ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

36 / 42


た、頼む。違うんだこれは(Huey博士)

決して年末年始にグエキャンに触発されてソロキャンしに行ってたりとか、ガンダムコラボでモンストしてたりとか、フェネクス欲しさにバトオペでトークン稼ぎをしていたせいで遅れた訳じゃないんだ。

僕は……僕は悪くない!(Huey博士)




#23

 

 

「どうしようなぁ…」

 

 与えられてまもない職員デスクで項垂れる。

 かなりお気に入りの部類だったMK-Ⅱが完膚なきまでに破壊された。いつまでも第一線で使えないとは言わないが、LBXとて一ホビー製品。いつかは損壊するとは覚悟していた。

 

 ただやっぱり、自分が手塩にかけて作った物が一瞬でスクラップになるってのは、やはり堪える物がある。

 

 色々と凝って、親父の協力もあってあの性能に落とし込めてかなり嬉しかった。デジタル処理で映し出された姿じゃなくて、ちゃんとプラスチックと金属で動く実物で、しかも自分の思い通りに動かせる。

 

 MK-Ⅱ、間違いなくお前は最高の機体(相棒)だったよ

 

 ……で、これからどうしよう。

 

 

 どうせなら好き勝手色々盛りたい。修理代を考慮に入れなければ色々と積み込めるが、そうなるとまず破産申告する羽目になる。

 開発予算に手を出すほど常識が欠如してる訳じゃないが、手を出す人間の心境がよくわかる気がする。

 

 でも今更市販品の無改造機で満足できる体でもないし、秋葉の路地裏商店に行けばそれこそカスタム機の一つ二つは有るだろう。

 でもさ、あそこ価格設定が商法違反してるからぼったくられる可能性が高いんだよ。そこら辺にある自販機と駅中の自販機ぐらい値段に差がある。

 

 売ってる商品に良い意味でも悪い意味でも差があるのが自販機との違い。製品保証もないから買い損はまず間違いない。

 

 そこら辺のお助けクエストでも良いんだけど、肝心のLBXがないから受注出来る内容は狭まる。

 

 給料日まで待とう。そう思って机に項垂れて不貞寝しようとした時、改めて考えた。

 

 

 

Q:私が所属してる部署って開発部ですよね?

A:そうです

 

Q:サイバーランスってLBX造ってますよね?

A:製造してます

 

Q:商品開発を理由に色々作れますか?

A:巻き込めば行けます(邪神)

 

 

 

 乗るしかない、このビッグウェーブに。

 

 報!連!相!

 報!連!相!

 

 深夜テンションも相待って開発部全体を巻き込んで祭りの様相を呈していた。専用のコアパーツを作り出した猛者を筆頭に、一晩で凄まじい数の素体を生み出し続け、気が付けば日が頂点に登っていた。

 

 だがそれで終わらない。

 このまま素体達を商品として売り出すには、この界隈で後発のサイバーランス社としては些か部が悪かった。

 

 なんせ相手は世界の市場を席巻する天下のタイニーオービット社、そして後発ながら自社とは違い、機体のハイパワーを売りにして地位を確立したプロメテウス社。

 

 いくら法律ギリギリの奇抜さが売りのサイバーランスとは言え、これまでの商品に対する信頼と印象はまず圧倒的にタイニーオービット社が上だろう。

 ただのLBXで売りに出すには利益が見込めない。

 

 まぁ、”ただ”のLBXならの話だ。

 

 

「じゃあストーリー性を持たせよう」

 

 

 誰が最初に言ったか分からなかったが、そこからは営業の人間も引き摺り込んで(道連れ)語り明かした。

 

 フレームを付け替えるだけでいいと言うのは変わらないが、既存のコアスケルトンとは違い若干大型化している。

 まぁ、大型化と言ってもジェダ(21m)とジェガン(20m)程度の差しかない。

 

 既存のフレームが融通できないとなれば、どんなに優良商品を謳ったところで買い手の手は届いてこないし、まず流し見されて終わりだ。だから新規の取り込みに重点が置かれた。

 

 どうせ既存のLBXと違うなら、それを前面に押し出せば良いと。そこであえて物語を与える事になった。

 

 プロメテウスもタイニーオービット。どころか世界の何処でもやってないのだ。あっても精々が有名なヒーローもの(センシマン)のコラボ製品で、ストーリーも放送番組に沿っているだけ。

ただし、考案するにしても地上だけを主にしたものでは他と被るし、最悪苦労して設定を練り上げたにも関わらず、中に関係ない場所で物語として完成して世の中に出てしまう可能性がある。

 

 海も駄目、陸も駄目、空も駄目。異世界はちょっと所ではないレベルでハードルが高いので速攻で却下。じゃあ何処にすれば良いか。

 

 

 そうだね宇宙だね(思考誘導)

 

 この世界、21世紀半ばなだけあって宇宙開発は進んでいるのだ。冷戦期と比べると相当遅いけど。

 

 ただし、人が問題なく生活できる1G環境が備わった宇宙ステーションと、そこまでの安全な航路が確立されている。宇宙服も米軍の爆破処理班が使う耐爆スーツみたいなゴテゴテしたものじゃなく、ノーマルスーツの様なスラッとしたもので、脱着も1人で出来るで宇宙空間へのアクセスもかなり不自由がないものになっている。

