Heaven Burns Red from REAL×EYEZ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
一章 一日目
第一章
世界征服と壊れた時計
朝、目が覚めた
もぞもぞと携帯…もとい電子軍人手帳を見やると現在時刻は朝の五時半
はっやーい、と心の中で呟きながら二度寝したい気持ちを抑えゆっくりと起き上がる
するとそのタイミングでラッパのような音楽?が鳴り響く
起床ラッパって奴だろうか
「なんや、ラッパで起こされるんかいな…」
もぞもぞと一番最初に反応したのはめぐみである
アルトはおはよう、と短く彼女に挨拶すると「おはようさん」と目をこすりながら返答してくる
そんな声を聞きながらとりあえずアルトはカーテンを開けた
めっちゃいい日差しが部屋の中に差し込んでくる
これは気持ちのいい朝である
それを皮切りに他のメンバーも起き始めた
<起床時間です。起きてください。0605までに整列して、点呼を受けてください>
七瀬士官の放送が聞こえる
三十分くらいの猶予があるわけだ
「おい、茅森起きろ。曲がりなりにもお前が隊長だろ」
「ぐがー」
みんな起きたのに一人だけ起きる気配がない
眠りが深すぎるのか
「すごい、ゆすっても全然…」
「おっぱい揉んでも起きないわ」
しれっとセクハラをかましてるつかさにスルーしながら、和泉に対して
「どうする? このままじゃ遅刻しちゃうよ」
「そうだな…」
「むにゃ…朝からどうしたんですかぁ…」
少し遅れておタマさんも起床した
帽子は一切ズレていなかった
「奇跡だ! その帽子すごいっ! 褒め称えようッ!」
「言ってる場合じゃないって」
「せやで。こいつのせいで連帯責任で罰則とか堪忍やで」
「おっといかんいかん…。とはいっても、起こせそうな方法一つぐらいしか思いつかないんだけど」
「奇遇だね和泉さん、俺もだよ」
確証はない
だが十中八九これで起きるだろうという方法はアルトも和泉も思いついた
「? どうするの?」
「耳塞いでてつかささん、ほかのみんなも」
「…え、何が始まるの?」
可憐の言葉にあえて返さず耳栓替わりのタオルを全員に配る
それを尻目に和泉はスピーカーからあるサウンドを流れさせた
<ギャイアグレイーイボドドドゥドオーッ!!!!!!>
月歌が大好きな派手派手なロックサウンドを超絶大音量で
タオル耳栓越しでも正直うるさい
その証拠におタマさんなんか「ミミガー!!」ってなっているし
他のみんなも困惑顔である
「あっがるーっ!! ボドドドゥドオー!!!!!」
ハイになった月歌がこっちに突撃をかましてきた
「いだだだだ!! ちょっと痛いって! 落ち着いてってホント!!」
仮にも女性なんだから変に抱き着かれると意識してしまう
「よし。起きたな」
「な、なんだったの…?」
「こいつの好きな曲流して、ハイにしてやっただけだ」
可憐の疑問に和泉が答えた
月歌は元ロッカーであり、先の音楽も彼女が好む〝ボドドドゥドオー〟系の音楽だ
「まさか毎朝こんなんが続くんとちゃうやろな…」
「そうはならないと思いたいけどなー」
「ミミガー!!」
いつまで耳がってなってるんだあの子は
◇
明朝0605
分かりやすく言えば朝午前6時5分
「点呼を開始してください」
31A部隊は整列し、七瀬士官の前に並んでいた
「いーち」
「にー」
「さん」
「しー」
「ごー」
「ろく」
「ななー」
月歌、可憐、和泉、つかさ、めぐみ、おタマさん、そしてアルト
当たり前だが欠員はいない、フルメンバーだ
「問題ありません。なお今後は、点呼が終わったら隊長が〝総員七名、現在員七名、欠員ありません〟と最後に報告をいれてください」
「ふーん」
「ふーん、ではありません」
「えー」
「えー、でもありません」
