「あ〜あ、結局負けてんじゃん」
万が一を考え、場所を変えていた男はカイリキーが敗北する様もその目にしっかりと捉えていた。気まぐれからの手助けも結局意味をなさずルカリオ達の方に軍配が上がった。
「やっぱカイリキー用に作ったやつじゃ他のポケモンには効果が薄いかなぁ〜」
手持ちの強化薬を打ち込んだヘルガーはスペック自体は上がっていたのだがちょくちょくの思考の停滞や断続的な拒絶反応から見るにカイリキーの強化具合と比べるとヘルガーの強化は雲泥の差であった。
「これじゃ
今後の研究に面倒事が増えたと溜息をつきつつ憂鬱そうな表情を浮かべる。
「てかあんなガキに邪魔されるとか。ないわ〜マジないわ〜。ふざっけんなよな〜マジで。こういうのがあると萎えるんだよなぁ〜?」
行き場のない負の感情は半ば八つ当たり気味にカイトに向かい、男の端正な顔立ちが怒りに歪む。
「あのガキ次なんかしたらマジで殺す・・・・・。それはそうと流石に俺の存在くらいはバレてそうだなぁ〜。・・・・・・・逃げっか」
ボタンを押せば背中の装置が起動、今度はジェット機のような形に変形し、フワリと男の体が浮く。
「おっと忘れてた。俺人の顔覚えんの苦手だからなぁ〜」
パシャリとカイトの顔を写真で撮ると今度こそ男は空の彼方へと消えていった。
◓◓◓▫▫▫
「ん?」
「どうした?」
「いやなにか悪寒が・・・・」
「おいおい大丈夫か?この後ジムに挑むんだろ?楽しみにしてるからな」
「あぁ・・・」
なんだったんだ?なんて言うかベトベターの視線を感じた時と似た感じで悪意たっぷりにしたような感じだったが・・・・・まぁいいか。
「ほら行くぞ。カイリキーとヘルガーをポケセンに運ばんといかん」
「あ、うん」
あの後一応近くを捜索したのだが黒幕の手掛かりは全く無かった。だがカイリキーやヘルガーの突然の暴走に俺達を妨害するようなネット飛来は人の手の関与を裏付けるには十分な証拠になる。ジュンサーさんのとこに行って報告しておけばいいだろう。
「あ、そういえばゴウエンさん。ジムリーダーってどんな人なの?なんか街の人もあんまり詳しく知らないらしいんだよね」
「ん?あぁそうか。最近変わったばっかだからなぁ」
前のジムリーダーはこの街出身で筋肉脳筋バカみたいな人だったらしい。街の人との関係性も良好でジムか街中で食べ歩きかトレーニングルームのどこかにいたという。だが1年ほど前、別の街出身のほのおタイプ使いにその座を譲ったとか。新しいジムリーダーは時折チャレンジャー達を軽くあしらう様子を見るに強さは本物らしいのだがそれ以外では自室にひきこもっているとかなんとか。
「まぁ悪い人ではない。ないんだが・・・・・・人付き合いが苦手なタイプでな」
「ふーん・・・・・」
「ま!ちゃんとジムリーダーとしての仕事はこなしてる。安心して挑みに来い!カイト!!」
「はいはい」
肩を組んできて暑苦しいゴウエンだが人柄に関しては信頼している。嘘をつくような人では・・・・・というかこの街には嘘をつけるような人がいない。プロフィールとか見る限り若い男の人なんだが・・・・・
まぁ誰であれキッチリ対策して真正面から張り倒すだけだ。だけどそろそろメンバー増やさないとな・・・・・・・あそうだ。
「なぁベトベター、俺たちと来ない?」
「ベタ?」
「いやさ。共闘して中々楽しかったし俺としては一緒に旅したいなーって考えてるんだけど」
「ベタァ・・・・・」
ふむ。考え込んでるな。だが甘く見るなよ。前世での俺の姉と似たような目をした貴様の趣味趣向は何となくわかっている!!
ベトベターの顔の横、耳の辺りに口を近づけ小さな声で囁く。
「人の中にもね?お前みたいな趣味のやつがいるんだよ。そういう人たちが描いた漫画っていう絵がメインの本があってね?こういうのなんだけど・・・・・」
スっとスマホに撮したのはネットで急遽調べて表示させたポケモン同士のBL同人誌。ベトベターの目がカッと見開かれる。
「一緒に来てくれたらこういうの読ませてあげられるし・・・・・戦果を挙げたら更に買ってやろう」
完全に餌で釣っている訳だがこういう関係も別に珍しくはない。誰も彼もがポケモンとの友情でパーティを揃えている訳では無いのだ。
ベトベターの目は完全にその同人誌に釘付けになっている。そこに更に一押し!
「なんなら道具揃えるからベトベター自身に描いてもらっても」
ガシッ
俺の肩を掴みすごい目力で見つめてくるベトベター。スっとボールを差し出せばなんの迷いもなくボールに入って行く。フッ。
「ベトベターGETだぜ」
チョッロ
◓◓◓▫▫▫
「はいこれ」
「ベタァァァァァァァァァ!!!」
俺が買った漫画を描くための道具一式を見てベトベターが目を輝かせる。既に三冊ほど買ってやった同人誌を目をハートにしながらハァハァ言いながら読んでいた様は・・・・・うん。まぁ正直気持ち悪かったがそれはそれ。うちのパーティは個性を大事にするパーティだ。筋トレ大好きストイックリザードにサイコパワーを活用したダラダラ生活を楽しむニャスパーにリザードと共に心身を鍛えまくるコジョンドにBL大好きベトベター。うん。中々個性豊かなパーティになってきたじゃないか。出費が激しい分はまぁ、働いてもらうとして、だ。
「さて。面倒事も解決したし、メンバーも増えた。コンディションを整えて一週間後、ジムに挑戦するぞ!!」
おう、と片腕を上げる仲間達に頷きながら、トレーニングルームへ向かうのだった。
トレーニングルームに群がる筋肉達を見て約一名を除きぐったりすることにもまた、なるのだった。
◓◓◓▫▫▫
「・・・・・これとこれを混ぜて、熱を加えてそのまま暫く放置すれば・・・・・これで理論上はできるはずなんだが・・・・・」
真っ暗な部屋の中、一人の青年が研究に勤しんでいる。
「あぁまた失敗だ・・・・・くっ、かれこれ一週間もかけて実験し続けていたのに・・・・・はぁ、もういいや。一旦別の事しよう」
部屋にこもり繰り返した実験がまたも失敗した事により実験にうんざりした彼は今度は開発に取り掛かる。
「既存のやつがこんな感じだからなぁ。更に効率よくするためには・・・・・うーん、ここをこうした方が・・・・・いやでもそうしたら逆に使いにくくなるか・・・・・」
パソコンに表示した設計図とにらめっこしながら思考を加速させる。その時パソコンからピロン、と通知を知らせる音が鳴る。
「ん?あぁチャレンジャーか。バッジは二つ、そこそこか。何時もよりは張合いがあるといいんだけど・・・・・」
椅子に深く腰掛けるとまたパソコンをカタカタさせて思考の海に浸かる。
その脳裏に、ある者たちの姿を浮かべながら・・・・・。
黒幕の男の背中の装置はミニオンシリーズの発明品みたいなぶっ飛び化学技術だと思ってください。背中の箱から何でも出てきます。