彼は勇者ではない   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


隠し芸。それは混乱の始まり

神樹の世界に召喚された翌日。千晶達はいつも通り部室に集まっていた。

 

「お姉ちゃん、逃げたインコの捜索依頼が来てるよー?」

「メールで、落ち葉掃きの依頼も来ています」

 

樹と美森は勇者部に来た依頼の内容を伝えると、夏凜と銀、風の三人は揃って溜め息を吐いた。

 

「勇者が落ち葉掃きか……はぁ~」

「本当にいつも通りの日常ッスね……ハハ」

「そうよねぇ。別世界なのに、アタシ達のよく知る日常よね……」

「なら四六時中、食事する暇もなくバーテックスと戦えるように我が神樹に取り繕ってやろうか?」

「いえ結構です!四六時中戦闘だなんて、女子力がすぐに枯渇してしまいますので!!」

 

讃州中学の制服ではない、別の学校の制服を着たヤタガラスの恐ろしい提案に、風は慌てた表情で必死に断った。銀と夏凜でさえ同意するようにコクコクと頷いている。

そんな三人の反応に、ヤタガラスは笑いを堪えるようにクツクツと唸る。

 

「冗談じゃ。そんな事をすれば、あっという間に潰れるのは目に見えとるからの」

「ええ。この当たり前の日常が、精神を削らずにリラックスして戦えますからね」

 

ヤタガラスとひなたの言葉に、風達三人は安堵したように息を吐いた。

 

「神様も冗談を言うんだね~。意外と楽しんでる?」

「そうじゃのう……こうして多くの者と会話するのは本当に久方ぶりじゃからな。その点で言えば、神樹は良い仕事をしたと言えるの」

 

園子の質問にそう答え、ヤタガラスは沁々といった表情で頷く。

 

「そういえばヒナちゃんは大丈夫?お友達と離ればなれで、寂しくない?」

「平気です。そのうち逢えると信じてますから」

 

そんな中で友奈が心配げな表情でひなたに独りで寂しくないか聞く。

互いによく知る人物もおらず、未来に一人で来たひなたを心配しての気遣いであったが、当の本人は笑顔で大丈夫だと告げる。

 

「ひなたさんにも、大切な人がいるんですね」

「ええ、とても大切な人が。今はそばにいませんが心はちゃんと繋がっています」

「心は常に寄り添ってるというやつか……」

「ウンウン。心の繋がりは大事だよね~。とても素敵な発言だし、メモしてこ~っと♪」

 

樹の言葉に対して詩的な表現とも言えるひなたの返答に千晶は苦笑する。園子は同意するように頷きつつ、いつものメモ帳を取り出して先程のひなたの言葉を書き込んでいく。それに対し、ひなたは首を傾げた。

 

「園子さん、言葉を書き留めておくんですか?」

「そーだよ。いつか、ひなタンの想い人に遭遇したら恋物語でも書くかもしれないから~」

「書いて下さい。是非、書きましょう。ええ、それが賢明です」

 

園子がひなたと若葉の恋愛小説を書くかもしれないという言葉に、ひなたは絶対に書いて下さいと目を若干輝かせて園子に詰め寄る。

やはり、ひなたは若葉への愛情が本当に深い人物である。

 

「な、なんか時々、この人が怖い……」

「やっぱり須美と同じ気配を感じる……」

 

そんなひなたの態度に風は若干恐怖を感じ、銀は改めて美森と同類なのではと小さな声で呟く。

その直後、友奈は思いついたような表情で口を開いた。

 

「あ、そうだっ!風先輩、ヒナちゃんとヤタちゃんの歓迎会をしませんか?」

「ああ、そういえば、色々あって忘れてたわ。烏丸の時は見えないこともあって流れちゃったけど、勇者部に入ったからには歓迎しなきゃね」

「歓迎歓迎、大歓迎ぇ~♪」

 

友奈の提案に、風は確かにそうだと言って快く了承する。園子も歌うように歓迎を連呼して賛成する。

 

