彼は勇者ではない   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


アタックにバウンド。どちらも弾力がある

小学生組が召喚されて数日。本日も勇者部一同は部室に集まっていた。

 

「ねえねえ園ちゃんと園子ちゃん。ちょっとお話いいかな?」

「なになに、ゆーゆ~」

「すぅ~……すぅ~……」

 

友奈が園子ズに話しかけると、園子は笑顔で反応し園子(小)は気持ち良さそうに眠っていて無反応だった。

 

「ありゃ、園子ちゃん寝てるね」

「も~、そのっちったらしょうがないなぁ~」

「でも、凄く気持ちよさそうに寝ているから、起こさないでいてあげようかな」

「すぅ~……むにゃ……」

 

友奈はあまりにも気持ち良さそうに眠っている園子(小)に気を使ってそのまま見守る方向に舵を切るも、園子も園子(小)につられるように寝てしまった。

 

「あれー!?園ちゃんまで寝ちゃってる!?」

「もらい眠りしたようだな。園子は一度寝るとすぐに起きないから、少し放っておくしかないだろう」

「そっかー……じゃあ仕方ないかな?」

「いやいや!今すぐ起こしなさいよ!?」

 

千晶の言葉に友奈はそれならと半ば納得した表情をした直後、夏凜が今すぐ園子ズを起こせとツッコミを入れた。

そんな夏凜に対し、千晶は軽く嘆息しつつも顔を向けた。

 

「そうは言うが、今までの経験から起きないのは明白だぞ?しかも最悪の場合、抱き枕にされるしな」

「それ本当は起きてるんじゃないの!?」

 

千晶の抱き枕にされるという発言に、夏凜は本当は狸寝入りじゃないかという気持ちでツッコミを入れる。

こればかりは経験の差なので、夏凜が疑うのも仕方ないだろう。

 

「いえいえ。若葉ちゃんも私の膝でお昼寝した時、私に抱きついてきたので間違いはないかと」

「まさかの遺伝!?」

 

ひなたさらりと若葉の情報を明かしたことで、園子ズの睡眠気質は若葉譲りという疑惑が浮上した。

表面の性格は違えど、園子ズは間違いなく若葉の子孫ということなのだろう。

 

「むにゃ……亀の子たわし……」

「う~ん……亀のお父さんたわしはどこ~……」

「夢が繋がっているのか。これもこの世界特有の事象か?」

「やっぱり本当は起きてるでしょ!?この二人!」

 

夢が繋がったかのような園子ズの寝言に千晶はこの世界特有の事象かと疑い、夏凜は狸寝入り疑惑が再度浮上してツッコミを入れる。

 

「よし!アタシは決めたぞ!!」

 

そんな中、真剣な表情で何かを考えていた銀(小)は決意に満ちた表情で言葉を力強く発した。

 

「神樹館六年の三ノ輪銀はこれより、霊峰連なる山脈へのアタックを仕掛ける!!うおおおおおーーー!!」

 

銀(小)は力強く宣言すると、美森へと突撃していった。

 

「きゃっ!?銀ちゃん、急にどうしたの?」

 

急に自身の胸へと顔を沈めた銀(小)の行動に美森が困惑する中、銀(小)は顔を埋めたまま小刻みに振っていく。

 

「これが真のチョモランマ!須美の胸はこれと比べたらK2だ……!」

「銀ちゃん……?」

 

銀(小)のただならぬ不穏な発言に美森が首を傾げていると、美森の胸から離れた銀(小)は寝ている園子へとアタックした。

 

「んん~……?」

「これが二年後の園子……!これは富士山だ!」

 

銀(小)に抱きつかれても目を覚まさない園子に構わず、銀(小)は園子の胸を富士山と例えて堪能していく。

 

「銀ちゃん、急にどうしたんだろう……?」

「……さあな」

 

その光景を友奈は不思議そうに首を傾げ、千晶はかなり微妙な話題だった為にコメントを控えた。

下手したら、その感触を思い出しかねないから。

 

「続いて……!」

 

堪能し終えた銀(小)は園子から離れると、今度は風へと突撃した。

 

「うわっ!?ちょっ、銀!?」

「風先輩も中々……!須美にも東郷さんにも負けぬ山だ!!」

 

