ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

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私、整備士チンパン
いま(2月、3月)、整備士業界は繁忙期なの
……ケテ…タス……ケテ…


これ書いてたの1ヶ月くらい前なんですよね。
新しい職場にワクワクドキドキして仕事していたら編集すら忘れてました

あと、今年は花粉がシンプルキツくてそれどころじゃなかったのもあります。マジで殺しに来てます
本当に、申し訳ない(メタルマン)


#24

 

 

「おぉ、速いな」

 

 サイバーランス社の狭くはない開発室。今ではスペースの三分の一が、アルテミスなどで使用される大型Dキューブに占領されている。

 

 後から設置されたこのデカブツは、此度の開発部で起きた騒動から導入が決まったもの。最も、酒の席で部長が「シュミレーションじゃ何処が悪くなるか分かんねぇからデケェのくれよ!」と口走ったら本当に来ちゃったので部署内部で絶賛持て余していると言う現実があるが。

 

 六角形のハニカムを7個連結した蜂の巣状のもので、それぞれが市販のDキューブより大きくて、一個一個に別々のフィールドが用意されていると言う好待遇。耐久試験以外にも息抜きで試作品を乗り回したり遊んだり出来るので個人的には有難い。

 

 今は作ったばかりの試作機を乗り回している。

 アングラビシダスで自分のLBXを失くした三影のもので、ほぼ特注品と言って差し支えない機体と性能になった。

 選考基準は使い易く、速く、身軽な機体である事。この時点で両手で数えるくらいには浮かんでいた。ここから更に条件を絞っていくとほぼ片手に収まる数になる。

 

 まぁ、結局は当てはまる機体は全部作ったんだけども。やはり実際に見て比べない方には始まらない故、致し方なし。

 とは言いつつ、実のところは自分が欲しいと思ったからちゃっかり作った節がある。企業秘密故に自宅に持ち帰れないのが辛いが、しばらくは辛抱の時だ。

 

 人の噂はすぐ広がる。それも個人の見解と誤解が多分に含まれながら、他人の事故に有る事無い事と付け足して、更に取り返しがつかない規模まで膨れ上がる。

 何処に商売敵の目があるか分からない中で、抜かれたくない情報を外部に持ち出すのは危険なのだ。

 

 まぁ、どうせ今くらいしか使わないし、アルテミスにも出ないから気分だけ味わっていると言うのもあるが。

 それはさて置き、あれから3日。設計図は頭の中にあったから組み立ては直ぐだった。

 

 『使い易くて、尚且つ速い』

 

 それを可能にする機体は複数ある。元がMSVも含めればほぼ無限に新機体が出てくる環境であるが故、探せば普通に見繕える。

 でもそれじゃ面白みに欠ける。どうせなら他も作って自分で比べようと。気が付けば余計なものもしこたま作って、自分で設定した納期に間に合いそうになった。

 

 自分の欲望を優先しすぎた。反省しているが出来栄えが良かったから後悔はしていない。たって期限守ったし。

 

 

 まぁそれも置いといて、兎も角目的のものは仕上がった。寄り道が酷かったが、辿り着けたのならノーカン!ノーカンだよ!

 

「……異常なし。ヨシッ!」

 

 

 一通り動かしての動作確認を終え、捜査を終了。大人しくなった機体を手に取る。

 

 特徴的な大出力・大容量ブースター。花弁のように広がる肩部のプレート装甲。V字アンテナを意識したロッドアンテナ。何処を見てもガンダム要素が見当たらないが、何を隠そう列記としたガンダムである。

 

 コンセプトが被ったせいで連邦軍から要らない子判定をされたものを、天下の大企業(諸悪の根源)「アナハイム」がプランと社内ベンチャーとしてフレームごと引き継いで独自開発。

 作ったものをテロ組織に横流しするも、自社の関与を疑われたら困るので外装フレームを総とっかえ。元々終戦で職に(あぶ)れていた所をアナハイムに吸収されたジオン系技術者が中核だっただけに、整形手術後は実にジオン系らしいMSへと生まれ変わった。

 

 登場から長く活躍することもなく、割と呆気なく退場した個人的に好きな機体

 

 

 の、改修機。

 いや、最初は前者だったんだ。ただ三影が使うってなるとなんか色もシルエットも気に入らなかった。だから作り変えたんだ。

 

 後は三影のお目に叶うかどうか、結局はそこが心配になる。

 

 自信がない訳じゃない。ただ、相手の為に何かを作って贈るって言うイベントを生まれてこの方した事がない故、初めての行いと言うこともあって緊張している。

 

 

 いっその事、三影のイメージカラーでもあるノーブルカラーにしようかとも思ったが、イメージだけに留めたものの違和感が凄かった。

 名前的にもどっちが悪いとかだったら決めやすいが、双方名前の意味にはポジティブ成分が多分に含まれてる。

 方や高貴で気高くあり、方や前向きで希望である。

 

「敢えてそのままの方がいいかな」

 

 すでに出来上がったものに何かを付け足すと言うのは、失敗する確率の方が高い。別の物(ザクパーツ)別の物(マゼラアタック)を掛け合わせて出来上がる物(ザクタンク)が全て成功するとも限らない。

 例外(トーリスリッター)はあるけど。

 

 その時はその時だな。合わないなら合わせる様に一から作れば良いだけだ。

 

 そうと決まれば梱包しよう。流石にこのまま手渡すのは憚られる。例えるなら、誕生日プレゼントでゲームカセットだけ渡される様な感じだろう。渡されるのが俺だったら大して気にはしないが、相手が三影なら話は変わってくる。

 

