羅號脱走から三日後…
南極某所
南極にある黒塗りの要塞。
そこの地下道路に前からバイク、リムジンらしき車両、装甲車、バイクが一列で走行していた。
やがて入口付近に停車すると、リムジンらしき車両から藍色のスーツに白のマントを羽織った青年が降りた。
この青年はレムリア帝国総統『ゼノン=ガーゴイル』
一見青年のような見た目だが、レムリア帝国No.1の地位を持つ権力者だ。
その総統の周りには多数の兵士がおり、その中から要塞司令官が前に出た。
要塞司令官
「ようこそおいで下さいました、総統閣下。早速ですが先にお詫びしたい事がありまして……」
ゼノン
「…分かっている、羅號の脱走だろ。それは後で聞くとして、案内を頼む。」
要塞司令官
「…承知しました。」
要塞司令官は総統を要塞内に案内する。
要塞内のドック、艤装装着兵用の艤装保管庫、研究施設を案内した。
そして一行は秘密ドックへ入る。
そこには大和型戦艦の二倍以上の大きさを誇る巨大戦艦が鎮座していた。
その戦艦は現在艤装を換装中であり、まだ建造途中だった。
ゼノン
「ふむ…『超兵器一号』は約76%の工程が完了か…順調だな。」
ゼノンが工程の進捗状況を確認している中、要塞司令官の心臓はバクバクしていた。
それもそのはずである、万能戦艦の脱走という失態を犯しその処遇は後で伝えると言われていた為、自分がどうなるか心配でたまらないのである。
そんな中…
ゼノン
「ところで…羅號が脱走したようだな。」
要塞司令官
「…申し訳ございません。我が不徳の致すところです。」
要塞司令官は陳謝する。
ゼノン
「…まあいい、羅號が脱走するのは予想していた事だ。そうならない様に洗脳処置を施そうとしたが、そうなる前に奴は逃げ出したという訳か。」
ゼノンは落ち着いた表情で話す。
ゼノン
「それでお前の処置についてだが、お前には引き続き要塞司令官としての任務を全うしてもらう。」
要塞司令官
「えっ、よろしいのですか…?」
ゼノン
「今回は奴が目覚めるのが早かった事が原因だ。他の万能戦艦はともかく艤装装着兵の配備が出来ていない今、止めるのは不可能だ。」
要塞司令官
「はっ。」
その後、要塞の視察を終えたゼノン総統はリムジンらしき車両に乗り要塞を後にした。
その時、要塞司令官は呟いた。
要塞司令官
「……心臓止まるかと思った。」汗ダラダラ
羅號脱走から一週間…
羅號は日本…特に小笠原諸島へ向けて航行していた。
小笠原諸島は羅號がサルページされた時に諸島の秘密ドックに収容され修復された為、彼はそこに向かっていた。
地図を確認すると、目的地に近づいて来ている。
彼は浅い深度まで浮上すると通信ブイを打ち上げ、通信を傍受した。
通信を傍受していると気になる通信を聞いた。
『こち…大和…………救援……求め……』
通信は所々途切れていたが、自分の姉である大和が救援を求めているのは確かだった。
彼は通信元から進路を割り出し、急行した。
羅號
「間に合ってくれよ……」
一方その頃……
大和
「こちら大和から小笠原鎮守府へ!救援を求めます!」
小笠原鎮守府第一艦隊は苦戦を強いられていた。
作戦が成功し鎮守府へ帰還していた時、なんと戦艦棲姫を旗艦とする大部隊が突如として現れたのだ。
前の作戦では第一、第二艦隊を投入したが第二艦隊は敵の航空攻撃によって空母加賀、翔鶴が大破し撤退、第一艦隊で作戦を成功させたが中破、小破の状態で迎撃を行なっていた。
武蔵
「救援はいつ来る!?」
大和
「あと20分…けど…」
救援は20分くらいで来るが、はっきり言って間に合わない。
現在装甲空母信濃改ニが『陣風』『橘花』を飛ばして襲いかかる敵機を迎撃し、矢矧改ニ乙、磯風乙改、浜風乙改が対空砲火を浴びせているが、中小破している状態ではパフォーマンスを発揮出来ず苦戦している為、救援まで持ち堪えられるか分からない。
さらに状況は悪化する。
ドォォン!!
大和
「ぐっ!!」
信濃&矢矧
「「大和(姉)さん!!」」
戦艦棲姫の砲撃が大和に命中し、大破してしまった。
それに呼応するかの様に深海棲艦の大部隊も彼女らを包囲する。
大和達は死を覚悟した……その時だったーーー
ザバァァァァ!!
