彼は勇者ではない   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


花結い、きらめく
神樹の世界へ


―――その日も平和な一日となる筈だった。

 

「今日も勇者部八人勢揃いだね。新しい物語のはじまりはじまり!」

「毎日が新しい物語。小説のネタも毎日更新されとるんよ~」

「そのっちも相変わらずね。はい、友奈ちゃん。ぼた餅」

 

美森は朗らかな表情でそう言うと、重箱の中のぼた餅を紙皿に乗せて友奈へと渡す。

 

「わーい!もぐもぐもぐ。本当に東郷さんのぼた餅は美味しいよ。園ちゃんも食べる?」

「食べる食べる~。こーりん、食べさせて~」

「やれやれ。園子は甘え上手と言うか何と言うか……構わないか?」

「大丈夫よ。ぼた餅は多めに作ってきたから」

 

美森から了承も得られたので、千晶は紙皿に乗せたぼた餅を竹串で一口分に切り分け、それを園子へと食べさせる。

俗に言う『あーん』をやってもらった園子は、幸せそうな表情で美味しそうに食べていく。

 

「ほら樹。これ、とれる?」

「わあ。夏凜さん、あやとりも得意なんですね」

「当然よ。何たって私は完成型勇者なんだから」

「それ、勇者関係あるのかな?」

「出来ればそっちより向こうにツッコミを入れてほしいわね、三ノ輪。夏凜も樹と遊んでないでアッチをどうにかしなさい」

 

そんなバカップル組を無視するように、樹と夏凜はあやとりで遊んでいたが、銀のツッコミと風の指摘によって嫌々現実へと戻される。

 

「そうは言いますけど、風先輩。あの甘い空気に水を差す勇気はアタシにはないんですよ」

「だからって放置するわけにもいかないでしょ、銀。ほら、そこの四人、部長が何か言おうとしてるから此方に戻ってきなさい」

 

銀は複雑そうな表情でそう呟くも、夏凜は呆れながらバカップル組に帰還を促していく。やはり完成型勇者は一味も二味も違うようである。

 

「すまない。ミーティングの腰を負ってしまったか」

「ゆーゆ、わっしー。カムバッーク」

「それじゃ戻りましょうか、友奈ちゃん」

「うん!」

 

そうな夏凜の言葉に、バカップル組も特に不満を洩らすことなく視線を黒板の前に立っている風へと向ける。

 

「さすが完成型勇者。先代勇者たるアタシですら躊躇う、あの甘い空気をモノともせずにツッコめるとは」

「はいはい、その話も後。それじゃ、今日の勇者部活動内容をセクシーに読むわね」

 

銀は夏凜に感心するように呟き、風は本題へと切り出すように黒板をバンッ!と叩く。セクシーさの欠片も微塵もない行為である。

その瞬間、勇者部全員の視界が一瞬だけ白い光に包まれた。

 

「!?な、なに今の光!皆、気を付けなさい!」

「この感じはまさか、樹海化!?」

 

突然の光に夏凜は警戒するように警告し、美森は今までの経験と感覚から困惑の表情を浮かべる。

そんな突然の事で混乱する中、更なる追い討ちが掛けられる。

 

「あ、アラームが。アラームが鳴ってます!」

「な、なんでよ。勇者アプリはもう持ってない筈よ!?」

 

スマホから樹海化警報を知らせるアラームが鳴り、一同は自身のスマホを取り出してその画面を確認しようとする。

 

「!?」

 

千晶の目があり得ないものを見たように見開いた瞬間、白い光が全員を包み込み―――千晶、園子、銀以外の勇者部メンバーはその場から消えていた。

 

「皆がいなくなっちゃった……」

「本当にどうなっているんだ……?千晶、何か分からないか?」

「俺にも分からない。それどころか……」

 

千晶はそう言って自身のスマホの画面を見せる。その画面には、本来ある筈のものが消えていた。

 

「千晶が御免ライダーに変身する為のアイコンが消えてる……」

 

銀がそう呟いた通り、千晶が変身する為のアイコンがスマホの画面から消えているのだ。

あの変身アイコンは千晶がスマホを手に持った瞬間に表示される。その表示のされ方が、ノイズが走ってから現れるので軽くホラーとなっている。それで風が卒倒しかけたのはまた別の話だ。

