ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

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やっぱり書いた事ないものを書こうとすると書き直しが多発します。そして誤字も増えます。許して(懇願)

それはそうと、誤字報告して下さる方。
ありがとうございます



#2

 

 

 今日は珍しく何もしたくない、そう思う日だった。

 

 何をする訳でもなく、ただ日当たりがいい自室でラグを敷いて日光に当たりながら観葉植物みたいにじっとして昼寝して、たまに水分補給して二度寝の繰り返し。

 

 今日だけはスマホの電源も切って置きっぱなし。今日ばっかりは誰からの連絡も遮断していた。

 

 ただ、結果的に言えばこれは悪手だった。

 

「……」

 

 見慣れた黒髪に青と黒のボーダー柄のパーカーに身を包んでいる、見慣れた人間に抱き枕にされている。

 

 なんで家の中に平然と居るかはこの際は置いておく。今現在、深刻な事が自分自身に起きているのだ。

 

 人間の脳は事前に意識しないことはとことん意識しないが、理解した途端に視覚でも感覚でも聴覚でも、何のことか理解できてしまうしそれを自分の意思で忘れることができない。

 

 目覚めた途端に意識しなくてもいい情報が頭の中を駆け巡る。

 

 肌にダイレクトで伝わる胸の感触。いつも愛着してる部屋着が薄いせいで顕著に伝わる。

 言っちゃ悪いとは思うけど言わなければならない。三影は同年代と比べて胸の発育は本当に良い。

 アミなんて比較にならないくらい。下手したら年上にも劣らない、保証してもいい。

 

 いや、落ち着け。女子なんだから胸はあるし柔らかいのは普通。そう普通なんだ。人なんだから体温はあるし男と違ってそう言うところに気を遣ってるからいい匂いもする。だから別に触れてるからって恥ずかしく感じる必要はない。

 

 でも上がり続ける心音と熱くなる顔、男ってどうしてこんな単純なんだろうか。

 

 だが諦めたら終わりだ。

 抜け出そうとすれば抜け出せるんだからさっさと起きよう。そうしよう。

 

「んぅ……」

 

 三影の手を退けようとしたらさらに力を入れられた。そしてさらに押し付けられた。ただでさえ薄い装甲()を貫通してそのまま感触が伝わってくる。

 

 なんか足も絡みついてきた。もう何も考えたくない。

 脚部緩衝材も胸部緩衝材もない中、この大よろけ攻撃はもう殺しに来ていると言っても過言じゃない。

 

 犬猫みたいにペットと思えば多少気が楽になるかと思ったが、脳の変換機能がイカれてるのか猫じゃなくて三影のケモミミを出力しやがった。

 しかもケモナーより、馬鹿じゃないの?

 

「むぅ…」

 

 三影の攻撃は止まらない。

 絡めた足を離すまいと更に絡め、体全体を押し付けてくる。胸だけだった柔らかい感触が体全体に押し寄せてくる。

 

 女性には耐性があるって言った事あったが、女体に耐性があるとは言ってないし耐性つくほど触れ合ったことなんてない。

 

 幼馴染補正があっても無理なものは無理だ。ここまで破壊力があると理性のタガが外れてしまう。

 

 落ち着け悟。俺は盛った猿じゃない、人間なんだ。理性的になって行動するんだ。まず何をすればいい? 三影を起こす事だろ? そうすればこの苦難から解放される。

 

「三影……三影?」

 

「んぅ?」

 

 名前を呼んで何度か揺さぶると今まで聞いたこともない声を出して三影が目を覚ます。

 

「……来ちゃった?」

 

 言い訳としては理由になってない挨拶が出てきた。

 

「…三影、一回離れよ?」

 

「……」

 

 取り敢えずスルーして、離れる様に促すが、そう言った途端に腕でガッチリホールドしてきた。足は葛みたいに樹体を締め付ける様に絡めて体全体を押し付けてくる。

 

 密着して更に強まる女体の感触。抑えることができない煩悩。何が正解なのか神にも分からないはずだ。てか分かってたまるか。

 

「の、飲み物…取って来るからさ。あといつ家に来たのかも聞きたいし……」

 

「………分かった」

 

 なんかすっごい間があったが、取り敢えず三影は拘束を解いてくれた。

 

 安堵こそするが表には出さない。

 今の三影は何をするか分からない、慎重にならなくちゃならない。

 

 色々過激だった感触は消え去り、煩悩も過ぎ去っていった。

 三影に待つ様言って冷蔵庫を漁りに部屋を後にする。

 

 階段を降りてる途中で改めて残った三影の感触が頭をよぎった。

 柔らかかったし温かったし、柔軟剤とかシャンプーを抜きにしてもいい匂いだった。元々のルックスの高さのせいで普段見ることのない三影の表情が脳裏に焼き付いている。

 

「……いやぁ、卑怯でしょ」

 