 箱絵はまだ諸事情で載せられないからただの白い箱になるけど、説明書の付属にでも付け足しておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、いつもの場所(ゲームセンター)に三影を誘う。

 別段変わった所もないが、強いて言うなら例の喫茶店が潰れたくらいか。それ以外では変わり映えしない。相変わらず人通りが多くて賑やかな商店街だ。

 

 入ってすぐのDキューブエリアに足を踏み入れる。

 今日は特段荷物が多いから、使ってないであろうテーブルを引っ張ってきて荷物を広げる。

 鞄の容量を半分ほど占拠していた白い箱。普段は大人しくて表情も滅多に変えることのない三影が、今だけは年相応に興味を示し食らい付いている。

 

 

「これ?」

 

「そうそう。開けてみて」

 

 包装紙を丁寧に外していく。中は包装紙と同様の白い箱、PPバンドをニッパーで切り取り箱の蓋を取り上げる。

 

 三影にとっては見慣れないシルエットのLBX。それが良かったらしく手に取ってマジマジと見つめれば、関節を動かしたり、単純なポーズをとらせたり、全体を隈なく見通している。

 

 そうかと思えばこっちをマジマジと見つめ、「これで遊んでいいか?」と目で訴えてきている。

 そんな心配しなくても最初からそのつもりだよ。

 

 

「ちゃんとCCMと同期させてね」

 

「ん」

 

 LBXを乗り換える場合、変更する前の機体にCCMと同期をリセットする必要がある。

 余分な機能がないTI(タイニーオービット)社はスムーズに行くが、うち(サイバーランス)みたいな法律的にグレーな機能を搭載している機種だと時間がかかる。

 

 まぁそれはそれとして。今回みたいに操作する機体を変える場合は、新しい機体には勿論自分のCCMの認識コードが伝わっていない。

 

 昔は誰でも操作できたらしいが、LBXでの死傷事案が増えて禁止、Dキューブの安全性を盾に普及し出した辺りで、それぞれの機体に操作権限を付与しようとなった。

 

 まぁ、長々と文字にしたが要はCCMに機体を新しく登録して、他の端末で操作できない様にするだけの作業。それもコアパーツカバーの裏面にある認証コードにCCMを翳せばいいだけで、難しいことなんて一つもない。

 

 

 でも工具がない時、コアパーツカバーを取り外すのは不可能だ。

 でも大丈夫。そう、サイバーランス社製品ならね。

 

 一回限り有効なバーコードスキャンでいち早く貴方の手で機体を自由に動かせます! 安心してください、勿論他の人がバーコードをスキャンしても貴方の端末以外受け付けることはありません!

 

 ただ端末側で設定しなきゃいけない事が多すぎるから、あった所でという感が否めない。

 

 

「よし」

 

 都度教えながら設定を終えて、いよいよ機体を動かす。

 何も無いのは寂しいと思って設定した起動音がいい雰囲気を出している。

 

 ツインアイを光らせ左右に顔を振り、そのまま歩き出す。操作感が解ったからか、段々と動きがアクロバットになっていく。

 

 右に左に、上に下に、前に後ろに、時にはスラスターにものを言わせ大ジャンプからそのまま滑空したりと、思う限りの事をこなしている。

 

 次は射撃。停止中、移動中、落下中、上昇中、兵器の試験でもやってるのかと思うくらい色々見ていく。

 勿論、ライフルも機関砲も撃てば弾が出て、弾道も銃身の跳ね上がりに気をつけ丁寧に扱えば早々に明後日の方向に飛ぶ事もない。そういう風に仕上げた。

 

 耐久性も安心設計。戦いの基本は格闘戦だって何処かの狐も言ってたから細身の割には頑丈に作ってある。

 三影の操作にも問題なく反応し、思った通りに動く。多少の癖は有るだろうけど、それは三影が見つけていくだろうし、今は手を加える必要はないだろう。

 

 

「……凄い」

 

「気に入った?」

 

「……気に入らない人、いるの?」

 

「居ない……とは言えないかな。三影の為に造ったんだし、合わない人にはとことん合わないと思うよ」

 

 万人受けは最も。ただし、コアなファンを獲得したいなら多少尖ってるくらいじゃ無いと見向きもされない。

 

 そもそも三影以外が使う、なんてのはハナから考えてない。多少の主観が入ってるとは言え、ほぼ三影専用機と言っても過言じゃない性能の機体に仕上げた。

 扱えるのは三影だけ、気に入るのも三影だけ。ただし一部の例外は除く。

 

 

「……うん、ありがと」

 

「こっちこそ。あとは気になる所とかはある?」

 

「ない………ううん、ある。一つだけ」

 

 一つだけ?と思わず聞き返す。

 何か不満点でもあったのか、それとも足りないのか、考えられる事を一通り思い起こす。

 

 ただ、そんな心配を他所に帰って来たのはごく普通の事だった。

 

「この機体()に、名前は あるの?」

 

 あぁ、そう言えば確かに言ってないや。

 あの機体この機体と言って来たけど、これから先アレよコレよじゃ伝わり難いのは明白。

 

 ただこれも自信を持って言える答えを用意してある。

 

 

「勿論、ちゃんと決まってるとも」

 

「聞かせて」

 

 余程お気に召した様子で、珍しく三影が乗り気だった。名前くらい減るもんじゃないからね、もったいぶる必要もないでしょう。

 

 デザイン、性能、コンセプト。どれを取っても個人的にピカイチな物を持っていて、何故か友人がスローネドライと間違えてた事が印象的なあの機体。

 

 

「ガーベラテトラ改。ちょっと事情があって改になったけど、自信を持って言えるくらい強い機体だよ」

 





アナハイムがジオン顔に改造した機体のツインアイバージョン、あると思います
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