Unbeständige Träume 作:gh0sttimes
朝。
紅魔館の自室で目覚めたレミリアは呼吸の仕方を忘れたかのように息を切らしていた。
しばらくして、深呼吸で息を整えたレミリアは鏡を見た。
目の下には黒く、はっきりとした隈ができていた。
この数日間、レミリアは全くと言っていいほど眠っていなかった。
徹夜で重要な作業をしていたわけではない。
それほど重要な仕事はしていなかったからだ。
それに、レミリアは徹夜できるほどの根性と体力の持ち主ではなかった。
もし、そのような体力で徹夜をしたのであれば、次の日に起きられなくなってしまうだろう。
レミリアが眠れない理由は他にあった。
「はあ・・・ またこの夢ね・・・」
ベッドに入るたびに鮮明に映る恐ろしい悪夢が原因であった。
レミリアはしばらく考え込んでいたが、咲夜が扉をノックしたことで形成途中の思考は凍りついた。
「入って。」
レミリアがそういうと咲夜は「失礼します」と言ってゆっくりと入ってきた。
「お嬢様。朝食の準備ができました。」
「分かった。すぐに行くわ。」
レミリアは寝不足で思考と離れてしまっている身体を無理矢理動かし、部屋を片付けた。
咲夜はまたゆっくりと部屋から出ていった。
片付けを終えたあと、レミリアは部屋をあとにした。
食堂に入るとフランが椅子に座っていた。
レミリアが来たことに気付いたフランは笑顔で迎えた。
「おはよう!お姉さま!」
「ええ、おはよう。今日も元気そうね。」
レミリアは少しぎこちなく答えた。
そして、席に着いたレミリアは食事を取り始めた。
その間、フランはずっとレミリアのことを見ていた。
「ねえ、お姉さま。最近疲れてるみたいだけど大丈夫?」
心配そうな表情を浮かべながらフランは聞いた。
「問題無いわ。ただちょっと夢見が悪いだけよ。」
「ふーん・・・ どんな夢なの? 私で良ければ相談に乗るけど。」
フランの言葉を聞いたレミリアの顔には一瞬影が差したが、すぐに元に戻った。
「本当に大したことじゃないから気にしないで。それより早く食べないと冷めるわよ。」
「うん、そうだね。」
それから二人は黙々と食事を続けた。しかし、レミリアの脳裏からは夢の内容が離れなかった。
(なんなのかしら・・・あの夢・・・)
レミリアが考え込んでいる間にフランは食事を終えてしまったようだ。
そのことに気づいたレミリアはすぐに食事を済ませた。
二人が食器を下げに行った時、レミリアはボーッと考え込んでいた。
「お嬢様?どうされましたか?」
咲夜に話しかけられたことで我に帰ったレミリアはハッとした顔になった。
「なんでもないわ。」
「左様ですか。何かありましたらいつでも仰ってください。」
「ありがとう。その時は頼むわ。」
その後、特に会話をすることもなく二人はそれぞれの仕事に向かった。
そして、自室に戻ったレミリアは再び考えた。
(あれは何だったのかしら・・・ 私が殺される夢なんて縁起でもないわ。でも、なぜか妙にリアルに感じたわ。)
レミリアは考えるのをやめて眠りについた。しかしその日も眠ることはできなかった。
さらに数日経ったある日のこと、レミリアは自分の部屋の机に向かって仕事をしていた。
そんな時に突然扉が開かれた。そこにはフランがいた。
「お姉さま!遊ぼ!!」
「ごめんなさい。今忙しいの。後で相手してあげるから待っていてちょうだい。」
レミリアが答えるとフランは不満げな顔をした。
「えー!?私は今遊びたい気分なのに!!お姉さまの意地悪!!」
フランがそう言うとレミリアの顔に影がかかった。
「あなたはいつまで経ってもその調子ね。自分の立場を理解しているのかしら?」
「うっ・・・ そ、それは・・・」
「まあいいわ。今は急ぎの仕事もないから一緒に遊んであげましょう。」
「ほんと!?やったぁ!!!」
フランは無邪気にはしゃいだ。それを見たレミリアは微笑んだ。
それからしばらく二人でゲームをしたり、お喋りをして過ごした。
すると、時間が経つのはあっという間であった。
「もうこんな時間ね。おやすみ、フラン。」
「おやすみ、お姉さま。また明日ね!」
フランが部屋を出たあと、レミリアはまた仕事を始めた。
レミリアが仕事をしている間は時計の針の音と紙を捲る音だけが部屋に響いていた。
そして、しばらくして一息ついた頃、扉をノックする音が聞こえてきた。
「入っていいわよ。」
「失礼します。紅茶をお持ちしました。」
咲夜が部屋に入ると、レミリアは目を丸くして固まっていた。
「どうかされましたか?」
不思議そうな表情で咲夜が聞くと、レミリアは我を取り戻した。
「い、いえ、なんでもないわ。ありがとう、咲夜。」
「かしこまりました。では、失礼します。」
咲夜が出ていったあと、レミリアは少しの間、意識と体を切り離していた。
しばらくして、意識が現実に帰ってきたことで、レミリアは我にかえった。
「はあ・・・ 今日は疲れたわ・・・」
そういうと、レミリアは乱雑な机上の書類を整理し、ベッドに入った。
疲れていたのか、レミリアの意識が夢に落ちていくのは一瞬であった。