ただのモブで終わる筈だった。   作:食べる辣油

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第三者視点なんて書こうとしたら想像以上にエタりましたわ!(アホ)
やっぱりできない事をするよりできる事をする方が一番でしてよ!

誤字報告有難うございますですわ〜。毎回ご協力感謝でしてよ



#28

 

 

 

 当事者でないのに、試合を見ていて生きた心地がしない。

 

 

 レイドボスと化したジャッジに対して、余力は残っているものの連携の面で不安が残るジンとバンの異色のコンビ。

 

 

 しかし、両者とも機体性能は兎も角として、割と実力が近い。何をやりたいかはお互いなんとなく分かっている。たかが数回のバトルだがそこはライバル同士、意識している分楽なはずだ。

 

 

 ゲーム(バトオペ)のレーティング戦でもよく言われていたが、高ランクに行くにつれて周りに合わせられる人間と、そうでない人間で勝ち負けが変わってくる。

 

 

 行動だけで読み取れと言うのは中々酷な物言いだが、実際それが出来ないとボコボコにやられるのが定め。あの2人が言葉を交わして連携をとるかは別だが、顔と声が聞こえる分オンライン対戦よりマシだ。

 

 

「攻めてるようで、結構慎重なんだな」

 

「初めてで 未知の相手、手の内を 窺ってる」

 

 

 多少手は抜く、ただし相手の動きは制限させる。無闇に打ち合いを続けるとどうなるかは、ビビンバードが身を持って示した。

 

 

 だから深入りせず、かつ相手のペースに飲まれない立ち回りを意識している。

 ただ読み合いは出来ても性能まで把握できる訳じゃない。暴走とは言え、所詮はホビー。外部か内部電力が無くなれば止まるんだろうが、今の所はそんな素振りもない。

 

 

 システムの恩恵とは言え一時的にパワー負けし、スピードでも負けてる。こう言う時どうするか? 相手がなんであれよろけハメして速攻を仕掛ける(脳筋)

 

 

「仕掛けるぞ!」

 

 

 どうも向こうも分かってるようで、バンとジンが仕掛ける。

 正面からアキレスが、エンペラーは横合いからの2正面作戦。初めてのデュオにしてはかなり動きが良い。お互い邪魔することなく攻撃を仕掛ける。

 

 

 攻撃して交代、攻撃して交代、少しの隙に飛んでくる追撃をお互いが阻止、また攻撃して交代。お手本の様な連携プレイ、しかし言葉を介さない高レベルの動きに会場も白熱する。

 

 

 それでもジャッジの防御は崩せていない。システムの恩恵故か、並々ならぬ反応速度で2人の動きに喰らい付いている。

 

 

 

「あの2人ですら無理なの?!」

 

 

 気持ちは分かるが、まだ大丈夫だ。確かに責めあぐねているが、当の本人達から焦りは感じられない。

 

 

 焦らないのは良い事、しかしこっからどうする気だろうか。向こうはなまじ正気を保ってる故に、中途半端な行動はせず持ち前の速度を活かしてくる。

 完全に暴走して発狂でもしてくれれば、必殺からのファイナルブレイクを狙えるが、それが通用するほど甘くはないだろう。

 

 

 ただ、こんな事もあろうかとだ。あの日に頼まれた通り、バンには一応切り札がある。本来は最後の最後、ジンとの戦いの為に用意したものだ。性能は保証しているが、アレが最大の効果を発揮するのは不意打ち。一回限りの撃ち止め武装って訳じゃないが、最初より効き目は薄くなるだろう。

 

 

 でもケチらず使ってくれー! (建前)

 あとデータ欲しいからどんどん使っててくれー!(本音)

 

 

「何やってんだ、やられちまうぞ!?」

 

 

 エンペラーが割って入ってヘイトを受け持ったりしているが、向こうはそんな事知らんと言わんばかりに跳ね除け、アキレスに集中する。

 

 

 片手剣のくせして、ハンマーやランスの打撃や突きをボールのように跳ね返していき、盾すら武器に使う。あのサイズであの馬力、

 アキレスは防戦一方、気が付けば溶岩湖の絶壁にまで押し返されている。

 

 

 三影やアミの表情も少し険しくなる。ジンはアングラビシダスや海道邸で、バンとは普段のバトルで実力を知っているだけに、目の前の光景は半ば信じられない様だった。

 

