Heaven Burns Red from REAL×EYEZ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
「待たれるがいいっ!!」
そう言って割り込んできたのはちっこいピンクの髪をした女の子だった
「なんやこのちびっ子! 邪魔すんなや! 巻き添えくろてもしらんでっ!」
「その勝負、この〝戦艦虎徹丸〟元艦長、國見タマに預けてはくれませんかっ!」
「今度はコスプレか?」
「それはそうと、どこからこんな子供が来たのかしら」
「だけどかわいい」
月歌、つかさ、可憐と口癖に感想が飛び交う
かくいうアルトもちっこいなとは思っていた
というか思わざるを得ない
「こ、この格好は、その…元乗員に着させられてるというか、ちょっと恥ずかしいんですけど…」
「はよ家帰りぃや」
「いいえ! せめて虎徹丸元艦長としての誇りを忘れず、規律を正していきたいと思います!」
「…あれ? でも虎徹丸ってコンピュータが動かしてたとか言われてなかったっけ」
「えぇ。アルトくんの言う通り。私もそう記憶してるわ」
アルトの言葉の通り、虎徹丸という戦艦の名前は聞いたことがある
けどそんな艦長とやらの存在は聞いてはいないのだが
「そ、それは…私の外見が外見なため、そう報道されていただけというか…」
「待った。それってつまり〝オホーツク海の惨劇〟の生き残りってことか?」
不意に何かを思い出したのか、ユキが口を挟んでくる
「知ってるのか、和泉さん」
「あぁ。かつてキャンサーに対抗しようとアメリカを中心に連合艦隊が編成されたけど、敗れたって悲劇があってな。虎徹丸はボロボロになりながら、唯一生還できた戦艦で、その艦長さんなんだと」
そう考えると、キャンサーの脅威を身をもって知っている人間ということになる
少なくとも今日初陣の自分たちよりは経験しているということだ
「ほぉ。ならよっぽど頭ええんやろなぁ。ほなら円周率答えてもらおか! 答えはこいつがしっとる」
そう言ってずびし、と親指で和泉ユキを指さした
超絶人任せだった
何か言いたげなユキをスルーしつつ、國見タマは
「いいですけど、永遠に終わりませんよ? 3.1415926535 8979323846 2643383279 5028841971…」
「ま、待て早い早いっ」
「は! わからんよう早口で答えたか、せこいやっちゃな」
「早かったけど、合ってる」
「どっちも天才かっ!!」
流石元ハッカー
アルトは何を言ってるのかさっぱりわからなかった
せいぜい日常で使うのは3.14だけだからだ
「それでは、2の平方根も答えておきましょうか!」
「いやそっちは流石にわかんないから!」
応えようとしたタマの口をユキが制した
ともかく、これで確実に優秀だということが証明された
めぐみもそれに衝撃を受けたようで
「う、うそやん、こんなちびっこがそんな賢いんか…?」
「はいっ!」
力強い返事でめぐみの言葉にタマが反応する
その時ふむふむ、と顎に手をやった月歌が少し歩み出て
「ということは、ロリキャラだ! うわーい!」
急に変なこと言い出した
入隊式の時といいなんなんだろう、瞬間瞬間を生きてる人だなと思う
「なんでお前が喜ぶんだよ」
「だってあたしらこんなんばっかじゃん? こういう小さい子が一人いると安心するっていうかさ」
「たまに君のポジションわからなくなる」
たまにボケに回っていたアルトも今回は和泉に加勢した
うちの部隊長は思考が読めない
「そんなわけで、よろしくなロリッ子」
「違います、國見タマです」
「たまってどういう漢字?」
「カタカナなんですけど…その、猫の名前みたいなので、できれば名字で…」
「あー! タマ艦長ー! お久しぶりですー! 頑張ってくださいねー!」
「うむっ!」
女性の整備員っぽい人に言葉をかけられて國見タマはそう元気よく返事する
かーわいい
「ほら、タマって呼ばれてる」
「あ、い、いえ。今のはたまたまで…」
「たまたまタマだったと」
「そう、たまたまタマで…普段はタマ艦長で…」
「でも今は艦長じゃないから…おタマさんって呼ぼう」
「!! 艦長じゃないから言い返せないっ! 受け入れざるを得ないっ!」
そんなことはないと思うけど、と言いたくなりそうな言葉をアルトは引っ込んだ
なんかもうめんどくさくなってきたからだ