「いえ、私はそんな……」

「謙虚する必要はないじゃろ。長い付き合いとなるし、親睦を深める意味でも損はないじゃろ」

「そーそー。ヤタちゃんの言う通りだよ!それに、勇者部のことも、色々知ってほしいし!」

 

ひなたは遠慮しようとするも、ヤタガラスの言葉と友奈の押しに悩ましげな表情となる。

それでもひなたはやっぱり断ろうと考えるも、そんな彼女の逃げ道は更に塞がれることとなる。

 

「だめだよ~?私達もしてもらったんだし~」

「あの時はかめやでうどんパーティーして祝われたからな」

「ちなみに代金は風先輩の奢りだったから、後に軽くなった財布に嘆いていたが」

「こらぁ郡!余計なことを言うんじゃない!!」

 

千晶のオチと言える発言に、風は怒り気味で噛み付く。そんな歓迎ムード一色に対し、ひなたは観念したように折れた。

 

「……そこまで言うのなら仕方ありませんね。それに、園子さんの顔で言われたら断れませんし」

「なんでよ」

 

ひなたの言葉に夏凜がツッコミを入れる。何も知らない者からすれば、なぜ園子の顔で言われたら断れないのかと疑問に思うのは当然である。

 

「中身はまるで違いますが、この声、この顔があの人を思い出させるのです。ほふぅ……」

「確かに中身は違うの。乃木若葉はガチガチの堅物じゃったから、天然ユルユルの乃木園子とは大違いじゃ」

「そ、そうなんだ……」

 

ひなたの恍惚とした表情とヤタガラスの呆れ混じりの言葉に、樹は少し引き気味で呟く。同時に、どうなったらそんな真面目な人物から園子のような子孫が生まれるのかと、些細な疑問も感じた。

 

「ええ!キリッとした目付き!堂々とした佇まい!まさに西暦の風雲児と呼ぶに相応しいですからね!!」

「風雲児!?なんか凄そう!」

 

ひなたの熱弁に、銀が目を輝かせて食い付く。

 

「あーはいはい。その話は長くなりそうだから別の時にやんなさい」

 

風がバッサリと話の流れを断ち切り、お菓子や飲み物等の簡単な準備を済ませていった。

 

「それでは、皆の衆。グラスを持てぃ。上里ひなたと烏丸友奈ことヤタガラスの入部を祝して、かんぱーい!」

「「「「「「「「「かんぱーい(なのじゃ)!」」」」」」」」」

 

風の音頭に従い、全員が一斉にグラスを掲げて乾杯をした。

 

「うわーい、パーティーだ~!」

「新しく入ったのは、勇者じゃなくて神様と巫女だけどな」

「そうよね。勇者部なのに少し変よね」

 

開かれた歓迎会に園子はテンション高めに喜び、銀は苦笑しながらそう呟く。そんな銀の呟きに夏凜が同意してると、ヤタガラスは呆れたように息を吐いた。

 

「変なものか。元々、勇者と巫女は切っても切れぬ関係じゃからの」

「そうなの?」

「うむ。巫女は神から力と言伝てを授かり、それを元として動かす。勇者は巫女から託された神の力を振るい、巫女を守る……つまり、勇者は巫女の防人でもあるのじゃ」

 

ヤタガラスが語る巫女と勇者の関係に、勇者部一同は感心したように頷く。

 

「あり?アタシ達は巫女に会わずに勇者になってるんだけど?」

「それは明確な神の領地の中におるからじゃ。巫女の素養のあるものは勇者システムの傍に置かれとるし、それで多少の融通が効いとるのじゃ。神樹が自ら勇者を選べとるのはそういった事情じゃ」

 

結構重要な役割だった巫女に、勇者達は巫女という存在に興味を持つ。そして、今この場にはヤタガラスだけでなく巫女であるひなたもいる。つまり、質問し放題というわけだ。

 

「ひなたさん。カラスさんが仰った言伝てとは何でしょうか?」

「簡単に言えば神樹様の声ですね。声というよりは意識に伝達される感じですが」

「神は思念を飛ばすことで互いにやり取りするからの。ちなみに我は在り方から対話ができるだけで、本来は認識すらできんぞ」

 

