ー小笠原鎮守府工廠ー
ここは小笠原鎮守府工廠。
そこには小笠原鎮守府提督『有坂仁美』と工作艦『明石』、大和などの艦娘がいた。
そして彼女達が興味津々に見ているのはドロップ艦『羅號』の艤装だった。
特に明石は技術屋としての血が騒ぎ、羅號の艤装を詳しく調査していた。
明石
「ふぅ…やっと終わったわ。」
提督
「明石、調べてみてどうだった?」
明石
「どうも何も…大和さん、この子大和型四番艦なんだよね?」
大和
「ええ、そう言ってたわ。」
明石
「確かに大和型の名残はあるけどねぇ…」
そう言うと明石は妖精さんに描かせた図面を開く。
その図面を見て彼女達は驚愕した。
確かに艦橋や煙突部は大和型のものだが、大和はおろかニミッツ級原子力空母を凌ぐ大きさを誇っていた。
さらに艦底部には巨大な回転式カッターに艦首のドリルなど、最早同じ大和型とは思えない程規格外の戦艦だった。
明石
「船体もそうだけど、武装も規格外よ。この子の主砲は51cm砲と同口径だけど三基すべて四連装砲で砲身も50口径と長砲身なのよ。」
そう、日本の戦艦の主砲は45口径が標準なのに対し羅號の主砲は50口径の長砲身であるので、その分貫徹力・射程が向上していることを意味していた。
明石
「両舷の魚雷発射管や対空火器、煙突内にあるパラボラアンテナ状の装置とかこの子の武装色々とツッコミどころ満載だけど、さらに調べてみるとこんなものまで見つかったのよ。」
明石は艤装の横に置いてある航空機に目をやる。
その航空機は戦闘機『橘花』に酷似していたが、ジェットエンジンらしき部分が橘花とは形状が異なり、機体にはスクリュープロペラの様なものがついていた。
提督
「この航空機は…?」
明石
「ええ…『特殊戦闘機“氷龍”』だそうよ。その航空機の妖精さんによると。」
信濃
「氷龍…?聞いたことないわね……」
明石
「この子、氷龍っていう艦載機を常備機24機、予備機6機の計30機搭載出来るのよ。」
武蔵
「なっ!?航空戦艦並じゃないか!」
明石
「ええ、さらに驚くのは…」
そう言うと明石は一枚の紙を提督に見せた。
すると提督は目を丸くする。
提督
「弾薬消費量が少ない…?それに燃料要求量に至っては…ゼロ?」
明石
「はい、羅號の武装は実弾兵器とパラボラアンテナ状の装置…あれは“
明石の言葉に周りは唖然とする。
羅號のオーバースペックぶりに驚いているのだ。
明石
「そして特徴的なのは艦首の巨大ドリル…はっきり言いますがあんな艦はペーパープランですら存在しません。それが『大和型四番艦』?ありえませんよ。考えられる事としてはこの子は『本当に第二次大戦末期に建造された艦』かそうではない場合は…『架空艦』です。」
本来艦娘は第二次大戦時に完成した艦が出るのが常識だ。
『架空艦』など常識的に考えてあり得ないのだが、現に大和型四番艦である羅號が現れたので従来のセオリーを破る存在に皆困惑していた。
するとーーー
夕張
「明石さーん、提督さーん!この子の検査終わったよー!」
提督達が振り向くと羅號本体の検査を終えた軽巡洋艦『夕張』と発見されたドロップ艦…『羅號』が来た。
提督
「ご苦労様。それでどうだった?」
夕張
「ええ、調べた結果私達と同じ成分が検知されたからこの子は艦娘とみて間違いありません。それと性別についてだけど触診の結果男性という事が判明しました。」
提督
「触診って…大丈夫なの?」
夕張
「大丈夫ですよ。触診も検査の一つだし、この子も了承しています。」
提督
「ならいいけど…それで、あなたが羅號くん?私は小笠原鎮守府提督有坂仁美少将よ。」
羅號
「初めまして、提督さん。大和型四番艦羅號です。」
羅號はお辞儀をする。
提督
「それで羅號くん、あなたの事について聞きたいのだけど…」
羅號
「分かりました。それではお話しします。」
彼は自分の経緯を語り始めた。
1940年、呉軍港にて一隻のUボートが寄港してきたのが始まりだった。
そのUボートは枢軸国の一員である日本に新型機関『重力炉』の炉心を運んできたのだ。
どうやら搭乗していた科学者が言うには枢軸国の秘密兵器“海底軍艦”を動かす為の動力炉だと言う。
枢軸国は所謂『持たざる国』同士が同盟を組んだ陣営なので、物量で勝る連合国には長期戦になれば不利だ。
そこで打ち出されたのは物量を絶対的な質ですり潰す事だった。
それを成す兵器が海底軍艦だと言う。
既にドイツとイタリアは建造している為、日本も対米戦の為作る必要に迫られた。
そこで建造中であった大和型戦艦の中で最も工事が遅れていた『第111号艦』を海底軍艦として改造することが決まり、艦名を『羅號』とした。
主砲用として50口径51cm砲を作成し、副砲は55口径20.3cm三連装砲二基を取り付け、新型装填装置の恩恵によって主砲は毎分2発、副砲は毎分6発撃てる代物だった。
当然、前例のない新基軸戦艦の為工事は遅れてしまい完成したのは1945年7月23日になった。
だが、羅號の艦長“日向正史”は腑に落ちない事があった。
1945年
呉極秘ドック
ここは羅號用に造られた極秘ドック。
そこに鎮座していたのは完成したばかりの海底軍艦『羅號』だ。
そのドックに羅號艦長“日向正史”と副長“影山貢”がいた。
日向正史
「いよいよ明日だな、影山。」
影山貢
「ああ!待ちに待った羅號の出撃だ。こいつはアメリカの全艦隊を敵に回しても戦える…全くすごいぜ、この
影山は興奮気味に語る。
それほどこの羅號で戦える事を誇らしく思っているのだ。
だが、日向は何やら不可解に思っている事があった。
日向正史
「それなんだがな影山…俺にはなんだかこの
影山貢
「お、おい正史、まさかお前…!」
日向正史
「勘違いするな、俺もこの国を守りたいという気持ちは同じだ。…だが、この
日向は語りだす。
日向正史
「例をあげるなら、イタリア艦、ドイツ艦だ。この二カ国は日本より先に海底軍艦を完成させてた筈…だがイタリアは1943年7月に連合国に寝返り、1945年5月にドイツは降伏した。ならその二隻の海底軍艦はどうなったのだ!?何故誰に聞いてもそのことを知らない!?」
日向の疑問に影山が答えあぐねているとーーー
???