「わっかりやした!」
「わっかりやした! でもありません」
「はい」
「よろしいです」
何今のやり取り
「軍隊は大きい規模になると、数百名になることもあります。いない人をいると勘違いしたまま戦場に向かえば、少ない戦力で挑むことになります。そうならないために点呼は重要です。集合時には怠らないようにしてくださいね」
「怠りてー」
「今なんと」
「いっ! いやなんもあれへん」
思わずいつもの調子でボケ倒そうとした月歌の口をめぐみが塞ぐ
間一髪セーフ
「では自室の清掃後、0630までに、カフェテリアに集合してください」
◇
「清掃ってなんだよ。どっか指でなぞって埃の有無を確認すればいいのか?」
「姑か。はたきではたくんだよ」
「ルンバみたいなのが空飛んでやってくれるさ」
「残念ながら、そこまで技術は進んでないわ」
「えー、あいつらまだ飛ばねーの?」
月歌のボケに和泉やつかさが口を出す
ルンバが空飛んだら便利かもしれないが、正直なんとも言えない
「じゃあセラフっての使ったら早くない? どう思うアルトん」
「部屋も吹っ飛んで終わりだろうね」
「なんだよー。面倒な暮らしだなー」
「ミミガー!!」
「なんでまたなってんの! 点呼の時大丈夫だったじゃん!」
やっぱりおタマさんはボケである
間違いない
◇◇◇
カフェテリア
学舎に向かう先の道中にその施設はある
正直ほぼ一本道なので、迷うことはない
「朝ご飯はバイキングじゃないんだな」
「朝からバイキングは流石にね」
「デザートもない」
「朝からデザートはいらんだろ」
「甘いものを食べたいお年頃なんだよ」
月歌の言葉に和泉やアルトが反応する
まぁ流石に昨日みたいにバイキングではないとは思っていた
っていうか朝っぱらそんなに食いたくない
「お、月歌さんみかんあるよ」
「そんなお年寄りみたいなのじゃなくってさ」
「月歌さんはなんか食いたいのあるの?」
「そうだな…はちみつたっぷりのケーキ」
「そりゃあ食べたい」
めっちゃ甘そうではある
だが美味いに違いない
「切ったら中からどばどばあふれてくるタイプのやつ」
「まさかのインスタイルだった」
想像と違った
「かけてあるのだと普通じゃん?」
「いや普通でいいだろ。中はフルーツとかの方が美味しいって」
和泉の言葉に月歌はハッとした様子で彼女の方を振り返り
「確かに! ナーイスハッキーングッ!」
意味の分からない賞賛を和泉に投げかけた
賞賛でいいのだろうか
こんな自分らを見て他のメンツがポカーンとしている
何話してんだろと思っているに違いない
「はいはい、食べるよみんなー」
今更かもしれないがアルトは適度にボケると決めているので今回はボケずに食事を促すことにする
『いただきまーす!』
なんで揃うんだこんな時だけ
◇◇◇
「司令官から招集を受けています。朝食後31Aクラスに集合をお願いします」
「そこのちょいちょい現れるお前っ」
不意にやってきた七瀬士官に対して月歌がびしっと指さしながら口を開いた
対して七瀬士官ははてな、と首をかしげて
「私ですか?」
「そうだよ。これからもちょいちょい現れるんならせめて名前くらい名乗っとけよ」
言われて見ればそういや名前しらないと思い返す
地の文で散々〝七瀬士官〟と言ってはきたがフルネームは全く持って知らなかったということに今気づいた
「士官の七瀬七海と申します」
覚えやすい名前だった
七と七で漢数字がダブっているのも覚えやすポイントだ
「いい名前持ってるじゃん。それじゃあこれからはななみんと呼ばせてもらおう」
「どの立場なの君は」
「いってよし」
「はい」
そう言ってすたすたと歩いてくる七瀬士官の背中に、ふとアルトは思い出したように声をかけた
「あ、そうだ。七瀬さん」
「? まだ何か?」
