新海底軍艦〜艦息のドラゴンフォース〜   作:あーくこさいん

10 / 18
第八話 襲来

緒戦で敵の大艦隊を退けた日本連合艦隊は各鎮守府ごとに哨戒艦隊を出し、主力艦隊は今作戦に向けて英気を養う為に母艦に戻って補給を受けていた。

 

改インディペンデンス級多用途戦闘艦“みかさ”と“あさひ”、高速武装補給艦3隻で構成されている小笠原鎮守府機動艦隊にも小笠原鎮守府所属の艦娘達が哨戒に出している艦を除いて4隻の艦内にて補給・休養していた。

 

その機動艦隊旗艦の『みかさ』の艦内では、小笠原鎮守府第一、第二艦隊所属の艦娘がいた。

先の戦いで損傷した艦娘達は艦内入渠室にて傷を癒やし、他の艦娘達は次の戦いに備えて英気を養っている中、艦娘達の艤装が置いてある第二甲板では明石と夕張が置いてある艤装の整備をしていた。

 

夕張

「明石さーん、空母達の艤装の整備終わったよー」

 

明石

「ん、こちらもちょうど終えたわ。」

 

明石は手で額の汗を拭う。

艦内に置かれている第一、第二艦隊の艤装はすべて整備が終わり水を飲むなどして休憩している。

 

夕張

「先の戦いは大きな損害が無くて良かったですね。」

 

明石

「ええ、この子のおかげだけどね…」

 

そう言うと明石は先の戦いの功労者…海底軍艦『羅號』の艤装とその艤装を整備している羅號本人を見る。

あの深海海月姫率いる敵本隊と渡り合うどころか、圧倒する攻撃力とあらゆる攻撃をものともしない防御力を持ち、事実あれ程の大艦隊を単艦で殲滅したのだ。

 

明石

(あの子の性能……絶対南方方面の提督達(奴ら)、どんな手を使ってでも欲しがるわね……まぁ、大本営本部はそれを許さないだろうけど……)

 

明石がそう思っていると、夕張が彼に質問する。

 

夕張

「ねぇ、羅號君。君以外の海底軍艦ってどんなのがいるの?」

 

羅號

「う〜ん、大戦時に造られた海底軍艦は僕を除いて6隻なのですが武装等の特徴を知っているのは3隻だけなんです……」

 

夕張

「ええ、その3隻の事どんな艦なのか分かる?」

 

羅號

「分かりました。まずは枢軸国の海底軍艦から……枢軸国の海底軍艦は僕の他にイタリア艦の『インペロ』、ドイツ艦の『フリードリヒ・デア・グロッセ』がいます。」

 

夕張

「インペロ…聞いたことあるね。確か……」

 

明石

「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦三番艦だったわね。」

 

羅號

「はい。表向きは建造中止となって解体されたのですが、秘密裏に海底軍艦として建造されました。特徴はヴィットリオ・ヴェネト級特有の50口径15inch三連装砲四基を搭載している事と艦首に2本の大型ドリル、両舷に2本の小型ドリルを装備している事。次にドイツ艦の『フリードリヒ・デア・グロッセ』は全長370m、艦本幅62mと僕と同じくらいの巨大艦ですが、気になるのが主砲でして……」

 

明石

「?そのドイツ艦の主砲がどうしたの?」

 

羅號

「それが…僕と同じ50口径20inch砲で、それを連装式で四基搭載しているんです。」

 

夕張

「えっ、20inch⁉︎」

 

明石

「羅號君の主砲と同じじゃない‼︎」

 

羅號

「はい、ドイツ戦艦は攻撃力よりも防御力を重視する設計ですから、ビスマルク級の次の戦艦であるフリードリヒ・デア・グロッセからいきなり攻撃力重視になるのは変なんです。詳しく調べようとしたのですがそれ以外の事は資料等が全て焼却されているので分かりません……」

 

明石

「……それでもう1隻は『モンタナ』なの?」

 

羅號

「……はい、アメリカ艦である『モンタナ』はレムリア帝国から齎された重力炉を受け取ってから建造され、アイオワ級五番艦『イリノイ』、六番艦『ケンタッキー』の建造を中止して、その2艦に使われる資材を使い建造されました。特徴としては艦首に2本のドリルを装備し、主砲はアイオワ級と同じ50口径16inch三連装砲を三基搭載しています。」

 

夕張

「…ねぇ、羅號君の主砲って50口径51cm四連装砲三基だよね?一対一の撃ち合いなら負けることは無い筈だけど……」

 

羅號

「…会戦当初も撃ち合いなら負ける筈は無いと鷹を括っていましたが、モンタナの特筆すべき点は装弾性能です。」

 

明石

「装弾性能?」

 

羅號

「モンタナは16inch砲弾を装填から照準を含めて10秒、つまり毎分6発のペースで連射出来ます。」

 

その事に2人は驚愕する。

モンタナの装弾性能が従来の戦艦のを遥かに凌いでいた。

 

明石

「ええ⁉︎そんな…!」

 

