この日、千晶は大橋市で買い物をしていた。
「取り敢えず、この問題集でいいか」
千晶は手に持っている問題集を見比べ終えると、選んだ方のを足下に置いてあった買い物籠の中に入れ、選ばなかった方を元の本棚へと戻す。買い物籠には問題集だけでなく参考書も入っている。
世話役で世間一般から離れた生活をしているとはいえ、千晶は十四歳。まだまだ先の人生が長い若者である。
なので、勉学を疎かにせずにしっかりと励んでいる。勉学に励む場所があの部屋なので、必然的に園子と銀も勉強している。園子は主に漢字と英語の暗記だが。
ちなみに銀は勉強が苦手だが、暇なのでやっているという感じだ。右手が自由なので読み書きできるのは良いのか悪いのか分からないと文字で呟いていたが。
「園子はともかく、銀は本当に勉強が苦手だからな。ああいう生活でなければ、今頃涙目で勉強していただろうな」
過去、たった数問で根を上げていた銀の姿を思い出しながら千晶は苦笑する。その問題を千晶と園子はさらりと解いていたので、銀は恨めしげな目をして二人を睨んだのも悪くない思い出だ。
「そうだ。最新のファッション雑誌も買っておくか。園子が妄想のネタとして欲しがっていたしな」
園子は小説を書くのが趣味であり、銀と会話する為の音声入力できる端末を利用して恋愛小説を書き込んでいる。
ただ、口に発しているので内容は銀のタブレットにだだ漏れとなるので、その間はタブレットの電源を落としてその赤裸々な内容をシャットアウトしている。
まあ、その恋愛小説の感想を求められるので意味がないのだが。
ちなみに千晶にも感想を求められたが、千晶の感想は「いいんじゃないのか?」の一言だけだった。そんな適当な感想に園子は不満を覚え、呼び出した鳥天狗に攻撃指示を出して制裁を加えた。当時、重度の火傷で傷んでいた右腕にペチペチ攻撃という地味に痛い制裁を。
千晶はチラリと自身の右手に視線を向ける。その手は相変わらず包帯だらけで痛々しい見た目だ。千晶自身は顔の包帯含めて全然気にしていないが。
そんなこんなで問題集と参考書、プログラミングに関する本を数冊、ファッション雑誌を購入した千晶は帰路に着きつつ、買い物袋を片手に自身のスマホを確認する。
「……やはりかなり精神が不安定になってるな。当然と言えば当然だが」
勇者アプリにはGPS機能と変身システム、封印と満開のシステム以外にも勇者の精神状態を観測するシステムも隠されている。そのシステムの一部をハッキングして、自身の端末で確認できるようにしていた。無論、大赦にはバレないように。
「現状、一番精神状態が危ないのがリーダーの犬吠埼風さんか……グループの責任者である以上、一番ショックが大きいだろうな……」
このままだと爆発して暴れるかもしれない。それで大赦の人間がボコられるだけなら全然構わないが、それ以外となるとさすがに後味が悪い。
「……様子を見に行くか。禁止されているのは接触であって、眺めるだけなら問題ないからな」
そんな屁理屈を一人呟くと、千晶はスマホで勇者達の現在地を確認する。
その勇者のリーダーである犬吠埼風は……大赦が派遣した勇者、三好夏凜と共に行動しているところであった。
―――――――――
讃州中学勇者部部長であり、勇者のリーダーでもある犬吠埼風の心は怒りと憎しみに染まっていた。
「大赦はアタシ達を騙していた!満開の後遺症は一時的じゃなく永続的だった!!」
「!?」
風が涙を流しながら告げた事実に、勇者に変身していた風を落ち着かせようと同じく勇者に変身していた三好夏凜は衝撃を受けたように目を見開く。
「なのに大赦は嘘を教えた!一時的なものだと偽って、世界を守る生け贄にしたんだ!!」
「そ……そんなの嘘よ!そんな適当な事!」
そんな風の叫びを夏凜は信じる事は出来ない。大赦から教えられた満開システム。使えば身体機能に一時的な弊害をもたらすと、勇者に指名されて暫くして端末を手渡された際に説明されたのだ。
