わがまま姫の世話焼珍道中   作:矢矧草子

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第6話「ラスボス」

「お姉さまー!お姉さまってばー!」

「ねえ、オルガ!オルガってばー!」

「…………。」

「どうされましたか?引っ張らなくても大丈夫ですよ。」

「ピースも!ピースもオルガの服引っ張るー!」

 

悩みの種が昨日から増えてしまった。

 

「お姉さま!?このお洋服なんてお姉さまにとってもお似合いでは?ちょっとそこのお店の人!ここからここまで全部くださる?オルガさん!早くお支払いしてちょうだい!」

「ちょっとアルル!そんな汚いアンナのために使うお金なんてないから!」

「ローズさん。姫にそのようなことを言ってはいけません!アルルさん、少しくらいは良いと思いますがさすがにその量は…………。」

「「オルガは黙ってて!」」

 

アルルが仲間に入ったおかけで私の味方が増えてうれしいと思ったのは一瞬。

むしろ喧しい!

しかもどんどん私の肩が狭くなってる。

 

「アルル?ちょっと。」

「どうしましたの、お姉さま!大丈夫!心配しなくてもいいんですわ!あの口うるさいローズを説得してきます!」

「だ・れ・が!口うるさいですってー!」

「あーら、耳が遠いですのね!良い耳鼻科を知ってますから、ちょっと前の街まで”一人で”行ってきたらいいんじゃないかしら?口うるさいローズおばさん!」

「わたしはまだおばさんじゃないわー!」

「ローズもアルルも仲良しだねー!」

「「…………。」」

 

意味があるとは到底思えない口喧嘩は、10m進むごとに発生。あー、もしかして今日もこの町で泊まりかなー。

 

 

 

 

「であるからして、これ以上この町で騒ぎを起こすようでしたら、いくら勇者様や若姫様といえど、困るのです。」

「「…………。すいません。」

 

言い返す言葉がなかった。ってかいつの間にか私凄い損な役回りになってない?

私とオルガが村長に怒られてる間にも、後ろではローズとアルルがケンカ中。

私が予想してたのと違う疲れ方してる。もうこんな旅嫌ー。

 

「村長?」

「なんじゃ。わしは街の治安を荒らしている勇者様と会議中なのじゃが。」

「そのことなのですが。………………で、………………なら、…………という…………。」

「ほんほん。いいかもしれんな。丁度相手は勇者じゃしな。」

 

なんだかわからないけど、勇者の仲間一行がめちゃくちゃ邪魔者みたいに扱われてる気がするわ……。

 

「ゴホン!勇者様よ。我々も鬼ではないのでな。ある条件を呑んで下さったら、もう少し街にいてくださっても良いですぞ。」

「ありがとうございます。そもそもこちらの日がある事態です。どんな条件でも受けさせていただきます。」

「そちらの若姫様もよろしかったでしょうか?さすがにただで帰してしまうと街の皆も納得がいかないのでございます。申し訳ありませんが、受けていただけますでしょうか。」

「……。オルガの言う通りです。こちらに非があります。拒否する理由はありませんわ。」

「ありがとうございます。では明後日までに少し離れた洞窟に棲む魔物を倒してきてくだされ。」

「承知しました!このオルガにお任せください!」

「…………。」

 

喧しい、戦力になるのか分からない仲間たちのせいでダンジョン攻略が始まってしまった。

 

 

 

 

「さて、ここがその洞窟らしいが。皆はどうしますか?」

「オルガを一人で危険なところにやるわけないじゃない!私はいつだってオルガと一緒よ!」

「洞窟楽しそー!ピースとピースは洞窟探検するー!」

「バウバウッ!」

「お姉さまがそんな危険なところに行くわけないじゃない!私とお姉さまはここで留守番してますわ!」

「…………。」

「姫はいかがなさいますか?」

 

正直どうしようか迷ってる。だって、オルガ以外に戦力いないじゃん!

 

「あのさ、アンナたちに聞きたいんだけど。あんたたちって洞窟の中で何ができるの?」

「もちろん、皆さんを守る盾となり、魔物を倒す矛となります。」

「あたしは、オルガに『がんばれー!』って言うわ」

「ピースはね、ピースはね!うーんと。洞窟はしるー!」

「私はお姉さまとティータイムを楽しむことができますわ!」

 

…………。これは本当にやばいかもしれないわ。

この洞窟に全員放り投げて、全員倒されれば王宮に戻って…………。

いえ、それではパパが納得しないはず。絶対『勇者は!?なんで勇者いないの!?逃げてきたの!?』って聞かれる。

却下

私とアルルが残って、3人で洞窟に入ってもらう?

あの2人を守りながら戦うの?さすがにオルガも厳しくない?最悪の場合自分を犠牲にしてローズとピースを守るはず。これじゃあさっきの案と同じ結末ね。

却下

全員で洞窟に潜る?

