アズールレーン~~交錯する想い~~ 作:結城
ある日、この世界の海は炎に包まれた。
『セイレーン』。
突如として海に出現した謎の勢力。その目的は、出現以降現在に至るまで不明。分かっている事は、セイレーンの出現によって人類の制海権は悉く奪われた事。超常的な技術を持つセイレーンに当時の人類の兵器群は無力であり、人はセイレーンの力に敗北し、敗走した。
やがて、人々はセイレーンに対抗すための、国家の枠組みを超えた組織、『アズールレーン』を結成し、かつて存在した軍艦の力を持った少女達、『KAN―SEN』を生み出す事に成功。彼女達の働きによって、人類はセイレーンと互角に戦えるようになった。
一方で、KAN-SEN誕生以前からセイレーンと戦っていた兵士達が居た。人々は彼等を、『パイロット』。そして、その相棒である鉄の巨人を、『タイタン』と呼び称えていた。パイロットは、アズールレーン結成初期に誕生した兵種だ。彼等はタイタンと呼ばれる人型ロボットと共に戦場を駆け、戦った。だがセイレーンとの戦いは苛烈であった。大勢のパイロットとタイタンが命を落とし、海へと散っていった。
そんな中で生まれたKAN―SENたち。彼女達の出現によって、対セイレーンの主力はパイロットとタイタンから、彼女達へと移っていった。
しかし、それでも尚、最前線で戦い続ける、伝説とまで言われた4人のパイロットがいた。
これは、兵士としての生き方を選んだパイロット達と、兵器と人の合間で揺れる少女達の物語である。
ここはとある無人島を改造して創られた、もっとも新しいアズールレーンのための新設基地。その軍港には、大小様々な艦船が係留されていた。そして軍港近くの商業施設には、様々な服装のKAN-SEN、少女達が行き交っていた。仲間と談笑する者。買い物をする者など。
軍事基地とは思えないほど、賑やかで活気に満ちていた。
そんな基地を歩くのは、『ロイヤル』所属の戦艦、『プリンス・オブ・ウェールズ』と、『ユニオン』所属の軽巡『クリーブランド』だ。
アズールレーンの創設には4つの陣営が深く関わっていた。それが、『ロイヤル』・『ユニオン』・『鉄血』・『重桜』だ。そして今この基地には、ロイヤルとユニオンの陣営のKAN-SENが集められていた。今も、続々と主力が結集しているところだ。ちょうど、そんな事を話していたウェールズとクリーブランド。
「ウチからも凄い人たちが配属されるんだよ!一人はもっとも多くのバトルスターを手にしたユニオン最強の戦士!そして、もう一人は大戦初期から活躍する、『伝説の4人』の一人!」
「グレイゴーストと、確か、シューティングフェニックスと呼ばれていたな」
そう呟きながら、ウェールズは港の方を見つめる。
「我々ロイヤルからも主力と、同じく伝説の4人の一人が来る予定だ」
「へぇ!じゃあちゃんと出迎えないと!」
そう言って、クリーブランドは駆け出す。その後を追って歩くウェールズ。
しかし、二人は気づかなかった。自分達の隣を歩き去った、外套を纏った少女の事を。
港の停泊した空母のタラップから、白を基調とした服装のKAN-SEN、空母の『イラストリアス』が降りてきた。それを出迎えるウェールズとクリーブランド。
しかし、降りてきたのは彼女だけでは無かった。少女、と言う言葉が似合う小柄な、ユニコーンらしきぬいぐるみのような物を抱えているKAN-SENの女の子。
そしてもう一人。
「あ、ねぇもしかして……」
「あぁ。我がロイヤルに所属する、パイロットの一人だ」
3人目の人物の服装は、この場において異色だった。
戦闘用の物と思われる全身を覆うスーツ。体のあちこちに下がっているグレネードの類いに拳銃が収められたホルスター。何より特徴的なのが、頭部を覆い青白い光を放つヘルメット。腰元にあるスラスターのようなパーツ。
「お久しぶりです。『ミラー・エバンズ』中尉。っと、失礼。今は大尉でしたね」
一歩前に出て、パイロットであるミラーを迎えるウェールズ。
「久しぶりねウェールズ」
そう言って、差し出された手と握手を交わすミラー。
「で、そっちの子は?」
そう言ってクリーブランドに目を向けるミラー。
「あ、私はユニオン所属の軽巡、クリーブランドです!」
「はじめまして。ロイヤル所属のパイロット、ミラー・エバンズ。階級は大尉よ。よろしくね」
そう言って右手を差し出すミラー。
「は、はいっ!こちらこそ!」
対してクリーブランドも興奮気味に握手を返した。
伝説の4人は、その名の通り伝説的な強さを持っている。現在においても前線に立ってKAN―SENたちと共に戦う彼等4人は正しく生ける伝説なのだ。
そんな一人と出会ったクリーブランドが興奮気味である事を、誰も責める事は出来ない。
