ソードアート・オンライン 《Another Hero》 作:YASUT
キャラ崩壊? 暑さにやられたんだよ(便利な言い訳
青い球体に包まれ、数秒の暗闇と無音。
次の瞬間……!
「おお……!」
目を瞑りたくなるほどの強烈な陽射しが、俺達を待ち受けていた。
見渡す限りの水、水、水。そして波。
砂粒一つ一つまで細かく再現した、どこまでもリアルなビーチ。
ここに水着を着たギャルでもいれば、フィクションでもよくある“UMI”の完全再現だ。
「――となれば、話は早い」
さっと後ろを振り向く。
そこには――
「……なに?」
いつもの格好をしたフィリアがいた。
ホロウエリアの新しいフィールド“グレスリーフの入江”が解放されたので、とりあえず今日は彼女と二人で探索することにしたのだが……
「……」
向けられているのは極限まで冷めた、ゴミを見るような視線。
その温度、まさに絶対零度。
「……ちょっと、待てよ。なんだよその眼。それじゃまるで、俺が変質者みたいじゃないか」
「実際そうでしょ。無理矢理こんなところに連れてきてさ……」
「ちょ――」
……ギラギラしてる。
フィリアの瞳が、とてつもなくギラギラしてる。
警戒レベルマックス……いや、振り切れてる?
どっちにしろ、このままじゃ初対面のあの時に逆戻りだ。
何か手を打たないと……
「……待て、待つんだフィリア。俺は別にナンパするためにここに呼んだんじゃない」
「へぇー。じゃあ、後ろに隠してるそれは何?」
「スク水ですが何か?」
「……」
無言のまま、フィリアは短剣を引き抜いた。
日光が反射しているせいか、刃の部分が光ってる。
「……いや、だから待つんだフィリア。別にそんなんじゃない」
「黙れ変態」
「違うって言ってんだろ!」
これしか売ってなかったんだ、アークソフィアには!
別に俺はスク水が好みってわけじゃない! 水着職人仕事しろ!
……いや、これはこれでアリだけど。
「……」
俺の思考を読み取ったのか、フィリアは無言でしゃがみ、セット。
――クラウチングスタート、準備完了。
実は、フィリアは陸上部だったのかもしれない。
「……だから、待つんだフィリア。俺はお前にスク水を着てほしいわけじゃない。これは……そう、他の人の水着なんだよ」
「ふーん。じゃあ、そこに書かれてる“ふぃりあ”って文字は何?」
「そりゃスク水だからな。着る人の名前を書くのは当然だろ?」
スク水ならば平仮名かつ手書き。
この程度、誰でも知ってる常識……っ
「って、しまった!?」
「斬刑に処す!」
ついうっかり素直に答えてしまった……!
だが遅かった。
気づいた瞬間にはフィリアがジェット機のごとく、こっちに向かってスタートダッシュしていた。
これは、短剣ソードスキル《アーマーピアース》……!
光を帯びた短剣が一直線に俺を突き刺す……!
