偏頭痛持ちには辛い季節になってきました。
車内や家にはバファリン必須。
呼びかけに応じたバンが、アミと三影を引き連れて河川敷に現れてから数分。最初こそ、カズの新しいLBXにバンは興味津々だったが、結局いつもとは違う不遜な態度に違和感を覚え、そのままカズから勝負を挑まれる形でバトルにもつれ込んだ。
そして今、バンの劣勢でバトルは続いている。
カズの行動も癖も全く変わっているし、バンは動きが読めずに地形に左右されながら戦う。
ただそれ以上に、バンが目の前の状況を飲み込まずに戦ってるっていうのがある。
そりゃ、昨日までへこたれてた知り合いが、今日には親の仇でも見る様な目つきと態度で勝負を挑んで来るんだから、何があったか気になって仕方がない。
「悟、ちょっと不味くない?」
「いや、まだ分からない」
「何故? カズが押して バンが押されてる」
大丈夫大丈夫。瀕死になったらVモードでエジプト破壊するから…………て、言えたらどんだけ楽だろう。
「バンのアキレス。店長も言ってたと思うけど、三影やアミとかの市販品と違って、カタログを見かけないんだ。それにバンの話だと、アキレスを狙ってる連中もいるんだろう? だから、あの機体って何かあるんじゃないかなって」
「悟のはどうなの?」
「あったら郷田先輩の時に使ってた。と言うか実力差的にあったなら使いたかった」
使いたいけど、システムを作る頭も施設もないから、無い物ねだりだけど。
載せるとしたらEXAMかHADESあたりか。ただ使うにしたってどちらもかなりリミッターを掛けないと、ちょっと怖い。
EXAMもHADESもそうだけど、基本システム機のシステム発動は一種のドーピングみたいなもの。発動時の効果が強ければ強いほど反動も大きくなってくる。
動く部分は悉く逝くし、センサー系も逝かれるし、コアパーツなんかはそう言う時の排熱考えてないから多分色々固着しちゃいそうだし、問題は山積み。
確実に道連れにできる時とか、退き口戦法で玉砕する以外はあんまり使う機会は無いし、毎回使うにしても整備に殺されてる。
それを考えるとVモードがどれほど異常なのか、分かってもらえるだろうか。少ない反動で過度なドーピングを行っても平気な機体とシステム作る辺、やっぱりあの博士世界救う気ないんじゃないの?
「………」
「クソッ!」
悪態をつきながらもバンは戦闘を続ける。
決定打を与えられないバンに、カズはただ攻め続ける。バンも次第に苛立ちからか、操作が荒く隙を見せるようになる。
そこを狙ってか、アキレスの攻撃を受け止めわざとらしくエジプトが怯んで見せる。
「そこっ!」
バンが食いつかないはずもなく、怯んだエジプトにアキレスのランスを一突き。
それを待っていたと、飛び出してくるランスを得意げに巻き上げる。
弧を描くことはなかったが、見事にランスを手放したアキレスに、決着を付けるべくそのまま畳み掛ける。一撃目を盾で躱すもナイルブレードか、エジプトの身軽さからか、アミのクノイチレベルの攻撃速度でアキレスを押し倒す。
「な!?」
「終わりだな」
無常に刺そうとするカズ。
咄嗟にアミが止めようとクノイチを出すが、それよりも先にエジプトのナイルブレードが振り下ろされる。
けど、それよりも先にアキレスの左腕が、エジプトの右腕を殴り壊すのが先だった。
「!?」
「な、なんだ……これ?」
アキレスが瀕死になった為、自己防衛の為「Vモード」が発動。バンのCCMが扇状に開き、アキレスが黄金に輝いた。
その後、システムの元で動くアキレスが、利き腕を破壊されたエジプトに襲いかかった。
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ほぼ暴走状態でリミッター無しのアキレスに、武器を取ることすら許されず、一転して一方的に嬲られた後にエジプトは破壊された。
システムの軛から解放されたカズは、正気を取り戻したが、やっぱり記憶の類は全くないと言う。
胡散臭い高架下の露天市で、エジプトを見つめた時から河川敷で仰向けになった所まで、まるで寝ていたみたいに記憶が抜け落ちているらしい。
兎も角。カズは不本意ながらも手に入れた2代目のLBXを破壊され、また一からスタートする事になる。
が、今日に関してはバンたちとは別行動だ。
「……で、親父。今日は何するの?」
「ちょっとな。知り合いが面白い事を考えたんだ。だから、悟のLBXで試してみようと思ってな」
珍しく呼び出されたと思ったら、親父の好奇心の実験台にさせられるらしい。
いつもと変わらない様子だけど、親父は嬉しい時と楽しい時は口角が上がる。態度では出てこないけど、顔によく出るタイプで逆に不機嫌な時は口角が下に僅かだけど下がってる。
今日はいつにも無く機嫌がいいらしい。
家に着くなり、親父の作業場兼自室に連れ込まれ、言われるがまま作業台の上にMk-Ⅱを差し出す事になった。
「それで。試したいことって?」
「何個か譲ってもらったんだが、まずはコレだな」
机の中から二つのパッケージを取り出す。
電子機器には必ず取り付けられている基盤、それよりもはるかに小さいものが封入されている。
「? 何それ?」
「この青いパッケージが”射撃補正プログラム” こっちのオレンジが”格闘補正プログラム”のチップ……らしい」
どっちもどこかのコロニーで酸素欠乏症になった人間が開発しそうな物品たちで、どこか聞き覚えのある名前だ。
多分、文字通り格闘と射撃に対して補正が掛かる、CPUとはまた別の何かだろう。
名が体を表しているのは解ったし、どう作動するかも大体は検討がつく。問題はそれをどうやってLBXに還元するのか。
「ここに側だけのCPUがある。これにプログラムのチップを差し込んで、コアパーツに組み込めば良いらしい」
「らしい……て?」
「説明書に書いてあった」
そう言いながら、断りもなくチップをCPUの中に差し込んでいく。
「それ、信用して大丈夫?」
「心配しなくても、父さんの知り合いは、この手の事じゃ結構有名なんだ。安心して大丈夫さ」
「……本当に騙されてない?」
「信じてないだろ? それなら、今度会わせてやる。きっと驚くぞ」
そう言ってMk-ⅡのCPUを取り外し、曰く付きのCPUと載せ替えた。
側を閉じて、フレームを付け直し、最後に適当に清掃した後、Mk-Ⅱを渡される。気分は何処かの軍属の息子。最も、向こうは胡散臭いシステムに半信半疑で、結局途中で捨ててたけど。
「後で付け替え方を教えよう。取り敢えずは父さんの作業机の棚に入れておくから、好きに使うんだぞ」
そう言って素早く部屋を後にして、上機嫌にそのまま外出していく。
何かを積まれたかは知らないが、結局実験台にされてることは変わらない。モルモット隊じゃないんだぞ。
「……はぁ」
親の身勝手さにため息を吐く。
変な細工をされて返されたMk-Ⅱを見る。ただ、自分としても、このプログラムがどこまで有効かは少し気になっていた。
「……試してみるか」
相手がいなければ実力は測りようがない。身支度を整え身軽になり、商店街へ向かう。