 多分、今なら顔真っ赤になってると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サトルが部屋から居なくなって、部屋に私以外誰も居なくなる。

 

「————————ッ!!」

 

 悶絶した。

 寝ぼけていたとは言えあんな事してたなんて。恥ずかしいなんてものじゃなかった。

 

 今の私、多分トマトみたいに赤いかもしれない。

 耳も顔も熱い、心臓は音を立てて心拍数は下がる事なく上がっていく。

 

 顔だけじゃない。もう身体中熱い。恥ずかしさと感じた事のない未知の感覚で感情もぐちゃぐちゃだった。

 

 嗅いだ事のない不快感のない独特の匂い。近づくだけで聞こえていた心音に手を握る以外で感じたサトルの体温。間近で感じた吐息と声が余計頭の中をぐちゃぐちゃにしてくる。

 

「……やっぱり 無理だよ。母さん」

 

 逃す前に手籠にしちゃえばいいって母さんは言ってたけど、今の私にそれをする勇気はないって事が解った。

 

 いつも隣にいて当たり前だった。一緒に歩いて離すのが日常だったし、いつも隣に居るものだと思っていた。でも最近は違う。

 

 クラスは別で役職も全然違うから一緒にいる時間が減った。サトルがいない教室に違和感を覚える程くらいには、それが私の当たり前だったのかも知れない。

 

 普段会わないところでサトルが変わるのが怖いのかも知れない。でも、自分の意思だけを理由にサトルを縛るのはアミが言う「地雷女」になってしまう。

 

 でも離したくないのも事実で、それを偽ろうとは思わない。

 

「……でも」

 

 収穫はあった。

 

 サトルにも性欲はあった。

 寝ている合間に部屋中を探したけど、それらしい本が一切出てこなかった。

 

 コンビニとかのそう言うコーナーも見向きもしないし沙希さんを見ても特に目線が泳ぐこともなかった。よく鋼の意志がなんとかって言ってたけど、ただ女の人に興味が無いだけかと思ってた。

 

 でも、ちゃんとあった。

 胸に耳を押し付けて見れば、表情とは裏腹にバクバクと心臓を動かしていて、それが体温になって伝わってきた。

 

 そうじゃなくても心地良かった。

 隣同士で歩いたりするのとはまた別の、違った意味で幸福感が溢れてくる。

 

「…もっと」

 

 もっと感じていたい。

 長い時間、毎日、2人だけで。

 

 でも、そこにサトルの意思はない。あるのは私の意思と欲望だけ。

 

 誰にも盗られたくない。サトルは私だけの人であって他の人の為にいる訳じゃないって言う醜い欲。

 

 でも、思わずにはいられない理由がある。

 ちょっとした気遣いもできるし、誰に対しても基本は隔てなく接するし、物静かで、たまにドジするけど、やる事にはちゃんと芯を持って赴くし、口下手だけどちゃんと伝えてくれる。

 

 サトルは自覚が足りてない。

 自分が良かれとやってる事が、相手の好意と関心を惹きつけていることに。

 

 迷惑は掛けたくない。

 それでサトルから嫌われたら嫌だから。

 

 だから不安になる。

 そこに付け入れられて、名前も知らない奴が私からサトルを引き剥がすかも知れない。いつか不安が現実になるって。

 

 絶対に嫌だ。

 そんな事されるくらいなら醜かろうが蔑まれようが自分の欲望を優先させてやる。

 目の前で奪われるくらいなら、今すぐ既成事実なりなんなり取って見せつけてやる。

 人の関係に土足で入って荒らした上に、横から何もかも奪っていくなら殺してでもそいつから全てを奪って滅茶苦茶にしてやる。

 

「……ッ」

 

 自己嫌悪したくなる。

 要は私が見捨てらるのが怖いからサトルを縛り付けて、私の幸福を優先させてそこにサトルの幸福は含まれてない。

 

「…あぁッ!」

 

 欲望ばかりが溢れて来る自分に苛立つ。

 

 ただ感傷に浸ってばかりいられない。

 長い様で短かった1人の時間を終わらせる様に階段を登る足音が聞こえてくる。

 

 サトルが戻って来る。

 いつまでもこんな状態で居たら、サトルを心配させてしまう。

 

「ごめん。ちょっと手間取った」

 

「…ありがと」

 

 両手に飲み物とマグカップを持ってサトルが部屋に戻って来る。

 

 いつもの様に折りたたんでしまってある机をラグの上に広げて、そこに持ってきたものを陳列させる。

 

「さて、じゃあ色々聞きたいことがあるんだけど……」

 

 さっきと違って少し微笑んで見せる。

 

「事前に連絡くらいしなきゃ駄目でしょ?」

 

 あ、これ怒ってる。

 

 

 





「ちゃんともてなせないでしょ?」(接客業並感)

「…ん」
(やっぱり優しすぎる…楔打たなきゃ(使命感)
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