樹の質問に対するひなたの答えとヤタガラスの補足により、神はテレパシーのような方法で伝えているのだと一同は何となく理解する。

 

「つまり、巫女はその思念……テレパシーを拾えるってこと?」

「うむ。これは巫女に限った話ではないがの。ごく稀に神が観測した未来を寝ている人間が拾うことがある。俗に言う予知夢じゃな」

「え?神様って未来も見えるの?」

「あくまで可能性じゃがの。その中で一番起こりうる可能性を巫女に届け、それを元にして勇者を動かし対処させるのじゃ。ちなみにこの世界じゃと、その可能性が少々お主らに混じることもあるから特に気にするでないぞ」

「昨日の変な夢はその可能性……という線もあるのか」

 

語るには少々刺激的な夢を見てしまった千晶は、ヤタガラスの言葉でその可能性を疑い、ああはならないようにと内心で気を引き締めた。

……実際は、僅かに目を泳がせた園子様が寝ている千晶の耳元でその内容を呟いただけだが。

 

「ね~ね~、隠し芸はないの~?」

「隠し芸……私達がですか!?」

「勇者部に新人さんが入る時には、必ずしなきゃいけないんだよ~?」

「ほう?それならまだ隠し芸をしておらぬ郡千晶、三ノ輪銀、乃木園子の三人もここで隠し芸を披露せればならぬの?」

 

園子はしれっと嘘をついて場を盛り上げようとしたが、ヤタガラスによって見事に巻き込まれてしまった。

 

「うげっ!?此方に飛び火してきた!」

「園子……」

「うひゃあ~、まさかの切り返し~!」

 

見事に巻き込まれた銀と千晶は非難の眼差しを向け、見事に跳ね返ってきた園子は涙目となって泣き言を洩らす。自業自得である。

 

「ちなみに我の隠し芸は……これじゃ」

 

ヤタガラスはそう言って指パッチン。一瞬で風がその場から消え去った。

 

「うわっ!?風が消えた!?」

「霊体化させて見えぬようにしただけよ。これが神隠しというやつじゃ」

『霊体化!?それってアタシ、幽霊になってるわよね!?』

「風先輩の声はちゃんと聞こえるのに、姿は全然見えないわ!」

「お姉ちゃーん!どこー!?」

『アタシはここよ!樹ぃ!』

 

樹が必死に姿が見えぬ風を探し、風は声を発して存在をアピールしたタイミングでヤタガラスは再び指パッチン。風の霊体化を解除した。

 

「お姉ちゃん!」

「樹!」

 

感動の再会を果たした姉妹はそのまま互いに抱き締めあい、互いの存在を確かめあう。

 

「なに、この茶番……」

「えっと……これ、力を使ってますよね?こんなに気軽に使って大丈夫なんです?」

「この程度なら問題なんぞない。仮初めの肉体を取り上げただけじゃからの」

 

姉妹の寸劇に夏凜がツッコミを入れ、美森が今しがた感じたことをヤタガラスにぶつける。対するヤタガラスは問題ないと涼しげな表情だ。

 

「それよりも他の者も早く隠し芸をせい。まさか、我にだけやらせて終わりなわけがないじゃろ?」

「さらりと逃げ道を塞がれた……」

「ミノさん。こーりん。こうなったらアレをやろう!」

 

ちゃっかり逃げ道を塞がれたことに銀が肩を落とすも、園子は打開策があるように強く宣言する。

 

「アレって?」

「もちろん、国防体操だよ!」

「ええ!?千晶はもちろん、アタシもさすがに踊れないぞ!?」

「大丈夫!こーりんならすぐに踊れるよ!ミノさんは歌手役で!」

「凄い無茶ぶりだな……」

 

そんなわけで国防体操を披露。千晶は若干遅れながらも踊りきり、銀も演歌口調で歌い終わったのだが……

 

「さらりと三人の精霊が出てきて三味線と笛、太鼓で音楽を奏でてましたね……」

「ちなみにこれの手品は?」

「我じゃ。前は供物の見返りじゃったが、今回は特別サービスで呼べるようにしといた」

「本当に良心的な神様ね……って!?牛鬼がまた精霊をかじってるわよ!」

「わー牛鬼!精霊を食べちゃダメだよー!!」

 