銀(小)のその叫びに、樹がどこか恨めしそうな目付きで風と銀(小)を見つめる。そんな樹の態度に気付くことなく、銀(小)は風から離れ、ひなたへと突撃した。

 

「ひゃっ!?」

「ひなたさんはマッターホルンもかくや!残すはK2のみ……!」

 

銀(小)は最後に須美に突撃しようと狙いを定めるも、それを阻む者が立ち塞がった。

 

「!?まさかここで日和山が立ちはだかるとは……!」

「誰が日和山だ!せめて高尾山と言え!後、まだ数年の余地があるんだぞ!?」

 

銀(小)のあまりにも酷い例えに、止めに入った銀が怒りを露にする。まだまだ成長期だから、二つの山の成長を銀はまだ諦めていない。美森ほどとは言わなくとも、園子くらいには成長する可能性を捨てきってはいなかった。

 

「ちょっと銀!?何で急にこんな事を始めたのよ!?ふざけているのなら大概にしなさい!!」

 

銀(小)の突然の行動に固まっていた須美が我に返ったように、如何にも怒っます!といった表情で銀(小)を叱責する。すると、銀(小)は苦渋に満ちた表情で言葉を発した。

 

「須美、アタシはふざけてなんかいない。だって……未来のアタシの山は噴火しなかったんだぞ!?ならせめて、聖なる山脈を登頂してもいいじゃないか!!」

 

銀(小)の魂の叫びに寝ている園子ズと興味ゼロで我関せずのヤタガラス以外は何とも言えない表情となり、怒っていた須美でさえ気まずそうに視線を逸らした。銀でさえ、現実逃避のように自身の胸に手を当てている始末だ。

 

「しかも、その成長も精霊が手助けした結果だし!須美と園子は順調に成長したのに、何でアタシだけは成長しなかったんだよ!?」

「そ、それは……」

 

銀(小)のその悲痛とも言える叫びに、須美は完全に口ごもってしまう。

ちなみに千晶は既に部室から立ち去っている。あまりにも気まずく、反応に困る内容だったので。ついでに園子様が寝惚けて抱きついたので、そのまま一緒に部室から退場しています。

 

「で、でも!胸なんてあっても肩が凝るだけ……」

「持ってる者はいつもそう言う。持たざぬ者の嘆きを無視して!」

 

須美は何とか反論しようとするも、銀(小)は持たざぬ者の嘆きを代弁するように告げる。

実際、瞳から光を消している樹は同意するようにコクコクと頷いている。彼女の哀しみが良く分かる光景である。

 

「胸の大きさは女子力、包容力の現れ……つまり、女子力イコール胸の大きさでもある!!」

「それは無関係じゃ。単に遺伝や肉体の都合じゃろ」

 

そんな銀(小)の叫びを、今まで我関せずだったヤタガラスがバッサリと否定した。

当然、銀(小)は真正面から否定したヤタガラスにその矛先を向けた。

 

「何でっすか!?神様だって胸が乏しい身体なのに!!」

「この身体は神樹が用意したものじゃからな。我の趣味でないのは確かじゃが、もう気にしておらん」

「そう言えば、ヤタガラス様の伝承では実は人間で、皇后を何度も輩出した一族であるとありましたが……」

「それは半分間違いじゃ。実際は我の加護を得たことがある人間の一族を、皇族が何度も皇后として迎え入れただけよ。我の加護を得ようという打算での」

 

何とも泥々とした事実に、その場にいた一同は何とも言えない表情となった。

歴史の言い伝えと実際の出来事は違う可能性があるのは否定できないが、こうも粗か様だと複雑な気分となってしまう。

 

「つまり、実際に人の姿になられた事はないのですね?」

「いや?数える程度じゃが、人間の姿で対面したことはあるぞ?神に相応しい、威厳と美貌を兼ね備えた姿でな」

「何ですって!?つまり、胸の大きさも……!」

「自由自在じゃ」

「やっぱり神様は理不尽だ!アタシ達の苦悩を、こうも真正面から喧嘩を売ってくるのだから!!」

 

明らかに銀(小)の反応を楽しんでいるヤタガラスに、銀が血涙を流さんばかりの形相で睨み付ける。

そんなヤタガラスに、ひなたがふと気になったことを問い質した。

 

