「今日はこのあたりで野宿としましょうか。」
「あたしはどこだってオルガと一緒ならへいきー!」
「…………」
陽は長くないとはい
え、そろそろ歩き回るには不安な暗さになってきた。
王宮を出て二日目。早速こんな平原のど真ん中で野宿することになるとは思ってなかった。
今のところ足しか引っ張ってないローズにも怒りを既に通り越してしまってむしろ感心してる。
そこまで愛情を向けることができる物かと。
私なら途中で疲れそう。『恋のパワー』ってすごいのね。
って、え!?
「野宿するの?」
「そうですよ。あいにくテントが二つしかありませんので、お二人で使ってください。私は外で夜襲に備えながら寝ることにします。」
「いや、テントの話じゃなくて…………」
「そんなのダメよ!オルガもちゃんと布団にくるまって暖かくしなきゃ風邪をひいてしまうわ!」
「大丈夫ですよ、ローズさん。私は昔からこういったことに慣れていますので。」
「ダメーー!!ダメったらダメー!!!」
「そうは言われましても。テントの中というのは旅の中でも数少ない自分だけの空間です。しっかりとおくつろぎください。」
「むー…………。あ!分かったわ!」
「ローズさん、如何されましたか?」
「私とオルガは夫婦みたいなものなんだから、一緒のテントでゆっくりするのに不思議なことなんてないじゃない!さ、妻の私がしっかりねっとり癒してみせます!」
なんかやばいこと言ってるパーティの仲間がいるわ。仲間と認めたくはないけど。
てか、隣のテントであんなことやこんなことされたら私がゆっくり休むこともできないじゃない!!!
「ちょっと待ちなさい、ローズ。」
「あら、私たち夫婦の会話にちょっかいかけないでもらえる、アンナ?」
「まずあんたらまだ夫婦になってないじゃない!それに隣で色々されたら寝れないじゃない!」
「色々って何よ!夫婦の夜の営みを、赤の他人が邪魔しないでよ!」
「赤の他人ってなn…………」
「お二人とも。お静かに。」
ローズとのとんでも口論がヒートアップしすぎてたみたい。
私としたことがこんな娼婦と言い争うなんてはしたないわね。
オルガにいさめられちゃった。
「ごめんなさい、オルガ。別に悪気があったわk…………。」
「シッ…………。何かが近づいてきます。」
「「えっ!!!」」
「おそらく人が一人と、獣が一頭。現状では敵味方は判別つきません。お二人はテントの中へ隠れててください。」
息が止まった気がした。
こんな何も障害物もない場所で獣を連れた人に出会うかもしれないの?もしオルガが死んだら?
私は戦えるの?
一人で?
こんなお荷物抱えて?
絶対無理!
「ダメよ、オルガ!私も一緒に戦うわ。」
「そうはいっても姫。どれくらい危ないのか予想がつかないのですよ?」
「だからこそじゃない!オルガが死んでしまったら私は。私は…………(どうやって一人でこんなでくの坊と逃げればいいのよ!?)」
「あー!じゃあローズも!!!オルガとわたしはどんな時でも一緒なのよ!」
「まだ戦うと決まったわけでは…………」
そうこう言い合いしてる間にもう姿が見えるようになってきた。
月明かりが逆光だから表情は分からないけど。
え?こども?
「顔は見えませんが、体格は小さな子供でしょう。ですが何があるか分かりませんので油断は禁物です。」
どうやら動物に乗って子供がこちらに駆け寄ってきてる。しかも結構なスピードで。
「ピース!ストップ!」
「バウ!」
「うわあああああ!」
私たちの目の前でトラが急に止まったかと思うと、トラに乗っていた子供がこちらに飛んできた。
「もー、ピース。もうちょっとゆっくりと待ってよー。」
「バウバウ!」
「なんでそんな嬉しそうなのよー。ピースは怒られてるんだからね!」
「バウー。バウバウ!」
「え、後ろ?あ、お兄さんがいる!お兄さんは誰!?」
「私はオルガというものです。今は魔王を倒すための旅の途中です。」
「じゃあお兄さん、勇者さんなの?」
「まだ何もしていないので偉そうには言えませんが、きっと勇者になれるはずです。」
トラから落ちてきたのは子供というか、見た目10歳くらいの女の子だった。
「お兄さんたちはなんでこんなところにいるの?」
「魔王のお城までずっとずっと遠いから、今日はここで休憩中なのよ。」
「ピースさんこそ、なぜこのようなところにいるのですか?」
「え?ピースはピースのお散歩中だよ。ほら、この子ピースっていうの。」
「ありゃりゃ、こりゃ面倒なことになってるわね。」
女の子の名前はピース。そして、そのトラの名前もピース。らしい。
さすがにこれは面倒くさいわね。ローズの言うことももっともだわ。
「お散歩というには少々遅い時間なのではないのですか?」
「でもピースたちは毎日これくらいの時間にお散歩してるよ。別に危ないところなんてこのあたりにないし。人に会うこともないし。」
「親御さんは心配されませんか?」
「ううん。ピースはピースと一緒だから。大丈夫。」
オルガとローズが相手してるから傍で聞いてたけど、今のはちょっと怪しいかしら。
「ねえ、ピースちゃん?」
「どうしたのお姉さん?」
「あら、アンナ。この子のこと気になったの?」
「うるさいわね。ちょっとだけね。ねえピースちゃん、ピースちゃんってどこに住んでるの?」
「ピースはいつもその辺に寝てるよ。」
「その辺って?おうちはどこにあるの?」
「おうち?家はないよ。でもこの辺の丘で知らないところはないと思うよ。」
ん-。たぶんそういうことね。
「おいおい、アンナ。そういうことかよ。」
「恐らくそういうことだと思うわ。」
ここで出会ってしまったらもう引き下がれない気がするわね。
どうにかして回避しないと面倒なことに巻き込まれる気がするわ。
特にまだぎりぎり気づいてなさそうなオルガが気づく前に。
「ねえ、ピースちゃん。あなたが嫌じゃなければお姉さんたちと一緒に旅をしない?」
「ちょっと!ローズ!何勝手に!」
「え、アンナだって同じ事しようとしてたんじゃないの?」
「そ、それは、」
そんな先手打たれたら違うとはさすがに言いにくいわね。
ここはピースちゃんが断ってくれることに期待して。
「旅って楽しいの?」
「ええ、きっと楽しいわよ。お姉さんとお兄さんと楽しく旅しましょ。」
「じゃあピースも一緒に旅するー!」
「というわけよ、オルガ。良かったかしら?」
「良いも悪いも。だって家族がいないようですから。このような小さな子を見過ごすことできません。決まってますよ。」
まずいわね。仲間が増え過ぎよ。これでさらに歩みが遅れるわ。
「オルガと私のの最初の子供みたいなところあるわね。ちょっとアンナ!」
「何よ。」
「私のピースのこといじめないでよ!」
「なんでいじめる前提なのよ!」
騒がしい仲間に、騒がしい子供ができてしまった。