「ん?」
その時、クリーブランドはイラストリアスの後ろに居る少女に気づいた。しかし肝心の少女は恥ずかしいのかイラストリアスの後ろに隠れてしまった。
クリーブランドは、少女に微笑むが、再び隠れてしまった。
「え~っと」
「この子は『ユニコーン』。ごめんなさい。恥ずかしがり屋さんなの。気を悪くしないでくださいね」
「よろしく」
イラストリアスの説明を聞くクリーブランド。彼女は軽空母のユニコーンに改めて挨拶をするのだった。
と、その時。彼女達に大きな足音を響かせながら、一体の鉄の巨人が近づいてきた。それは、青い体と青白く輝くモノアイを持った巨人だった。
「っと、折角だから私の相棒も紹介しておこうか」
そう言って4人の方を向くミラー。
「おぉ!これってもしかしてタイタン!?」
「あぁ。私の相棒、イオン級タイタン、ST-2562だ。イオン、彼女達に挨拶を」
そう言って、イオンに挨拶を促すミラー。
≪はじめまして。私はロイヤル所属のイオン級タイタン、ST-2562です。これからよろしくお願いします≫
イオンは、4人の方を見つめながら女性的な声で挨拶を交わす。
「こちらこそよろしく。私はユニオンのクリーブランドだ」
≪データベースに人物を登録。ユニオン軽巡、クリーブランド。登録完了しました≫
「うん、よろしくねイオン」
と、クリーブランドは初対面のイオンと挨拶をした。
「それにしても、何だか以前より機体の形が変わったようだが?」
以前のイオンを知っていたウェールズがその事を指摘する。
「あぁ。女王陛下の意向だよ」
ミラーは、ため息交じりに頷く。
「ロイヤルの兵たるもの優雅で無ければ、とか言って。改修作業を受けてこの様だよ。あの子達は『プライムイオン』とかって呼んでるけど」
「プライムイオン。素晴らしいイオン、と言う意味か」
ウェールズは、ミラーの説明に頷く。
「と言っても、大して性能が変わってる訳じゃないんだがな。タイタンは相棒だが、兵器である事に変わりは無い。それが優雅さを求めて何になるんだか」
そう言ってミラーはため息をつく。
「兵器に優雅さは不要、か。それは私達に言って居るのか?」
「は?そんな訳ない。お前達KAN-SENは兵器じゃない。『戦友』だ」
そんなミラーの言葉に、ウェールズやクリーブランドたちは笑みを浮かべる。
その後、学園施設にある部屋に案内されたイラストリアスとミラー。あとこの部屋に居るのは、ウェールズとクリーブランドだけだ。
「女王陛下を始めとした艦隊も、今はこっちに向かっている。直に合流出来るでしょう」
ミラーは、そう言って被っていたヘルメットを脱いで後ろで縛っていたプラチナブロンドの髪を解いた。
「鉄血への対処も必要だろうが、そちらは?」
「変化はない。いや、拮抗状態というべきかな。それに、今は鉄血を相手にしているだけの状況では無くなった。でしょ?」
「……重桜、か」
ウェールズは、ミラーの言葉を聞き小さくその名を呟いた。
重桜と鉄血。かつてはユニオンやロイヤルと共にアズールレーンを結成した二国。
しかし今、その二国はアズールレーンから脱退し、新たな組織『レッドアクシズ』を結成。アズールレーン側とは現在、対立関係にある。
「重桜が動くのなら、この基地も最前線の一つとなる。戦力の増強は当然だな」
「……無駄な争いをどうして」
ウェールズの言葉に、どこか理解出来ないと言う風に呟くイラストリアス。
「人間だからさ」
それに答える人物がいた。人間、ミラーだ。
「人間は、遙か昔から戦ってきた。理由を挙げればきりがない。金や地位、物を得るため。自らの国を豊かにするため。武力でもって世界を統一し、統一国家による世界平和を謳って戦争をした国もある。結局、人が10人も揃えば皆主義主張は異なる。そう言った違いが、争いを生む」
ミラーは、どこか達観したような表情で静かに語る。いや、正確には既に達観している、と言うべきだろう。
ミラーとて、女であろうと数々の戦場で戦ってきた女傑だ。それ故に、戦争という存在を知っているのだ。
「言語の違い、肌の色の違い、思想の違い。文化や伝統の違いさえ、時には争いの火種になる。……それが、人間という存在なんだよ」
彼女は、そう言って紅茶に口を付ける。
「愚かだろう?人間なんて」
そう言って、ミラーは自虐的な笑みを浮かべながら3人に問う。
「まぁ最も、私もそんな愚か者共の命令に従って戦っている時点で、大した違いは無いのだがな」
そう言って彼女は出されていた紅茶のカップを片手で持ち、中身を飲み干した。
「……分かっているのなら、なぜ貴方は命令に従うのですか?」
「それは私が『兵士』だからさ」
