ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

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最近ファントムペインを始めましたが、カズヒラ・ミラーと宇崎拓也の共通点が多過ぎて同一人物に見えてしまう。



#9

 

 

 放課後の昼過ぎ。いつものメンバーでキタジマに集まっていた。

 

 というのも、珍しく教育委員会と教職員の会議が被ったから、午後の授業が無くなって空き時間ができた。

 

 特にやることもないし、カズの経過観察がてら三影と一緒に寄る事にしたら、バン達がって感じだった。

 

 一応メンタルは回復したが、カズのLBXは未だに決まっていない。ウォーリアーを使っていたしナイトフレームは、ってバンが言ったけど、ウォーリアーも若干だが使いずらかったらしい。

 

 カズは近接戦闘を好まないタイプのプレイヤーで、常に盾とハンドガンがセットだった。

 

 メインアームはハンドガン、サブアームがブロードソードと、スペインのアーキバスを連想させる武器編成だ。

 

 使える範囲だったから我慢していたが、失ってからその枷が外れて、欲望に素直になったらしい。

 

 なかなか自分の納得がいくものが見つからないもどかしさと、バンにアミにと迫られたカズも流石に疲労に負けて、キタジマを後にする

 

「カズが欲してるのは武器の性能? それとも自分が扱いたい武器を扱える丁度いい機体?」

 

「両方欲しい。でもカタログ見てもそれっぽいのはない」

 

「結局決まらずじまいね」

 

 表参道から少しされて、小さいながらベンチと自販機がある休憩所に屯っている。

 

 息抜きがてら、近くの商店から甘味と飲み物をせしめて、ベンチでくつろいでいる。

 

「条件。見直したり しない?」

 

「それでも決まんなくてな。ちょっと困ってる」

 

 空になったペットボトルをゴミ箱に投げる。

 

 割と遠かったが、難なくペットボトルは蓋にバウンドすることもなく、ゴミ箱の中に収まっていった。カズも割と自覚がないだけで、遠くの物に当てるっていう才能はあるらしい。

 

 そりゃあ、化けるよね。

 

 一息ついたところで、今度はマーヤにでも行ってみるかと談笑している最中。ある1人の成人男性が近づいて来た。

 

「失礼だが、君が山野バンくんだね?」

 

「そうだ……ですけど」

 

 普段のタメ口が出そうになってアミに突かれ、敬語に直す。

 

 目の前のオールバックの男性は宇崎拓也。世に名高いタイニーオービット社社長の兄を持つ、俗にいうやんごとなき一族だ。

 

 ただ兄より優れた弟はいないの法則なのか、作中ではかなりのヘマをしでかしたりと、少し問題がある人物だ。

 

「突然ですまない。だが、君たち優秀なLBXプレイヤーに、是非見てもらいたいものがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

@ _________@ _________@

 

 

 

 

 

 

 誘い方が今時誘拐犯が使いそうな謳い文句だったが、商店街の端にある、いつの間にか出来ていた喫茶店に入る。

 

 ホイホイついて行って大丈夫かと思ったが、なんだかんだでアミが警戒してたのか、目があった時軽くウィンクをして来た。

 

 やっぱり、中学一年なのに何処か抜け目ないのがアミの怖いところ。

 

 ……だから、ウィンクされて三影につねられるのは自分が原因じゃないはずだ。

 

「さ、奢りだ」

 

「あ、ありがとうございます……えっと」

 

「俺は檜山蓮。この店のマスターだ」

 

 カウンターは人数分は置いてなかったから、近場のテーブルに対面で座る。

 

 出されたほんのり苦いコーヒーを飲む。

 

 苦すぎず、かと言って苦くない訳じゃない。喉もすんなり通ってくし、匂いがいい。

 

「君達のLBXを見せてもらえるかな?」

 

「え、あ、うん…」

 

 一様に机の上へとLBXを並べる。

 

 檜山の目的はアキレスの所在だから、アキレスとMk-2以外はチラ見するだけだった…………

 

 ……ん? ちょっと待って。なんでMk-2も見てるの?