羅號

「さらにモンタナのレーダー連動射撃で命中精度が飛躍的に上がり、その分多く砲弾を受けて浸水が予想以上に酷くなりこちらも決死の反撃で相打ちに持ち込む事が出来たのです。」

 

夕張

「そうなんだ…なんかごめんね。」

 

羅號

「いえいえ…」

 

その時だったーーー

 

ヴィーーー‼︎ヴィーーー‼︎

 

突如として猛々しいサイレン音が鳴り響く。

突然の事に3人とも驚く。

 

羅號

「今のは…?」

 

明石

「何が起こったっていうの⁉︎」

 

3人共困惑するが、次の瞬間提督から放送が入る。

 

提督

『全艦娘に緊急連絡、哨戒中の艦隊が敵勢力と接敵し現在交戦中‼︎現在のところ敵勢力の艦数は1隻のみ。』

 

提督の緊急連絡に彼は疑問に思う。

 

羅號

(1隻のみ…奇襲にしては少な過ぎる様な……?)

 

だが、次の放送で彼は驚愕する。

 

提督

『現在交戦中の敵艦の()()が判明、艦名は“モンタナ”‼︎…繰り返す、艦名は“モンタナ”‼︎第一、第二艦隊は直ちに出撃準備を‼︎』

 

そう、80年前太平洋上で激突し羅號と相打ちになった海底軍艦…『モンタナ』が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し前に遡る。

この時、軽空母『飛鷹』を旗艦とする哨戒艦隊は『カ号観測機』と偵察機『彩雲』での哨戒、同じ哨戒艦隊に所属している軽巡洋艦『名取』と駆逐艦4隻で哨戒任務に就いていた。

 

飛鷹

「今のところ異常は無し…か。」

 

軽空母『飛鷹』は観測機と偵察機を駆使して周囲を索敵していた。

すると駆逐艦『潮』が何かを聞き取る。

 

「ん?これは……」

 

飛鷹

「どうしたの、潮ちゃん?」

 

「いえ、先程水中から妙な音が…潜水艦のスクリュー音では無い事は確かなのですが、何か大きな物体が泳いでいる様で…」

 

潮の報告に首を傾げる飛鷹。

しばらく考えた後ーーー

 

飛鷹

「分かったわ。哨戒中の観測機を向かわせるわ。」

 

飛鷹の指示により、3機の観測機が音の聞こえた海域に向かう。

その海域を旋回していると、観測機の妖精さんは何やら大きな影を発見する。

飛鷹はその妖精さんが見た光景を共有(リンク)するとーーー

 

飛鷹

「何これ、潜水艦にしては大き過ぎる……」

 

確かに影が浮かび上がっていたが、その影があまりにも巨大だ。

未曾有の事に驚いていると、その影に動きが……

 

「っ!目標に動きが…これは、浮上してきます‼︎」

 

突然の事にたじろぐ中ーーー

 

ザバァァァァァ‼︎

 

突如として巨大な水飛沫を上げて浮上した。

その全体像が明らかになると、彼女達は改めて驚愕する。

 

それもそのはずである。

浮上してきたのは潜水艦では無く、()()なのだから。

 

浮上してきた戦艦は深海棲艦特有の禍々しいものでは無く、どちらかと言うと艦娘に近い容姿をしている。

白色のコートに緑色のシャツ、黒色の長ズボンを着ており頭にはアメリカ海軍の海軍帽を被っているが、顔つきといい体格といい女性というよりも男性の方がしっくりくる。

 

そして、兵装面では資料で見た事があるアイオワ級の三連装砲を右肩部に2基、左肩部に1基搭載しており、装備している艤装には高角砲や単装砲、ガトリング機銃など様々な兵装が連なっていた。

 

だが、あの艦娘が左手に装備している2本のドリルがその艦娘を異質たらしめている特徴だった。

 

否、艦娘というよりも艦息(かんそく)といった方が正しいが…

 

名取

「何でしょうか、あれ?」

 

「もしかしてドロップ艦?」

 

「でも、まだ戦闘が始まって無いのに出るのおかしくない?」

 

駆逐艦達がざわめく中、旗艦である飛鷹はその戦艦とコンタクトを取ろうとする。

 

飛鷹

「こちら小笠原鎮守府第八艦隊第一戦隊旗艦“飛鷹”!そちらの艦名を教えて貰えるかしら?」

 

モンタナ

『…律儀なものだな。艦名を教えろと言われてこちらが正直に名乗ると思っているのか……?まあいい、俺の名はBB-67“モンタナ”だ。』

 

飛鷹

「モンタナ…?もしかしてモンタナ級戦艦一番艦“モンタナ”?でもあれって計画だけの艦じゃないの?」

 

モンタナ

『表向きではそうだが、この俺も第二次大戦中に建造されたからな……まぁだからといって今は合衆国軍所属では無いがな。』

 

彼の言葉に疑問を浮かべる艦娘達。

 

モンタナ

『おっと…長話が過ぎたな。早くアイツに会わないとな……」

 

飛鷹

「アイツ?」

 

モンタナ

『ああ、お前らも知っているだろう?小笠原鎮守府に転がり込んだ万能戦艦…“羅號”の事だよ。』

 