イラストリアスの問いかけに、ミラーは即答した。
「時には納得出来ない命令だってある。理不尽な命令もね。だがそれでも私達は兵士だ。私も、そして今、伝説の4人と称えられている私以外の3人も、元は同じさ。祖国や祖国で暮す同胞を守るためにパイロットになった。皆同じさ。兵士だからこそ、命令に従う。それが、祖国のためになると信じているからな。だから、命令に従い戦う。……それが、兵士という物さ」
「……私には、分かりません」
「そうか。だが、『分からなくて良い』」
そう言うと、ミラーは立ち上がってヘルメットを被った。
「命令に従って戦う。それは兵士、そして、兵器の生き方だ。兵士には正義も悪も無い。ただ命令に従い戦う。そこに個人的正義を持ち込むようでは、兵士とは言えない。だが貴方達には、自我と呼べる物があるはずだ。……貴方達は兵器じゃない。KAN-SENと言う新たな人型種族だ。だから、分からなくて良い。分かってしまったら、貴方達は兵器になってしまうのだから」
それだけ言うと、ミラーは立ち上がって部屋を後にした。
やがて……。
「あのさ、ロイヤルのパイロットさんもあんな感じなの?」
と、クリーブランドが口を開いた。
「あんな感じ、とは?」
「うん。私もユニオンのパイロットに何度か会った事があるんだけどさ、彼も私達の事を兵器とは考えてないみたいで。いつだか言ってくれたんだ。私達は戦友だって」
そう言って、クリーブランドは嬉しそうに笑う。
「正直、嬉しかった。私達を友達と呼んでくれる人が居たから」
「そうか」
ウェールズもまた、クリーブランドの話を聞きながら笑みを浮かべる。
「パイロットとは、私達に一番身近な人だ。彼等が私達を友と呼んでくれるのは、内心嬉しく思う」
そう言って微笑みを浮かべるウェールズ。彼女自身も、彼等に戦友として認められている事には喜びを感じていた。
しかし、直後に彼女の表情が陰る。
「だが、私達は戦う為に生まれてきた。それは、紛れも無い事実だ」
「……そうですね」
イラストリアスは、自らの存在意義を改めてかみしめるように視線を落とすのだった。
一方、施設の外に出たミラー。その時。
「あ、あのっ!ミラーさん!」
「ん?」
不意に誰かが声を掛けた。振り返るミラー。そこに居たのは、ライトパープルの髪色の少女だった。
「あぁ、ジャベリンか。久しぶり」
彼女はロイヤルの駆逐艦、『ジャベリン』だ。
「はいっ!お久しぶりですミラーさん!ミラーさんもこっちに来てたんですね!」
「えぇ。ついさっきイラストリアスやユニコーンと一緒にね。その様子だと、元気にやってたみたいね」
そう言って、ミラーはジャベリンの頭を優しく撫でる。
「あっ。えへへ~」
一瞬驚き顔を赤くしたジャベリンだが、彼女はすぐに笑みを浮かべる。
「これからはここで一緒に戦う事になると思うから。よろしくね?」
「はいっ!」
ミラーの言葉に頷くジャベリン。
その後二人は並んで歩き出した。
「ミラーさんもいるって事は、イオンさんも来てるんですか?」
「えぇ。イオンなら港よ。今頃、タイタンを初めて見る子達に囲まれてるでしょうね」
そう言ってメットの下で苦笑を浮かべるミラー。
ちなみに……。
≪………≫
「「「「「………」」」」」
港の一角で待機しつつ、スプリッターライフルを右手に持って銃口を上に向けながら周辺警戒に当っているプライムイオン。しかしその足下には予想通り、大勢のKAN-SEN、特に駆逐艦達が集まっていた。
「これがロイヤルのタイタンか~」
そう言って、プライムイオンの姿をカメラに収めるユニオンの駆逐艦『グリッドレイ』。
「何だかヒロイックな感じね!気に入ったわ!」
同じく、ユニオンの駆逐艦『チャールズ・オースバーン』と、彼女と同じフレッチャー級駆逐艦のKAN-SENたち。
今現在、稼働可能な状態で現存するタイタンは10機と無く、加えて最前線で戦っているのはミラーを初めとした4人の相棒である4機のタイタンだけ。だからこそ、彼女達は初めて見るタイタンに興味津々だった。そして肝心のイオンはと言うと……。
≪多数の視線を検知≫
そんな事を考えながら警戒に当っていた。
場所は戻って学園施設。施設の外に出るミラーとジャベリン。
「ん?」
その時、ミラーは噴水の傍でオロオロと困り顔のユニコーンを見つけた。
「あれ?あの子は……」
「彼女はユニコーン。私達と同じロイヤルの軽空母だ。しかし困っているようだな」
そう言うと、ミラーは彼女の方に歩みを進めた。
「ユニコーン、どうした?」
「ひゃっ!?」
彼女が声を掛けると、ユニコーンは驚いたのか短く悲鳴を上げて振り返った。
「あっ。パイロット、さん。それと貴方は確か……」
