ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

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こんにちは

投稿サボったせいか例のクソ感染症を患って更に投稿が遅れました。

やっぱりサボっちゃダメだね(戒め)
投稿してない間も見たり評価したりしてくれたユーザー達に感謝ですよ。




#6

 

 

 

 カズのウォーリアーが無惨に破壊されたが、元が4対1。こっちの勝ちが揺らぐ事もなく、バンがハカイオーにとどめを刺した。

 

 カズがやられるまでハカイオーは調子が良かった。ただピークはウォーリアーを破壊したまでで、その後は拍子抜けするくらい淡々と事が進んでいった。

 

 アミが見つけた弱点を共有し、バンと俺が注意を引いて、三影とアミがずっと回り込み背面攻撃を仕掛け、最後は余力を残していたアキレスの必殺技ライトニングランスでとどめを刺した。

 

 アキレスはバンのもの、郷田の意思決定に四天王が反論する訳もなく、入口とは別のルートでスラムを後にした。薄暗い裏路地を抜ければ、何もない空き地と学校と反対にある大通りに出る。

 

 郷田にも勝ったし、アキレスも返ってきた。スラムからも無事に出られて日常の景色に戻って来れた。

 

 普通なら喜ぶけど、バンはカズのウォーリアーの事を悔やんでいる。

 

「ごめん、カズ…」

 

「気にすんなよ、バン。アキレスも取り返したし、俺たちは何もなくスラムから出られた。それでイイじゃねぇか」

 

 バンの性格をよく知っているカズは、いつも通りヘラヘラして何ともない雰囲気を出す。

 

 バンはバンでそんなカズの態度に、「分かった」と言うが、それでも気にしているらしい。人の事を思う余りに思い詰めすぎるのがバンの良いところであり、悪いところでもある。

 

「それしても郷田の奴、何であんなことしたんだろうな」

 

「分からない。”守っていた”って言うのも、何から守ってたのか検討もつかないし…」

 

 今の段階じゃ、バン達も店長も、地域で有名な不良が下町の人気店で万引きを働いた。そう言う認識でしか無い。

 

 実際はバンの父親が檜山蓮を通し、更に郷田ハンゾウに通して起きた出来事だった。

 

 バンの父親は形だけだが軟禁状態で、外に出ることができない。檜山蓮も、今は自分の手を汚して足をつけたくは無い。ただ、檜山には地下大会(アングラビシダス)を経て、自分を尊崇する郷田ハンゾウがいた。

 

 郷田は未成年の上に学生、ただの不良学生の万引き。世間ではそう処理され、郷田の不良としての面子は泥を被るけど、檜山蓮として足がつく事はない。最悪、バレてもレックスとしての経歴を捨てればいいだけ。

 

 ここまで考えてるからは分からないけど、向こうもよく考えてるって事だけは何処となく伝わってくる。

 

「そこまでする理由 あった?」

 

「バンはフレーム分が必要だから死活問題だったけど、郷田先輩はちょっと……」

 

「そもそも、あの郷田を鼻で使える人物って、どんな奴なのかしら?」

 

 とまぁ、現状のバン達の認識はこんな風に、そこまで深く分かるはずも無い。

 

「まぁ、そんな事よりカズのLBXだな」

 

「ストライダーフレーム どう?」

 

 有無を言わさず三影がサッとカズに詰め寄る。女性に人気なストライダーフレームで、同年代や先輩の女子は大半がこのフレームだ。

 

 ただ、プレイスタイルと合わないのか、すぐに他のフレームに走るプレイヤーが少なくない数居る。

 

 実際、ストライダーフレームに関しては新型が出る事もなく、ナイトやブロウラーと比べても偏った性能。あと一年もすれば変わるかも知れないが、現状は扱いきれずに扱いやすい環境フレームであるナイトやブロウラーに流れて行く。

 

 自分が使っていると言うのもあるが、三影としてはアミ以外に同志を増やしたいらしい。

 

「いやぁ……今すぐは、ちょっとな?」

 

「三影、ステイ。カズが困ってる」

 

「…… ん」

 

 三影をカズからやんわり引き離す。

 

 長年の付き合いがないバンやアミでも分かるくらい、三影はスゴイションボリしていた。

 

 今薦めでもどのみちハンターが手に入るから、その必要はあんまりないと思う、と言うかないぞ…………なんて、口が裂けても言えないから、胸の中にしまっておく。

 

「兎に角、今日は帰りましょう? 色々あり過ぎて疲れちゃった…」

 

「じゃ、今日はお開きで。各自帰り道は気をつけて」

 

 そう言ってバン達と離れ、自分の家へと帰宅する。

 

 

 

 

 

 

 

 

@ _________@ _________@

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、言う感じで今日の放課後は、キタジマで時間を過ごしている。

 

 前もそうだったけど、自分のクラスは担任が授業切り上げるのが早いせいで、バン達と終業時間が噛み合わない。だから何かしらで時間を潰す必要があったんですね。

 

 今はずっと貸し出しのLBXを店長と一緒に整備している。

 