突如として水しぶきを上げ何かが浮上した。
艦娘側も深海棲艦側も何事かと音のする方を向くと、そこには一人の艦娘がいた。
浮上してきた為潜水艦かと思ったが、その艦娘は潜水艦というより戦艦の艤装を背負っていた。
主砲の配置は大和型とほぼ同じで砲も武蔵改ニの51cm砲だが、この子は三基すべて四連装砲であり砲身も長かった。
副砲の三連装砲二基や砲身の短い連装砲などが連なるが、何より特徴的なのは右手に螺旋状の機械…ドリルを持っていたことだ。
突如現れた艦娘に驚く中、深海棲艦側はその艦娘を敵と判断し艦載機を差し向ける。
多数の艦載機が一斉に襲いかかる。
大和
「危ない、逃げて!」
大和がそう言うが、次の瞬間ーーー
羅號
「対空迎撃開始!」
その艦娘の対空火器から濃密な弾幕が放たれ、僅か数分で艦載機の編隊は全滅した。
突然の事に驚く中、その艦娘は主砲を動かし十二門の砲が火を噴いた。
十二発の51cm砲弾は戦艦ル級やタ級、レ級に空母などの大型艦を一撃で沈めた。
すると多数の駆逐艦・軽巡洋艦が魚雷で沈めようと接近したが、その子は慌てる様子も無く、艤装の煙突部に動きがあった。
なんと煙突部が真っ二つに分かれ、何かが出てきた。
その物体のアームが伸び、折り畳んだ部分がパラボラアンテナ状に開くとーーー
羅號
「
次の瞬間、パラボラアンテナからオレンジ色の光線が接近してきた駆逐艦・軽巡洋艦に向かって放たれた。
命中した敵は跡形もなく溶け、掠っただけでも艤装の一部が融解し弾薬庫に誘爆して沈んだ。
磯風
「なんだあれは…!?」
周りの艦娘達が驚く中、トドメを刺すべく右手に持っていたドリルを両手に持ち回転させると、
羅號
「
雄叫びを上げながら、鎮守府最速を誇る島風を上回る速度で突撃してきた。
戦艦棲姫をはじめ残りの敵が砲撃や雷撃を放つが、それをお構いなしに突撃し、ドリルで戦艦棲姫を跡形もなく粉砕した。
残りの敵も副砲や対空火器で掃討すると、静かな海域だけが残った。
矢矧
「私達、助かったの…?」
周りの艦娘が唖然とする中、大和は意を決してその艦娘に歩み寄る。
大和に気づいたのか、その艦娘は振り向いた。
その艦娘は背丈は駆逐艦並みで、大きな艤装の割に合わない様な感じだった。
測距儀の付いた海軍帽を被り、吹雪型のセーラー服(赤と白)に黒色の短パンを身に付けた艦娘だ。
ふと、大和は違和感を感じた。
先程の声といい、容姿といい、雰囲気といい『女の子』というよりも『男の子』という方がしっくりくる感じだった。
大和は内心あり得ないと思いながらもその艦娘に質問した。
大和
「もしてかして…あなた
大和がそう尋ねると、彼はコクリと頷いた。
その事実に周りの艦娘達は驚愕する。
そもそも艦娘とは『軍艦の魂を持った少女』なのだ、男の子というだけでも驚くに値する事だ。
羅號
「大和お姉ちゃん…良かった、間に合って…」
大和
「えっと…あなたは何者?」
羅號
「あっ、自己紹介がまだだったね。初めまして、大和型四番艦『羅號』です。」
羅號は自己紹介をする。
彼女達は聞いたことがない艦名に困惑する中、大和、武蔵、信濃が目を見開いて驚く。
大和
「えっ、大和型四番艦…?」
武蔵
「という事は…」
信濃
「私達の弟…?」
驚くのも無理はない。
大和型四番艦は戦局の悪化により解体されたと聞かされていたのと、仮にそうだとしても本来の大和型のスペックを遥かに凌ぐ性能を見せたのだ。
羅號
「うん、信じられないかもしれないけど僕の存在自体大和お姉ちゃん達以上のトップシークレットだったし、大戦末期に建造され8月6日に僕と同じ性能を持つ戦艦と相打ちになって沈んだから、知らないのも無理はないよ。」
突拍子のない話に困惑するが、彼の真剣な表情から嘘をついている様には見えなかった。
すると提督から通信が入る。
提督
『みんな無事!?深海棲艦の反応が突如として消えたけど何があったの!?』
大和
「あっ提督、実は……」
大和は今までの経緯を提督に話す。
提督
『……分かったわ。取り敢えずその子を
大和
「分かりました。では…」
大和は通信を切る。
大和
「という事で羅號、取り敢えず来てもらえるかしら?」
羅號
「うん、分かった。」
第一艦隊は羅號を連れて帰投した。
海底軍艦『羅號』が鎮守府に着任しました。
次回は提督達と対面。
羅號の大まかな過去が分かります。
乞うご期待ください。