Heaven Burns Red from REAL×EYEZ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
てへぺりんこ(
ゼロワンへと変身したアルトは同じく二刀流の月歌と共に間近のキャンサーへと接近していく
まずキャンサーは強固な外殻に覆われているらしい
だから、まずはその外殻を破壊しないと有効的にダメージを与えられないみたいだ
ユキのセラフの射撃の援護を受けながら、まず月歌が持っている剣のセラフでキャンサーの外殻を切りつける
そこを立て続けにゼロワンの蹴りがヒットし、外殻と思しき部分を打ち砕く
あとはそのまま一気に攻撃を叩き込んで、まずは一体目のキャンサーを撃破した
この一体で終わってくれればいいのだが、当然だが敵は一体だけとは限らない
撃破の気配を辿ってきたのか、わしゃわしゃともう二体ほどのキャンサーがこっちに向かって歩いてくる
「新手か。和泉さん援護頼んだ!」
「初心者に無茶言ってくれるなぁホント!!」
そう言いながら構えてくれる辺りそれなりに彼女も覚悟を決めたらしい
ゼロワンも行こうとしたとき、別の方向からの射撃がキャンサーを捉える
思わずそちらに視線を向けると金髪ロングの女性が銃と思しきセラフを構えていた
そのままもう一度銃撃しキャンサーの外殻を打ち抜くとさらに彼女の後ろから鎌を持ったフードの女の子が飛び出してきた
「ヒャッハーッ!!」
そんな世紀末な掛け声と一緒に鎌を振り回す女の子
なんかすげー人来たと内心で思いながら、そのフードの女の子を狙いキャンサーに狙いを定める
ダダン、とユキのセラフによる援護射撃、それを受けながらゼロワンはベルトを操作した
<ライジング インパクト>
足に力が溜まっていく感覚がわかる
全身が研ぎ澄まされていく
身体に力を込めて、ゼロワンは一歩足を踏み出して、跳躍する
そう、空への跳躍は、ライダーキックへと変わるのだ
「でぇやぁぁぁぁっ!」
砲弾のようなその鋭い一撃は、キャンサーを容易く貫く
ラ
イ
ジ
ン
グイ ン パ ク ト
「わしの獲物がぁっ!」
え、そういう系の人?
◇◇◇
「全員無事?」
「はい、総員無事です。欠員はありません」
初陣はとりあえず終わり、みんな五体満足で生き残ることができた
怪我もぱっと見見当たらないようなので本当に良かったといえる
「なんだかロックなことになってきたな」
「まぁ無事に生き残れたし、OK牧場じゃない?」
「だな」
「順応はえーなお前らは!! いきなりの実戦で命懸けなのに!!」
ふぅ、と一息つこうとしたときに和泉ユキがツッコんできた
冷静に考えるとユキの方が正しい一般人の言葉である
「キャンキャンうるせー奴だな」
「お前は普段もっとうるせー音楽聞いてんだろ!!」
「変なところで冷静だね和泉さん」
「感心するな!!」
ツッコミのキレもいい
聞いてて心地がいいくらいである
そんな漫才みたいなやりとりをしていると、一人の女の子が視界に入ってきた
「ふぅ…突然なことでびっくりしちゃった」
さっき鎌を振り回していたフードの女の子だ
…あれ? 先ほど戦場での姿となんだか雰囲気が違う気がする、とアルトは内心思った
「…アイツ、一番活躍してたやつじゃないか? ノリノリで駆け回ってたぞ」
「けどこうしてみるとなんか、華奢だ」
「うん。…なんか変な違和感がある」
二重人格ってやつなんだろうか
こち亀の本田みたいな
フードの女の子がこちらの言葉に気が付くと視線を向けて
「朝倉可憐。FPSが好きな元女子高生」
「実戦でもそれが役に立ったってやつか?」
「たぶん」
ホントかなぁ、と思わざるを得なかった
「それで、あれが敵?」
月歌がユキに問いかける
「あぁ。NASAが世界中で確認した、14の飛来物から確認された地球外生命体だ。あたしらオーキッドが掴んでた情報だとな」
「そっちのオーキッドもスゴイんだな」
「そっちはうるさいだけだろ」
天才ハッカー集団だというのは伊達ではないようだ
ツッコミも出来るハッカー、とは新しいな、と思うが、口には出さないようにしよう
たぶん怒られる
「―――そんな情報通だと、消されるわよ」
不意に聞こえてきたそんな声
皆がそちらに振り向くと、戦闘で援護してくれていたあの金髪の女性だった
「…あんたは」
アルトが名前を問いかける
しかし金髪の女性は
「言うわけないじゃない。だって私、諜報員ですもの」
「東城さん、だよね」
「…なぜそれを」
「いやさっきそう名前で呼ばれてたから…」
本当にちょっと前のことである
司令官に言われてて、普通に返事してたのを確認済みだ
「…やるわね」
「いや普通にイージーミスだからな」
「諜報員ならこの状況をもっと知ってるんじゃないの? 本当の声を聞かせておくれよ」
月歌がそんなことを言い出した
確かに諜報員なら知らないあれやこれやも知ってる可能性がある