 

「それじゃあ、スマホ無しの変身は~?」

「そっちも試してみたが、ダメだった。だが……」

 

千晶はそう言って部室の一角に鋭い視線を向ける。

そこには、白い巫女服を纏った若干紫が混じった黒髪の少女と、黒い巫女服を纏った顔は友奈そっくりの漆黒と言える程の黒髪の少女が立っていた。タイミング的には友奈達が消えたのとほぼ同時。入れ替わったようなタイミングである。

 

「この状況、あなた達は知っているんだろう?知ってることがあれば、今すぐ説明して頂きたい。それと、友奈達は無事なのか?場合によっては……」

「ふふ、本当に千景さんの子孫なのですね。つんけんした態度で仲間を思うところとか、本当にそっくりです」

 

千晶の若干きつめの質問に対し、白巫女の少女は微笑みを浮かべてそう口にする。

 

「本当に相変わらずじゃのう。順を追って説明してやるから落ち着け」

 

友奈に似た黒巫女の少女は呆れながら千晶を宥める。まるで千晶がこうすると分かっていたかのような対応だ。

 

「それで、マジでどうなってるんです?樹海化してるのは分かるんスけど……」

「しかも~、部室だけが別空間になってるよね?」

「ピンポンピンポーン。正解です。さすが若葉ちゃんの子孫ですね!」

 

園子の質問に対し、白巫女の少女はノリの良い感じで正解だと伝える。

白巫女の少女は服装からして大赦の巫女なのだが、千晶は勿論、園子と銀も彼女の顔には覚えがない。それに、白巫女の少女は“千景さん”と“若葉ちゃん”と口にした。

千晶はまさかとは思いつつも、確認する為に口を開いた。

 

「まさかとは思うが……貴女は西暦時代の人間か?」

 

自身でも突拍子のない事を吐いたと自覚している千晶のその言葉に、白巫女の少女は驚いたように目を見開くも、すぐに笑顔を浮かべて肯定した。

 

「大正解です。よく分かりましたね?」

「分かって当然じゃろ。初代勇者の名を近しい感じで口にすれば、半信半疑でも気付くじゃろ」

「イヤイヤ。それだけじゃ分からないって」

 

黒巫女の少女の呆れに対して、全然分かっていなかった銀がツッコミを入れる。そんな銀に対し、黒巫女の少女は呆れた眼差しを向けた。

 

「本当に鈍いの三ノ輪銀。まあ、常に頭を使うのに悲鳴を上げとるお主なら仕方ないかの」

「へ?」

 

黒巫女の少女の溜め息混じりの呆れに、銀は一瞬理解できないような表情となる。しかし、すぐに困惑の表情を浮かべると、今しがた感じた疑問を黒巫女の少女にぶつけた。

 

「えっと……アタシの記憶が正しければ、お互い初対面のはずッスよね……?何でアタシの名前を知ってるんスか?」

「ひょっとして、ミノさんのファン~?」

「寝言をほざくな乃木園子。我が興味を引くのはアヤツの子孫でもある郡千晶だけよ」

 

どうやら黒巫女の少女は銀だけではなく、園子と千晶のことも知っているようだ。その事実に首を傾げる三人に、黒巫女の少女は再び溜め息を吐く。

 

「はぁ~~……本当に鈍い奴らよ。特に郡千晶はいい加減に気付け。そこの二人とは違い、お主は我と話せておったじゃろ」

 

黒巫女の少女の言葉に、銀はもちろん千晶ですら首を傾げてしまう。一体どこで彼女と会話したのか……そんな思考に千晶が沈んでいると、その答えは意外にも園子がもたらした。

 

「ひょっとして~、あなたはこーりんが言っていた神様?」

「!?」

「ええ!?」

 

園子のその言葉に、千晶と銀は驚いたように目を見開く。対象に黒巫女の少女は正解だと言わんばかりにクックッと笑っている。

 