あの3人と?それ絶対に私死ぬ気がするわ。無理ね。嫌ね。

現実的には私とオルガの2人で行くのが一番な気がするわね。

 

「ねえ、アンナ?あんたさっきから偉そうにしたり黙りこくったりしてさ。あんたは何ができるのよ?」

「ちょっと私のお姉さまになんて口の利き方してるのよ!」

「なーにが『私の』よ!迷惑がられてるくせに!」

「違うわよ!あれはお姉さまの照れ隠しです!それも分からないからお姉さまの魅力に気付かないのよ!」

「うるさーい!」

 

気づいたら大きな声出しちゃってた!やば。恥ずかしい。

うわー、すごい場がシラケちゃった。ちょっと、私が悪いみたいじゃない。

 

「姫、何か妙案でもありましたか?」

でかした、オルガ。このあたりの空気の読めなさもたまには役立つことあるのね。

「私は大賢者様に昔からずっと教えを貰ってきてます!基本的な魔術は当然のように使えるわ。だから、この洞窟は私とオルガで行ってくるわ。あんたたちはここで待ってなさい!さ、行くわよオルガ!」

「え、ちょっと。姫?」

 

もう無理やり決定事項としてオルガを引っ張っていく。

後ろでは『さすがお姉さま!私の身を案じてくださったのですね。』とかほざいてるけど、一々気にしてられないから。

ローズもあれだけ言ってたくせに結局洞窟の暗さにまいってるみたい。

いい気味ね。

私は手に明かり代わりの灯をともして洞窟に入っていった。

 

 

 

 

「でやあああああ。」

「グギャアアアア。ギャオオオオオオォォォォ。」

「姫!今です!」

「分かってるわよ!はあああああ!」

「ググググ。ギギギ。ギュウ…………。」

「さすがです姫。大賢者様の弟子というのはここまで強いのですね。」

「まあ、それほどでもないわ。あらオルガ、ケガしてるじゃない?」

「この程度、放っておけば治りますよ。」

「ダメよ!こういう油断が後で命取りになることもあるんだから。ほら、座って。ヒーリングで治してあげるから。」

「ありがとうございます。ご迷惑おかけします。」

「当たり前じゃない。私たち仲間なのよ。」

 

洞窟の奥にいたのは小さなドラゴンだった。たぶん魔王の復活に合わせて生まれてきたんでしょう。さすがに何も訓練してない村の人が戦えば一瞬で倒されてしまうかもしれないけど、私とオルガは幼少期から鍛えられてるおかげで、なんなく倒しちゃったわ。

とりあえずこれで今日明日まではあの街に居れるわね。

違うわ!

そもそもあんな街にいつまでもいる必要ないじゃない!あー、今日はこのまま次の街を目指した方が良いかしら。

 

「さあ、けがも治ったわ。洞窟を出ましょ。そして今日中に次の街へ行きましょ。」

「そうですね、姫。そうと決まればここに長居するわけにはいきませんね。村長へ一言かけて町を出てしまいましょうか。」

 

時間的にはまだお昼前。村長に一声かけても、ちょっと早足で歩けば次の街へは陽が落ちる頃に丁度つくはずだわ。

 

 

 

 

 

「ああ~、つかれたー。」

「ローズさん、ピースさん、アルルさん。お待たせしました。ただいまです。」

「「「「おかえりー」」」」

 

ん?

声が一人分多い気がするわ。

 

「さあ、まずは街に戻って村長と話をしたら次の街へ早速行きますよ。準備してください。」

「「「「はーい。」」」」

 

いつの間にかアルルとローズがメチャクチャ仲良くなってるし。

ってか!

 

「あんた誰よ!」

「誰って、ローズよ。」

「ピースはピースだよ!」

「おねえさま私のことを忘れてしまいましたの?洞窟の魔物のせいですね?成敗して差し上げますわ!魔物!お姉さまから出ていきなさい!私のお姉さまから出ていきなさい!」

「ミリスでーす。」

「全員いるようですね。安心しました。では出発です。」

「「「「おー!」」」」

「おまえじゃミリスー!」

「はにゃ?」

 

やっぱり全員で洞窟潜ればよかったかも…………。

 

 

 

 

「はあ!?あんた魔王の手下なの?」

「そうですー。ミリスは魔王様の側近中の側近なのですー。」

「どうにも信じられないんだけど。」

「信じるか信じないかはミリスには関係ないのですー。でも、こんな嘘つく方がどうかしてるのですー。」

 

たしかに。それは確かにそう。

でもさ。いや、まじで?なんでこんなとこにいるわけ?

てか、そんなことならここで倒さなきゃ!

…………。ん?

