ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

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秋って数年前から概念だけの存在だと思ってましたが、ようやく秋らしくなってきました。

来年も秋を迎えたいので杉科の花粉には今のうちに死滅してもらいたいですね(ヘイトスピーチ)



#14

 

 

 エンジェルスターに侵入してからと言うもの。そこらかしこから覗かれてる気がして嫌な気分になる。

 

 実際覗かれてるし仕方ないけど、人数が多いせいかバレるのも早かった気がする。

 

 地下3階へ降りて、地上と同様の手口でダクト内にLBXを進ませたけど、そこで妨害を一切受けなかった。

 多分だが、インビットと戦闘した時点で勘付かれて、先手を打たれた可能性がある。

 

 先が解ってても相手の意図が分かるわけじゃないから、この対応はリュウの件といい不安材料だ。

 

 ただ、ここまできて罠の一つで帰るわけにはいかない。どうせ帰り道で警備隊に捕まって監禁コースか、バンだけ別の場所に連れてかれるだろう。

 

 取り敢えず後退は不可能な為、そのまま制御室のダクト口まで進軍し、そこから室内を観察する。

 

「誰かいる?」

 

 室内には既に霧島 平次と神谷 藤五郎。そして八神英二の代わりに3人の護衛が待機していた。

 

 既に会話を始めているが、LBXの集音機能は所詮ホビーだから良くは無い為、途切れ途切れの単語しか聞こえてこない。

 戦闘距離が精々で数メートルだ。その範囲で音が拾えれば問題はない。例外的な企業製品もあるけど。

 

「何を話してるんだ?」

 

「任せて」

 

 アミがクノイチの集音機能のモードを指向性に変更し録音を行う。ブツ切れだった音が拾われ始め、聞き取れるレベルの会話が流れてくる。

 

《……失礼、八神くんかね》

《…そうだ。山野博士はまだ最深部に?》

《…えぇ、それで構いません。彼は我々にとって貴重な人物だ》

 

「父さんがここに…⁉︎」

 

 スマホ越しに話している八神との会話。嘘は混ざってないが真実ではないらしい。

 

 やっぱりこっちの探し物がバレてる。

 前からどっかに移される計画自体があって、今日のイレギュラーがトリガーになったらしい。

 

「ここが最深部じゃない?」

 

「多分 表向き」

 

「さっきのとは別のエレベーターが何処かにあるんだ」

 

「おい、あいつら出ていくぞ」

 

 殆どがCCMから視線を逸らしている間に、神谷一向は何処かへと消えてしまっていた。

 

「今のうちだ!」

 

 ダクト口から飛び出し、扉の制御コンソールを操作して管理室への扉を開く。

 

 誰もいないうちに廊下を走り抜けて管理室へと駆け込んで、自分のLBX達を回収する。

 扉を再びロックして、誰も入ってこれない様にしてからコンソール類を操作する。

 

「工程管理表、入荷台数、故障箇所……違う、これじゃない」

 

「区画のマップ情報……これかしら?」

 

 数撃てば当たる戦法で一つずつ確認していく中で、この地下工場の階層マップにたどり着く。

 

 1階2階よりも広い地下3階のマップが広がる。

 ただし、そこには管理室を含めた製造エリアや工具室なんかの保管所が載っているだけだった。

 

「ない…?」

 

「じゃあ、あの扉は何だってんだ?」

 

 自分達が入った扉とは別の扉が奥へと続いている。

 それに気が付いたバンが、カーソルを黒で塗りつぶされた箇所へ動かし2度クリックすると隠された通路が現れる。

 

 最深部というよりは、ここで使ってるイシテウス系の重機の動作確認で立ち入る施設で、それ以外は一般公開しても平気な部分だろう。

 

 確認する時間も惜しみそのまま奥の通路へと走りだし、エレベーターがあるフロアへと抜ける。

 

「行こう!」

 

 エレベーターを起動させ、地下3階よりも更に下の階へと降っていく。

 

 明るかった上層とは違い、薄暗く赤い非常ランプが付いているだけの不気味な空間にたどり着く。

 

 おそらく各種重機の試験場だろう。床に何かが擦った跡があるし天井も異様に高く通路も広い。

 

 そして大きな入り口の殆どがシャッターで閉じられている中、ひとつだけ子供ならしゃがめば通れる高さでシャッターが半開きになっていた。

 

 ……まぁ罠だよね。ここで引き返す選択肢はハナっからないから、入っていくけど。

 

 シャッターをくぐれば、最近では珍しくもない模範的な地下倉庫が広がっていた。中途半端に吊り下がったクレーンに、コンテナを抱えたまま停止したクレーンも残されている。

 

「ここにバンの親父さんが居るのか?」

 

「倉庫っぽい……いや、倉庫?」

 

 最新部に辿り着いてみれば、あるのはただの地下倉庫では拍子抜けもいいとこだ。

 

「兎に角、ここを探そう!」

 

 暗がりの中で手がかりを見つけようと、手分けして探索を始めるがそれも必要なくなる。

 

 降り切っていなかったシャッターが閉まると同時に、このエリアの照明が一気に点灯する。ダイアーさんの言葉を借りるなら「掛かったなアホがー!」だろう。

 

 そしてスタンバイしていた重機が動き出したか、倉庫奥の扉が不穏な音を立てながら壊れ始める。

 

「何か来る!」

 

「カズ、それ開きそう?」

 

「ダメだぁ! 上がりもしねぇ‼︎」

 

 カズが閉じたシャッターをこじ開けようとするが、人間が持ち上げられない重量をカズが持ち上げる訳もなく、袋の鼠になった。

 

 そうしているうちに扉の破壊が終わったのか、爆発音と共に破片が散らばってくる………え、破片? 飛んでくるの?

