ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

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ガンダムSEEDの映画楽しみですわ。
それはそうと、貰い事故のせいで保険の等級が下がって保険の支払額が上がりましたわ。
クソが(悪態)



#27

 

 

《さぁ! 世界一を決めるアルテミスもいよいよ終盤!! 各ブロックから勝ち上がった猛者達が今一堂に介します!!》

 

 

 スタジアム内に響き渡る司会の声と共に、今か今かとその時を待つ群衆の歓声が重なる。

 

 

 予選こそ見逃したがここからが本命。デカデカとホログラムでそれぞれの機体と、それを操作するプレイヤーが映される。

 

 

 気のせいじゃなければこの時点で海外勢は居ない。いくら開催地として負けるわけには行かないと言ってもだ、名だたる海外の強豪その全てが悉く負けるってヤベーだろ。

 

 

「バンの奴、大丈夫か?」

 

「大丈夫そうじゃないか。海道ジンと同等の実力があるなら、真正面から押しのけて行くだろうし」

 

 一種の指標だ。

 アングラビシダスで海道ジンに勝っている点で、少なく見積もったとしても同等の実力がある。

 真正面から挑んで勝ったのなら尚更、相手の機体が変わっていようとその点だけは変わらない。

 

 

 まぁ、最後の最後まで何が起こるかわからないというのを除けば、バンは確実にあの中でも上位者だ。よっぽどのことがない限りは安心して試合を見られる。

 

 

「問題が、あるとすれば……」

 

 

 等の問題が存在する場所を見やる。

 最初から隠す気ゼロのサイコスキャニングスーツを見に纏い、当の本人は特に何も思っていないのか平然としている。

 

 

「灰原ユウナね」

 

「強い?」

 

「どうだか。まともに当たったと言いずらいのが一回だけ。ただ、実力は間違いなく高いってのは解る。下手したらバンやジンにも迫るくらいには」

 

 カズの言うとおり、戦いと言えるものはただの一度。しかもアイツはそこそこ余裕があった。

 あの時と実力が変わっていなければ、と言う前提だが。それにあの時はシステムを使う素振りすら見せなかった。システム系は総じて発動中はとんでもない性能に化ける事が多い。

 

 

 ましてやサイコスキャニング自体、エグザム系統とサイコデバイス等のハイブリットとでも言うべきもの。

 被験者の反応速度をいち早く機体に反映させる為に、操作もCCMを使わない。ビルドファイターズよろしく、トラックボール型の何かに他を連動させたりするんだろう。

 施術内容が非人道的なんだろうが、頭や手足を切ったり開いたりして詰め込んだりしないだけでも良心的に見えてしまうのが不思議だ。

 

 

 仮にスキャニングモードに奴が耐えられるのなら、最高の性能が約束されている。

 ダリルローレンツくんもあぁ言うモビルスーツを欲していたに違いない。

 

 

「……なんか、大胆 だよね」

 

「私もアレを着る勇気はないかなぁ……」

 

 

 まぁ、うん。アミやら三影が言いたいことも分かる。

 あのスーツ、元のヤツでも結構身体のライン出るんだよね。鳩尾あたりにあったよく分からんパイプは無くなってるのと、全体的にイメチェンが行われている。

 

 

 アレだ、ヘイブントルーパーのスーツに近い。細々とした付属品とか、センサ周りの機器が付いてたりと、ミリタリーベースなものに様変わりしている。

 

 

「わざわざ着替えたって事は、目を引く以外に何かあるんだろ」

 

「何かって……何?」

 

「さぁ? 少なくともLBXに関する事じゃないかな」

 

 

 流石に明言してどっかのグラサンに怪しまれるのと癪だし、目で見て察せる程度の事を言葉にしておく。

 

 

 ただ、バンには悪いが正直あの組み合わせで何処まで化けるか楽しみにしている。

 

 