「ぐ……あああああああぁぁぁぁ――――……!!」
「大げさ」
「あいたっ」
げしっ。
足を踏まれた。結構痛い。
「い……って、なぁっ!?」
フィリアは俺を突き刺したわけではなかった。
代わりに突き刺したのは……《
先程のソードスキルによって手にあったはずの蒼き衣が、腹部のあたりから真っ二つに裂かれてしまっていた。
……そうか。そういうことか。
「確かに、普通はスク水よりもビキニだよな」
「――は?」
“ふぃりあ”を着て恥じらうフィリアも見てみたいが、本人の気持ちを考えたらやっぱりビキニにすべきだろう。
「ちょっと待って、アル。何か勘違いしてない?」
「してないって。スク水をいい感じで切り裂いて、ビキニっぽくしたかったんだろ?」
「そんなわけないでしょ!」
「なん……だと……!」
「驚かないでよ……というかアル、なんか今日おかしくない? アンタって、そんなボケる性格だったっけ?」
「……暑さにやられたのかもな。けど、それを言うならフィリアもだろ。お前、さっきなんて言った?」
確か……斬刑になんとかって……
「……気のせいよ。やっぱり暑さにやられたみたいだね」
「いやそんなことはない」
早くも前言撤回する俺だった。
「お前、思ったよりもアーテルの影響受けてるよな。
――“斬刑に処す”、か。元厨二病の俺としても、こう、震えるものがある」
日常生活ではまず使わないだろうから、何かのキャラクターの決め台詞なのかもしれない。
「だから、そんなこと……ううん、あるのかな。あんなに濃い人、初めてだったし」
「確かにな。俺も初めて会ったときはびっくりした」
今思えば、プレイヤー名が“
厨二病だったからこその友……いや、宿敵か。
まったく、類は友を呼ぶ、とはよく言ったものだ。
「そういえば、アーテルはいないんだね」
「ああ。あいつは今日、攻略当番なんだよ」
「当番?」
「毎日毎日攻略じゃ、流石に飽きるからな。複数のギルドと連携、班分けして、当番制にしてるんだよ」
他ギルドとの交流も兼ねて、メンバーがバラバラになるようランダムで決定されている。
ボス攻略は団体戦だから、誰とでも連携できるように、とのことだ。
「――あれ」
……待てよ。
攻略組は全員で100人程度。その中に――フィリアはいただろうか。
フィリアほどの強さなら、攻略組に混ざっていてもおかしくない。
むしろ、強いプレイヤーは混ざっていないと責められる。全員が現実への帰還、すなわちゲームクリアを願っているのだから、それが普通だ。
だが俺は、これまでアークソフィアで一度もフィリアを見たことがない……
「どうしたの?」
「ああ、いや――なんでもない」
……気のせいだろう。あるいは偶然か。
流石に100人全員を記憶してはいない。知らないプレイヤーがいても、何もおかしくはない。
「さて、そろそろ行くか」
「そうだね。入江っていうくらいだから、海賊のお宝とかあるかもしれないし」
「海賊の宝、か。フィリアは根っからのトレジャーハンターだな」
「むっ……“海”と聞いてすぐ“水着”になるよりはいいと思う」
むむ……下心丸出し、とでも言いたいのか。
「……仕方ないだろ。男ってのは大体そういう生き物だ」
「それって……キリトとか、アーテルも?」
「当然」
男二人の時限定だが、アーテルの方から猥談を誘われたこともある。
キリトの方は……お察しだな。一応妻帯者だし。
「まあ、無理に着ろとは言わないよ。さっきの通り防御力皆無だし、俺としてはやっぱり自分から着てほしいしな」
「ふぅん……」
「……どうした?」
「な、なんでもない。ほら、早くお宝探しに行こう!」
◆
……探索を始めて30分後。
「ん?」
妙な場所を見つけた。
洞窟……いや祠か?
奥には道が続いている……が、水位が高いせいでこれ以上、歩いては進めない。
「……妙だな、ここ」
「どうしたの?」
「ほら、この奥。何かある気がしないか?」
「んー」
フィリアが洞窟の奥を覗く。
「……そうだね。でも、これ以上は進めそうにないかな」
「仕方ない、泳ぐか」
「――」
背後から“ジャキンッ!”と音がした。
ヒステリックだなぁフィリアさんは……ゲームの世界だからいいけど。
「……着ないから」
「分かってる、冗談だ。だから短剣を仕舞え」
言われてようやく、フィリアは短剣を仕舞う。
……失敗したな。まさか、ここまで水着に過剰反応するとは……やはり、スク水ではなくビキニで攻めるべきだったか。
「まあいいか。とりあえず入ってみよう」
なんとなく腰まで水に浸かってみる。
……うん、やっぱり動きにくい。鎧のせいで、全身浸かると沈みそうだ。
「……こういうところ、SAOって本当にリアルだよなぁ」
「どうしたの、急に」
「フィリアは水中戦とか、やってみたいと思わないか?」
「水中戦? 水の中で戦うの?」
「別に戦いだけじゃないぞ。例えば、ブリッ○ボールとかさ」
「ブリッ○……電撃って意味? それともラグビーのこと?」
「あー……えっと、まあそんな感じ」
説明しよう!
ブリッ○ボールとは、球体のプールの中でボールを奪い合い、敵のゴールに叩き込むサッカー的な何かなのだ!