実際、勇者部に合流した夏凜は満開システムを説明した際にはその事実を教えたし、大赦から送られた満開に関するメールの確認を怠っていた風に呆れもした。
……ついでに自分は完成型勇者だから迷わず満開できると自信満々に嘯いていたので、軽く黒歴史と化しているが。
その黒歴史を抜きにしても満開の危険性を間違って教えていたという事実もあって、夏凜はその言葉を信じられなかった。
「嘘でも適当でもない!実際に満開した勇者がアタシ達以外にもいたんだ!」
「……え?」
刀と大剣を打ち合いながら、風と夏凜は地面に降り立つ。そこは奇しくも友奈と美森が満開の真実を知った場所だ。
「勇者はアタシ達以前にもいた!その勇者は何度も満開して身体の機能を供物としていくつも捧げ……二年経った今でも治ってない!」
「そ……そんな……じゃあ大赦は、本当に……?」
風のその言葉に夏凜は大きく動揺する。そんな夏凜に構うことなく、風は言葉を続けていく。
「そして今度はアタシ達が犠牲にされた!」
風は怒りのままに大剣を振りかぶり、夏凜に斬りかかる。一太刀目で夏凜の右手に持っていた刀が弾き飛ばされ、続く二つ目の太刀はすぐ様両手に顕現させた二振りの刀で交差させるようにして受け止める。
「みんなが苦しんでいるのも!樹が声を失って夢を諦めなきゃいけないのも!全部全部、大赦が嘘をついてアタシ達を戦わせたからだ!!」
最初から満開の後遺症を知っていれば、勇者部自体を作らなかった。後から教えられても、最初から後遺症の事を正しく知っていれば満開なんて使わせなかった。
味覚を失った友奈も、片耳が聞こえなくなった美森も、声を失った樹も、恐怖を覚えながらも覚悟を決めて満開したのに。世界を救う為に戦ったのに、その想いを踏みにじられた。
そんな想いが表情に強く出ている風の姿に、大赦への不信感が強まっていく夏凜は次第に気圧されていく。
当然、怒りで躊躇のない風と不信感が募っていく夏凜とでは拮抗する筈もなく、夏凜は刀を再び弾き飛ばされてしまう。
「だから邪魔するな!アタシがアイツらを叩き潰すのを、邪魔するなぁああああああああああああッ!!!」
怒りと哀しみが篭った風の慟哭と共に、大剣が尻餅を付いている夏凜に振り下ろされる。精霊バリアがあるから死にはしないだろうが、今の風にそこまで頭が回っている筈もない。
そんな感情任せに振るわれた大剣は……
ガキィッ!
「!?」
「……え?」
金属同士がぶつかり合った音が響き合う。思わず目を瞑ってしまった夏凜がその音の正体を確かめる為に目を開けると……この季節では間違いなく暑いとしか言えない、長袖のシャツと青のジーンズを着て顔に包帯を巻いている短い黒髪の人物が、左手に持った小銃と片刃の剣が一体化したような武器で風の大剣を受け止めているところであった。
―――――――――
「やはり相当頭にきていたか。血が昇りすぎだが」
風の大剣を小銃と片刃の剣が一体化したような武器―――後付けの武器である銃剣で受け止め続けたまま、千晶は溜め息混じりに呟く。本来なら手を出すつもりはなかったのだが、仲間にまで凶行を働こうとしたので咄嗟に買い物袋を放り出しつつスマホを操作。銃剣を呼び出して二人の間に割って入ったのである。
本来勇者の力は一般人を遥かに凌駕する。しかし、千晶は二年前から素の身体能力も上がり、戦闘技術も有している。なので、受け止めた反動で後ろへ押されながらも風の大剣を受け止めきれたのである。
「誰よアンタ!?邪魔をするなら部外者でもブッ飛ばすわよ!!」
いきなりの乱入者に対して風は驚きつつも、邪魔をするなら容赦しないと告げる。
銃剣という凶器を持ってる時点で明らかに普通の人物ではないのだが、頭に血が昇っている風はそこに気づいていない。
……ここまで血が昇っている以上、口だけではどうしようもないだろう。彼女のストレス発散に付き合う必要がある。
「……誰よ、あんた」
当然、庇われた夏凜も疑問を露に問い掛ける。そんな二人に対し、千晶は鍔競り合いを続けながら答えた。