ここで聞いておくのはいい判断かもしれない
「敵は宇宙という体内に発生したガン細胞…通称キャンサーと呼ばれているわ」
「カニか。食べたいな」
「残念。食べられないわ」
何の話だ
「キャンサーにはこれまで人類が生んだ兵器の一切が通用しなかった。結果、人類は敗退し、今や地球上の陸地の大半がキャンサーに支配された。日本も例外じゃない、この国もキャンサーの手に落ちようとしていた。…だけど、その寸前人類は新たな兵器を開発した。それがセラフ」
「ベルトのことは知らないの?」
「あいにく詳しいことは。なんでも超古代のベルトが見つかって、それを身に着けた人が協力してるっていうことと、そのベルトをベースにいくつかのベルトが開発されてるって言ってたけど。あなたのもその一つなんじゃないかしら」
「へー」
「話を戻すわね。このセラフを使って人類は水際にキャンサーを食い止めることに成功したの。ここから人類の反撃が始まろうとしているの。それをその象徴となるものが基地に設置された〝人類残存メーター〟。これは日本に生き残ってる人を集計したもので、時計塔に表示されている。一億二千万あった数字も、今では八百万ほど。これがゼロになったとき、完全な敗北を意味している…。だけど、反対に増えることができれば、人類の復興を意味している。キャンサーを排除して、この数値を一億二千万前後に戻すことが、わたしたちの最終目標よ」
おー、と月歌と二人感心の声を出す
「流石諜報員。詳しいな」
「うん。勉強になった」
「さっき司令官が言ってたのを繰り返しただけよ。わたしも初めて知ったわ。びっくりしたわ、おったまげたわ、軽く度肝を抜かれたわ」
「有能そうで有能じゃないッ!!」
ユキのツッコミが冴える
まさかの彼女の情報全部既出
んー? 彼女もしかしてポンコツかぁ?
「どうしてその最新兵器であるセラフをわたしたちが何の説明もなく使えたのかしら。もっと調べないことには、ここら辺は謎だらけね」
「それしか言えないんだろ」
ユキがジト目になってそう言った
たぶん本人も知らないんだろう、是非もない
なんだろう、月歌の周りにはすごい個性的な人たちが集まるなぁ、と考え始める
「新入隊員と見受けられるが」
そんな漫才をしていた時だ
貴族っぽい人が自分たちに声をかけてきた
風格のある、気品をまとったオーラを纏ったそんな女性だ
「うわ、貴族みたいな人が現れた」
「いや前線で戦ってた人だろ」
月歌も似たようなこと考えてた
「後方支援してくれたのはお前たちか?」
「はい」
「なんで丁寧なんだよ」
「あたしに言われても…」
流石に空気を読んだのだろうか
「…へぇ、今期の子たちは見込みありそうだ」
「ですね、教官。―――行くぞ、みんな」
隣に現れた男性に短く返すと部下、というか仲間たちに一つ指示を飛ばす
それに一つ返事をして、続々と帰投していく貴族っぽい人の仲間たち
武士っぽい人、なんか艶っぽい人に仮面した人…等々個性的な人たちだ
個性しかない
「なんかすごい個性が渋滞してる人たちだったな」
「先輩方らしいぜ」
「…あたしたちもいずれあんなんになっちまうのか」
「ああなると決まったわけじゃあないと思うけど」
「だけど、威圧感が凄かったわね…」
「でも、先頭の人はかっこよかった。隣の男性は誰だったんだろ?」
そういえば男性がいたな、とアルトは思う
少なくとも自分よりは経験は積んでいるんだろうなとは何となく思う
◇◇◇
「貴方たち、整列しなさい」
橋へと戻ってきたとき、ふいに手塚司令官がそんな言葉を言ってきた
「え、あたしら?」
「他に誰いんのさ」
月歌の言葉にアルトがツッコむ
少なくとも今乗ってきた車両にはアルトと月歌、和泉に可憐、東城しかいない
「今日はご苦労様。だけど、明日からはちゃんと兵士としての訓練も行うから、その自覚を持つように。そして茅森さん、貴女には第31A部隊の部隊長に任命します。全員入舎したら報告をお願い」
「了解であります」
「…月歌さんってそんなキャラだったっけ」
「ぶっちゃけ違和感しか感じなくなってきた」
「和泉さんそれだいぶ毒されてる」
「で、拙者は何をすればいいでござるか」
「武士かよ。みんな入舎したら報告しろって言われたばっかだろ」
「だぁってぇ! 柄じゃないんだもぉぉぉん!!」
「馬脚表すの早ッ」
しかし安心したまである
アルトもだいぶ毒されていた
「代わりにこの諜報員じゃダメ?」
「え? わたし…? そうね、皆がそこまで言うなら」
「不適任」
バッサリだった
「そもそも拒否権はない」
「えー」
「やりなさい、茅森部隊長」
「ん。それじゃあ役不足ながらやらせて頂くとしますよ」
「たぶん役不足の使い方間違ってるからな」
「和泉さんは物知りだなぁ」
ユキの言葉にツッコんだのち、ふと思ったことがある
あれ、これ俺も同室なの?