「その通りじゃ乃木園子。頭の回転の良さと聡さは一級なだけはある。逆に郡千晶はこれだけヒントを与えて気付かぬとは……情けないを通り越して呆れたぞ」

「……さすがに無理がある。お前は三本脚のカラスの姿だっただろ。加えて声色も渋い男のもの。今のような友奈似ではないだろ」

 

千晶のその反論に銀は思わず納得する。確かに今まで見慣れた姿と声色ではなく、友奈に似た姿で声も同じで現れればすぐに結び付かないと。

 

「だとしたら、何でアタシらにも見えるんです?確か、天の神との取り決めの際に姿が見えないようにしてたんじゃ……?」

「それに、どうしてゆーゆの姿をしてるのかな~?趣味?」

「だ~れが好き好んでこんな姿になるか!この姿は神樹が我をこの世界へ召喚する際に用意したものじゃ!断じて我の趣味ではない!!」

 

園子の質問に黒巫女の少女―――ヤタガラスは怒りを露に叫ぶ。どうやら今の友奈似の姿はヤタガラス自身の意思ではないようである。

 

「まあまあ。落ち着いてください、ヤタガラス様」

「一先ずの様付けは不快じゃ。さんやちゃん付けの方がよっぽどマシじゃ、上里ひなた」

 

ひなたと呼ばれた白巫女の少女は宥めにかかるも、ヤタガラスは様付けに対して不機嫌そうに告げる。

 

「あれあれ~?神様って普通、様付けされるのが良いんじゃないの~?」

「確かに敬う意味で様付けを求めることはあるが、神でも様付けは一種の侮辱ともなる。人間どもにも嫌味の意味で様付けする輩がおるじゃろ?」

 

ヤタガラスのその言い分に一同は思わず納得してしまう。

 

「ま、敬意さえ払えれば呼び方なんぞどうでも良い。じゃからちゃんと我を敬えよ?」

「分かったよ、くろゆー」

「いきなりあだ名か……別に構わんがの」

 

黒い友奈姿だから“くろゆー”と呼ばれたヤタガラスは呆れながらも、特に気にした様子もなくあっさり受け入れる。

そしてヤタガラスは、端的に状況を伝えた。

 

「主らに理解しやすく言えば、この世界は夢の世界みたいなものじゃ。じゃから我の姿が郡千晶以外にも見えるようになっとるし、西暦の人間もこの場におるのじゃ」

「夢の世界……?」

「なるほどなるほど~。何となく分かったよ~」

「……そういうことか。概ね理解した」

「え?二人はマジで理解したのか?アタシはさっぱりだってのに!」

 

園子と千晶が理解したことで、ヤタガラスの言葉に首を傾げていた銀はショックを受ける。

 

「そういえば自己紹介がまだだったね~。私は乃木園子だよ~」

「言われてみれば確かに……アタシは三ノ輪銀だ。気軽に銀と呼んでくれていいぜ?」

「郡千晶だ。状況的に長い付き合いになりそうだからな。よろしく頼む」

「私は上里ひなたと言います。これからよろしくお願いしますね」

 

互いにあっさりと自己紹介を済ませた一同は、話を本筋へと戻していく。

 

「結城友奈さん達は今、樹海の中で交戦中です」

「交戦……」

「心配は無用じゃ。この世界では満開は使えんし、そもそも満開なしでも遅れを取りはせん。バリアの方は有限ではあるが健在じゃから、しばらくすればこの部屋に戻ってくるわい」

 

ひなたが友奈達の状況を伝えたことで園子の表情が曇るも、ヤタガラスはその心配は杞憂だと伝える。

 

「じゃあ、アタシらは何で召喚されなかったんスか?」

「その辺の説明は全員揃ってからじゃ。基本は上里ひなたが教えるが、我も特別に説明してやるぞ」

 

なんともおざなりな対応に銀は肩を落とすが、詰め寄らない辺り受け入れているようである。

 

「オーケー、分かったよ。それじゃこーりん、また食べさせて~」

「この流れでおねだりするのもどうかと思うが……」

 

千晶はそう言って呆れながらも、食べかけであったぼた餅を園子の口に運んでいく。園子も園子で嬉しそうな表情でそのぼた餅を口に入れる。

 