「…ちっ、変にちゃち入れられてしらけてしもたわ。今日の所はこのへんにしといたる」
「この辺も何も文句言ってきただけだろ」
「ちっこいののおかげで命拾いしたな、次会うたら特大のサイキックおみまいしたるさかい、覚悟しときや」
「あぁ」
めぐみの言葉に月歌が返事してひとまずこの場はお開きとなった
そういえばこの後は自室で待機と指示を受けていた気がする
そんなわけだから行こうか、という話になりとりあえず一行はその部屋に足を運んだ
「…なんで自分らうちと進む方向おなじなん」
なんでだろうね
そう言いたくなる気持ちを抑え先頭にいた月歌が部屋の扉を開いて中に入る
何となく、めぐみも察してきたようだ
「うそやん!? まさか自分らもこの部屋なん!?」
再会は思いのほか早かった
早いなんてもんじゃない気もするが
「もしかして、このメンバーで〝31A〟ということ…?」
「うん、部屋の前にプレート貼ってあったし」
「諜報員なんだからもっと周囲見ろよ! ボーっと入ってくんなよ!」
つかさの疑問に可憐が応えて和泉がツッコむ
なんだか変な流れができつつある
「…あれ、これ男の俺いていいの? これ結構ヤバい状況じゃないの?」
「別にいいんじゃないの? 大した問題じゃないし」
「いや大問題だわ」
あっけらかんと応える月歌に対してすかさずツッコむ和泉ユキ
「そんなことよりウノやろうぜ」
「何持ち込んでるのさ。いや、ウノより先に確認することあるじゃん」
「ないよ」
言い切ったよこの人
「ドロー2!」
「ワイルドドロー4」
「チャレンジ」
「うわぁぁぁぁぁっー」
「はっはっは」
「マイペースしかいねぇ!」
しれっとウノ始めてるし
っていうか基本的にボケしかいないこのチーム
正直女性として見れるか分かんなくなってきた
「いやいや。備品確認しろって言われてたでしょ」
流石にここでアルトがボケに回ると収集つかなくなる
たまにボケるくらいでちょうどいいのだアルトは
「備品って、靴下とか、ブラジャーとか下着…パンツとか?」
「そう、そういうのも込みこみで…あとなんで俺が反応しづらい方に言い直したの?」
下着でよかったじゃん
「このポーチはなんだろ。全員に一つずつあるみたいだけど」
可憐が一つ、ポーチを手に持って確認してる隣で、和泉と月歌が飲料水と携帯食料を確認する
「こっちは水と携帯食料か」
「今食べよーっと」
「食うなよ!! それも備品なんだからな!!」
「えー? 備品なんだからまた支給されるじゃん」
「どうしてなくなったか説明できないだろ! 腹減ったから食べましたって報告する気か!!」
割とまともな理由を述べられ、月歌は「わかったよう」と携帯食料をもとの位置に戻す
ひとまず問題なさそうにはなったのでアルトが周囲に声をかける
「はーい、みんな備品チェックねー」
「そうしましょう!」
そんなアルトの言葉に元気に反応したのは我らがおタマさんである
かわいい
アルトの言葉を皮切りに改めていそいそと己の備品を確認し、なにがあるかを確かめていく
とりあえずアルトも軽くその備品を確認する
しっかり服や下着まであったからこれは確実にみんなと住めということである
地獄か? とも思ったが冷静に考えてみるとこのメンバーボケばっかりで女子として見れるかどうか不安になってきた
なんだろう、割と行ける気がする
「これはここにっと」
不意にことりと月歌が私物かなんかわかんないけどスピーカーっぽいものをセットした
「なにしれっと設置してんだと」
「スピーカー」
「え?」
スピーカーだったわ
「モバイルの中じゃあこいつがピカイチでねぇ。どんな場所であろうと、これ一個さえあればモッシュにダイブに、乱痴気騒ぎのパーティー会場と化す」
「化させねぇよ?」
アルトがツッコむ
乱痴気騒ぎと化した宿舎とか想像するだけでも怖い
けどテンション上がった手塚司令官とかは見たい気もする
怒られるだろうから絶対に本人には言わない
「えー」
「当たり前でしょ。むしろなんでイケると思ってんの」
「…このメンバーの中でツッコミなのはあたしとお前だけだ…たまにボケるけど」
「和泉さんが苦労しない程度にはボケたいかな」
「頼むよ、ツッコミ専門でいてくれよ!! この中でツッコミがあたしだけとか想像したくねぇよ!!」
「え? 私がいるではないですか!」
不意に会話に入ってきたのはおタマさんである
…ん? もしかして彼女は自分がボケであるという自覚がおありでない?