「それなら、どうして三本脚の鴉のお姿で千晶さんと出会ったのですか?人間の姿にもなれるなら、そちらの方が都合が良いのでは?」

「阿呆。神の現界は常に力を行使し続ける。現実での姿は一番力を使わずに済む状態じゃ」

「もしかして、神樹様も……?」

「何を当たり前のことを聞いておる?天の神が直接出向かないのも、力の消耗を極力抑える為じゃ」

 

美森の疑問にヤタガラスは呆れ気味に肯定の意を示す。神は実体化するだけでも相応の力を使うのだ。天の神が自らの手ではなくバーテックスを創り出して人間を滅ぼそうとしたのも、その力の消耗の激しさが最大の理由なのだ。

 

「実際、天の神の行為は本来はルール違反じゃ。じゃから現界すれば数時間で力が枯渇する。現在の領域等を鑑みれば幾ばくかは伸びるじゃろうが……強行策に出れば、間違いなく永い眠りにつくであろうな。逆にルールに基づけば力の消費は抑えられるがの」

「もしかして、天の神は人間滅ぼした後も主導権握る気満々?」

「じゃろうな。人間を滅ぼしたら元に戻す考慮はすると宣った辺り、バーテックスの世界を継続する気は満々じゃろうな」

 

ヤタガラスが銀の疑問にも肯定した事で、一同はうんざりしたような顔となる。友奈でさえ苦笑いしている始末だ。

多くの神の意見を無視して強行した挙げ句、その後も独裁政治を続けようとする思惑が見え見えとなれば誰だってそうなる。

 

「本当にロクでもない神様ね……」

 

風のそのうんざりしたような呟きに、全員が同意するように頷くのであった。

 

「むにゃむにゃ……こーりん先輩が亀のお父さんたわしを保護してた……」

 

ちなみに園子(小)はこの状況でもずっと眠っていた。

 

「亀のお母さんたわしも一緒……親子三たわしが揃って良かったよ……」

「たわし家族だったのか……」

 

同じく園子様も、屋上に逃げていた千晶の膝を枕にして眠っていた。

 

 

 

――――――

 

 

 

さらに数日が経ち、いつになくひなたが上機嫌だった。

 

「皆さんの活躍の~♪おかげで~♪新しい援軍の勇者達を呼べるんです~♪」

「もの凄く上機嫌ですね。ひなたさん」

「上機嫌で当然じゃ。なんせ初代勇者……乃木若葉らが来るのじゃからな」

 

ヤタガラスの呆れたようなその言葉に、一同は納得した。何せ、ひなたが待ちに待った人達がついに来るのだ。嬉しくないわけがない。

 

「えっと……大丈夫なの?例の樹の占いが……」

「ええ。ですから、今日の為に滝行や座禅をしてずっと高めていました!造反神の妨害を真正面から打ち破るために!!」

 

ひなたとヤタガラスの歓迎会をした時の占いの結果から心配そうにする夏凜に、ひなたは燃え盛る炎を幻視する程に気合いの入った声で答える。前例があるだけに、その言葉には説得力があった。

 

「初代勇者……確か乃木と郡のご先祖様ね」

「ええ。お二人以外も呼ばれますから、全員で五人ですよ!」

「五人ですか。これは戦力も大幅に上昇しますね」

 

新しい勇者が五人も来ることに、須美が期待の眼差しで笑みを浮かべる。

 

「ついでに結城友奈に瓜二つの勇者もおるぞ。見た目だけでなく性格もじゃ」

「私に瓜二つ!?凄く気になる!」

 

ヤタガラスが友奈と瓜二つの勇者がいると告げると、友奈は驚きつつも須美と同じく期待の眼差しとなる。

 

「部員も倍になって、あたしゃそろそろ引退かしら?あとは若い者にまかせて、縁側ライフを……」

「ハイ!三ノ輪銀ズ、頑張らせてもらいます!」

「風先輩は、煎餅とお茶で寛いでいて下さい」

「違うでしょー銀ズ!そこはまだまだヤウなヤングだから頑張ってでしょ!?」

 

風の冗談の引退発言にノリで返した銀ズ。風はまだまだ現役と反論するも、ヤウなヤングとか出ている時点で地味にヤバいことに気付いていない。

 

