「では勇者よ。西の彼方の魔王を倒してくるのじゃ。」
「承知しました、国王様。では私はこれにて。」
「おお、待つのじゃ勇者よ。いくら強い勇者でも一人では大変じゃろう。私の娘を連れて行きなさい。」
「「「「国王様!お待ちください!!」」」」
「うるさいぞ家臣ども。わしは国王じゃ。自国の若者を一人で死地に赴かせてのんびり待ってなどおれぬ。じゃがわしが行っても足手まとい。勇者よ。頼りない娘かもしれんが、幼い頃よりあの大賢者様に学び続けた娘じゃ。何も出来ぬことはなかろう。ぜひ連れて行ってはもらえぬだろうか。」
「国王様、おやめください!そのように頭を下げられては困ります!私も一人ではいかんともしがたいと思っておりました。国王様の仰せの通り、若姫様と魔王討伐に行きたいと思います。元気な姿でまた国王様の元にお戻りいただくよう命を懸けて守り抜きます。」
「それでこそ勇者じゃ。しかし娘も王家の者じゃ。国のために死ぬことは本望と教えておる。どうか娘のことは気にせず魔王を討伐してくれ。」
「というわけで、アンナよ。その、旅の支度をな……」
「いやよパパ!ちょっと待ってよ!魔王が復活したら勇者と旅に出ることは聞いてたけど、何で今日なの!?」
「だって、今日復活したんじゃから仕方ないじゃろ。頑張ってくれんか。」
「そんなの無理よ!魔王復活なんて私が生きてる間にはどうせしないと思ったから、『旅出ても良いよ』とか言ってパパにお小遣い貰ってただけなのに!今日も友達と街にお出かけの予定があるんだから!」
「そんなこと言わずにな、頼むよアンナ。ほら、勇者も真面目そうで、困ることはないと思うし……」
「真面目過ぎるわよ!なんであんな堅物と旅しなきゃいけないわけ?絶対無理!無理なものは無理ーーー!!!」
「うーん、どうしたものかのー。」
私はアンナ。この国の国王の一人娘。溺愛してくるパパを上手いこと使って遊びたい放題してる普通の若姫君様。
なのに。な・の・に!!!
今朝から王宮の中がてんやわんや。何かと思ったら魔王復活らしい。
大変だなーなんて思ってたら、勇者と魔王を倒しに行ってこいとか言われちゃった。絶対無理なんだけど!もうパパなんて大っ嫌い!
「国王様、よろしいでしょうか。」
「おお、勇者よ!もうすぐに娘のアンナの準備が整う。もう少し広場でお待ちくだされ。」
「とは申されましても。かれこれ3時間ほど待っております。一刻も早く魔王を討伐しなければ町や村の方々が危ない。若姫様はあとからの合流でも構いませぬ。先に出発させていただけないでしょうか。」
やば勇者がまた催促に来たじゃん。あそこまで言ってるんだし、もう一人で行かせればいいのに!
「いやいや大丈夫じゃよ、勇者殿。本当にもうすぐ準備できますので。…………。おーい、そこの者!」
「はっ!なんでしょうか。」
(アンナをここに連れてきなさい。何をしても構わぬ。とにかく勇者殿の前に連れてきなさい。)
(ですが国王様、若姫様は嫌がって……)
(おぬしも分かっていよう?あそこまで勇者に大見え切った手前、『やっぱりアンナは行きたくないらしいので勇者一人で行ってきて!ごめんね!』など国王のわしが言えるわけがなかろう!どんな手を使っても良いから連れてくるのじゃ。)
(むむむ……承知いたしました。アンリ様、御免!)
え、何?パパの護衛の人が近づいてくるんだけど!
「きゃあっ!何するの!私は姫よ!手を出したらどうなるか分かってるんでしょうね!」
「姫君様なりませぬ。これは国王様の命令です!どうか勇者様と旅に出てくだされ!」
「いやー!離して!離してー!だれか助けt……」
「こら、そこの者何をしているか!」
「「「勇者様!?」」」
「女性が嫌がっておるであろう!離すがよい!おお、これは若姫様ではないですか!おいお前!私の大事な人をどうするつまりだったのだ!」
「いえ、勇者様!その、何をすると言われても、連れてこいと言われましたもので……。」
「ということは誘拐か!そうか!この俺を王宮から出さないようにするための魔王のスパイだな!であれば容赦は要らぬな!くらえ!」
「待ってくだされ勇者殿!」
「ですが国王様!大事な大事な若姫様が誘拐されようとしていたところをこのまま見過ごすわけにはいきませぬ。勇者として魔王群を一人でも多く倒し、街に平和を戻さなければなりません!」
「このものを見るとどうも戦闘意欲はないように見えます。ここは我らで収めますので勇者殿は旅のために体力を温存くだされ。」
「そこまで言われてしまえば仕方ない。姫、申し訳ありませぬ。私が未熟なばかりに旅に出る前に瑕モノにするところでした。ですがご安心ください。私の目の届く範囲で姫に傷を負わせようとする者がいればたちどころに亡き者にします!では旅に行きましょう!」
「え、ちょっと待って!私はその、旅とか、そんなの」
「心配なさらずとも大丈夫です!万事私が解決します!姫は後ろからゆっくりと旅を楽しんでくだされば結構!手ぶらで構いませぬよ!」
「いやそうじゃなくてーーーー!!!!!」
「「「いってらっしゃーい」」」
私の魔王討伐の旅はこうして始まってしまった。