ルール? そんなものはござらん! 強いて言うなら武器使用禁止。
タックルでボールを奪い、ひたすら泳ぎ、そして
「――というのが、大体のルールなんだけど」
「それだと息継ぎはどうするの?」
「大丈夫だ。幻光虫がなんとかしてくれる」
「げんこうちゅう……?」
「あー……つまり、ある程度呼吸ができる特殊な水を使う」
「えー……」
……なんだ、その反応は。
こっちは大真面目に返答したのだが。
「そんな便利な水、あるわけないよ。大体それだと、溺れることがなくなるじゃない」
「いいじゃないか、それでも。ここはゲームの世界だぞ。なら、現実離れしてるくらいで丁度いい」
「……!」
「現実で出来ないことが出来るから、ゲームは面白いんじゃないか」
そう、ここはゲームの世界だ。
リアリティを求めすぎるあまり、ゲーム性を失っては意味がない。
リアルあってのゲーム。ゲームあってのリアル。
だからこそ、ゲームはこんなにも楽しいのだ。
「……現実、か」
「フィリア?」
「アルはさ。このゲーム……ソードアート・オンラインをクリアしたら、現実に帰るんだよね」
「ああ。けど、それはフィリアもだろ?」
「……うん」
フィリアは控えめに頷いた。
……急に元気がなくなったな。
「……どうかしたのか?」
「なんでもない。それより、探索を進めよう。攻略に役立つアイテムがあるかもしれないし」
「あ……ああ」
「……」
この様子……フィリアに何かあったのは、確定的に明らかだな。
でも……きっと、今のままだと話してくれない。
それは仕方ないだろう。誰にだって、話したくないことの一つや二つはある。
俺にだってある。だから――
――知りたいのなら、こちらから歩み寄らないといけない。
以下、本編と関係ない呟き。
その時のテンションで書いたので、色々おかしいかもしれない。
◆
あ、ありのまま今(?)起こったことを話すぜ!
まず俺は、SAOHF(ソードアートオンライン・ホロウフラグメント)をバージョン1.05にした。
すると、なんかよくわからんエリア(=火山と雪山)が追加されていた。
そのあと俺はなんやかんやで火山エリア、雪山エリアのストーリーをクリアし、ついに剣の女王的なボスと相見えることになった。
最初は “なんだこの剣の舞! 無限の○製!?” だの “剣が爆発!? 壊れた○想か!?” だのテンション上がったが、そうこうしているうちに相方のフィリアが「パリンッ!」
俺「なん……だと……次は本気出す。片手剣と盾で」
俺「逃げろフィリア! 待機してくれ待機してくれ待機してくれ(ry」
俺「もう駄目だこの子……だがしかし! 俺はフィリアでクリアする! 他ヒロインはその後!」
という感じで何度やってもフィリアが「パリンッ!」したが、苦闘の末ついに勝利。見事片手剣(装備していた武器)の秘奥義(消費SP300の超攻撃)ゲット。
そしてイベント後、なんと各ヒロインズの頭上に赤い「!」マークが!
話を聞くと、どうやらホロウエリアでなんかしたいことがあるらしい。
フィリアは樹海エリアでホロウミッションやりたいってさ。
というわけで、フィリアと一緒にホロウエリアへ――!
――気がつくと、フィリアのレベルが200超えてた。
主人公(=キリト)のレベルは……143。
……おかしいな。確かフィリアは140いってなかったはず。
そう思いつつ、テキトーな雑魚を“ホリゾンタル”で瞬殺。
フィリア「レベルアップしたわ!」(3レベ↑
……わけがわからないよ。
あまり主人公、味方が強すぎるとつまらないので早々に打ち切り、最後に庭園エリアで軽い会話イベントで終了。
その後アークソフィアに戻り、パーティー解散。
再びパーティー組んだときには普通に戻っていましたとさ。
これは仕様なのかバグなのか。
もし仕様だったら、かなりのヌルゲーになっちゃうなあ……
……いや、ヌルくないな。やること多すぎてだるいし。
◆
ということがあったんだマジで。
おかげで今、フィリアTUEEE!状態。