「そうだな。敢えて名乗るなら……通りすがりの、御免ライダーだ」
「どこの特撮ヒーローよ!?」
ふざけてるとしか言えない千晶の返答に、夏凜から鋭いツッコミが飛ぶ。完成型勇者は呆けるより先にツッコミが飛ぶようである。
しかし、その返答に風は理解が追い付けなかったのか一瞬呆けてしまう。千晶はその隙をすかさず付き、大剣を斜め後ろに滑らせながら風に体当たりした。
「くっ!」
ただの体当たりであった為、精霊バリアが発動することなく距離を取らされる風。その間に千晶は彼女のストレス発散に付き合う為に、一度懐に仕舞ってあったスマホを取り出す。スマホの画面には円を描くように羽を広げた三本脚の鴉のアイコンが大きく表示されている。
「変身!」
そのスマホの画面を風に見せつけるように構え、中指でそのアイコンをタップする。その瞬間、千晶の身体が光に包まれる。
「「!?」」
その光景に風と夏凜はあり得ないものを見たように目を大きく見開く。そんな二人の目の前で、千晶は右腕を振り下ろして光を霧散させる。
光が霧散すると、千晶は長袖と青のジーンズの姿ではなかった。僧兵や忍者を連想させる黒装束に黄色の彼岸花の刺繍が施された紅の羽織。顔は頭巾と鳥の顔を模した金の仮面で隠されている。
左手には先程と同じ銃剣。右手には鎌のような形をした三本の爪を有した手甲鉤がはめられている。
千晶が変身したことで唖然とした表情をしている風と夏凜に、千晶は改めて名乗る。
「改めて名乗ろう。俺の名は郡千晶。またの名を……御免ライダー、コーヴァスだ」
「だからどこの特撮ヒーローなのよ!?ひょっとしてふざけてんの!?」
再び夏凜からツッコミが飛ぶ。ウルトラメンや戦隊ヒーローのような特撮ヒーローの名前を使うとか、一見すれば……というか、一から百までふざけているようにしか見えない。
そんなコメディ空気になっても、風の怒りは収まらない。収まる筈がない。
「お前も……大赦の人間かぁあああああああああああッ!?」
夏凜のツッコミで我に返った風は、千晶を大赦の人間と判断して先程よりも容赦なく大剣を咆哮と共に振り下ろす。
怒りと憎悪が込められた渾身の一撃。その一撃を、千晶は右手の手甲鉤であっさりと受け止めた。
「―――なっ!?」
「嘘でしょ……!?」
その事実に風は信じられないといった表情をし、夏凜も同様の表情で呟く。二人が驚いたのは大剣を受け止めたことにではない。その大剣を一歩も退かずに平然と止めたことに対してだ。
そんな二人の様子に構うことなく、千晶は大剣を受け止めたまま口を開いた。
「大赦に怒りを覚えるのは当然だが……一度落ち着いた方がいい。見境がなくなってるぞ」
「ふざけるな!あんた達大赦がアタシ達に嘘をついたクセに!!」
その言葉で怒りの炎にガソリンをぶちまけられた風は、怒りに任せて大剣を振りまくっていく。風切り音を響かせながら連続で振るわれる大剣を、千晶はその場から動かずに右手の手甲鉤だけで完璧に捌いていく。
まるで子供をあしらうような対応にますます怒りと苛立ちを募らせる風。そんな風の内心を知ってか知らずか、千晶は再び口を開いた。
「別に大赦の味方じゃないんだがな。大赦がいくらボコられようと別に構わない……むしろボコボコにされてしまえと思ってるくらいだ」
「「…………は?」」
千晶のその言葉に風はもちろん、夏凜も鳩に豆鉄砲を食らったような顔となる。そりゃそうだ。大赦側と思っていたら全然違う上に、むしろ殴り込みを助長しかねない発言をかましたのだから。
「実際、勇者達には満開のデメリットを教えろと脅したのに誤魔化していたからな……だから大赦がいくらボコられても全然構わない。むしろ物理的に焼き入れした方がいいだろう」
「いやいやいや!物理的な焼き入れって何!?さすがに洒落にならないでしょ!?大赦の人間を殺す気!?」
「冗談だ。準備が面倒だからな」
冷や汗を流す夏凜に千晶はそう言葉を返すも、発せられる雰囲気から冗談とは思えない。というか準備できたら実行すると暗に言っている。