「ジャベリンです!あの、それでどうかしましたか?」
と彼女が問いかけると、ユニコーンは少し表情を暗くする。
「ユニコーン、ユーちゃんとはぐれちゃったの」
「ユーちゃん?」
と首をかしげるジャベリン。
「あっ。それって、確か貴方が抱えていた一角獣の事?」
「はい……」
思い当たる節があったのか、ミラーが聞くと彼女は頷いた。
「ユーちゃんは、ユニコーンのお友達なの。どうしよう……」
困惑しているユニコーン。その時、ジャベリンが彼女の手を包み込んだ。
「大丈夫ですよユニコーンちゃん!私達が一緒にユーちゃんを探しますから!」
「え?」
「いつの間にか私まで。まぁ良いけど……」
やる気なジャベリンと、戸惑うユニコーン。更に苦笑交じりにため息をつくミラー。
その後、ユニコーンによってユーちゃんのスケッチが(若干美化された感じで)描かれ、そのスケッチブック片手にユーちゃん探しが始まった。
まずは人を探す3人。そんな中で……。
「桜、か」
ミラーは、街路樹として植えられた数多の桜を見上げながら、ポツリと呟いた。今、この島の桜はピンク色の花びらを咲かせている。そんな花びらの一枚が、彼女の前に現れ、差し出されたミラーの手の中に収まる。
「あれ?ミラーさん桜を見た事あるんですか?凄い綺麗ですよね~!」
「あぁ。少し、な。戦友の故郷で、綺麗な桜を見た事があったんだよ」
微笑を浮かべながらも語るミラー。
しかし彼女は、二人にバレないように、桜の花びらを握った手を、ギュッと握りしめるのだった。
「あ、見てあそこ」
歩いていると、ジャベリンがベンチに座る人影に気づいて近づいていった。
「ぽかぽか……」
その人影、と言うのはユニオンの駆逐艦『ラフィー』だった。彼女はKAN-SENのドリンク、酸素コーラを飲みながらのんびりしていた。
「あの~すみません」
「ん~?」
そんなラフィーに声を掛けるジャベリン。
「ユーちゃん、知りませんか?」
「……」
問いかけるユニコーンだが、そもそもユーちゃんが誰なのか分からないラフィーは誰?と言わんばかりの表情だ。
「ユニコーン、絵を見せてあげて」
「あ、はい」
ミラーに促されるままスケッチブックの絵を見せるユニコーン。
「お友達とはぐれちゃったみたいなんですよ。何か知りませんか?」
と、ラフィーに聞くジャベリンだが……。
「……上手」
「ッ////」
「いやそこじゃなくて……」
帰ってきたのは絵の感想だった。それに照れて顔を赤くするユニコーンとツッコみを入れるミラー。
「見覚えありませんか?」
と言うジャベリンの問いかけに顎に手を当て考えるラフィーだったが……。
「……おねむ」
「あぁ!お休みの所ごめんなさい!次、どんどん行きましょう!」
と言う事で、次に行こうとする3人。だったが……。
「困ってる?」
「「え?」」
突然の言葉に振り返るジャベリンとユニコーン。
「ラフィーも手伝う」
こうして、新しくラフィーも加わった4人は、基地のあちこちを回り、そこで出会ったKAN-SENの少女達に色々聞いてみたが、有力な情報は得られなかった。
しかし、そんな中でロイヤルの駆逐艦である『アマゾン』から、ユーちゃんの目撃情報を得た4人は、島の未開発地域へと向かった。
一方、その頃、その未開発地域では、あの時ウェールズやクリーブランドとすれ違った外套の人物が、海を見渡せる崖の近くに立っていた。その時。
『ザ……』
後ろで何かを踏む音が聞こえた。外套の人物は振り返る。しかしそこには誰も居ない。……かに思えたが……。
次の瞬間、まるで突然そこに浮かび上がったかのように、人影が現れた。それは、ミラーと似た、しかし細部が異なる装備を纏った人物だった。
「少佐」
「作戦行動中だぞ、『ゆず』。そちらの状況は?」
「あ、すみません『師範』。港の構造は大凡把握できた、です」
師範、と呼ばれた人物は、声から男である事が分かる。ゆずと呼ばれた少女も、静かに話す。
「作戦開始まであまり時間が無い。あの『二人』が攻撃を開始した時、俺達は、ッ。何か来る」
「えっ?」
師範は、こちらに近づく足音に気づいて、咄嗟に纏っているスーツの機能、『クローク』、即ち光学迷彩を展開し、景色に溶け込むようにして消えた。
すると、ゆずの方に向かって、コロコロと白い何かが転がってきた。ゆず、いや、重桜所属の駆逐艦『綾波』は自分の足にぶつかったそれを抱き上げた。するとそれ、羽の生えた一角獣のぬいぐるみ(?)、ユーちゃんが綾波の手の中で暴れる。そんなユーちゃんに彼女が思った事は……。
「変な生き物、です」
その一言だった。
「ユーちゃ~ん!」
その時、基地の方からユニコーンやジャベリン、ラフィーが走ってきて、ミラーもその後に続いて歩いていた。