 エンペラーの援護も虚しく、アキレスはどんどん絶壁へと押し込まれていく。当のアキレスは反撃せずただひたすら耐えている。

 

 

 ただなんの問題もないわけじゃないらしい。灰原は灰原で、片目が充血し、血反吐を吐いてスーツを汚し、今にも崩れそうな身体を必死に足で支えいる。

 息も絶え絶えだが、それでも笑ってられる精神力には脱帽する。

 

 

《なんて事だぁー!! 秒殺の皇女すら木の葉を祓う様にあしらい、片手間でアキレスを追い詰めている!! 何者なんだ灰原ユウナぁ!!》

 

 

 どうやら司会者は徳川財閥の人間らしい(偏見)

 もう駄目だ、アイツらは無視しよう。

 

 

 奴が言う様にバンは追い詰められ、ジンも手が出しようがない。実際一方的に灰原が攻めているし、それをジンが横から阻止しようにも横入りできない状態だ。

 

 

 ジャッジも無駄に長引かせるつもりもないだろう。インチキ威力のパワースラッシュで決めようとする筈。

 どんなLBXでも小技や大技を出せばバッテリーやモーター保護のためのクールタイムがある。隙があるならそこしか無い。

 

 

《灰原選手! このままパワースラッシュで決めるつもりだぁ!!!》

 

 

 エンペラーを力任せに吹き飛ばし、邪魔者はいなくなったとシールドを捨てて、両手で持ってして撃ち出そうとしている。

 

 

 エンペラーは間に合わない、アキレスも身動きは取れない。誰もが勝敗は決したと思っただろう。

 

 

 《ブグッ!?》

 

 

 だが、そうはならなかった。

 ここに来て灰原が吐血、耐えきれなくなったのか悶えて血反吐を吐き続ける。どうやら過剰稼働にとうとう体が耐えられなくなったらしい。

 

 

 灰原が反射で手を口に当てる。当然だが人間が操作してる以上、手が操作端末から離れれば信号が入力されずに止まる。操作できる状態でない為、時間が止まった様にジャッジが一瞬止まる。

 

 

「しゃぁぁぁぁぁ!! 今だやれぇぇぇ!!」

 

 

 つい叫んでしまった言葉に反応する様に、アキレスシールドの縁から4門の砲口が現れる。砲門は光を溜め込み、いつでも発射可能になっている。

 

 

 バンが反撃しなかったのは、あの切り札にエネルギーを溜め込んでいた、まさに天から降ってきたこの瞬間のために。

 

 

 けたましい音と共に放たれるは粒子砲の一斉射。緑の閃光がジャッジを飲み込み、射線上のすべてのオブジェクトに破壊の限りを尽くす。

 だがまだジャッジは倒れた訳じゃない。もはや戦闘継続不可能なレベルでボロボロだが、煙と瓦礫の中から這いつくばって来ていた。

 

 

 

     《アタックファンクション》

      《インパクトカイザー》

 

 

     《アタックファンクション》

      《ライトニングランス》

 

 

 待っていましたと言わんばかりに、蚊帳の外だったエンペラーが止めを刺すために現れる。

 迫り来る溶岩と岩盤の津波と青い閃光に、ジャッジは避けられる事も耐える事もできる筈なく、そのまま濁流と閃光に飲み込まれ爆発四散。

 

 

 灰原を取り巻いたホログラムは消え失せ、糸の切れた人形の様に倒れ込む。何処の部隊か知らんが、関係者に回収される前に、裏で待機していたであろう救護隊によってすぐさま収容された。

 

 

「終わった?」

 

「えぇ。でも、あの娘大丈夫かしら……」

 

「……正直、見てて 気分は良くない」

 

 

 《選手救護の為、一時試合を中止します。 再開は30分後を目処にしております。お手数ですがそれまでお待ちください》

 

 

 内心遅くない? とは思いつつ、流れるアナウンスに耳を傾けた。

 

 

「丁度いいや。三影、一回外行こ」

 

「ん…でも、カズと アミは?」

 

「やる事ないしなぁ、一緒に……」

 

「私達はここにいるわ! でも、あんまり遠くに行かないでよ?」

 

 

 なんかすっごい横入りを見た気がしたが、どうやらカズとアミは会場内に残るらしい。

 

 

「……あの、本当に大丈夫?」

 

「大丈夫よ、ねぇカズ?」

 

「えっ」

 

「カズ?」

 