三味線の鳥天狗、太鼓の鈴鹿御前、笛の七人同行の助けもあって意外と好評で終わった。七人同行は勝手に出てきた牛鬼に頭をかじられてワタワタしたが。

 

「それじゃあ、ひなタン。隠し芸をどうぞ~」

「そう言われましても……強いていえば写真を撮るくらいしか……」

 

最後のトリとなったひなたは写真撮影。最初は自分以外の撮影だったが、二枚目は全員写っての撮影となった。

ちなみに園子様はちゃっかり千晶の腕を自身の腕に絡ませていました。相変わらず距離が近しいことで。

 

「ちなみになんですが、他の皆さんはどのような隠し芸や特技をお持ちでしょうか?」

「えっとね、樹ちゃんは歌と占いが得意!」

 

さらーりと後輩を無自覚で売り払った友奈だが、その流れで樹がひなたに対してタロット占いをするのだが……

 

「このタイミングで、樹名物の死神カード……」

「我、死ぬんでしょうか?」

「ち、違います違います!も、もう一枚……っ!」

 

樹は慌てて二枚目のカードを引くも、そのカードは戦車。最初のカードが死神だから、あまり良い予感がしない。

 

「戦車のカードの意味は確か……勝利に復讐、援軍だったか」

「はい。千晶さん、よくご存知ですね」

「まあ、園子の小説のネタ集めの一環で知っている程度だ」

「そ、そうなんだ……」

 

理由が理由だった為に樹は苦笑い。周りも似たり寄ったりの反応だ。

 

「それで、死神のカードの意味は?」

「し、死神は……終末……風前の灯火……全滅……ゲームオーバー……」

「全滅!?」

「ひょっとして援軍が来て全滅するの!?さすがに洒落にならないわよ!?」

 

まさかの最悪の展開で樹はもちろん、ひなたでさえ死んだ魚のような表情となってしまう。そんな不吉な占いに風を筆頭としてアワアワする一同の前で、ヤタガラスは呆れ気味に指摘した。

 

「阿呆。カードの順番は死神、戦車じゃろ。こういった占いは、基本はその順番で解釈するものじゃろ?」

「あ……」

「言われてみれば……確かに」

「この占いはヒナちゃんに対してだから……」

「ひなたさんに死神、戦車……もしかして、死地に援軍が来るということかしら?」

「「「「「…………」」」」」

 

美森のその推論に全員が無言。しかも二枚とも正位置だから逆の意味ではない。

 

「……もう一枚、引いてみますね」

「……お願いします」

 

樹は恐る恐るといった感じでカードをもう一枚引く。決然たる表情のひなたの前で引かれたカードは……

 

「恋人のカード……それも正位置……」

「なあ樹……このカードの意味は?」

「えっと……意味は誘惑と戦う、自分への信頼、情熱、絆、深い結びつき……」

「「「「「…………」」」」」

 

恋人のカードの意味を知り、質問した銀も含めて全員再び無言。

ひなたに対して死神、戦車、恋人のカード。これが意味することは……

 

「ひなたと深い結びつきがあるのは……」

「西暦時代の勇者達、よね……」

「つまり……これらのカードの意味は……」

「初代勇者は樹海……それもバーテックスの前に召喚されるって事になるな……」

「あああああっ!若葉ちゃん達が、バーテックスの前に召喚されるだなんてぇええええええ!!」

 

まさかの占いの結果にひなた発狂。千晶達でさえ、これは笑えない結果だ。

せっかく呼んだ援軍がバーテックスの前に出されるとか、あまりにも酷すぎる。

 

「そ、そもそも!勇者の召喚先が樹海になるって有り得るの!?」

「可能性は十分にあるの。造反神も、戦力の追加を黙って見るとは思えんしの」

「さらりと現実味が増した!」

「おのれ造反神!このような手で私と若葉ちゃんの感動の再会を邪魔しようとは!!」

 

そう叫ぶひなたの表情は怒りに染まっている。しかも背後に般若が包丁を磨いでいる。正直、かなり恐い光景だ。

 