「助かるなぁ悟。最近忙しくて、殆ど手をつけられなかったんだ」

 

「大丈夫ですよ。自分も整備のこと知りたかったんで」

 

 親父が言うに ”上手く扱うのは二流のすること。一流は整備も扱うのも上手くなくちゃいけない”

 と、言うらしい。

 

 プロチームでもないなら整備専門の人員なんていないし、自分の物くらい把握してないと、いざって時にちょっと無茶ができないし、出先で壊れても自分で修理出来ないのは不味い。

 

「あ、店長」

 

「ん? なんだ?」

 

「ちょっと相談がありまして」

 

 整備中の雑談の流れで、バンがカズの事で悩んでいる事を伝える。アキレスを盗んだ郷田の事と、アキレスを取り返す為に至るまでの経緯。

 

 結果的に自分を庇った事でLBXを失ったカズに、バンが少なからず負い目を感じている事。

 

「カズがLBXをねぇ………」

 

 郷田の被害者達の容態は様々。LBXを辞める者、郷田がトラウマで学校に来ない者、郷田にコリて学校ではLBXをしない者。

 

 郷田と同レベルの実力者が存在しないから、現状負けた側に逃げ場はない。

 教師も首輪がつけずらい郷田を避けている。真っ向から彼に論する事が出来るのは自分とバン達の担任くらい。

 

 勝負には負けたが試合には勝ったカズはマシだけど、バンに郷田が負けた事は、仙道がバンと戦う時に初めて知ったのを見るに、まだ周知されていない事実。

 

 カズが勝ったと言いふらすとは思えないけど、言ったところで虚言として受け取られそうなのが関の山。

 やっぱり負けた人間に厳しすぎるような気がする。

 

「分かった。俺からもバンに何か言っておこう」

 

「お願いしますよ」

 

 バンみたいな人間は全部自分が悪いって言う考えをする事がある。友達思いなのはいい事だ。ただちょっと自惚れがすぎる気がする。

 

 いい事なんだろうけど、受け取り側が違えば不愉快になる事だってある。ジンとかそこら辺は気を付けなきゃいけない。

 なんて事考えつつ、仕事はしっかりこなして行く。グリスを塗り終わって、パーツクリーナーで拭き取ってカウンターの上に一つずつ並べて置く。

 

「あぁ!そうだ悟、届け物があるんだ。頼まれてくれるか?」

 

「別に大丈夫ですよ」

 

 カウンターの下から現れた鞄を受け取る。

 バンがいつも身に付けてる肩掛け鞄と、同じ種類のものだ。

 

「忘れ物がな。河川敷に居るはずだから、届けてやってくれ」

 

「じゃ、ちょっと行ってきますよ」

 

「おう! 頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんありがと〜」

 

「今度は気をつけてね」

 

 場所も近いし、言われた通り持ち主は河川敷に居たからそんな手間取るような事はなかった。

 

 小学生くらいの女の子に、荷物をサッと渡してサッと去る。ポリシーでもなんでもないけど、用がないならさっさと帰る。河川敷に1人、それでいてやる事もないし。

 

 鞄を受け取った女の子はせっせと駆け足で川辺の一団に向かって行く。どっかのハーフか、えらく綺麗な金髪が目立つ子だった。

 

 やっぱり子供はいいね、こういう時は見てて和む。決して相手が女子だからという訳じゃないよ、断じて。

 

 ちょっと(よこしま)な自分が出てきそうな気がして、自分はノーマル、なんて考えながら堤防へと階段を上がって行く。

 

「………ん?」

 

 階段の途中、見慣れた姿が目の前から階段を降ってくる。

 

 柄が悪いのは元からだけど、更に目つきと顔つきが悪くなり何処となく近寄り難い雰囲気を出す、いつもとは違うカズだった。

 

「よ、カズ。バン達と一緒じゃないの?」

 

「………」

 

 こっちの問いかけに返事はない。ただし、睨みつけるような目つきでこっちを見てくる。

 

「……山野バンじゃないが、まぁいいか」

 

「何言ってるんだカズ?」

 

 知っているとは言え、心配して見せたがこっちの都合はお構いなし。いつものチャラい感じは抜け落ちていて、強気で他人を見下している様な所は、何処かの幼い強化人間を思い出す。

 

 これを無意識に他人にさせる催眠術か、マインドコントロールの類か。改めて末恐ろしいなぁ。

 

「悟、バンを呼べ」

 

「バンを?」

 

「さっさと呼べ」

 

「まぁ、呼ぶけども……」

 

 渋々進んだ道を戻り、河川敷に降りる。

 

 徐にDキューブを放り投げてから、カズが懐から取り出したのはいかにもと言うLBX。

 

 これ以上話す義理はないのか、こっちに興味を示さなくなったカズは開いたDキューブの前で仁王立ち。バン以外の人間には我関せずと言った所。

 

「あ、もしもし? バン?」

 

 取り敢えず、バンには早く来てほしい。そう思いながら、CCMの向こうにいるバンに問いかける。

 

 

 

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