「ああ。若葉ちゃんの面影がある顔であんな幸せそうな表情……とっても眼福です」

「せっかくじゃから我もぼた餅を食うとするか」

「……まあ、別にいいかな。一箱残っていれば須美も文句を言わないだろうし」

 

なんとも揺る~い空気となって少しして、友奈達は確かにこの部室へと戻ってきた。

 

「あっ、戻ってきた……って、ええ!?」

「友奈ちゃん?どうし……友奈ちゃんがもう一人!?」

「いやいやいや!あの友奈そっくりの子は黒髪でしょ!?確かに顔は友奈に瓜二つだけど!」

「ま、まさかドッペルゲンガー……きゅう」

「ああ!?お姉ちゃんが倒れた!!」

 

戻ってきて早々、友奈そっくりとなっているヤタガラスを見たことで全員が軽くパニックを起こしていた。風に至っては気絶する始末である。

 

「皆お帰り~」

「全員無事に戻ってきて良かったよ」

「ホントホント。怪我一つないようで安心したよ」

 

そんな状況で千晶達は呑気そうな雰囲気で友奈達の帰還を受け入れている。それに対してヤタガラスは不機嫌そうな表情だ。それもある意味仕方なしだが。

ヤタガラスは不機嫌の原因である風に近づくと、胸ぐらを掴んで顔をおもいっきり叩いた。

 

「ぶへっ!?」

「我を幽霊とまた同一視するとはいい度胸だのう、犬吠埼風。どうやらあの腹痛の祟りではまだ懲りてなかったようだの」

 

強引に起こされた風はヤタガラスを見て再び意識が飛びかけるも、何故か本能が気絶してはいけないと警鐘を鳴らしていたので必死に意識を繋ぎ止める。それが功を奏してか、再び気絶することは避けられた。

 

「どどど、どちら様でしょうか……?ドッペルゲンガーでないのなら、あなた様は一体……?」

「我はヤタガラス。かつて“導きの神”と呼ばれた、位の高い神の一柱よ」

 

ヤタガラスがあっさりと自己紹介した瞬間、友奈達は目が飛び出るのではないかと疑う程に驚いた表情となった。

 

「ええ!?こーりんくんが言っていたあの神様なの!?」

「確かヤタガラスは三本脚の鴉の姿よね!?何で友奈ちゃんそっくりなの!?」

「ぎゃー!祟られる!殺されるー!?何卒!何卒、お許しをー!!」

「ああ!?お姉ちゃんがジャンプして三回転半してから綺麗に土下座した!?」

「なにその無駄にすごい土下座!?てかそれ、土下座に入るの!?」

「そもそもなぜ、友奈ちゃんと同じ姿になったぁあああああああ!?返答次第では、神であろうと容赦はしないわよ!?」

「我に文句を言うでない!文句なら神樹に言え!神樹に!!」

「おのれ神樹ぅ!!」

 

ヤタガラスの名乗りに友奈達は大混乱。風は無駄にすごい土下座をかますし、美森は神樹に殺気を飛ばしたりと、もう無茶苦茶である。

そんなこんなで宥め落ち着かせての五分後。

 

「それでは、改めて状況を説明しますね」

 

互いの自己紹介も終えた一同は、今取り巻いているこの状況を把握する為に、事情を把握しているひなたとヤタガラスから詳しい詳細を聞こうとしていた。

 

「先ずはこの世界ですが……ここは神樹様が造った特別な世界で、私達は神樹様の中にいるのです」

「召喚されたタイミングは、犬吠埼風が黒板を叩いたところじゃ。あの時、一瞬視界が白く染まったじゃろ?」

 

ヤタガラスのその言葉に確かにと全員が頷く。

 

「次に何故呼ばれたかについてじゃが……」

「実は、神樹様の中にいる神の一体が嵐のように暴れ回っているのです」

「そやつは元々は天の側に属しておった神じゃ。全人類の抹殺に対して異を唱えたら、裏切り扱いで追い出されたがの」

 

どうやら神樹の内部で問題が起きたから、今回の事態になったようだ。しかし、それよりも一同はヤタガラスの言葉に引っ掛かった。

 

「異を唱えたらって……天の神でも反対意見はあったってことなの?」

「左様。そもそも神罰は多くの神と協議して行うものじゃ。大地震や大嵐が良い例じゃ」

 

