ソードアート・オンライン 《Another Hero》 作:YASUT
某モバゲー。
某ノベルゲー、及びその派生。
これらから閃いた、ホロウエリアと殆ど関係ない小話。
◆
西洋の宮殿。
その入り口には、一人の騎士がいた。
――否、彼は既に騎士ではない。
全身を守護する白銀の鎧と、血を思わせる赤い装飾。
素顔を隠す禍々しい兜。
それらの防具はあらゆる刃、奇蹟すら通さない。
――彼
今ではこのキャメロットに対して謀反を起こした、ただの罪人だ。
「何故裏切った……モードレッド――!」
ワタシは叫ぶ。
“何故裏切った”と。
長年続いた戦いが一段落し、国全体が安定に向かっていた。
そんな中、何故モードレッドが――自分の子が、今になって叛旗を翻したのか。
ワタシには、その心が分からなかった。
鎧を纏い、心に殻を纏った叛逆者に、もはやこちらの声は届かない。
その手にあるのは、かつては聖剣だったモノ。
個人の感情によって黒く、赤く染まってしまった剣。
――故に、それは
「――――!」
剣を構えると同時に、雷鳴の如く魔力が吹き荒れる。
この騎士が一体何を考えているのか、知る由もない。
けれど、一つだけ。
己に向けて、明確な殺意を持っていることだけは理解できた。
「――――」
だったら、戦わないと。
子供? 騎士?
関係ない。それはもはや過去の話だ。
目の前にいるのはただの罪人。
この国を、民を脅かす叛逆者。
ならば――
ならば、殺すのみ。
魔剣に堕ちたのならば、せめてこの聖剣によって浄化してくれよう。
それがせめてもの償い。親としての責任。
「……王、ここは私が」
控えていた一人の騎士が前に出た。
――彼こそはサー・ガウェイン。
サー・ランスロットと並ぶ、円卓最強の騎士。
「……下がれ、ガウェイン卿。これは私の責任だ」
「いいえ、下がりません。貴方は民を守るブリテンの王。このような輩に聖剣を使っては、その名が汚れます。
そして我々には、民を守る義務がある。万が一、王である貴方が倒れるようなことがあっては、国は、民は、一体誰が守るのです?」
「……!」
ワタシは咄嗟に反論できない。
民のため。国のため。
如何なる戦いの中でも、この胸の中には常にその意識があったからだ。
「ですから、ここは私が」
笑顔を見せた後、騎士は叛逆者に向き直り、前に出る。
その手には、もう一振りの星の聖剣。
聖剣“エクスカリバー”と並ぶ姉妹剣。
――その名を、“エクスカリバー・ガラティーン”
「――この輝きは太陽の映し身。もう一振りの星の聖剣――!」
魔力が放出され、聖剣が熱を帯びる。
あらゆる存在を照らす太陽は時に、あらゆる存在を焼き尽くす炎となる。
モードレッドはそれを確認し、兜を脱ぎ捨てた。
……現れたのは、見目麗しき少女の顔。
憎しみによって歪んでいる点を除けば――その顔は、どこまでも
「――“
剣を右肩に担ぎ、真名を紡ぐ。
その銘は、聖剣“
だが、今はもう違う。
少女の想いは聖剣の姿を変え、銘を変え、闇に堕ち――そして、一つの奇蹟へと昇華した。
故に、
「“
解放と共に、雷撃が迸る。
宮殿諸共破壊し尽さんばかりの、赤い衝撃。
「“
対抗するは太陽の聖剣。
その熱と破壊力はまさに、日輪の熱線。
焔と雷が激突し、光に包まれる。
聖剣と魔剣のせめぎ合いは空気を震わせ、熱を撒き散らし、宮殿を破壊する。
――光が収まったとき。
そこに立っていた者が、この戦いの勝者である。
◆
「――という演劇をやりたいと思っています」
「前振り長っ!!」
思わず突っ込んだ。
突っ込まずにはいられなかった。
目の前にいるプレイヤーの名前は《
攻略ギルド《ナイツ・オブ・アヴァロン》のギルドマスター。片手剣使い。
そして、言うまでもなく(?)女性である。