「その通りです…この
日向正史
「っ!?誰だ!?」
何処からか女の声がした。
振り向くと、そこには一人の女性がいた。
その女性の容姿といい、格好といい、日本人とは思えなかった。
???
「この
影山貢
「貴様…日本人では無いな!敵国のスパイか!?」
影山は咄嗟に銃を構えるが、日向が静止する。
日向正史
「早まるな影山!スパイならわざわざ敵に捕まりに来るような真似はしない筈だ。…とりあえず話を聞こう。」
彼女の名は“アネット”
彼女は海底軍艦の隠された真実を伝える為にここに来たのだ。
彼女は語る。
自分が1万2千年前に一度滅んだ超古代文明“レムリア”出身だという事…
そのレムリア帝国が地上への武力侵攻を企てている事…
その為にレムリアの
そして完成した海底軍艦を遠隔操作して自分達の武器として使うつもりだという事…
突拍子もない話だが、真剣な様子から嘘をついている様には見えなかった。
その証拠に彼女はこの
艦長は彼女の話を信じることにした。
そして羅號は出航し小笠原近海に差し掛かった時、一隻の軍艦に遭遇した。
そう、アメリカの海底軍艦『モンタナ』だ。
遭遇した二隻の海底軍艦は戦闘に入った。
通常艦なら無敵の強さを誇る海底軍艦だが、ほぼ同等の性能を持つ羅號とモンタナは激しい戦闘の末相討ちとなり、二隻共沈んだ。
羅號も沈み、艦内に海水が入り込んできたその時ーーー
日向正史
「脱出しろッ、影山!生き延びてこのことを後世に伝えなくてはいけない!」
日向艦長は影山副長に脱出するよう命令した。
影山副長は典型的な帝国軍人であった為、アネットの話を聞く前だったら艦と運命を共にするだろう。
だが、枢軸国側の
影山副長は艦載機『氷龍』で脱出し、アネットは唯一機能していた冷凍睡眠カプセルに入り生き延びた。
影山副長とアネットさん以外の乗組員は艦長以下全員艦と運命を共にした………
提督
「そ…それが羅號くんの
その場にいた艦娘達と提督は羅號の壮絶な艦歴に言葉を失った。
羅號
「それから時がったって1969年に影山さんは発見し引き揚げ、来るべきレムリア帝国の侵攻に備えて僕を修復しました。」
明石
「よく秘密裏に修復出来たね…」
羅號
「影山さんはカモフラージュの為に会社を興して組織を作り、小笠原諸島の島の一つを購入して秘密ドックを建造したのです。」
夕張
「それでその…艦内にいた人たちはどうしたの?」
羅號
「引き揚げた後、遺体や遺品を回収して遺族に渡しアネットさんが入っていた冷凍睡眠カプセルは僕の動力炉を直結している為、動力炉が動いた1995年に目覚めたの。その後アネットさんの協力を得て組織の戦力を増強したり、新技術を生み出したりとしたけど……」
羅號は一旦間を置いて話す。
羅號
「2010年にレムリア帝国が傭兵を雇って強襲してきた。突然の出来事だったから秘密ドックは瞬く間に制圧され、その勢いのまま組織を壊滅しようとしたけど、影山さんが自ら囮となって強襲してきた傭兵部隊諸共……自爆したの。」
提督達
「!?」
羅號
「そのおかげでアネットさん達は建造した潜水艦で脱出したんだ……その後僕は帝国本土まで移送されて、遂に僕達海底軍艦は人の形を得て帝国の戦力にしようとしたんだ。でも……」
大和
「でも?」
羅號
「アネットさんや影山さん達に関わった時期が多い僕は、帝国に従わない事を懸念して僕に洗脳処置……つまり無理矢理帝国への忠誠心を植え付けて戦力にしようとしたんだ。」
信濃
「そんな……」
武蔵
「なんと言う事を……」
羅號
「だから洗脳処置の前に脱走したんだ。それで行く宛が無いから秘密ドックのあった小笠原諸島に向かって行った時、大和お姉ちゃんの救援を求める通信を傍受して駆けつけた所で……」
すると羅號は提督の方を向く。
羅號
「多分帝国は僕を血眼になって探すと思う。確かに僕は帝国の技術を導入して造られた
羅號は頭を下げて懇願する。
提督
「頭を上げて、羅號くん。」
羅號は頭を上げる。
提督
「大丈夫よ、どのような事情であれ私達はあなたを歓迎するわ。」
羅號
「提督さん…ありがとうございます!」
提督
「瑞鳳、とりあえずこの子に鎮守府案内してくれる?」
瑞鳳
「分かりました!それでは案内します。」
瑞鳳と羅號は工廠を後にした。
次回は小笠原鎮守府案内回です。
この回は前編・後編に分けます。
乞うご期待ください。