「…はい……」

 

 

 ……ま、まぁカズがちょっと可哀想だが、アミがそう言ってる事だし、さっさと外に行かせてもらうか。

 

 

「ほら、悟 行こ!」

 

 

 そう言って三影に手を引かれながら、スタンドを後にする。

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、悟か?』

 

「どうも宇崎さん、折り入って頼みたい事があるんです」

 

 

 会場を抜け出して、ブース近くの食堂に待機している。

 連絡だけなら中でも良かったが、どうも会場内だと外部との連絡は何故かできない。だから態々外まで出向いて来たと言う訳だ。

 

 

「宇崎さん、さっきの試合見てました?」

 

『あぁ、彼女の事か。我々シーカーの方で保護している。当面は我が社が医療分野で提携してる病院に匿うつもりだ』

 

 

 手出すの早ッ……いや、言い方がちょっと卑しいな。既に手回し済みと言う訳だ。

 

 

 ただ、こちらとしても助かるのは事実、それに灰原には色々と聞きたい事がある。保護したのがシーカーなら、身内って事でバン達の名前が使えるし宇崎の言葉も使える。場所も安全も確保され尚更都合がいい。

 

 

「容体はどうですか? 派手に吐血してましたけど」

 

『まだ詳しい事は分からないが、少なくとも今すぐ死ぬと言う訳じゃ無いらしい。ただ、当分は院内生活なのは確かだと』

 

「分かりました。病院の住所とか分かります?」

 

『あぁ、近くにサイバーランスの本社がある。あの近辺で病院はそこ以外ないから、分かりやすいだろう。近くの施設にうちの部隊が駐屯してる場所もある。何かあったらそこに駆け込むといい」

 

 

 場所も距離も丁度いい。いつも使ってるバス停とは反対なのが面倒だが、近所のコンビニに行くよりは近い。

 逆に首都圏外や郊外の医療施設に移される方が問題だ。自分の足で行くのは難しいし、時間も限られる。

 

 

 なんでよりによって提携してるのがあそこの病院なのかは、ちょっと勘繰りたくもあるが……まぁ、どうせタイニーオービットは来年には潰れてる会社だ。気にしない様にはしよう。

 

 

「じゃ、そろそろ切りますね」

 

『あぁ、そっちも気を付けてな』

 

 

 通話が終わり、堅苦しい空気もなくなる。

 やっぱり宇崎は身内や子供に甘い。まさか、頼んですぐ所在を明らかにしてくるとは思わなかった。しかも盗聴されてるかもしれない電話越しで。

 

 

 タイニーオービット社の重役の姿か? これが……

 

 

 ……いや、まぁだから潰れるんだけども。

 例えるなら言うなら本能寺後の織田家だな。先代の信長が死んで、父のもとで経歴と経験を積んだ信忠こと宇崎悠介跡が継ぐがそれも死んで、最後に経験も経歴もないけど行動力だけはある信雄こと宇崎拓也が家督を継いですぐに滅ぶ。

 

 

 人生山あり谷ありとは言うけど、ここまでジェットコースターの様に短期間でこれ以上は上がらない絶頂期まで来て、あとは降るのみとどんどん急降下していくとは、まぁ予想なんてできないよね。

 

 

「……時間を見計らって、行くしかないか」

 

 

 近場とはいえ、好き勝手出入りできるものでもあるまい。病院ってそう言うもんだし、別に文句はない。

 

 

 ただ目の前に答えがあるのに、それを見たり聞けないと言うのは中々にもどかしいものがある。

 ずるいでしょ普通? 向こうは知ってるのにこっちは知る由もないとか、不公平だよ不公平。

 

 

 ただでさえ三影との接点も曖昧なんだ。これ以上俺を知る謎の人物がが増えたら、宗教にハマった柴◯理恵みたいに頭がパーンッ! ってなるかもしれない。勿論ストレスでだ。

 

 

 ………まぁ、時間だけは沢山ある、余裕を持てると言う事は素晴らしい。そう考える様にしよう。

 

 

「お待たせ」

 

「あ、ありがと」

 

 

 ……後回しでいいか(ダメ人間)

 難しい事は考えない。三影が持って来てくれたアイスを食べて、いっそう頭の片隅に追いやることにした。

 





アミ
「親切で言ってるけど、あれ内心来ないでって思ってるの。分かった?」

カズ
「はい……(被害者)」

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