Unbeständige Träume 作:gh0sttimes
大妖精は人里の喧騒に揉まれていた。
大都市の喧騒になれていなかった大妖精にとっては比較的辛いものであった。
しばらくして、彼女は無名な木陰の一つに腰を下ろした。
彼女は木の前を風に流される無数の塵のように歩いていく人々をボーッと見つめていた。
体力がなかった。
精神が弱かった。
人里で楽しむのに十分なものを持っていなかった。
ただ、適応する能力がなかったのだ。
ここ数十年で幻想郷は大きく変わったように思える。
掴みどころのない妖怪の山の河童や、正体の掴めない月の科学が人里にも伝わり、人里が近代化されつつあることもその一つである。
しかし、その変化の波の中でも変わらなかったことは一つだけある。
未だに人間の為政者が出ていないということだ。
これは幻想郷のバランスを保つための暗黙の了解であり、幻想郷内戦を防ぐ目的があった。
そのため、妖怪の山守備隊の特殊部隊が人里に紛れ込んでいるという問題を博麗の巫女は黙認している。
幻想郷での妖怪という存在はディープステートそのものである。
博麗の巫女と契約し、多数の種族が共存する幻想郷の安定を守っている。
最も、妖怪と博麗の巫女の密約は幻想郷の住人たちの間ではただの陰謀論者の戯言として片付けられ、誰も気にすることはない。
これに気づいた者が人間の為政者を出そうとする。
この時、妖怪が誰にも気づかれないように、
そして、自警団は博麗の巫女の圧力で事件を<未知の不可抗力>として片付けるのだ。
それ以上の詮索は許されない。
それが崩れてはならない幻想郷の複雑なシステムであり、幻想郷の闇である。
我らは敵地を進撃す
我らは悪魔の唄口ずさむ
四方に敵があろうとも戦い続ける
たとえ一人になろうとも戦い続ける
悪魔はあざ笑い 無駄だと言うだろう
アハハハハハ!
兵士は楽園のために果敢に戦い続ける
-人里自警団の歌
ある昼の暑い日。
博麗神社の縁側で狂信的に何かの呪文を書きなぐっていた博麗霊花。
彼女が顔を見上げるとそこには光に包まれた霊樹の姿があった。
霊樹に言葉を投げかける霊花。
しかし、それは霊樹に届くことはなかった。
そして、彼女が瞬きをしたその時・・・
霊樹の姿は妖怪に無惨に食い殺され、鮮血がこびりついた死体へと変わった。
次の瞬間、頭の中で痛みが爆発し、倒れ込む霊花。
霊花の意識は、そこで途切れた。
正義は成されよ。よしや世界が滅ぶとも。
-神聖ローマ皇帝 フェルディナンド一世