◇◇◇
「お、これが星のナービィってやつか」
「それ一歩間違ったら大問題だからな…」
宿舎に向かう途中、ぽよんぽよんと跳ねるスライムみたいなやつと出会った
そういえばナービィと呼ばれるやつが基地内にたくさんいると簡単な説明を受けていた
「見た目以上に身軽なんだね」
「けど、ホントそこかしこにいるね。可愛い」
「何のためにいるか、調べる必要がありそうね」
「諜報員なら知ってろよ既に。こっちはそういうの期待してんだから」
それは間違いない
「どこから来たんだろ」
「そうだな。…きっと、〝宇宙からタクシーに乗って〟」
「どんなタクシーだよ」
「こんなご時世だし」
「どんなご時世でも宇宙にタクシーは走らねーわ」
可憐の言葉に月歌がそんな変なことを呟いた
そこにすかさずユキの華麗なツッコミが冴えわたる
もはや様式美だ
「鋭いツッコみ」
「ふふ。おかしな人」
「たぶん東城さんも相当だよ?」
「えっ」
◇◇◇
「それでは、それぞれ宛がわれた自室で、夕食まで待機しててください」
宿舎に到着し、七瀬士官にそう指示される
「ほいほーい。それじゃあみんな行こうぜ」
「うん」
「えぇ」
「オッケー」
「いやちょっと待て。なんであたしらこのメンツで行動してるんだ」
「今更だね和泉さん」
「そうだよ。あんまりにもみんな違和感抱かないから今あたしが言ったんだよ」
「何か問題が?」
「いつ仲良くなったあたしら」
そう言われると何とも言えない
凄い流れでここまで来てしまったが何だろう、なじみが凄かったというか
「さっき仲良くなったじゃん。名前も一応言ったし」
「それだよ、あたしずっと気になってたんだけど…なぁ、お前確か〝かやもりるか〟って言ってたよな」
「うん」
「…るかって名前、月に歌って書かないか?」
「書く」
「え。…歌を歌ったりする?」
「自信はある」
「…もしかして、
「いた」
・・・
一瞬の静寂
「知ってるーッ!!!!! あたしお前の音楽聞いてたーッ!!!!! そうだったーっ!!!!! よく見ればホンモノーっ!!!!! 雰囲気違うから気づけなかった―ッ!!!!!」
そうだ、とアルトも思い出した
エモーショナルロックバンド〝SheISLegend〟
作詞作曲もこなすそのボーカルは年端も行かぬ女学生で、メジャーデビューアルバムはその年の新人賞を総なめ、天才という言葉をほしいままにした、伝説のロックバンド
そう、アルトでさえも最低限のこんな情報があっさりと出てくるぐらいは知ってるのだ
あれ、冷静に考えれば俺結構すげぇ人と一緒にいたのでは?