それじゃあなんで止めに入ったんだと、動きを止めて視線で訴える風。そんな風に千晶は肩を竦めて答えた。
「越えてはいけない一線を越えようとしたからだ。いくら勇者が精霊によって死なないとはいえ、その辺りはまったく考えてなかっただろ?」
「それは……」
千晶の指摘に、風は答えられずに口ごもる。勇者が決して死なないという事実は美森の自害検証で証明されていたとはいえ、一切考慮していなかった。それは否定できない事実だ。
「それほど見境がない状態だと、大赦の人間を勢いで殺しかねないからな。あんな連中を手に掛けて、残りの人生を棒にふるのは……あまりにも馬鹿らしいだろ?」
大赦への配慮が微塵もない千晶の言葉に、風と夏凜は思わず苦笑いしてしまう。それでも風は頭を振り、険しい表情へと変えて口を開く。
「それでもアタシが!勇者部なんて作らなければ!!」
「アレはグループの有無に関係なく巻き込むぞ。裏で色々と工作していたからな」
実際、本当は先代勇者である美森を勇者の適性が一番高かった友奈の傍に置かせた。仮に風が勇者部を作らずとも、あらゆる方法を使って巻き込んでいただろう。
「それでも悔やむなら彼女達の勇者端末を壊せばいい。精霊は勇者を守るが、戦いの強制はできないからな。実際、端末を取り上げられている先代勇者二人は戦えず、俺も含めて見守るしか出来なかったしな」
もし端末を取り上げられていなければ、園子と銀は全部背負ってでも戦うことを選んでいただろう。
しかし、大赦はそれを許さなかった。自分達に制御できない二人から力を取り上げ、神樹を敬う為に祀り続けた。
千晶も両親を明確ではないにしろ、暗に人質に取られ、静観を強制させられもした。正直、全員地獄に落ちろと思った。
「だったらずっと静観したらいいじゃない!見てみぬ振りを続けてたらいいじゃない!!それを急にしゃしゃり出てきて!!」
そんな千晶の言葉に怒りが再び再燃した風は再び斬りかかる。千晶はあっさりと受け止めながらも言葉を続けていく。
「それができる程、俺は人間ができていないからな。だから身勝手な理由で動くし止めにも入るさ」
「身勝手な理由って何!?そもそもアンタは男でしょ!?なのに何で変身して戦えるのよ!?」
頭の中が次第にぐちゃぐちゃになっている風の詰問に、夏凜も確かにと頷く。千晶はどう見ても男。なのに勇者と変わらぬ力で風を軽々とあしらっているのだから、その疑問は当然である。
「後者はともかく前者の理由は……一言で言うなら俺自身のエゴだな」
その返答に風と夏凜は面食らったような顔となる。理由を聞いたら世界を守るとかではなく自身のエゴの為と言ったのだから当然である。
「友達を助けたい。傷つくところを見てみぬ振りはできない……そんな自己満足から自分の意思で足を踏み入れたんだ。実際、それで大怪我も負ったし、友達を泣かせもしたしな」
千晶のその言葉に、風は虚を突かれたように動きを止める。それは勇者部のみんなが、バーテックスとの戦いに自ら赴いた理由と酷似していたからだ。
「けど、俺はこの選択自体を後悔していないしやり直したいとも思っていない。力があるからとか巻き込まれたからじゃない。俺自身がそうしたいから、自らの意思で選んだんだ。それは、彼女達も同じじゃないか?」
「…………」
千晶の優しげな問い掛けに、風は視線を逸らして無言を貫く。確かに勇者部のみんなを巻き込んでしまったが、友奈も美森も樹も、自らの意思で戦うことを選び取った。
「だけど……アタシが……アタシが最初にみんなを巻き込んだから……そのせいで……」
それでも風は自責の念を止めない。止めることができない。本当はただの八つ当たりで、一番悪いのは自身の復讐にみんなを巻き込んだ自分だと、心のどこかで分かっていたから。
「それは違います!」
そんな風を否定する声が響き渡る。風は驚いたようにそちらに振り返ると……そこには友奈と、樹がいた。
「友奈……いつ……き……」