神の力は理を書き換えられる程に強大だ。だからこそ、安易に振るうべきではないというのが神々における共通の認識とも言える。

 

「じゃが、天の連中はそれを独断で敢行したのじゃ。何度罰を与えても同じことをするから、我慢出来ずに全人類抹殺に動いたのじゃ。地震や嵐は反対していた土地神の力じゃから、自身の眷族を大量に生み出して抹殺を図った」

 

そう口にするヤタガラスの表情は駄々っ子に対して向けるそれだ。それを見たひなたと勇者部一同は、何とも言えない表情となる。

 

「それも反対意見を出した神々を追い出した上で、だからの。我としても理解はできても呆れるしかなかった」

「うわぁ……」

「典型的な独裁政権……」

 

天の神が独裁者の如き行動を取っていたことに、犬吠埼姉妹は揃ってドン引きしている。まあ、神の事情を知ればこうなっても仕方ないかもしれないが。

 

「それにしても意外ね。天の神の中に異を唱える神がいたなんてね」

「あって当然じゃ。神の領域に足を踏み入れると言っても、はじっこのはじっこ……踏み込むには程遠い手前の位置よ」

「それだけ聞くと、心が狭いと感じますね……」

 

複雑そうな表情で呟く銀に、全員が同意するように頷く。例えるなら、手前でうろうろしているのを不法侵入と見なして暴行を加えるようなものだ。

 

「加えて神罰である自然災害に屈しなくなっておった……故に自然災害以外の神罰を与えようとしたのじゃが、眷族による神罰は自然の調和を乱す行為だと多くの神々が反対した」

「自然の調和を乱す?」

 

ヤタガラスのその言葉に友奈が首を傾げる。バーテックスを生み出す行為のどこに自然の調和を乱す要素があるのかと。

 

「左様。眷族の創造は神の領域。それを目の当たりにした人類は間違いなく明確にソコを目指すようになる。故の反対じゃったのじゃが、天の連中は全人類を抹殺するから問題ないと抜かしおった。その人間も自然の一部であるにも関わらずにの」

 

あまりにも身勝手とも言える天の神の考えに、千晶達は言葉を失ってしまう。いくら人類が嫌いとはいえ、他の神の反対を無視してそれを敢行する等と。

 

「中立に位置する神々も粛清そのものは賛成じゃったが、その方法だけが反対じゃった。中には人類独自の可能性として見守るべきという神もおって協議は難航しとった」

「それに天の神が痺れを切らし、強行に走ったと」

 

引き継ぐように告げた千晶に、ヤタガラスは頷く。

 

「本当に神様にも、色々と事情があるのね……」

「当然よ。神が絶対的に正しいという考えは傲慢そのものよ。実際、あまりに傲慢で横暴じゃったから天の側でも離反する神が相次いだからの」

 

その最たる事案が領域の乗っ取りと理の書き換えだ。特に理の書き換えは中立の神々でさえ怒りを覚え、天の神から距離を取った。

今残ってる天の側の神は人類抹殺を絶対とする過激派のみ。人と神の交わした協定が無ければ、今頃はバーテックスとの大戦争となっていただろう。

 

「と、話がだいぶ逸れたの。この辺りの話は、また別の機会とするかの」

「一度、休憩しましょう。私も疲れてしまいましたので」

 

ヤタガラスのその言葉に便乗するように告げたひなたの提案に、精神的に疲れた全員が頷くのであった。

 

 

 




「なら我も休憩するかの」
パチンッ。ボン!
「うわ!?いきなりデカイサンチョが現れた!?」
「我の力で作ったサンチョ布団じゃ。もちろん寝心地最高のフカフカ仕様じゃ」
「本当にフカフカね……」
「神様って本当に何でもありなのね……」
「サンチョのフカフカ布団!?くろゆー、私に頂戴!」
「やらん。しつこく迫るようなら、二度とサンチョに触れん祟りをかけるぞ」
「二度とサンチョに触れない祟り!?もう欲しがらないのでそれだけはご勘弁を!」
「園子さんが土下座した……そんなに嫌なんだ」
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