王宮を出て2時間くらい歩いた気がする。
一応私も魔王討伐用にいろいろ鍛えられてはいたから長距離移動自体は苦じゃない。
でも馬車くらいあっても良くない?
歩いていけってこと?意味わかんないんだけど!
パパのけち!
「姫、向こうに街が見えてきました。今日はそこで一晩を越しましょう。」
「そうですね。」
勇者の言う通り街が見えてきた。聞いてた話よりも早く着いた気がする。
やっぱ私鍛えてるだけあるー。
…………。その分友達と遊ぶ時間は少なかったけど…………。
あーもう!こうなったらさっさと魔王倒して王宮に戻って悠々自適な生活するもん!
「あの、若姫様?」
「なに?勇者様?」
「その、私の呼び方についてなんですが。勇者様というのは性にあいません。私は一介の村人に過ぎませんのでどうかオルガと呼び捨てください。」
「分かったわ。じゃあ、オルガ。私一刻も早く王宮に帰りたいの。無駄な時間使ってる場合じゃないわ。すぐにでも魔王を倒すわよ。」
「もとより私はそのつもりです、姫。力のない民のため、ぜひお力貸してください。」
「だから私よ私!姫よ!泊めなさい!」
「とは申されましても当方も商人でございます。お代をいただけましたらすぐにでも最上級の部屋をご用意いたします。」
「だから!お金なら後でパパが払うって言ってるじゃない!」
「ですので、さきほどからお話させていただいてるのですが、前金制ですので先にお支払いいただきたいのですが……」
はあ、王国の姫を泊めないとかどうなってるわけ?
マジで意味わかんないんだけど!
てか、私自分で財布持ち歩いたことないからお金ないんだけど。
野宿!?姫が!?王国の一人娘たるこの私が野宿!?
ありえないんだけど!!!!
「姫、よろしいでしょうか?」
「何よオルガ!今私の力でただで泊まらせようとしてるんだから、邪魔しないで!」
「いえ、その件なんですが。王宮を出る際に国王様より餞別をいただいておりますので、お金に関しては心配いりません。」
「え、そうなの!?もっと早く言いなさいよ!ごめんね、オーナーさん。オルガが払うっていうからお金出すわね。でも私をタダで泊めなかったことは覚えておくわね!」
ハイパー最高のスマイルでもってオーナーに釘を刺しておいた。
私が王宮に戻ったらめっちゃパパに言いつけるから!
「では姫、部屋の準備をしていただきましたので、こちらへ。」
「ええ、オルガ。案内してちょうだい。」
なんやかんやのうちにオルガが契約してくれてた。
さすが勇者。行動力あるじゃん!
まあ良い部屋を貰ったんだからちょっとくらいは我慢してあげるわ。
やば、私ってば超絶優しい!さすが王国の宝!
「姫?姫?」
「え、なにかしら?」
「こちらが今日の我々の部屋でございます。」
「ありがとう、オルガ。で、なんでこのホテルは玄関にベッドを置いてるのかしら。奇妙なつくりね。私の部屋はどこ?」
「いえ、姫。これですべてでございます。」
「は?」
「ですので、これですべてです。ベッドとテーブルがあるだけの質素な部屋で良いと申しましたところ、この部屋を選んでいただきました。」
…………。は?マジで意味わかんない!
え、マジで!?
王宮の玄関より狭いんですけど!
「では私は街へ情報を集めに行ってきます。姫は旅の疲れもあるでしょうから部屋でお休みください。」
「え、ちょっと、まってよ。私一人?」
「すぐに戻ります。明日は早いです。私を待つ必要はありませんので、明日に備えてご就寝ください。」
そう言い残してオルガが出て行ってしまった。
窓の外には夜を我が物顔で歩く男たち。そしてその喧噪。
あ、どこかで喧嘩でもしてるのかな。
夜ってこんなうるさかったっけ。
なんか急に、寂しくなってきちゃった。
こんなにうるさいのに、私は一人ぼっち。
部屋の中は隙間風が通る音しか響かない。
もうなんか泣きたくなってきた。急に旅に出た実感が身に染みてる。
もう寝よ。マジで寝よ。泣くのもなんか馬鹿らしくなってきた。まじですぐに魔王討伐しよ。
王宮が寂しいな。
パパ。