「いやいや。…えマジで?」
「いやいやいや」
「いやいやいやいや…」
「お前らなにいやいや言ってんだ。確認は終わったのか?」
いやいや合戦している和泉とおタマさんに向かって月歌が声をかけた
そして同時に、アルトは適度にツッコミに回ろうとコッソリ心に誓ったのだった
<本日入隊された皆様はカフェテリアにお集まりください。夕飯の用意ができています>
不意に流された全体放送
時計を見てみると結構いい時間帯である
「お。もうそんな時間か。食べに行こうぜ、動いて腹減ったし」
「ウノしかしてないよ」
◇◇◇
「うまいもん食えるといいけどなー」
つかつかと食堂へ向けて歩く道すがら、月歌がそんなことを呟いた
一応ここは軍事施設ではあるから、何が出てくるのだろうか
「仮にも軍事施設よ。病院食よりはマシな程度ね」
ふふん、といった感じで東城がそれに答えた
やっぱりそうなのかなー、なんて考えながら一行は食堂へと足を踏み入れる
「―――バイキングじゃん!! やったーっ!!」
月歌のテンションが爆上がった
想像の何倍もする豪華な食事だったからだ
この豪勢な食事っぷりにめぐみやおタマさん、可憐も皆驚いている
「…お前が意味ある言葉言う日は来るのか?」
ジトーっとした視線を和泉がむける
それに対して東城は悔しそうな顔をしながら
「惜しかった…!!」
「大外れだからね」
アルトが小さい声でツッコむ
何でそんな顔できるんだろうこの人
「おいおい! これとこれ足したら―――カレー牛丼になるぞ!! テンション上っがるー!」
月歌はもう順応しお皿に料理を持っていた
というかメインとメインを組み合わせてハイカロリーな料理を捜索していた
自由である
「はっ。ノータリンは相変わらずやな」
「あん?」
「自分の愚かさに気づいてへんやつに教えたる…バイキングでカレーは腹をいっぱいにするためにトラップやということを!」
「そ、そんなっ…!?」
めぐみの指摘にめっちゃショックを受けてる月歌
そこまでショック受けることだろうか
「麺類だってそうや」
「嘘だろ…! 次、刀削麵食べようとしてたよ…!」
「…なんやそれ」
「知らないのかよ! あの片手に生地、片手に包丁を持って、茹でた湯の沸いた鍋の前に立ち、生地を細長く鍋の中に落として茹でるやつのことだよ!」
「なんやそれ!! そんなマニアックなのあれへんわ!!」
準備が大変だからバイキングの席では出てこないだろう、というのがアルトの考えである
いちいち相手にしてたらしんどいのでいい加減アルトもご飯を食べるべくおぼんにお皿を乗せて適当に食べたい料理を選んでいく
「! すごい…この軽さにこだわった生地に、濃厚なクリームのハーモニー…!」
可憐はロールケーキに舌鼓を打っていた
晩御飯に? とは思ったが食の嗜好は人それぞれなのであえて何も言わないようにする
「この煮初め…! しっかり味がしゅんでるっ!」
すっごい実家感
何の煮初めだろう、大根かな
おばあちゃんみたいだ(失礼
「しかしなんだってあるな…もしかしたら私ら特待生なんじゃね?」
「この不自然なまでの好待遇…何かあると思わない?」
「あたし売れっ子のロッカーだったし」
「じゃあ問題ないわね。いただきましょう」
疑念を持ったつかさは月歌によって秒でその疑念を晴らした
「疑い続けろ諜報員!!」
「もうー。和泉さんツッコんだらキリがないって。早く俺たちもご飯食おうよ」
「くっ…そうだな。早く食おう」
「お。和泉もなんか食う? そいじゃああたしが選んであげよう。これとこれとこれとこれで…ほら、あらゆる足が生えた生き物丼の完成だ」
「なんだそのトラウマになりそうなの。やだよ、普通に選ばせろよ」
「その時の彼女たちは知る由もなかった。…明日にはこの中の一人が、いなくなっているということに…」
不意に聞こえてきた変なナレーションみたいなセリフに一同を背筋を寒くする
「…なんか変なナレーション見たいなのが聞こえてきたような?」
「あんなはっきり聞こえる超不吉なナレーションある?」
月歌にアルトがキョロキョロとあたりを見回しながら声の出どころを探す
「かれりんか?」
「うぅん」
「それじゃあつかささん?」
「違うわよ」
「じゃあおタマさん?」
「違います!」
「ならめぐみさんか? サイキック的な」
「そんなサイキックあらへんわ」
…
え、じゃあ本当に誰なんだ?