「ひなタン、くろゆーは私のご先祖様は堅物と言ってたけど、こーりんのご先祖様含めて、実際はどんな人なのかな~」

「若葉ちゃんは本当に西暦の風雲児と呼ぶに相応しい人物です!千景さんは少し取っ付きにくいところはありますが、根は優しい人ですよ」

「相変わらずの色眼鏡じゃな……」

 

園子の質問に対するひなたの返しに、ヤタガラスはまたしても呆れたように呟く。

そんなヤタガラスの呟きに、銀(小)が疑問を露に話しかけた。

 

「色眼鏡……じゃあ、カラスさんから見て二人はどうなんです?」

「乃木若葉は確かに勇者の肩書きに合う風貌じゃが、思考が良くも悪くも真っ直ぐじゃな。郡千景は人付き合いが苦手じゃが、何だかんだで仲間思いじゃ」

 

ヤタガラスから見た若葉と千景の評価に、銀(小)はあれ?と首を傾げる。

 

「色眼鏡って……もしかして西暦の風雲児様だけ?」

「乃木若葉だけじゃな。上里ひなたの乃木若葉に対する想いは、愛と呼べる域じゃからの。実際、八割は誇張されとるしの」

「誇張ではありません!若葉ちゃんの素晴らしさは皆さんの想像の百倍……いえ、それでも到底及ばないのですから!!何せ、容姿端麗。文武両道。弱きを助ける大英雄なのですから!!」

「確かに誇張されていそうですね……」

 

ヤタガラスに反論しつつ若葉上げをするひなたを見て、樹はヤタガラスの言葉が正解そうだと納得した。

 

「それで?園子と千晶の御先祖様と友奈に瓜二つの勇者以外の二人はどんな人なのかしら?」

「うふふ……西暦ですから、実は外国人も……アメリカから来た勇者とかもいたりして」

 

ひなたがからかうような表情で夏凜の質問にそう返した瞬間、美森と須美から殺気が放たれた。

 

「米兵!?」

「須美ちゃん!竹槍よ!」

「ありがとうございます!皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ……!!」

 

美森と須美は竹槍を手に持つと、今にも突撃しそうな体勢を取る。本当にその竹槍、どこから取り出したのかは謎である。ついでに美森は額に日の丸がついたハチマキを既に巻き付けている。

 

「あんたらホント落ち着いて。それとその竹槍下ろしなさい」

「す、すみません。外国人は冗談ですよ。後の二人は姉妹のように仲良しな日本人ですので」

 

須美が加わったことでいつもの発作が悪化している美森を風は宥め、ひなたも外国人云々は冗談と言って美森と須美を宥めにかかる。

その介あって美森と須美は落ち着きを取り戻し、竹槍を掃除用具が入っているロッカーへとしまった。

 

「まさか東郷さん達がここまで反応するとは」

「東郷のトリッキーさには、その内慣れるわ。私もはじめはメッセージのやり取りで驚いたし」

「須美の取扱説明書は分厚いからな」

「その分厚さは、この二年でさらに倍になったけどな」

 

特に友奈関連でその頁が増えたと、銀は内心で付け加える。

何せ、友奈への愛情は上限なしで常に突破し続けているのだ。前に美森の実家に遊びに行った時、『友奈ちゃんアルバム No.35』という写真ファイルをベッドの下から見つけたのだから。

あと、中身は見ていない。底知れぬ恐怖を感じたから。

 

「それでは、そろそろ呼びますね~」

 

ひなたはそう言って祈るように、合掌するように手を組んで瞑想する。その表情は真剣そのものだ。

 

「わー、般若さんが見えるんよ~」

「本当に気合いが入ってるわね……」

「これは本当に樹の占いの結果を覆せるかもしれないな……」

 

思わず後退りしてしまう程に気合いが入っているひなたの姿に、園子(小)、風、千晶の三人が少し引き攣った表情で呟く。もしかしたら小学生組のように乱暴に召喚されるかもしれない。

しかし、いくら待てど初代勇者達は部室に召喚されなかった。

 

「おかしいですね……もう来てもよい筈なのですが」

 

ひなたも祈りの体勢こそ崩していないものの、目を開けてまだ召喚されないことに首を傾げている。

 