 あの手のモノは、パイロットが変に安定してると途端に中途半端になる。ただし暴走してシステムに身を任せても、ただ速いだけで動きが単調になる事もある。

 

 

 ただのおもちゃか、それとも使える産廃なのか。もう少しでそれが解る。

 

 

 《ファイナルステージは今までと打って変わってバトルロワイヤル!最後の1人になるまで戦いが続きます!!》

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 《バトルスタート!!》

 

 

 

 さて、始まって早々バンとジンが互いに一直線に向かっていくが、それをマスクドJとユジンが邪魔する。

 

 

 ユウナは仕掛けられなかった為フリーハンド。自分から仕掛けるもよし、勝ち残った方を殴るもよしと自由な立ち位置に居る。

 

 

「あいつ、バン達に潰し合わせるか?」

 

 

 一対多数を強いられる場面で、極力自分から無理に戦わない事は大切だ。

 不利有利を見極めて、自分が有利な状況下で相手を選んで仕掛けるのが大事だ。こう言う一種のTPSだとそれが顕著に現れる。

 

 

 死にかけの一方を潰すか、余力のある方を潰して返す刀で死にかけを潰すか、逆に無傷の自分に双方が突っ込んでくる場合もある。

 どっちにしろ、今の灰原は選択肢を選べる有利な立ち位置にいる。

 

 

《おおっと! ここでエンペラーM2、目標を変えてジャッジへと一目散だ!! すかさずビビンバードXも後を追うぞ!!》

 

 

 先に動いたのはジン。機体も実力も未知数だが、放置したら不味いと判断して戦闘に巻き込もうと言う算段らしい。

 

 

 だがジャッジは動かない。自分の間合いに相手が入ってくるの待っているのか、ただその場でじっとしている。

 

 

「やられるんじゃないか!?」

 

 

 エンペラーM2、続いてビビンバードXもジャッジを射程圏内に捉える。エンペラーが殴りつけ、ビビンバードが射撃を加える、意図しない連携が生まれた。

 

 

「いや、ここからだ」

 

 

 しかし、攻撃は当たらない。当たるより先にジャッジの方が反応が速かった。

 振ってくるメイスを受け流し、射撃で一瞬隙が生まれたビビンバードを殴り飛ばす。吹っ飛ばされ調子良く飛ぶビビンバードはマスカレードJとアキレスのタイマンに割り込む形で墜落。

 邪魔者がいなくなり、ジャッジとエンペラーの一騎打ちが始まる。

 

 

 両者共に西洋甲冑がモデル、騎士同士の一騎討ちの様相に会場は盛り上がる。

 

 

「速い……」

 

「速いのもそうだけど、判断力もある。カズと悟が言った通り、只者じゃないわね」

 

 

 おそらくだが、既にスキャニングモードは発動している。

 驚くべきは灰原ユウナの耐久力と言うべきか。本来ならボロ雑巾の状態で、発動直後ですら苦痛で顔を歪めていた筈だが、今回はそんな様子は見られない。

 

 

 強いて言うなら、動く前に少しだけ苦しそうな表情をしたが、それも最初だけで、その後はかなり安定している。

 

 

 予想通り。被験者が苦痛に耐えられれば、並みのプレイヤーでは歯が立たないレベルの実力。オタクロスの一番弟子でもあるユジンが反応できなかったのがその証明だ。

 

 

《ジャッジとエンペラーの一騎打ち! 互いに打ち合うが決定打はなし!! 物凄い戦いだぁ!!》

 

 

 近接戦で有利なのは鈍重なメイスより、ジャッジの様な片手剣やマスカレードJのレイピア等の近接武器なのだが、そんなの関係なしにエンペラーは軽々とナイフの様にメイスをぶん回す。

 初代からパワーアップしたエンペラーM2の馬力がそれを可能にしている。それ以外にも、関節や駆動系もテコ入れされてるだろう。じゃなきゃバトルの途中で機体と腕が泣き別れすることになる。