「ッ」
その時、ミラーは相手を見て一瞬足を止めた。彼女はそのまま周囲を見回す。ミラーは周囲を警戒しているが、ジャベリン達はそんな事知らずに、綾波に自己紹介を始めていた。
そして、ジャベリンが綾波の名前を聞いたその時。
『ビュゥンッ!』
何かが4人の頭上を通過した。突然の事に驚いて頭を下げるジャベリン達3人。ミラーもその音に気づいて、音の正体を探ろうとする。が……。
『ッ!?しまった!』
彼女が気づいた時には、綾波は姿を消していた。彼女は、綾波の所属する勢力を知っていた。
『……『重桜』所属の彼女がここにいる意味はただ一つ。潜入任務。だが、それだけとは思えない』
「ジャベリン、ユニコーン、ラフィー」
まさかの事態を警戒し、ミラーは3人に声をかけた。
「貴方達は今すぐ港に向かいなさい。それと、艤装も完全装備の上で海上待機。私はすぐにクリーブランド達と合流するから」
「え?え?ミラーさん、急に何を?」
彼女の出す指示に、ジャベリンは戸惑う。
そんな彼女達に、ミラーは告げる。
「……私の予想が正しければ、このあとすぐ、敵の攻撃が始まる」
「え!?」
彼女の言葉に驚くユニコーン。
「まさか、セイレーン……!?」
「……かもね。私はウェールズ達に知らせてイオンと合流するから」
ジャベリンに答えると、ミラーはパイロット専用の装備、『ジャンプキット』の跳躍力と加速力を生かして、駆け出した。
「……セイレーンなら、まだ良いかもね」
彼女達に聞こえないように、そう小さく呟きながら。
「ウェールズ、聞こえるウェールズ」
「ん?」
クリーブランド達と一緒にいたウェールズ。その時、部屋に据え置かれていた通信機からミラーの声が聞こえてきた。席を立ち、通信機に歩み寄るウェールズ。
「こちらウェールズ。どうした大尉」
「ウェールズ。今すぐ、基地全体に第一種警戒態勢を宣言させろ」
「ッ。第一種警戒態勢?なぜだ大尉」
「先ほど基地内にて、未確認のKAN-SENを確認した。恐らく重桜所属の者だろう」
「ッ!?何だと!?」
「うぉっと!……ど、どうしたの?」
ウェールズの叫びに反応するクリーブランド。しかし、今の彼女はクリーブランドを一瞥しつつも、すぐに通信に耳を傾けた。
「今、ジャベリンとユニコーン。それとユニオンのラフィーを港の方に向かわせた。私の思い過ごしならそれで良いが、そうで無ければ、攻撃が……」
と、ミラーが言いかけた時。
『ビーッ!ビーッ!ビーッ!』
港の方から大音量の警報が鳴り響いた。
「ッ!?何だっ!」
その警報は、部屋に居たウェールズ達の元まで届いた。
「これは、イオンの警報……!?」
そしてそれは、基地に戻ったミラーの耳にも届いていた。
その時、基地全体にイオンのスピーカーから流れる警告が届いた。
≪こちら、ロイヤル所属のイオン級タイタンST-2562。遠洋にセイレーン艦隊を確認。こちらに接近中。KAN-SEN各員は戦闘態勢に移行せよ。繰り返す……≫
「セイレーン!?」
驚き椅子から立ち上がるクリーブランド。
「くっ!?こんな時に!」
ウェールズは苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。そして、彼女は通信機を操作し基地のスピーカーをONにする。
「警報を鳴らせ!第一種戦闘態勢!動ける者は艤装を展開!海上にてセイレーンを迎撃せよ!これは訓練ではない!」
基地の各地に設置されていたスピーカーから、ウェールズの指示が飛ぶ。
「私も出るよ!」
そう言うと、クリーブランドは上着を引っ掴んで部屋を飛び出した。
「ちっ!?間の悪い奴らだ!」
ミラーもまた、綾波捜索を打ち切り、早々に港に向かう。
「イオン!戦闘の用意は!?」
≪既に完了していますが、海上戦闘用装備が未装備です≫
「そうだった!スキー板(海上戦闘用装備)は無いが、埠頭から迎撃を開始する!用意出来てる!?」
≪スプリッターライフル、レーザーショット、ヴォーテックスシールド、トリップワイヤースタンバイ。いつでも戦闘開始可能です。パイロットの合流を待ちます≫
「了解!待ってなさいよ!」
ミラーはイオンの元へと駆ける。
そして彼女が港に着く頃には、既にセイレーンの艦載機による攻撃が始まっていた。そして、艦載機の機銃掃射がミラーにも向かう。が……。
「はっ!」
ミラーは壁に向かって跳躍。更に壁を蹴って3点飛びの要領で右から左へと飛び、更に壁に手を突いて走る。
到底生身の人間には出来ない動きを、難なくこなす。パイロットだからこそ出来る、三次元機動。これこそがパイロットをパイロットたらしめる所以。
だが、それだけでは無い。
「そこだっ!」