誰でもないなんてあるんだろうか
「誰でもない、というのなら可能性は一つね…」
「な、なんだよ、心当たりあるのか諜報員…」
「招かれざる客人―――〝座敷童〟」
「妖怪の存在信じてどーすんだ諜報員んんっ!!」
キレのある和泉のツッコみが口を走らせたつかさに迸る
だがそんな和泉にアルトは一つ待ったを唱えた
「いや和泉さん…もしかしたら」
「…もしかしたら?」
「金田一少年の事件簿的な、そういう犯人の通称が座敷童なのかもしれない。〝放課後の魔術師〟とか〝赤髭のサンタクロース〟とか、そんな類」
「いてたまるかあんな用意周到な犯人たちが!!」
「けどつかささんよりはマシな考えだとは思うし…」
「ぐっ、一瞬でも〝そうかも〟って思ってしまったあたしを殴りてぇ!」
まぁ百パーセントつかさやアルトの言った線はないだろう
あったらびっくりする
「このナービィがしゃべったとかは?」
そう言ってゆっくりと可憐がぽわんとしたナービィを抱え上げる
まんまるとした可愛らしい瞳っぽいのが月歌たちを捉える
「…そんな発声器官があるように見えるか?」
和泉の言葉には今回は素直に同意する
なんでかいるだけで可愛らしいが、しゃべるとは思えない
彼女の言葉を聞くとてへ、と可憐は笑って「だよね」とうなずいて
「ないかー。お話しできたらよかったのにね」
「なー。もぐもぐ」
もっしゃもっしゃと料理を食いながら月歌が返した
しゃべれたら萌え度が上がったかもしれないが、まぁ今回は良しとしよう
◇
皆がお風呂に入っている間、アルトはどっかを歩いていた
正確に言えば探索のようなものである
流石に入浴は男女別であり、時間帯によって変わるみたいだった
さてどこを歩いてみっかな、と思った
建物の一つに気になる建物を見つけた
ついでにその中に誰か白衣を着た人物が入っていくのを見かけたのでおそらくあそこは研究棟かなんかなのだろう
もしかしたら自分のベルトのこととか少し知れるかもしれない
そんな好奇心でアルトはその研究棟と思わしきその施設に入っていった
「おんや?」
そこに入ったとき、最初に見かけたのは茶色の髪をした眼鏡のスタイルいい女性だった
女性はアルトを視認すると眼鏡を外すとこちらに向かって笑みを浮かべて
「好奇心が勝っちゃったのかナ? こんな研究棟に入ってくるなんてねェ。…うん? しかも君は巷で噂のゼロワンじゃあないか! じゃあ逆に運命なのかもしれないねェ」
凄い言葉を捲し立ててくる目の前の女性にアルトは少しだけ後ずさりする
それを察したのか女性は「んっんっ」と調子を整えると
「いや失敬失敬。私は沢白凛音。早い話君のベルトを作った女さ。そしてここはセラフやベルトの研究などをしている最前線の科学技術研究所。ここにはもう一人研究職でありながらセラフを使って前線に立つ物好きな同僚がいるけど、そのうち会うことになるだろうさ。それより、いい感じにゼロワンドライバーを使いこなしているようだねェ」
「あ、あぁ。まだまだかもしれないけど」