 

 

 両者が決定打に欠ける戦いの最中に、復活したビビンバードが乱入。それを追っていたアキレス、マスカレードJも飛び入り参戦し、場は再び乱戦状態になる。

 

 

『アタックファンクション:パワースラッシュ』

 

 

 乱戦の最中放たれたパワースラッシュは、ジンとオタレッドではなく、鍔迫り合いを演じていたマスカレードJとアキレスへ飛んでいく。

 

 

 しかし、当たる既の所でマスクドJのファインプレー、アキレスを押し出し尚且つ自分が直撃を受ける事で流れ弾を防ぐ。

 等級で言えばノーマルの技とは言え、機体の性能が威力に直結するのか威力はダンチの様で、煙が晴れる以前にまともに食らったマスカレードJは粉々に吹き飛んだ。

 

 

 バラバラに吹き飛んじまってる!ミンチよりひでぇよ(事実)

 

 

《マスカレードJ、ブレイクオーバー!! 謎の実力者、マスクドJ一歩及ばず敗退です!!》

 

 

「おいおい、あんな威力だったか!?」

 

「フレームもそうだけど、余程コアパーツが豪勢なものなんでしょうね。あんなの、普通じゃありえないもの」

 

 

 LBXに限らず、バッテリーやモーター等の内部パーツの性能も機体性能に関わってくる。CPUからモーターまでほぼ特注品だろうし、そんじょそこらの改造品ではまず太刀打ちできないだろう。

 

 

 機体性能よりジェネレータ出力が優秀だと、ある程度の改造だけされて使い回されることが多々ある。

 出力も推力も優秀なんで、ちょこっと弄って主武装だけ変えてそのまま投入しました!で地獄を見たMSも居たな。お前のことだぞトリスタン。

 

 

「どんどん 速くなってく」

 

 

 サザビーのガムシャラ斬りにも負けない速度でエンペラーを切りつけるが、向こうもよく動くメイスでその悉くを弾いて躱している。

 

 

 バンやオタレッドが間に割り込むものの、灰原は難なく全て跳ね除ける。

 ただ流石に選手交代。エンペラーがアキレスを、ビビンバードがジャッジを抑えにかかる。ジン相手に拮抗状態に持っていった勢いは衰える事なく、またビビンバードもそれに食いついていく。

 

 

 ただ、そろそろその動きに反してプレイヤーの方に問題が起きてくる。

 

 

《もらったぁ!!》

 

 

 ユジンことオタレッドの言葉と共に、俊敏に動いていたジャッジの動きに、一瞬の隙が生まれる。そんな隙を逃すはずもなく、ビビンバードはヒーローキックを叩き込む。

 

 

 シールドで受け止める訳でもなく、片手剣で叩き落とす訳でもなく、そのまま攻撃はジャッジの胴体に入り、この試合初めてジャッジが倒れる。

 

 

 そのまま追撃しても良かったが、それをせずビビンバードは動きが止める。ジャッジも倒れたまま動かない。

 

 

「吐血した!?」

 

 

 そこまで量は多くない。口元からは血が滲み、鼻血も垂らしている。

 

 

 流石にバトル中にプレイヤーがダメージを負うなど、ガンダムファイトでもない為想定外の事。オタレッドは困惑、会場は相変わらず歓声が絶えないが、僅かながらも困惑の色も見える。

 

 

 しかし、等の本人は気にしていないようで、気にせず血を拭いバトルを再開する。

 

 

「あのまま やる気なの…?」

 

 

 気にせず操作を始める灰原、ジャッジの動きも一段と早くなり、眼前のビビンバードへ標的を絞り肉薄していく。

 

 

 それとは打って変わって、後ろで2人組が青い顔をしている。忙しなく携帯に向かって話しかけてるし、もう1人は機器を操作して止めようともしている。

 

 