ミラーは、ホルスターに収められていたカスタムリボルバー、『ウィングマン・エリート』を抜き放ち、撃った。
狙うは、こちらへ向かって迫る艦載機の翼下、パイロンに懸架されたミサイル。
『ドゥンッ!』
放たれた弾丸は、吸い込まれるようにミサイルの弾頭に命中。
『ドォォォンッ!』
盛大な爆発と共に吹き飛ぶ艦載機。高速移動、すなわちスプリント中の射撃などパイロットからすればお手の物。中でも激戦と言われたセイレーンとの大戦初期を生き延びたミラーなら、これくらい簡単な事だ。
着地と同時にスライディングで物陰に隠れながらも周囲の様子をうかがうミラー。そして見つけた。彼女の視線の先では、プライムイオンがスプリッターライフルを手に艦載機を攻撃。更に傍に居た仲間のKAN-SEN達を、物理攻撃を受け止め跳ね返すシールド、ヴォーテックスシールドで守りながら戦っていた。
そのイオンに向かって駆け出すミラー。
「イオンッ!」
ミラーが叫べば、イオンのカメラアイが彼女の方を向く。そしてイオンはヴォーテックスシールドで受け止めていた銃弾やミサイルを敵機に向かって撃ち返した。たまらず回避行動に出る艦載機。その隙にミラーはイオンに向かって跳躍。
空中に躍り出たミラーをイオンの左手が優しくキャッチし、開いたコクピットの中へ彼女を入れる。
≪パイロットモードオンライン。おかえりなさい、パイロット≫
「こちらはロイヤル所属のパイロット、ミラー・エバンズ大尉だ!KAN―SEN各員は艤装の展開急げ!それまでこちらで時間を稼ぐ!」
そう叫びながら、ミラーはイオンの背面に装備されている武装、レーザーショットの照準を動かし、レーザーをチャージしながら敵機の動きを見て未来予想を行う。そして……。
「当れっ!」
『ビシュッ!』
閃光と共に放たれた一筋の光が一瞬で艦載機を貫き爆散させる。
更にスプリッターライフルの銃身が稼働し、横一列に並んだ銃口から同時に3発の光弾が放たれ艦載機を撃ち落としていく。
そして、海岸線ではクリーブランドが到着していた。海へ向かって駆けるクリーブランド。
「海上の騎士クリーブランド……!」
彼女は、海へと続く桟橋の上を走る。その時、ちょうど港に停泊していた艦艇が青白い光に包まれ始める。かと思うと、何と艦艇が分解され青白いキューブへと変化。
「出る!」
桟橋から大きく跳躍するクリーブランド。彼女の眼前には、艦載機が迫っていた。するとそこへ分解されたいくつものキューブが飛来し彼女へと向かって行った。
すると、分解された艦艇が再構築されたかのように、彼女の装備、『艤装』が展開される。艤装、つまり彼女の武装の3連装砲塔が火を噴き、艦載機を撃ち落とした。
そして海面に『着地』するクリーブランド。本来ならば、沈み行くはずだったが、しかし彼女はKAN―SENだ。クリーブランドは海上に浮き、滑るように駆ける。
「どうだ!人類がお前達セイレーンに対抗するため、生み出した切札!」
海上を滑るように移動するクリーブランド目がけ、艦載機がミサイルを放つ。ミサイルの爆発で大きな水柱が上がる。
だが、その中から飛び出してきたクリーブランドは無傷であり、反撃の一射が艦載機を撃ち落とす。
「それが、軍艦の力をこの身に宿した私達!お前達を倒す力だぁ!」
クリーブランドと同じように、周囲では様々なKAN―SENの少女達が次々と艤装を展開。セイレーンの艦載機に対して攻撃を始めていた。その中にはジャベリンとラフィーの姿もあり、彼女達の働きによって粗方の艦載機は撃墜されて行った。
だが、それを見ている者達が居た。一人は、外套を脱ぎ去った綾波。もう一人は、ミラーと似たスーツに身を包んだ人物。
「……やはり艦載機程度ではこんな物か」
スーツに身を包んだ人物、重桜のパイロット、『井上 明』少佐は応戦するアズールレーン
のKAN―SENを遠巻きに見つめながら呟く。
「師範。そろそろ……」
「あぁ。そうだな。基地の粗方の設備と規模、敵の兵力も大凡理解出来た。それと綾波。もうコードネームはいいぞ?」
「はい、了解です『少佐』」
「よし。行け。俺もローニンと合流し、奴の相手をする」
そう言って、明の視線は埠頭に立つプライムイオンに向けられていた。明は、しばしその姿を見つめると迷いを振り払うように駆け出した。
やがて、KAN―SEN各員の奮戦もあり艦載機は軒並み撃墜された。
「ふぅ」
それを見て、一息つくクリーブランド。
しかし、ふと彼女は気づく。周囲を飛び散る桃色の花吹雪。それは、桜の花びらだった。
「そう。人類はセイレーンと戦う為に私達を創った」
そして、同時に響き渡る女の声。全員が周囲を警戒する。
≪警告、前方海域より敵増援≫