「当然。まだ君は発展途上だからネ。けど大丈夫。いつか君はしっかりと手に入れるはずだろうから、心配はしていない。だから信じているよ、〝仮面ライダーゼロワン〟。ここには数人の
そう言って凛音と名乗った女性はアルトの額をこつんと突っつくと可愛らしい笑みを浮かべた
一瞬見惚れるくらい綺麗な笑みだった
「ほら、もうそろそろお風呂の時間だろ。ここのお風呂はイイ感じだゼ?」
「すっごい抽象的な表現だな…」
◇
たまたま一人だったのかすでにみんなは入った後だったのか、だだっ広い風呂場にアルトは一人で浸かっていた
めっちゃいいお湯だった(語彙力
それはそれとして体や頭を洗った後もう一回湯船に浸かりなおしてはふぅ、と息を吐いて一服した後身体を拭いて着替えなおすと階段前で待っている一向の元へ向かう
そこにはすでにコーヒー牛乳とかで一服している月歌たちがいる
「おっす。湯船銭湯見たいでさいこーじゃなかった? 泳ぎたくなっちゃったよ」
「…え、流石に泳いでないよね?」
「流石にそこまではしてないよー」
月歌が言うと冗談に聞こえないから困る
この人普段があれだから…
「コーヒー牛乳もあるし、完璧だよね」
「それは分かる。思わず腰に手ぇ当てて飲んじゃうよね」
「うん」
可憐の言葉に同意する
銭湯の後の定番といえば牛乳…欲を言えばコーヒー牛乳かフルーツ牛乳が定番なのだ
知らんけど
「さ、流石に風呂上がりだと暑い…」
「ならその重ね着してるマント脱げばいいだろ。だから暑いんだろ」
「それは違うと思います!」
「何が違うんだよ。あたし間違ったこと言ってないだろ」
おタマさんと和泉さんがそんな話をしている
確かにおタマさんの黒いマントは暑そうだ
「おかしい…」
そんな時、つかさが顎に手をやりながら不意にそんなことを呟いた
正直また変なこと言うのかな、とは思ってしまった自分である
「ねぇ、みんなもおかしいって思わない?」
「思う」
「貴女も気づいてたのね」
なんと、つかさだけでなくあの月歌も気づいたらしい
これは変なことではないかもしれない
なんだかんだ月歌には自分たちにはない第六感的なものが―――
「卓球をするところがない」
ぜんぜんちがった
「そう。温泉宿には定番なのにね。…あ、コーヒー牛乳もう一本飲んじゃおっと」
温泉宿じゃないからねここ
君の抱いた疑問はそれで本当に合ってたのか諜報員
もう諜報員(笑)になってしまうよ
「…なぁ諜報員、お前の抱いた疑問ってそれで合ってたのか?」
「え? いえ、違うんだけど…まぁ大したことないかなって」
どうやら和泉も同じことを思っていたようだ
まぁここまで来たら気になるし、アルトも便乗しようと思い和泉に乗っかる
「まぁまぁ。そんな風に言われると逆に気になるからいっそ言っちゃってよ」
「そう? それじゃあ改めて…。ねぇ、おかしいと思わない?」
そこからやり直すんだ
「ここに来てから、ほとんど男の人を見ていない」
『めっちゃ重要な疑問だったぁーッ!!』
生まれて初めての和泉とアルトのシンクロツッコみ
言われて見ればそうだ、全然見てない
恐らく各部隊に一人くらいはいるであろう男性の姿は確かに見かけてはいる
けどそれ以外の男性スタッフは?