 

「……どれもよく整備されてるな」

 

「見ただけでわかるんですか?」

 

「あぁ、パーツは最新。関節も、フレームもちゃんと手入れしてある。特にこいつはな」

 

 手に取っても?と聞いて、バンは頷き檜山はアキレスを手に取って、身体中を舐め回す様に見つめる。

 

「アキレスって言うんです!」

 

「素晴らしいよ、こいつは。フレームは最新のタイプ、バランスもよく取れてる。いいLBXだよ」

 

 気が済んだのか、そう言ってアキレスをテーブルの上に戻す。次にMk-2を手に取って、これまた舐め回す様に見つめる。

 

「……こいつは見ないな。自作したのか?」

 

 劇中、登場回数が少ないこともあって、表情を滅多に変えない檜山が少し驚いて見せた。

 

「えぇ、親父と一緒に作ったんですよ」

 

 少し問題があるけど、自慢の親父だ。

 割となんでも直すし、融通も通してくれる。自分の趣味にはとことん目がなくて、一緒になって夢中になってくれる。

 

 まぁ、結局奇行ならなんやらのせいで相殺される訳なんだけど。

 

「武装もそうだが、かなり作り込まれてるな。フレームも自作とは思えないほど精巧で、それでいて滑らかなスタイル。デザインもかなりいい味を出してる」

 

「そこまでいいますか」

 

「あぁ。それに、君と親父さんはかなり物作りが上手いらしい」

 

 善意で言っているのか、皮肉で言っているのかは最中ではないが、かなり複雑な気持ちの様で、檜山の表情が少し硬くなった。

 

 気も済んだようで、Mk-2を手渡ししてくる。

 

「大切にするんだぞ。こいつ(Mk-2)も、親父さんも」

 

「…はい」

 

 少し言葉に重みがあったのは、気のせいじゃないはずだ。

 

 そんなこんなと雑談をしていると、カウンターの奥から宇崎が例のものを運んでくる。

 

 皆、一様になんなのかを確かめるべく、視線を釘付けにする。

 

「LBX…?」

 

 灰色の塗装に、人狼に似せたのか装飾品の尻尾や脚部や腕部に毛並みや爪の装飾が多々施されたLBX、ハンターだ。

 

 机の上に差し出されたハンターに、カズは視線を釘付けにされていた。

 

「名前はハンター。最新のフレームと安定した姿勢制御で、遠距離攻撃が得意なLBXだ」

 

 箱を開けると、バンダイが出していたハンターのプラモデルとほぼ同一の部品量に、部分分けされたランナーが入っていた。

 

 それを眺めるカズに気がついたのか、宇崎がとある提案をする。

 

「組み立ててみるか?」

 

「いいんですか!」

 

 手渡されたニッパとヤスリを手に、カズがハンターの組み立てに入る。

 

 

 

 

 

 

@ _________@ _________@

 

 

 

 

 

 10分近く時間が過ぎた頃には、ランナーはほぼ空になり箱の中にしまい込まれていた。

 

 今までのワイルドフレームとは違う面立ちに、初期からある武器が狙撃銃と言うのも、かなり特徴的だ。

 

 マッドドッグとかオルテガとはかなり違う。デザインも良し、性能は…………まぁ、これから分かることとして、あの天才が作ったものだから心配しなくても大丈夫だとは思う。

 

「実は、君たちに来てもらったのは、ただLBXを見せる為じゃない」

 

「……どういう事なんですか?」

 

 頃合いかと、檜山が目ね合図していたのか。宇崎がこのに自分達を連れてきた真の目的を話し始める。

 

「明日、新しい総理大臣の就任記念パレードがあるのは、知っているかな?」

 

「確か 財前宗介」

 

「あぁ、ニュースで忙しなくやってたな」

 

「あぁ…あの髪型が特徴的な人?」

 

「バン……」

 

 世間のニュースはうろ覚えで興味ありません、と隠そうともしないバンの発言に、若干アミが呆れていた。

 

 ただ三影の口から総理の名前が出てくるとは思わなかった。意外とその手の事に明るいらしい。

 

「そう。その財前総理の命が狙われている」

 

「狙われてるって…」

 

「あぁ。明日のパレード中、ある組織が行動に移すという情報を掴んだ」

 

 バンは勿論、突然の事で何が何だか分からない、と言った表情だ。

 

 知っているから驚かない、と言う訳にもいかないから、最もらしく驚いて見せる。

 

 しかし、やり口が巧妙だ。

 最初から目をつけてた癖に、偶然を装う………にはちょっと台本感が否めないけど、怪しまれない範囲……なのかな?

 

 まぁ兎も角、郷田と檜山がどの程度のやりとりを交わしたかは分からないけど、ハカイオー戦の時からここまでの段取りを予想して行動してたなら、怖いくらい正確な指示だ。

 

 そして、その段階で遅かれ早かれ身元を割って、檜山と宇崎を通じて新型のLBXを秘密裏に届ける。

 

 誤算が合ったとすれば、黒の組織がいち早く目をつけていたことくらいで、後はほぼあの博士のシナリオ通りだ。

 

「俺たちは、財前総理暗殺を阻止したい」

 

「その為に、君たちの力を貸してほしいんだ」

 

 会ったばかりの大人2人に、国家の命運を左右する事態に、流石のバンも即答という訳にはいかなかった。

 

 

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