そこに飛んでくるイオンの警告。彼女達はすぐさま前に視線を向ける。
「だけどやがて理念の違いにより4大陣営は二つの勢力に分かれる」
その時、海上をまるで蜃気楼のように舞う桜の花びらの壁を越えて、艦影が姿を現す。
「一つはお前達」
と、更に新たな女の声が聞こえる。
「あくまでも人類の力だけでセイレーンと戦うユニオンとロイヤル」
「そしてもう一つ」
桜の花びらの壁を越えてきた艦。その艦首に刻まれた紋章は、5枚の花弁を持つ桜の花。
「その紋章は……!」
クリーブランドがその紋章に驚く。いや、正確にはその紋章を持つ船が今ここにいる事に驚く。
やがて露わになった艦船は、2隻の空母だった。そして、その空母の甲板に立つ女。彼女らはまるで九尾の狐のように大きな尻尾を持っていた。
KAN-SENには、その所属によって若干の姿に差異がある。そして、重桜所属のKAN-SENの特徴は、殆どの者が獣のような耳や尻尾を持っている事。
「セイレーンを倒す為なら、セイレーンの技術をも利用する鉄血と、私達重桜」
その時、二つの空母から艦載機が発艦する。
「重桜一航戦、『赤城』」
「重桜一航戦、『加賀』」
「「押して参る」」
2隻の空母が戦闘を開始した事で、まるで炎のような艦載機が飛び回り、アズールレーンのKAN-SENたちに攻撃を仕掛ける。何とか応戦する彼女達だが、焼け石に水状態で、既に混乱しつつある。だが、そこに今度はアズールレーン側の迎撃機が現れ、制空権を取り戻そうと襲いかかる。
それは、ロイヤルの軽空母、ユニコーンの放った部隊だった。ユニコーンは、巨大化させたユーちゃんに跨がり、空へと上がると、迎撃機を放って赤城や加賀の航空機部隊を攻撃する。
しかし、それ故に加賀の眼を引いてしまった。
「あの娘、空母か。あんな痩せた体では食い出が無いが、獲物は獲物」
そう言って、狐の面を青い炎で燃やす加賀。すると、空母が光と桜の花びらに包まれ、何と巨大な、艦艇のパーツを鎧のように纏った白い狐となってしまった。
「えぇぇぇぇぇっ!?」
まさかの事態に驚く事しか出来ないクリーブランド。
「喰ろうてやるぞ!」
加賀の指示に従うように、狐は甲板を展開しそこから艦載機をユニコーンに向けて放つ。
「させないっ!」
それを見ていたジャベリンがユニコーンを援護しようと手にした槍から攻撃を放とうとする。
「イオン!ユニコーンを援護するぞ!」
≪了解≫
更にミラーも、イオンのスプリッターライフルで対空射撃を行おうとした。
しかし……。
≪警告!後方より接近警報!≫
「何っ!?」
突然の警報。ミラーは殆ど反射的にスラスターを吹かして横へ飛ぶ。
『ドンッ!』
直後、ほんのコンマ数秒前までイオンが立っていた場所に何かが着弾する。
すぐさまミラーは攻撃が来た方にライフルを向けるが、直後、彼女の指が一瞬強ばる。
そこに立っていたのはプライムイオンと比較してもかなり細い手足に横一列に並んだ水平3連ショットガン、『レッドウォール』。背中に装備された、一振りの剣。その胴体に黒で描かれた『侍』の文字。
ミラーにとって、それは今この状況で最も会いたくない人間を現していた。
「『ローニン』。それに、その文字。お前、アキラか」
『久しぶりだな、ミラー』
ミラーがスピーカーを通して語りかければ、ローニンに乗っている明の声が聞こえる。
「なぜ重桜がここに」
「宣戦布告、とだけ言っておこう」
そう言うと、明のローニンがレッドウォールを構える。
それを見たミラーもライフルを構える。チラリと視線をカメラに向ければ、上空のユニコーンが加賀の艤装である白狐の放つ攻撃に晒されている。
『くっ!?無理だ。アキラに背中を向ければ、確実にブロードソードの餌食にされる!』
歯がみするミラー。
一瞬の静寂。と、次の瞬間。
『バスッ!』
レッドウォールが火を噴いた。放たれた散弾の雨。しかしミラーはそれをヴォーテックスシールドで受け止め、即座にローニンに向けて撃ち返す。
しかし、ローニンは背中の剣、ブロードソードを抜いて返された銃弾を弾き、プライムイオン目がけてスラスターを吹かし突進。斜め上段からソードを振り下ろす。
「うっ!?」
ミラーはスラスターを吹かし横に避ける。距離を取ってライフルの銃弾を見舞う。
しかし、ローニンはその優れた機動性とブロードソードを盾にして攻撃を回避する。
「ちっ!?」
ミラーはその明の腕に舌打ちしながらも牽制を続ける。
『味方ではあんなに心強い仲間が今は敵か!分かっていた!分かっていたが、ここまで厄介な敵になるのか!アキラ!』
今のミラーに、ユニコーンを援護する余裕は無い。ジャベリンも、姿を現した綾波と戦っていてラフィーはジャベリンを綾波の雷撃から庇って負傷。戦える状態ではなかった。