一体どこにいるんだ…? 考え出すとキリがない
「そんなん決まっとるやろ」
ここに来てずっとだんまりしてためぐみが口を開く
「それはうちらの才能が、男に勝っとるんや」
「なるほど。私たちも捨てたもんじゃないわね」
「腑に落ちるな諜報員!!」
「せっかく今諜報員ポイント上がったんだから!!」
流石に今回はアルトは和泉側だった
あと諜報員ポイントってなんだろうって言った後思った
「じゃあどうしてだってのさ、ユッキー、アルトん」
「…なんだよそのユッキーっての」
「あとそのアルトんってのも」
なんだか月歌が自分たちのことを妙な名前で呼んできた
「だって和泉ユキだろ? だからユッキー」
「なるほど、じゃあ俺もアルトだから…」
「そう、アルトん。…あんま変わってないけどな」
「いや、それはいいけど…要はニックネームでしょ?」
「そ。あたしのことも月歌でいいよ」
「…ま、もう結構友達ではあるよね、俺たち」
「…だな」
まぁいいかニックネームくらいなら
「戻していい? 話を」
つかさの言葉に和泉もアルトもハッとする
まさかの人物に話の軌道修正をされてちょっぴり落ち込むだ顔には出さない
いや、和泉はめっちゃ顔に出てた
改めて月歌が切り出す
「どうして男子が一部を除いていないのかって?」
「男子宿舎と別れてるだけなのでは?」
「じゃあなんで俺そっちにいないのかってなるじゃん」
「それもそうでした!」
珍しくまじめな話に考え込む
「米軍では昔から同じよ。分けること自体がセクシャルアサルトとなり批判の対象になるわ。だからアルトくんもいるのかしら」
「…今のつかささんめっちゃ諜報員だよ」
「そうだ、それを維持し続けろよ」
「こう考えると、可能性は一つ…私たちは六人で地球を守るアイドルで、アルトくんはそのマネージャー的な?」
『やっぱりアホだった!』
願いはむなしい
「はっ。その可能性だけはあれへんわ。うちは黙っておったらかわいい美少女やけど、そっちのロッカーは首の下から足の先まで田舎丸出しの小娘やで!」
「顔がいいのは認めるんだ」
「ルックスはいいのはあたしも思うし…」
「和泉さんちょっと欲出てる」
「まぁ明日から訓練始まるし、それとなく聞けばいいでしょ、教官とかに」
「そう簡単に口を割るかぁ? あの司令官」
和泉の言葉を最後に一行はとりあえず部屋に戻ろうということになり、彼らはその場を後にするのだった
◇◇◇
「寝るのもみんなでかー。修学旅行みたいだな」
「ねぇ俺ホントにここに居ていいの?」
「今更だろ。一応お前は信頼してんだぜ? 付き合い短いけど」
「そう思われるのは光栄だけどね。まぁホント今更かー」
慣れるだろうと楽観的に考える
ちなみにほかの人はベッドではあるが、アルトはテーブルとかを少しどかしてそこに布団を敷く
ベッドとか慣れないから正直これはありがたい
「しかし、ホント修学旅行みたいだねぇ」
「なんや。恋バナでもするんか」
「そんな思い出あったかなー。…凄く遠くに感じる」
「こんな時代だものね…」
「ずっと一人で寝てたから、なんだか新鮮です」
「…なぁ、お前帽子被ったまま寝るのか? 起きても被ってたら奇跡と褒め称えたいんだけど」
「あ、いいこと思いついた。ナービィ枕にしたら気持ちいいんじゃない?」
「だめっ」
「ぞんざいに扱わない。言われたでしょそういう風に」
「それに朝早いんだから、もう寝ろよ―お前ら―」
「はいはーい」
「それじゃあ電気は俺が消すよ」
「お、せんきゅーアルトん。紳士だねぇ」
「やかましいわ」
月歌の言葉に適当に返すと部屋の電気を消して改めて布団の中に潜り込む
「ふぅ。やれやれな一日だったなぁ」
和泉の声だ
まぁそれには同意できる
ちょっと楽しくもあったが
「朝、目覚めるたびに一人ずつ消えていく…そんなゲームがこれからハジマル…」
「誰だ今物騒なこと言ったのはッ!!」
「そんなゲームが始まるの!?」
「おいユッキー、アルトんうっせぇぞー」
「なんであんな声聞いて寝れんだよ!!」
「みんな寝てるし寝言でしょ」
「どんな寝言だよ!! 何が始まるんだよこれから一体…」
拝啓、ご両親
正直前途多難です
途中で出てきた沢白はとあるのとは平行同位体みたいなやつです
同じ人だけど別人みたいな