「では軍議を再開しましょう」

 

意外な袁紹のリーダーシップぶりに驚きつつ、軍議は再会された。

しかしこの驚きがすぐに落胆に代わることを俺たちはすぐに知ることとなる。

 

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