意識しているのか、髪は金。ただし長髪。
黒のリボンで纏められ、見事なポニーテールに仕上がっている。本人曰く“自分なりのアレンジ”だそうだ。
俺が所属しているギルド《グレイトフル・デッド》と《ナイツ・オブ・アヴァロン》は同盟関係にある。
とはいっても、二年間共闘し続けている攻略組間では、よほどのことがない限り敵対はあり得ないので、同盟なんて肩書は“仲良しギルド”程度の意味しか持たないのだけど。
「……で、なんで演劇?」
「たまには息抜きでも、と思いまして。最近、攻略のペースも落ちてきていますから」
「はあ……」
――アーサー王伝説。
中世の騎士道物語の一つで、現代でも様々なゲーム・小説等のモデルになっている。
物語は大きく分けて4つ。
アーサー王の誕生と即位。
聖杯の探索。
そして、王国の崩壊。アーサー王の死。
冒頭のアレは、アーサー王伝説を彼女達なりにアレンジされたものなのだろう。
剣から雷だの放熱だの、普通に考えてあり得ないしな……多分。
「本来ゲーム自体が娯楽のようなものですが、二年も続けば誰だって嫌気が差します。そこで、剣を振るうことに別の楽しさを見出してみよう、と考えました。
要するに、ロールプレイです」
「ロールプレイ……」
そう言われて思い出すのは、刀使いのアーテル。
ブラッキーな衣装を好み、オレ様口調で話す変なヤツ。
「……そうだ、アーテルだ。この手の話は俺じゃなくて、あいつに頼むのが筋じゃないか?」
アーサー王伝説は、言ってみれば王道の騎士道物語。
この手の作品は嫌いじゃないはず――
「フッ――今、オレを呼んだか?」
「……」
背後から気配。
振り返るとそこにいたのは――黒い西洋風の鎧を纏った剣士、アーテルだった。
「って、ちょっと待て。その鎧、もしかして――」
「うむ、勝手ながら拝借させてもらった。もう使っていないのだから、構わんと思ってな」
アーテルが纏っているのは、かつての俺の防具だった。
黒をメインとしたフルプレートアーマー。所々白い装飾が施してあり、より黒さを際立たせている。
“黒い鎧といったら、やっぱり白髪じゃね!?”
という“お前がやれ”的理由で髪を弄られたのも、今となってはいい思い出だ。
面倒なので、あれから髪の色は直してない。
「まあいいけど……というかアーテル、片手剣スキルか両手剣スキル、上げてるのか? 登場人物は大体騎士なんだから、どっちかは必要だろ?」
「舐めるな、当然上げている。それどころか、曲刀と槍もこなせるぞ。槍の方は殆ど使ったことないが」
ないのかよ。
殆どファッションじゃん。飾りじゃん。
武器スキル5つとか、どうなってんだ。
「――そういうわけで、彼はやる気十分です。貴方も、是非」
「お断りだ。アニメやドラマだって、演じるより見る派なんだよ、俺は」
「そうですか? プレイヤー名を
「厨二と演技は違う」
アーテルは自分で作った“アーテル”というアバターを演じているけど、こいつと俺は違う。
「でも、嫌いではないでしょう? アーサー王物語」
「見るだけなら、な」
「……むぅ」
悉く反論されて困ったらしく、ついにアーサーは不機嫌そうに口を閉じた。
……彼女には申し訳ないが、このまま帰らせてもらおう。
「じゃあ俺、帰るから。演劇、頑張れ」
立ち上がり、出口に向かって歩く。
……まあ、誘ってくれたのはどちらかと言えば嬉しい。
後日、観客として見に行ってみるか。
扉に手をかける。
その、直前――
「ククッ――案ずるな。ヤツは押しに弱い。この調子で誘い続けるがいい」
「……そうですね。まだ、時間はあります」
「……」
不吉な未来に耳を塞ぎ、宮殿のようなギルドホームを後にした。
そしてこの演劇の後、白雪姫イベントに繋がるッッ! かもね。
フィリアが誰に惚れるかで、展開は変わりますけど。