「そんなすげー人と一緒にいたのか…ビビるな…残る三人は?」
冷や汗をかきながら和泉はこっちに視線を向けてくる
「朝倉可憐。FPSが得意なゲーマー」
「東城つかさ。ある組織に属する諜報員よ」
「飛嵜アルト。どこにでもいる普通の元高校生」
「あたしは和泉ユキ、それなりのハッカーだ」
「ようし。これでみんななかよしだな」
「まだノー! まだノーだ!!」
和泉がそう声を荒げる
まぁまだ自己紹介しただけだし是非もない
「まだ名前言っただけだろ!」
「お前の仲良しはハードル高いな」
「お前が低すぎるんだよ!!」
コミュ力が高いともいえる
「このナービィかわいい。部屋に持って行ってもいいかな」
「いいんじゃない? 一匹くらいなら大丈夫だと思うし」
「んー。可愛いかれりんが可愛いナービィを抱いて寝る。…これは萌える」
可憐の言葉にアルトが賛同する
こんなにふにふにしているし敵意もないから連れて行っても罰は当たるまい
月歌もなんか萌えてるし
「正体不明生物と寝る気かっ!」
「温厚で特に危険はないわ。けど、ぞんざいに扱わないように」
「お前の口からはホント新情報出てこないな!」
「あなたにも ナービィ あげたいっ」
「いらねーよ!! あとなんでちょっとチェルシーなんだよ! …いやわかるやついんのかこれ」
たぶんいない
というか分かりづらい
「かれりんに強く当たるなよっ」
月歌が声をあげた
「なんで朝倉の味方になってんだよ…」
「可愛いから」
「月歌さんってたまに欲に素直になるね」
こんなご時世じゃなかったら少しは見習いたいかもしれないそのメンタル
そんな時だった
「はんっ。こんなところでもスター気取りか。相変わらずやなぁ」
今度はピンク色の髪をした関西弁の女の子が入ってきた
「おいおいまた新キャラか。入れ食いだな今日は」
「初日だからなー」
「それで済ましていいのかな」
月歌の言葉にユキがぼやいて、アルトが短くツッコんだ
しかし関西弁の少女は気にする素振りを見せず、月歌ににらみを効かせてくる
「うちのこと、忘れたとは言わせへんで」
「…何? 知り合いか?」
「…おい諜報員、情報」
ユキに言われ、月歌は覚えがないのかつかさに助言を求めた
「SheISLegendのローディーで、主にギターを渡してた子」
絶対違う
ちなみにローディーとは早い話バンドを支えている裏方の仕事を言う
「よう久し振り!」
「全然ちゃうわっ!」
当然の反応だった
「…ヒント」
「当てに行かないでよ諜報員」
「ならヒントや」
「うわ親切」
アルトの言葉がその場に響く
当てに行く諜報員もあれだが、素直にヒントをくれるのもあれだ
「東に天才ロッカー…ほなら西には…?」
「ローディー」
「ローディーから離れろ!! さっきちゃう言うたやろ!!」
つかさの言葉はさておき、そのフレーズでアルトは何となく思い出していた
あぁ、とアルトは手をぽんと叩いて
「あー。なんかそんな噂を聞いたことがあるような。キッコーマンだかそんなやつ」
「なんでキッコーマンが出てくんねん! せめてもうちょっとなんかあったやろ!!」
「そんなこと言われても…」
やれやれ、といった様子で関西弁の女子は一つ息を吐く
「屈辱的やけど、自分で言うしかないみたいやな。―――答えは天才サイキッカー! うちは天才サイキッカーの
「そんなやついたか諜報員」
「関西のことはちょっと」
「知らないみたいだ、じゃあな」
「待たんかーい!!」
逆にこれをあんな感じでスルーしようとしている月歌のメンタルもすごいと思う
当然ながら関西弁の女子改め、めぐみはこれを止めてきた
「なんだよ、まだあるのか」
「うちが関西で天才サイキッカーやったのに、似た感じの天才クールビューティ風のキャラでブレイクしよってからに…! そのせいで、どんだけうちの存在霞んだおもとんじゃーっ!!」
冷静に考えると結構きれいなこじつけだと思う
アルトはそう考えたが言葉に出さないことにした
面倒くさそうだからだ
「…それは単に、サイキック能力の差だ」
「自分はロッカー!! 使えんやろ!!」
「そうだねぇ。じゃあ何の差なんだろうねぇ」
「元々関西出身なんが不利なんやぁぁぁっ!! 関東生まれはえぇなぁぁぁっ!!」
「いやいや、関西出身でも有名な人はいるでしょ。服部平次とか」
「それは漫画のキャラやろがいっ!! 国民的に人気な漫画のなぁっ!!」
つい月歌の言葉を追いかけるようにアルトが口を挟んだらよりヒートアップしてしまった
これは失敗だった
「っていうかどんどん興奮してるじゃねぇか。どーすんだよこれ」
「てへぺりんこ!」
「なんだそれ。流行ってるのか」
「初めて口にした」
「なんで初めて口にしたのにそんな昔からやってましたが? みたいな空気感出せるの月歌さん」
「場を和ませる素敵なコトバだよ?」
「和むか―ッ!!」
そう言ってめぐみは会話に割り込んできた
ぜーぜーと肩で息をしてるあたり少し疲れてきたのかもしれない
「ここで会うたが百年目や、うちのサイキック直接ぶつけたる!」
「はっ。来いよ」
よくわからない理由でなんかこの場で一触即発の空気になってしまった
いや止める気になれば止められるからどうしようかとも考えたがやはりここは止めねばならないと考え直し二人に向かって声をかけようとしたその時だ
「待たれるがいいっ!!」
一人のちびっこい女の子がまた割り込んで来たのだった