「一個だけ聞かせてください。…ここには一部の男性がいますけど…他の男性職員とかメンバーって、どこにいるんですか」
「それは基地ごとに分かれているからです」
思いのほか普通の理由だった
そんな普通の理由にどこか期待していた様子のめぐみも虚を突かれたように
「なんやしょーもな。ありきたりな理由やないか」
「ほっとしましたね」
うんうん、とおタマさんと頷きあう
「ということは、この軍はかなりの大規模な組織ってことになるわね。想像もつかないわ」
「立場的に想像はしろよ諜報員」
つかさと和泉がいつものやりとりをしてるのを尻目に、アルトはもう一つ問いかけた
「あ、七瀬さんもういっこ」
「? なんでしょう」
「刀削麵って知ってる?」
「なんでいまそれ聞くねん。そんなマイナーなもん知っとるわけ―――」
「あぁ、あの片手に生地、片手に包丁を持って、茹でた湯の沸いた鍋の前に立ち、生地を細長く鍋の中に落として茹でるやつのことですね?」
「コピペしたみたいに一字一句同じ言葉やとっ!?」
その横でドヤ顔してる月歌にとりあえずグーサイン
マイナーなんかやなかったで、と伝わってるかはわからないが伝わってるということにしておこう
◇
「ごちそうさまでしたっと」
なんだかんだで食後
汚れた口元を紙ナプキンで拭きつつ先ほどまで食べてた味を思い出す
普通に美味しかった…
語彙力がゼロなのでそれくらいしか言えないのがツライ
「さって。次はこっちか?」
早速月歌が別の方向行こうとした
「いや月歌さんこっちだよ」
「え? あぁいや、一服してから行こうと思って」
「月歌さん喫煙者だったんだ」
「…なんだろう。なんかショックだ…」
たまに和泉は欲が出る
なんだかんだファンだからねこの人
「いや、シガレットチョコだけど」
「紛らわしいなっ!!」
「そんなの後で食べなさいっ!」
アルトと和泉のツッコミが炸裂する
もはや恒例となりつつあるその光景に他のメンツはぽかんとしたりしなかったりしているのだった
◇◇◇
そんなわけで今度は学舎の方へ月歌たち31Aの面々はやってきていた
教室にはすでに教官である手塚咲が教卓の前に立っていた
それぞれが椅子に座り、手塚司令官の言葉を待つ
「揃ったようね。まず、あなたたちの敵について、改めて知っている限りのことを教えます」
そう言って手塚司令官の座学は始まる
とりあえず要点をまとめるとこんな感じである
宇宙から飛来したガン細胞、〝キャンサー〟
こいつらは非常に高い再生能力を持っており人類が感知できない高次元からエネルギーを供給されいている説が有力とされている
知能は地上で言うところの下等生物並みにあり、本能のままに知的生命体を食らうのみ
攻撃の方も再生能力と同じように高次元から得られるエネルギーが用いられていると思われる
その時に役立つのが、セラフと呼ばれる兵器のデフレクタと呼ばれる防衛機構だ
デフレクタはキャンサーの攻撃を逸らしダメージを軽減、あるいは無効化できる
しかしデフレクタは一定のダメージを受けてしまうと焼失してしまうらしい
過信はできないというわけである
ちなみにセラフを召喚することによって身体能力は飛躍的に向上するらしい
つまり初陣の時にそこそこ動けていたのはセラフのおかげによるものだったようだ
しかし長時間使用していると鼻血が出てくるらしい
つまり鼻血が出てるセラフ隊員を見かけたら危ないサインということだ
「もし31Aの誰かがそんな状況になった際、飛嵜さんの出番よ」
「なるほど。しっかり安全圏に避難するまで護衛すればいいんですね」
「早い話がそういうことよ」
とはいえないに越したことはない
仲間の状態には常に気をつけていないと
そして自分たちが護るべき人類について
人類は各地にドームと呼ばれる拠点を作り、そこでキャンサーから離れて生活している