 あぁ、これは完全にやって(暴走して)ますわ。

 

 

《な、なんだこの動きは!? さっきとは全く違う、まるでリミッターが外れた様な動きだ! ビビンバードは全くついていけていない!!》

 

 

 ほぼ一方的で、嬲り殺しに近い。ビビンバードは対応すらままならず、そのまま斬り刻まれる。

 

 

 最後の抵抗で撃ったビビンバードガンも、当たる事なく見当違いの場所へ着弾、その後は抵抗すらできずにジャッジに切り刻まれ、爆散し粉々になってしまう。

 

 

 機体を残さず爆散させただけ、有情言えるだろう。変に残ったせいで嬲られ続け、会場を騒然とさせるよりかはまだマシだ。

 

 

「あんな一方的に……」

 

「おいおい、どうなってんだよアイツは?!」

 

 

 一連の動きでも相当の負担なのか、拭った口元や鼻からまた血が垂れ始める。ただ本人がバーサーカーモードなのと、観客がハイになってるせいか、盛り上がりは最高潮だ。

 

 

 おいこれ本当に全年齢の大会か? やってる事が帝政ローマのコロシアムと大差なくないか?

 司会者も興奮しすぎて止まる気配はない。おいマジでやめろよ、全国中継で死人映す気かよ。ここはルール無用の地下闘技場じゃねぇんだぞ。

 

 

 試合に参加でもできてれば、バンとその為で連携して破壊することも可能かもしれなかったが、今”もしも”の事を考えも無駄だ。

 まだアイツから聞きたいことが山程ある。廃人同然の灰原ユウヤとちがって、灰原ユウナは口が聞ける。イノベーターの内情をある程度把握している筈、今後イレギュラーがあっても対応できる様、情報は仕入れておきたい。

 

 

 だから、今死なれると俺が困る。あと公共放送も困る。

 

 

「バン、聞こえるか?」

 

《悟!?》

 

「馬鹿!出来るだけ自然でいるんだ。周りにバレる」

 

 

 都合よくスタジアムのモニターは灰原とジャッジしか写していない。密通するなら絶好の機会。

 それを察してか、慌ててバンが取り繕う。

 リミッターをかけて拮抗状態なら、それが無い状態なら最悪バンもジンも片手間に転がされる可能性がある。

 

 

「いいかバン。奴を止めるなら、ジャッジを破壊すればいい。それで全て片付く」

 

《だけど、本当にそれで止まるのか?!》

 

「後ろの連中が頑張ってるが、外側からの制御を受け付けてない。なら、あの状態を作り出している機器を破壊すればいい。エジプトの時と同じで、あのジャッジさえ破壊すればどうとでもなる」

 

 

 棒立ちのアキレスをよそに、ジャッジはエンペラーへと流れていく。お互い所属は違うがイノベーター、身内同士で斬り合いを始める。

 

 

 最初とは打って変わって、動きがまるっきり変わったジャッジに翻弄されている。

 

 

「だが、タイマンで挑むなよ? 今のアイツは下手したら海道ジンより強い。癪だが、今だけでも協力するんだ」

 

《だけど、ジンは納得するのか?》

 

「納得以前に、向こうは協力するしかない。自分が劣勢だと知れば、余程のことがない限り、一時休戦には応じるさ」

 

《……分かった。やってみる!》

 

「頼むぞ。当分は連絡できそうにない」

 

 

 通話を切ると同時にモニターにアキレスが映し出され、動き出す。

 

 

 大会中に選手と連絡を外部から取る等の行為は禁止されているがそれとも警備がザルなのかその他の対策が、この会場には全く施されていない。

 

 

 やれる事はやった。後は見守ることしかできない。

 

 

 





毎度のこと、誤字報告ありがとうございます。
たまに来るコメントは読ませてもらってます。暇な殿方がいらしたら気軽にコメントして下さいまし(乞食)
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