「風雲児だから、サプライズでわざと遅れているのかな?」

「サプライズ~♪」

「さすが西暦の風雲児……アタシ達の心を分かってらっしゃる!」

 

友奈が驚かせる為にわざと遅れているのかもと憶測を口にするも、樹の占いのこともあって誰も同意できずにいる。同意してるのは樹の占いを知らない小学生組だけである。

 

「……マジか」

 

そんな中、宙を見つめていたヤタガラスがどこか引き攣った表情で呟いていた。

その呟きに一同はヤタガラスに説明を求めるように視線を向けると、ヤタガラスはどこか困ったような表情で今しがた判明した事実を告げた。

 

「妙に遅いから少し探ったのじゃが……どうやら造反神が全力で妨害して、初代勇者達を弾き飛ばしたみたいじゃ」

「全力で妨害!?」

「しかも弾き飛ばした!?」

 

造反神が今回の召喚を全力で妨害していたという事実に、夏凜と風が驚愕の表情で叫ぶ。他の面々も声こそ出さなかったが、驚いたような表情となる。

そんな一同に、ヤタガラスは詳細な情報を話した。

 

「厳密にはいくつもの妨害を突き破っていたようでの……最後の妨害に造反神が全力を注いだ結果、樹海の中へと隕石の如く放り出されたようじゃな」

「放り出された!?まさか若葉ちゃん達は……!?」

 

その最悪を裏付けるように樹海化警報のアラームが鳴り響いた。

友奈達は慌ててスマホの画面を確認すると、バーテックスがいることを示す赤いエリアのほぼ中央に五つの色違いのマークが表示されていた。

 

「うわ!?バーテックスの群れのど真ん中じゃない!?」

「ああああああっ!?まさかバーテックスの正面ではなく、群れの中で召喚されるだなんてぇええええっ!?」

 

歓迎会の樹の占い通りの結果となった事に、ひなたは頭を振りかぶって取り乱した。本当に御愁傷様である。

 

「我が妹ながら恐ろしいわ……まさに的中率、百パーセント」

「こんな的中率、嬉しくないよ~」

 

見事に的中したことに風は戦慄し、樹は嬉しくないと告げる。

何せ不幸で不吉な占いが当たってしまったのだ。嬉しくないのは当然である。

 

「早く向かわないとマジでヤバいわよ!バーテックスに包囲されているとか、明らかに不利じゃない!?」

 

焦った表情で夏凜が指摘する通り、右も左も分からない状態でバーテックスの集団の中心に立たされているのだ。しかも場所も離れているので、急いで合流しないとそのまま数の暴力で敗北……は十分にあり得た。

誰もが焦ったように急いで樹海へと赴こうとする中、いつの間にか瞑想していたヤタガラスが唐突に口を開いた。

 

「此度の主らの樹海への召喚に少し細工をした。部室の扉を潜れば、乃木若葉らがいる場所の遥か頭上へと召喚されるぞ」

「烏丸、ナイスよ!!」

 

本当に良い仕事をしてくれたヤタガラスに、風が親指を立てて称賛する。これで、すぐに彼女達と合流できるのだから。

 

「それじゃ、早速向かうわよ!」

「私とこーりん先輩のご先祖様に会うの、楽しみだな~」

「なに呑気なことを言ってるのよそのっち!国防開始!!西暦の勇者達を救援・合流し、援護します!!」

「お願いします皆さん!若葉ちゃん達を……私が育てた若葉ちゃんとみんなを宜しくお願いします!!」

 

若干不穏な台詞が混ざったひなたの言葉に友奈達は素直に頷くと、そのまま部室の扉を潜って樹海へと降り立つのであった。

 

 

 




「ねえねえひなタン。私が育てたってどういう意味かな~?」
「言葉通りの意味です。耳掃除に食事の用意、私が管理している靴下の履き替え……ありとあらゆる面で若葉ちゃんの世話をし続けたのですから」
「何でだろう……その言葉を聞くと物凄く不穏な気配を感じる……」
「むしろ将来、独り立ちした時に苦労しそうな彼女に同情しそうなんだが」
「独り立ちなんてしませんよ。若葉ちゃんは、ずっと私と一緒なんですから」
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