キャンサーはその外殻から発せられる波長みたいなもので敵味方を判別しているとされており、そのキャンサーの外殻を利用した防壁を周囲に張り巡らせておりキャンサーから気づかれにくくしている
しかし当然、ドームも絶対に安全とは言えない
セラフ部隊がその際は出撃して護衛することも大事な任務といえる
「ただし、ドームの人たちとセラフ部隊員が接触、交流することは禁止されているわ。破った場合、軍法により厳しく罰せられる」
「どうして交流しちゃいけないの?」
「セラフは危険な武器であることをわかってちょうだい。うかつに制御を誤り暴走させてしまったら、彼らの命を奪いかねないの」
「まぁセラフって物々しいもんな…」
「そして、あなたたちは人類の希望よ。そんな存在がドームに現れたら、どうなると思う?」
「サインなら書きなれてるよ」
「そういう問題じゃねーわ」
「ドームの秩序を乱すことも、今は危険なの。よく覚えておいて」
「はーい」
「小学生か」
どんな状況でも月歌は月歌だった
それにツッコむ和泉も
◇
「次に通信方法について説明します。電子軍人手帳は持っているわね」
「完全防水なんだっけ」
「そう。あなたたちが作戦行動やコミュニケーションで相互に連絡を取れる機能が内包されている。隊員は〝リンネ〟と呼んでいるわ」
「〝リングインテルサットニューロンネットワークエボリューショナリー〟の頭文字を取って〝リンネ〟って名付けられた、だっけか」
「流石ハッカー、すごいね」
アルトとしてはもうさっきの和泉の言葉もチンプンカンプンである
何語? と頭の中で思ったほどである
アホを露呈していく
「正解。今は失われた技術でもあるわ。残っているものをだましだまし使っているの。使い方は簡単よ。軍人手帳でアプリ越しに文字情報をやり取りするだけ。ストリーミングや音声通話にも対応してるわ」
早い話がSNSみたいなものか
また、作戦中の指示は電子軍人手帳の通信機能を介して無線で行われるようなので、作戦中は常に通信を受けれる状態にしないといけないようだ
また、基地内はアンテナがあるから問題ないらしいが、時にはキャンサーが妨害電波を発してくる場合があるから、常に通信状況を意識しながら行動せよ、とのこと
「あと、たとえ基地内であっても通信に使用するエネルギーは貴重よ。無暗に私用で使ったら、肉体労働で返してもらうからそのつもりでいなさい」
「ひぃ!! 強制労働は嫌です!!」
なんか前にそんな経験があるのか、おタマさんが怯え始めた
そんなおタマさんに乗っかるように月歌も「そうだ、反対はんたーい」などと言ってくる
「まぁそうそう使う機会なんてないから大丈夫でしょ」
「実際の利用方法は…七瀬さん」
「はい。それでは改めて、電子軍人手帳の使い方の方をおさらいしますね―――」
◇
電子軍人手帳の使い方講座の方が終わり、改めて手塚司令官が教卓の前に行く
「最後に、今後のカリキュラムについて説明しておきます。まず最初の一週間はエミュレーター施設、アリーナでの仮想訓練。これで戦闘に慣れてもらう。二週目は実際にキャンサーとの戦闘を経験してもらい、実戦に備える」
「…もしかして、めっちゃ大変じゃない?」
恐る恐るといった感じで月歌が問うた
「えぇ。死ぬ気で頑張るように」
「ずっと適当に生きてきたのに!」
「じゃないと滅んじゃうよ人類」
いつものと同じような感覚でアルトがツッコむ
そんな彼らの会話を尻目に、手塚司令官は帽子のポジションを整えながら
「本日午後からは戦闘訓練となるから、昼食を済ませたら七瀬さんにアリーナの場所を聞いたのち、アリーナに集合すること」
「よぅし!! 昼ご飯の時間だ!!」
切り替えが早いのかポジティブなのか
一番勢いよく立ち上がるとそう宣言する
そんなこんなで午前の時間は過ぎていくのでした