 

 今までもステーション建設何周年!みたいな感じで、国内外問わずLBXメーカーは自社製品を使って色々イベントを行っていた。ただし、あくまで宇宙でも使えますよ的な内容であって、それ以上でもそれ以下でもなかった。

 

 

 そんな手付かずな環境を使って大胆に商品展開! 集客! リピーター確保!を目指してサイバーランス社商品開発部は進み始めました。

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も出来てなくない……?」

 

「大人しくして?」

 

 三影によってベットに埋葬される。

 中学生の体でオールは体に応えたのか、気怠さを始めに様々な症状が浮かび上がり、気付けば自宅で寝込んでいた。

 

 もう何もする気が起きないねぇ。元気の前借り(エナドリ)をした覚えはないのに、倦怠感と疲労だけが体に残っている。祭りだ祭りだと騒いでいたが、結局自分の目的には一切触れずに流れに身を任せた結果、当初ら話が飛躍して規模も拡大してしまった。

 

 まぁ、うん。楽しかったから別に良いけども。

 

 あんなにはしゃいだのいつぶりだろう。少なくとも就職する前の高校生くらいだったか、仲間内の悪ノリみたいで精神年齢アラサーながら昂ってしまったのだ。

 

 やはり、大勢で馬鹿騒ぎすると最高や。

 後始末がどうとか一人で考えず、巻き込んでみんな道連れに出来るから罪悪感が減るんだ(屑)

 

 コソコソするくらいなら堂々と。ただしヤベェ事はバレない様にやれって高校の先生も言ってたし、あながち間違いじゃないのかも。

 

「……三影?」

 

「?」

 

「……いや、うん。なんでもない」

 

 さりげなく家にいる三影に何かを言おうとしたけど、なんかもういいやと言葉を引っ込める。

 

 邪魔になるからと言って普段のツインテールからまとめ上げて、ポニーテールにしてる姿が見れるだけでも貴重なんだ。それに最近は登校出来てないから、バン達の近況報告なんかもしてくれる。

 

 で、聞いた話だとやはりアルテミスに向けてバンが檜山とマンツーマンで訓練漬けの様子。カズとアミも揃って放課後は地下闘技場に通い詰めらしい。アルテミスの出場チームは3人まで故に、三影はこの鍛錬には参加していない。1人でゲームセンターに行こうにも、自分のLBXは無いから暇も潰せないので、結局(ウチ)に来ているのだ。

 

「そう言えば三影。アマゾネスの代わりってどうする?」

 

「クノイチにしようかな、って思ってる。けど、どうしたの?」

 

「自分の以外に三影のLBXも手に入りそうなんだ。だから、何か要望があればそれに寄せたいかなって」

 

 

 ピクッと体を止めて固まり、思考中だったのか数秒の間をおいてから急速接近。緊急回避を吐けない故に、タックルはライフで受ける羽目になった。

 気持ちは分からなくない。なんせLBXも子供の手が届くものとは言え、壊したからってそうポンポン買い直せるものでもない。親の信用と言うのは、いつまで経っても下げてはならない類のもので自分で買うにしても、散財も度が過ぎれば親の手が入って購入停止措置を出されかねない。

 

 まぁ、今回はほぼタダのケース。社内で好き勝手やって色々作って規模をデカくした手前、多少の融通は利く。そもそも最初は自分の機体欲しさに始めた筈の口実作りだったんだ。プラン自体はあるし、数十ならいざ知らず、一つ二つ程度ならなんら問題はない。

 

「……それ、本当?」

 

「私、嘘つかない」

 

「……じゃあ、うん。お願い」

 

 

 安心したのか、三影の圧力から解放される。バウンドドックに抱きつかれた時のカミーユもこんな圧を感じていたに違いない。

 それは置いといて、要望を聞いて機体を製作する。簡単そうに見えても双方が満足する結果を享受できるのは難しい。結局どこかを妥協するか、試作機で現れた長所を活かす様な性能に仕上げなければならない。

 

 なんでも突っ込んだ欲張りセットは、大体碌な機体に仕上がらない。望むものを一通り聞き出し、それとは別に三影があったら良いなと思う要素を何点かに絞る。

 

 滅多に使わないスマホのメモ機能に色々と書き連ねる。武装に特にこだわりもないらしいので、該当する機体はすぐに浮かんできた。

 

「……これで大丈夫?」

 

「守って攻めては、苦手……かなって」

 

 

 あとは機体のカラーなんだけど、素の色合いもいい手前、アマゾネスに合わせて色を変えるか迷う。いや、あの機体に関してはそれもありなんだけど、やっぱり良いものが一つ以上あると決めかねてしまう。

 

 ……色違いで2機分作るか。

 

「2日か3日くらいかかるけど、大丈夫?」

 

「平気。望み過ぎは、良くない」

 

 この()ほんとに中学生? 年の割に精神年齢が高過ぎて大人かと勘違いしそうだよ。ともあれ待たせるのも悪いので早速行動に移そう。

 

「オッケー。じゃあ早速……」

 

「それとこれは、話は別」

 

 ベットから起きあがろうとした途端、強い口調と腕によってベットへと静かに埋葬される。

 体調が戻るまではベッドに拘束されるのは確定らしい。

 

 






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。