チャンピオンと俺たちの邂逅の次の日。学年末テストが終わり休みになったので、早速俺はヒトカゲとトレーニングをする。
トレーニングと言ってもレベル上げではない。確かにポケモンは他のポケモンとの戦闘経験で急激に強くなる不思議生物ではあるが、それでも生物だ。
骨があり、それを筋肉が覆い、血が通っている。そのため単なるレベル上げだけではなく基礎身体能力の向上も必要だ。そしてそれはポケモンだけでは無い。
旅をしてパーティメンバーを集めるにあたり、野生の中でポケモンと戦う機会があるのは当然。そして公式戦ならいざ知らず、野生のポケモンと戦う際に最も注意すべき点が、トレーナーへのダイレクトアタックだ。
彼ら野生のポケモンにルールなどない。生き残るために戦う時、強靭な肉体を持つポケモンよりも脆弱な人間を狙う事は自明の理だ。
「ということでトレーニングだ。ヒトカゲ、ニャスパー」
「カゲッ!」
「ニャ〜」
ふむ、ヒトカゲはやる気十分だがニャスパーはそうでも無いらしい。
このニャスパーは俺の父さん母さんがそれぞれもつニャオニクスたちの子供だ。現在は父さんが所有しているが、旅に出る時に譲り受けることになっている。父さん達はどうやらそこそこ名の知れたエリートトレーナーだったらしく、ニャオニクス達も結構強い。ジムバッチの数は5つだそうだが、1つ取るのも難しいこの世界ではかなり優秀な方だそうだ。現在はスポンサーのツテでどちらも会社勤めだが。
「よーし。それじゃあ君たち、トレーニングを始めていくぞ!」
「「「お願いしまーす」」」
3つの声が重なる。そう、あの馬鹿ども、普段は全くそんな事しないクセにいきなり俺に媚びへつらい、このトレーニングに参加しやがったのだ。まぁ1週間ほぼパシリに出来たのでそれはそれで面白かった。
「まずは基礎体力の向上だな。筋トレは器具は渡してあるから家で後で配るメニューをしっかりこなすように。過度にやり過ぎると逆に筋肉を傷つけるから気をつけろ。それじゃあこのランニングコースをトレーナーは5周。ポケモンたちは体が小さいから3周だな。準備運動は終わったな?そんじゃ、よーいスタート!」
この日から俺達のポケモン育成兼自身の体力強化が始まった。
◓▫▫▫▫▫
「つっかれた〜〜」
「カゲェェ」
「ニャ...」
家に帰り布団に倒れ込み一息つくと、だからやりたくなかったのだと言わんばかりの視線がニャスパーから突き刺さる。が、
「いやお前サボっとったやんけ」
「...」
父さんが他のとこ見てる時にお前の体がちょっと浮いてたのを俺は見逃してないからな。ねんりきでも使ってただろワレ。
「こりゃ明日は筋肉痛だな。しかし...」
まぁ父さんもそれを見すえているのか暫くは2日に1回でやると言っていたがそれにしても気になることがある。
「思った以上に走れたんだよなぁ。前だったら中学生でもあんなに走り続けるの無理だったのに」
そう、何故か知らないが基礎体力が前世の世界の時より上がっている。というかこの世界の人が思った以上に強い感じだ。原因は分からないが。
「まぁ別に悪いことでもないか」
「カイトー、お風呂洗ってくれなーい?」
「はーい」
思考を中断し、母さんの要望に答えるべく1階の風呂場に向かう。
「とりあえずトレーニングを続けつつ、アイツらが新しいポケモンゲットするまではこのままでいいかな」
今日はヒトカゲと(自分のポケモンではないが)ニャスパーでマウントを取れたが奴らが新しいポケモンを捕まえない保証はない。一応仮ポケモン所有権ではバトルさせることは原則禁止なのだが性格の悪い奴らのことだ。法律の合間をぬってゲットしてくる。そうなったらむしろ自分のポケモンではない俺が不利になってしまう。それだけは避けねば。
「一応近くに生息するポケモン調べとくか...」
そんなことを考えていると、
「カイト」
「ん?何父さん」
「いやちょっとお願いがあってな...」
◓▫▫▫▫▫
「ということでこれあげる。ありがたく受け取りたまえ」
「「ははー!」」
「あ、そこ乗るんだ」
次の日、ルダンとソティアに会ったので昨日父さんに頼まれてたものを渡す。
「何コレ」
「トレーニング用のナイフの模型。次のトレーニングから使うって」
「俺たちは何をやらされるんだ...」
言うな。俺もちょっと思ってたんだから。まぁでもやりたいことは理解できる。旅の中でポケモンに襲われた時に多少対抗出来るくらいにはなっておかなきゃダメって事だろう。いやでも6歳児に匍匐前進やらせるのはどうかと思うぞ父上よ。
「結構重いわね」
「実物と同じ大きさ、同じ重さ、同じ重心らしい」
「.....それ結構高いんじゃないのか」
「うちの親、別に授業料とか払ってないんだけど」
「じゃあ俺に貢げよ」
「せめて親父さんにしろよなんでお前なんだよ」
「配達料」
「着払いなのコレ!?」
「でも旅出る時はまた別で餞別あるから楽しみにしとけよって言ってた」
「マジで親に授業料払ってもらおうかな...」
ポケモンを出すには親がいないといけないので今日は出せない。まぁ用事済んだしこのまま解散でもいいんだが
「ねーカイトたちきょうはあそばないのー?」
「いやすまん。みんな筋肉痛が酷くて...」
「きんにくつー?」
「いいなーポケモンもってんだろー。ちょっとみせてよー」
「大人いないとダメなのよ。だから無理」
「「「「えーーーーー」」」」
元々目立ってたのもあるがやはりポケモンをこの歳で持っているというのは憧れるらしい。さっきから質問攻めにあっている。
「おれもいつかポケモンゲットしてめっちゃつよいポケモントレーナーになるんだ!」
「あたしポケモンパフォーマーになる!」
「なあちょっとだけ!ちょっとだけいいでしょ?」
「いやダメだって。俺らが没収される」
「えーでもー」
「...ガキねー(ボソッ)」
「お前と同い年だぞ」
「それブーメランだって自覚してる?」
「残念俺は中身違うから」
「?」
(容疑者の弁明)
いや仕方ないんですよ。確かに本編というかポケモンバトルには全く関係ないんだけどだっておかしいじゃん?たかが10歳とか12歳とかのガキが森の中で旅とかしてたら普通動物に食われんじゃん?確かにアニメとかゲームって子供向けだしそんな描写ないけどさぁなんかおかしくね?って思ったら頭にどんどんアイデア湧いてきて護身グッズとか発展してそうだなーとかでも街中じゃ危ないからその辺大変そうだなーとかじゃあこんな感じなら大丈夫じゃね?とか色々出てきちゃって...(まだ続く)