そして、ついに白狐の攻撃がユニコーンを捉える。
彼女の華奢な体を爆炎が包み、ユニコーンは海上へと落下する。
「ッ!?ユニコーン!」
それを視界の隅に捉えていたミラーが叫ぶ。彼女はユニコーンに迫る白狐を攻撃しようとするが……。
「させんっ!」
「くっ!?」
今の彼女はローニン、明の相手で手一杯だ。
白狐はゆっくりとユニコーンに近づき、その小さな体を喰らうべく大口を開く。
「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
クリーブランドの叫びが響く。しかし、誰しもがユニコーンの最期を予見していた、刹那。
『フライトコア、レディ』
一瞬の静寂の中に響き渡る電子音声。
次の瞬間。
『ドドドドドドドドドッ!』
ユニコーンを喰らおうとしていた白虎の体に無数のロケットが突き刺さり爆発する。苦悶の叫びを上げながら体を倒す白虎。
その時、高速で飛来した何かが、海上に倒れるユニコーンを優しく掴み、後方へと下がった。
埠頭に着地し、ユニコーンを下ろす『何か』。地べたに座るユニコーンは、自らを運んでくれた相手、ローニンにも似た細長い手足の鋼の巨人、『ノーススター』を見上げた。
「大丈夫か、お嬢ちゃん」
そのノーススターのマイクを通して聞こえる声。
「あ、えっと……。貴方、は?」
「あぁ俺は、と言いたいところだが、挨拶は後だ。そこで休んでな!」
そう言うと、ノーススターはすぐさま飛び立ち、そしてプライムイオンと戦っていたローニン目がけて牽制の『クラスターミサイル』を放つ。
プライムイオンに接近しようとしていたローニンは、眼前に着弾し炸裂するミサイルを避けるために後ろへと飛ぶ。
「よ~。久しぶりだな、アキラ」
すると、ノーススターのマイクから聞こえる声。それは、明がよく知る相手の物だった。
「……ノーススター。やはりお前か、アル」
「あぁ。まさかお前とこんな形で再会する事になるとはな」
そう言うと、彼はノーススターのプラズマレールガンを明のローニンに向ける。
直後、レールガンから放たれた攻撃をフェーズダッシュで回避するが、回避して出現した先を狙ったミラーの攻撃に、明は防戦一方に押し込まれていく。
「あ、あの機体は、ユニオン唯一のタイタン、ノーススター級タイタン!って事は、ウィルソン大尉か!」
クリーブランドは、上空を飛行しながら攻撃を行うノーススターを見上げながら表情をほころばせる。
「おのれ……!」
防戦一方に押し込まれるローニンを援護しようと、艦載機を放つ赤城。
しかし、その艦載機をどこかから現れた別の艦載機が撃ち落とす。
「何っ……!?」
驚き、その艦載機が来た方へと目を走らせる。
すると、アズールレーン基地を攻撃する重桜艦隊の更に遠洋に、1隻の空母の姿があった。
「間違い無いっ!あの船こそ私達ユニオンの最強空母っ!」
援軍の到着に、微笑を浮かべるクリーブランド。
更に戦っていた明たちも、その手を一時的に止めた。
「……あれがユニオンの切札、と言う訳か」
「あぁ。そういうわけだアキラ。どうする?」
スピーカー越しに聞こえる声。
「投降するなら、かつての仲間のよしみだ。丁重に扱ってやるぜ」
ここでユニオン最強の空母を言われる敵の参戦。明は現時点でイオンとノーススターを相手に防戦一方に押し込まれている。そこから聞こえるアルの降伏勧告。
が……。
「……元仲間であれば知っているだろう。アル、俺は、そう言う人間ではないという事をっ!」
次の瞬間、リチャージが完了したフェーズダッシュでローニンがノーススター目がけて距離を詰めてくる。
「はっ!相変わらず真面目で任務に忠実かよっ!お前らしいなっ!」
そう言って飛び上がり斬撃を避けるノーススター。しかしアル自身、分かっていた事だ。
そして、現れたユニオン最強の戦士。彼女の名こそ……。
「『エンタープライズ』っ!エンゲージっ!」
史上初の原子力空母、『エンタープライズ』と同じ名を冠するKAN-SENだった。
彼女の乗っていた空母が分解、再構成され彼女の艤装となる。
そして、彼女は海の上を駆ける。敵を倒すために。
未知なる敵、セイレーンによって一度は危機に瀕した世界。それを、団結によって一度は退けた人類。
しかし時間が再び、彼等を互いの敵とした。
それぞれの思惑、意思、思想。相容れぬ存在によって、彼等は再び争う。同じ人間を、KAN-SENを敵として。
4人のパイロットと数多のKAN-SENたち。今、戦場で彼等、彼女等の思いが交錯する。
第1話 END
とまぁ、こんな感じです。楽しんで抱ければ幸いです。感想や評価、お待ちしてます。