一体いつからいたのかと、そう表情にありありと出ている風に友奈と樹は駆け寄っていく。
「確かに後遺症のことはショックでしたが、それでも後悔はしてません!だって、みんなを守れたから!だから、自分を責めないでください!!」
友奈のその言葉に隣にいる樹も同意するように頷く。樹も満開の後遺症が永続的であった事を知ったのだろう。それでも彼女は折れず、姉を心配して駆けつけたのが容易に想像できる。
その想いに風が……血の繋がった姉が気づかない筈がない。
「だけど……だけど……!勇者部なんか作らなければ……!」
それでも風は自責の念を止められず、その場にへたりこむ。そんな風に、樹は文字で自身の想いを伝える。
『勇者部のみんなと出会わなかったら、歌いたいって夢も持てなかった。だから、勇者部に入って、勇者になれて本当に良かったよ』
「樹……うっ……うっ……うわぁあああああああぁぁぁぁぁ……」
妹の優しさに触れ、風は大粒の涙を零して泣き続ける。そんな風を、樹は両腕で抱き締め続ける。
その姿に友奈と夏凜は安堵しつつ、その視線を今度は千晶の方へと向けた。
「えっと……こーりんさん、ですよね?風先輩を止めていただき、ありがとうございました!」
「まあ、私も礼を言っておくわ。助けられた借りもあるしね」
「礼を言われる程のことじゃないさ。この件に関してはこちらにも少なからず責があるからな」
千晶は友奈と夏凜にそう返し、未だ泣き続ける風と抱き締め続ける樹に視線を向ける。
今回の風の暴走は、言ってしまえば自分達が満開を真実を教えた事が発端だ。危険性だけ教えて後は完全に放置……というのはさすがに無責任がすぎるだろう。
そんな千晶の態度に友奈は苦笑いを浮かべ、夏凜は呆れたように息を吐く。そして夏凜は、改めて千晶に問い掛けた。
「……それで?あんたは結局何者なの?男の勇者なんて聞いたことないわよ?」
「少なくとも俺は“勇者”ではない。勇者システムの一部を利用してはいるが、ルーツそのものは違うからな」
「そうなんですか?」
千晶のその説明に友奈は首を傾げる。千晶の現在の変身は勇者システムの一部を使っているとは言え、神樹以外の神の力を借りているのだ。
加えてバーテックスの力も利用している。だから彼女達のような“勇者”とは全然違うのである。
「ああ。だから精霊バリアも存在しないし、散華以外では死んでしまうんだ。代わりにスマホが無くても変身できるが」
「しれっとトンデモ情報を明かすな」
さらりとヤバい情報を明かした千晶に対して、夏凜はジト目で文句をぶつける。
「でもまあ、あんたが“勇者”ではないことは理解したわ。御免ライダーって名乗ったのはその辺りが理由かしら?」
「御免ライダー!?こーりんさんは御免ライダーだったんですか!?」
御免ライダーというワードに食いつく友奈。彼女は戦隊シリーズも大好きなので、こういった話題には物凄く食いつくのである。
「それは友達が『それなら御免ライダーだね~』と言ったからだ。俺もそっちが合ってると思ったし、それを採用して御免ライダーコーヴァスを名乗ることにしたんだ」
「軽ッ!採用理由がめっちゃ軽ッ!」
「御免ライダーコーヴァス!カッコいい響きですね!!」
ほとんどノリで名乗っていた事に夏凜はもはや何度目か分からぬツッコミを入れ、友奈はヒーロー名に目を輝かせて興奮する。
そんな和やかな空気となる中……崩壊の足音が近づいている事に、誰も気づくことはなかった。
『千晶のあの姿は全然勇者らしくないよな。顔も仮面で隠れてたし』
「だから御免ライダーなんよ~。こーりんに力を貸している神様も元は天の神寄りの中立だったみたいだし~?」
『言われてみれば確かに。類似点が結構多いな。変身ベルトはないけど』
「ふっふっふ……甘いよミノさん。御免ライダーの中には、ベルト以外で変身するライダーもいたのだよ?」
『スマホで変身するライダーは?』
「いないよ?銃や剣、腕輪や変身用のアイテムだけとかはあったけど」
『最後のヤツはモブライダーですゼ。そのさんや』