ちがうわね。利用するしかないわね。

このままこいつを手なずけて魔王の城まで行けば魔王のところまで直行ね。

そうと決まれば。

 

「そ、そうよね。どうでもいいことね。でも、私はミリスの味方よ。いつだって私を頼りにしていいわよ。」

「ん?ミリスに味方は要らないのだー。でもローズとアルルは仲良くしてやってもいいのだー。」

「え、ちょっと!それ、どういうことよ!」

「どうもなにも、こんなにうまい飯を作るやつはミリスも仲良くしてやるのだー。」

 

ああ、そういうことね。洞窟出てきたらなんとなくいいニオイがした理由も分かったわ。

 

「「料理が上手だなんて。照れてしまいます。」」

「…………。あのさ、ミリス。」

「なんなのだー?」

「ローズとアルルの様子がいつもと違う気がするんだけど。あんたなんかやった?」

「特に何もしてないのだー。ただ、うまい飯を作るやつはミリスの仲間にしたいから、ちょっとだけ脳を操ってるだけなのだー。」

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ

何がやばいって、マジでヤバイ力持ってるってこと。

もしかして、ちょっと気に障ることしたら消されるんじゃない?

もしかしてさっきの洞窟なんかより今の方がよっぽどやばいんじゃない?

 

「あー、うまい飯食ったから眠くなってきたのだー。」

「え、ちょっと、どこに行くのよ?」

「眠いから自分の家で寝ようとしてるだけなのだー。」

 

あー。魔物が住む洞窟って言ってたわね、そういえば。

こいつの家だったんだ。

って。あのドラゴンってもしかして。

 

「あれ、そういえばルーちゃんの声が聞こえないのだー。」

「…………。あのー、ルーちゃんって、何?」

「ん?ルーちゃんは私のペットのドラゴンのルーちゃんなのだー。私の唯一の家族なのだー。」

 

おわったー!!!!!!!!????????

マジで終わった!いやこれマジで!絶対に渡し殺される!パパさよなら!

って、ちがう!なんとか誤魔化して、ここを離れなきゃ!

 

「あ、あのね、アルル。」

「ん?どうしたのだー?もう眠いから用事があれば手早く済ませるのだー。」

「え、えっとね、あのね、、、。」

 

やばいやばい。回れ私の頭。いったい何のために勉強してきたの。今使わなくて何のための勉強だったの!

 

「あ!ええっとね。ミリスはローズとアルルのご飯美味しかったんだよね?」

「さっきからそう言ってるのだー。」

「じゃあね、そのご飯また食べたい?」

「当たり前なのだー。だから今脳を操って抵抗できないようにしてるのだー。」

「あのね、私たち今魔王様に用事があって、すぐにでも全員で旅に出たいの。洞窟に入って寝ちゃったらもう会えないと思うの。だからもしよかったら一緒に旅しないかしら?」

 

いけ!私の全力のでまかせ!うわ、凄い睨んできてるじゃん!あーもう!どうにでもなれー!

 

「分かったのだー!一緒に旅してやるのだー。」

 

ふうううううぅぅぅぅぅ。たすかったああああああああああああああああああああ。

意外とちょろいっぽい。喋り方でも思ってたけど、頭は悪いかもしれないわね。

 

「あとね、少しだけお願いがあるんだけど。いい?」

「いちいちめんどくさいやつなのだー。聞くだけ聞いてやるからとりあえず言ってみるのだー。」

「ローズとアルルなんだけどね。このふたりきっと操られてるときより操られてない時の方が美味しいご飯が作れると思うの。解放してあげられない?ほら、私とアミリスはもう仲良しなんだから、ローズとアルルもずっと一緒にいてくれるわよ!」

「わかったのだー。うまい飯を作ってくれるのなら解放してやるのだー。」

 

そうすると手を叩くミリス。なんか、凄い原始的な洗脳の解き方ね。

 

「んんー……おねえさまー……あいしてるー、……んあっ!お姉さまに危険が迫ってるニオイ!危ないお姉s」

「はああああ!」

「あいたあああっ!はっ!お姉さま!」

「おぉ、おー、よしよし、お姉さまですよー…………。」

 

「変なこと喋る前にアルルは抱きしめることで黙らせる。そして

 

「…………。むにゃむにゃ。んあー。」

「ローズさん、ご機嫌はいかがですか?」

「んー、オルガー、、んー、、、ふふふ、イヤン、そんなところ触っては…………人の前ですー。」

「ローズさん?ローズさん?」

「ふんっ!」

「グベラッ!」

「あああああ!ローズさん!!!!」

 

怪しい挙動をしそうだったローズをこぶしで黙らせる。ローズとアルルにはあとで口裏合わせ無きゃ。

魔王の右腕を仲間に加えるというとてつもないパーティは、魔王城への訪問のために旅を続ける。

 

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