 

「逃げろ逃げろ!」

 

 三影の手を引いて飛んでくる破片から身を守るために近くのコンテナに隠れる。

 

 破壊音と破片が飛び散る状態がしばらく続く。

 音がしなくなったタイミングでコンテナの影から破片が飛んできた方向を覗く。

 

 騒ぎの元凶はイジテウス。神谷重工が最初期に開発したロボットアーム重機を改良したイジテウス。一種の試作兵器だ。

 

 LBXがいくら危険だろうが、小銃弾対策に施された装甲は破れっこない。紛いなりにも分類上は兵器って事だ。

 

「何なんだよあいつ…⁈」

 

 無知って怖いよね。自分の復讐だけに気を取られるとあんな風になるんだから。

 

「やるしかない……みんな!」

 

 バンのアキレスを先頭にクノイチ、アマゾネス、ハンターが後を追いかける。

 

 え、Mk-Ⅱはどうしたって?

 バッテリー切れです(事後報告)

 

 ダクト内で好き勝手に撃ちすぎたのも原因だが、そもそもライフルの出力を下げてなかったせいでバッテリーの容量ギリギリだった。

 

「……ごめん。バッテリー切れだから取っ替える」

 

「こんな時にか⁉︎」

 

「やるしかないわ。なるべく急いでちょうだい!」

 

 場所を変えて、自分から離れていくバン達を尻目に慣れた手つきで作業を始める。

 

 昔はバッテリーが焼き付いたせいでコアブロック層取っ替えなんてものザラだった。あれに比べれば交換作業なんて一瞬でカタが付く。

 

「悟」

 

「何?」

 

「気を付けてね」

 

「すぐに行く。そっちも気を付けて」

 

 イジテウスのレーザーに炙られたくない一心で作業を進める。

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 神谷重工が表向きは重機パーツやエンジンの保管庫としている地下施設。それとは別で存在する上層のモニタールームから、地下で起こっている戦闘を神谷 藤五郎は監視していた。

 

「まぁ……所詮データ収集の為に製造された試作プラットホーム。正直期待するだけ無駄でしょうが…」

 

 アキレスさえ破壊すれば儲けもの、そう藤五郎は考えていた。

 

 どうせ死蔵品の一つで、いつかはスクラップ行きの機材。

 神谷重工としても、イノベーターとしても財布にも心的にもダメージはない。

 

「それにしても、憐れな男だ」

 

 本気でアスカ工業が再建できると思っている霧島を嘲笑う。

 彼がここ(エンジェルスター)で働けているのは、ヤグザで言う鉄砲玉の役割を担わせることができるからだった。

 

 タイニーオービット社を絡めればあら不思議。技術も誇りも人間も金で買われた怨みによって復讐以外のことを考えることがなくなる。

 

 実に都合のいい人間だった。

 

「会長」

 

「おぉ八神くん。移送は完了したかね」

 

「はい、滞りなく」

 

 緊急で行われた山野淳一郎の移送の引き継ぎを終わらせただ八神がモニタールームへと入ってくる。

 

 この間にも戦況は変わりつつあり、イジテウスは弱点を突かれたのか圧倒的有利から膠着気味になっていた。

 

「手こずっているようですな」

 

「まぁ失っても困ることはないですから、好きなだけ暴れさせればいいんですよ」

 

 LBXが相手とは言え、レーザーまで持ち出して戦闘を行う。遮蔽物に隠れればコンテナや瓦礫ごと片っ端から砕いていき確実に追い詰めていく。

 

 腐っても叩き上げで企業を設立させた男。アスカ工業社長と言う経歴も、重機の操縦技術も伊達ではなく本来の用途以外では使われない多目的アームでアキレスを抑え込むことに成功する。

 

「おぉ、遂にやったか!」

 

 遂にアキレスを抑えることができたイジテウスは、そのまま四肢を破壊しようとするが、突然操縦席にスモークが巻かれ一瞬の隙を作ってしまった。

 

 その隙を待っていたと、アキレスを抑えていたアームの接合部に角割れの攻撃が命中。そして画面外から白いLBXが機能を停止したアームからアキレスを抱え上げ、少年達の元へと向かっていく。

 

「アレは…いや、その前に何処から…」

 

 八神は悟る。

 イノベーター内に施設に精通した内通者がいること。そしてあのLBXは、自分たちの知らない技術で遠隔操作されている事も。

 

「……どうやら、余分な入れ知恵を施した様です」

 

 スモークが晴れたイジテウスが、目の前に躍り出た白いLBXへと向かう。

 

 棒立ちのLBXに向かって掘削ドリルを突き上げるが、それを回避されまた操縦席にスモークを張られる。

 

 さっきと同様、慣れない出来事に動揺し操作を疎かにした一瞬。頭上のクレーンのアームが緩み、コンテナが車体後部のエンジンを押し潰し、イジテウスは沈黙する。

 

「駄目でしたか」

 

「LBXが相手とは言え、よくやった方ですよ」

 

「……開発計画をある程度見直す必要がありますね。私は少し”出張”してきますが、後片付けを頼んでもいいですかね?」

 

「はい。あの地区一帯は閉鎖、必要な機材を運び出し封印作業を行います」

 

 「結構」と言い残し、藤五郎はモニタールームを後にする。

 

 流石は神谷重工の会長なだけはある。例え前代未聞の出来事だろうがただでは転ばないあたり経営者とかでの優秀さが垣間見える。

 

 イジテウスを破壊した少年少女を見つつ、あとは自分の仕事だと切り替え八神は行動を始める。

 

 





課金機体なのに性能が死んでいたシャア専ゲルググが強化されたけど、ネロトレーナーで良くね? なので彼は倉庫から出てくることはないでしょう。
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