飛鷹

「っ!羅號君に会って何をするつもりなの⁉︎」

 

モンタナ

『何するつもり…?決まっているだろ、羅號(アイツ)と戦って沈める事だ。』

 

飛鷹は名取に通信を入れるように伝え、名取は即座に通信を入れ、今までの事を知らせた。

 

モンタナ

『ほぅ、通信を入れたか……まぁ羅號が来るのなら好都合だかな。』

 

飛鷹

「羅號君だけじゃ無い、第一、第二艦隊、そして他の哨戒艦隊もこちらにやって来るから観念なさい‼︎」

 

モンタナ

『フッ、用があるのは羅號だけだ。だから羅號(アイツ)が居る母艦に向かう。』

 

飛鷹

「…大人しく通すとでも?」

 

飛鷹率いる戦隊がモンタナの進路を塞ぐ。

他の艦娘も臨戦体制をとっており、ここから先には行かせない構えだ。

 

モンタナ

『おいおい、所詮()()()()()()()()()()事しか出来ん奴らに何が出来る?』

 

飛鷹

「…何が言いたいのよ?」

 

モンタナ

『こういう事だ………離水‼︎』

 

するとモンタナから不気味な機械音が鳴り響く。

突然の事に飛鷹達は構えるが、予想だにしない事が起きた。

機械音が鳴り響いた数秒後、水面に立っていたモンタナの両足が浮かび上がった。

 

名取

「嘘……」

 

「何コレ⁉︎」

 

飛鷹

「宙に…浮いた⁉︎」

 

艦娘達が驚愕する中、モンタナは自慢げに言い放つ。

 

モンタナ

「どうだ‼︎水上・水中・空中を制し、圧倒的な攻撃力と防御力で複数の敵艦隊を殲滅する……それこそが万能戦艦の真髄だ‼︎」

 

そう言うとモンタナは空を突き進む。

方角からして戦闘艦“みかさ”に向かっている。

艦娘達も追いかけるが、空中を飛んでいるモンタナと水上を走っている艦娘達とでは速度に雲泥の差があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、戦闘艦“みかさ”では出撃準備で皆慌ただしかった。

羅號はすぐに出撃し、哨戒艦隊のところに向かっていた。

 

羅號

(間に合ってくれよ…!)

 

彼は最大戦速で目標海域に向かっていた。

その時だーーー

 

羅號

「っ!来る…!」

 

彼は砲弾の気配を察知し、咄嗟に磁気シールドを展開し構える。

数秒後、彼の周りに砲弾が着水し水飛沫が上がった。

水飛沫が収まった後、彼は周囲を見渡す。

するとーーー

 

羅號

(ん…あんな所に航空機が………いや、違う‼︎)

 

空から何が接近し、それが何なのか咄嗟に判断すると羅號は艦首ドリルを構える。

数秒後ーーー

 

モンタナ

死ねぇぇぇぇぇ‼︎

 

モンタナが左手に装備する連装ドリルを構えながら突撃(ドリルチャージ)を行う。

次の瞬間ーーー

 

ズガガガガガガガガガ‼︎

 

双方のドリルがぶつかり合い、モンタナの方が勢いがあったのか羅號が競り負け吹っ飛ばされた。

羅號は慌てて体制を立て直す。

そして両者は合間見える。

 

羅號

「モンタナ……」

 

モンタナ

「久しぶりだな、羅號‼︎」

 

羅號

「やっぱりあの時の事を恨んでいるんだね……」

 

モンタナ

「当然だ‼︎あの時、俺の速射とレーダー連動射撃によって貴様を轟沈寸前まで追い詰めたと思ったら、まさか俺の艦底部(土手っ腹)突撃(ドリルチャージ)をかまして相打ちに持ち込んだ………この屈辱、忘れはしない‼︎お前が脱走して敵になったからには好都合だ、今度こそ貴様を海の底に沈めてやる‼︎」

 

モンタナはこれでもかと羅號に対し怒りと恨みをぶつける。

だが、羅號も黙っているだけではなかった。

 

羅號

「そうか……だけどね、僕も当時は戦争に勝つ為に生まれた………だが、今度は僕の帰るべき国である日本を…地上を守る為に蘇った‼︎だからあんたの因縁もこれで終わりにする‼︎離水始め‼︎」

 

次の瞬間、動力炉の出力が上がり機械音が鳴り響く。

そして彼も宙に浮いた。

そう、これこそが海底軍艦の最大の特徴である『空中浮遊・飛行能力』

重力炉の膨大な出力でもって周囲の重力を制御し、空中を浮遊・飛行する画期的な機能である。

 

空を飛んだ両者は睨み合い、兵装を構える。

 

モンタナ

「さぁ、80年前の続きを始めようぜ‼︎」

 

羅號

「そうだね…あんたとの因縁をここで断ち切らせて貰う‼︎」

 

その瞬間、両者がぶつかり合う。

80年ぶりの死闘の火蓋が切って落とされた。




相対し、ぶつかり合う羅號とモンタナ。

艦娘達が駆けつける中、連合艦隊に帝国海軍の魔の手がーーー

乞うご期待ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。