「樹さん!」

「は、はい!?」

「ご協力、感謝します!この可能性を擂り潰す為に、今から滝行に言って力を高めて参ります!!」

 

ひなたはそう告げると、脇目も振らずに部室から出ていった。

 

「いやいやいや!待ちなさいよひなた!」

「気持ちは分かるけど、戻ってきなさい!!」

「ひなたさーん!待ってくださーい!!」

 

そんなひなたを風と夏凜、樹の三人が慌てて追いかけていく。部室には先代勇者組の三人と、千晶と友奈だけとなった。

 

「えっと……どうしようか?」

「巫女の力と勇者の召喚は関係あるのかしら……?」

「あるに決まっておろう。お主達は神樹との繋がりが強いから巫女なしでも呼べるが、基本は巫女の祈りでなければ呼べん。神樹の力にも左右されるがの」

「あ、そうなんすね」

 

ヤタガラスの言う神樹との繋がりとは、間違いなく満開と供物のことだろう。散華が治ってもお役目に巻き込まれるのは、もはや必然としか言えない。

 

「もしかして、私達が大人になってもお役目からは解放されないんじゃ……」

「それは分からん。素質が飛び抜けておれば、初老でも巫女として神託を受けれたからの。実際、太古にもそういう巫女がおったからの」

「それって~、西暦の歴史にあった邪馬台国の卑弥呼さんかな~?」

「そういう名前じゃったかの?そこまで興味があったわけじゃなかったから、よく覚えておらんわい」

「覚えてないのか……」

 

本気で首を傾げているヤタガラスに、千晶は嘆息混じりに呆れるしかない。卑弥呼はわりと歴史上有名な人物だと言うのに。そんな千晶の態度に、ヤタガラスはピクリと眉をつり上げた。

 

「今、我のことをバカにしたな?第一、そこの東郷美森のように勇者と巫女、両方の資質を持つ稀有な人間もおったのじゃぞ?中には男で神の力を授かった人間もおる。その人間は調子に乗った結果、見事に祟られたがの」

「え?東郷さんって巫女の力もあるの!?」

「え、ええ……あると言っても、おまけ程度だと思うのだけど……」

 

目を輝かせた友奈の質問に、美森はしどろもどろになりながらも頷く。

二年前に見たあのイメージ……複数の太陽に立ち向かう紫の鳥と黄色い獅子。そして、遠くに見える黒い鳥。

もし、巫女としての訓練も受けていれば、二人にその事を伝えていれば、また違った結末になったのではないかと美森は思う。

そんな考えが顔に浮かんでいる美森に対し、園子と銀は美森の頬を引っ張った。

 

「ふえっ!?そにょっち?ひぃん?」

「もうわっしー。気負いすぎだよ」

「そうだぞ、須美。知っても知らなくても、アタシらはきっと同じことをしたさ。須美や家族、そこに暮らす人達のためにな」

 

自身の考えていることをほぼ正確に読み取っている園子と銀の言葉に、美森は本当に二人にも敵わないなと思った。

 

「なに美談にしようとしとるのじゃ?実際は動く死体同然という事実に心折れて、自身を省みない捨て身の特攻をかましまくったじゃろ」

「確かに。特に園子は『どうせ死なないんだから、どうなってもいいんだよ』とふざけたことを宣ったし」

「「うぐっ!?」」

 

ヤタガラスと千晶の辛辣な言葉に、園子と銀は胸を押さえてその場で崩れ落ちた。特に園子は血を吐く幻覚が見える始末だ。

上里ひなたとヤタガラスの歓迎会は、かなり騒々しいものとなったのであった。

 

 

 




「ちなみに乃木園子は郡千晶からキツイビンタをもらう羽目となったぞ」
「あの時のこーりんは本気で怒ってたからね~。その後で抱き締められもしたし~」
「まるで私と東郷さんだね。私の場合はパンチだけど」
「否定はできないな。どっちも事情が事情とはいえ、あれには本気で頭にきたからな」
「「あ、あはは……」」
「笑っても誤魔化せないぞ」
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