知を致すは物に格るに在り   作:チュータツ

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前回からさらに時間が経過しています。
だいたい開始から現実世界で2か月、デンドロ内で半年ほどを想定。
細かい描写はないですが、【賢者】に転職してだいぶ強くなりました。


【賢者】の助言

□【賢者】ラキトス

 

「よし、これで教えられる魔法はだいたい全部だな」

 

初めてアリシアが魔法の教えを請いに来てから4か月ほど経った頃。

ラキトスがクエストで教えられる魔法スキルは、【大賢者】の徒弟秘伝のものを除き全て教え切っていた。

わずか4か月で転職するのが難しい上級職の部類である【賢者】へと至った上で、何十もの魔法を覚えたのはティアンから見れば驚異的な速度だと言えた。

 

「ありがとうございました・・・」

 

「・・・なんだ。何か悩みでもあるのか?」

 

にも関わらず満足していない様子の相手を見取ったラキトスはそう尋ねる。

 

「いえ、いろいろな魔法を覚えられたのは素直に嬉しいのですが、数が多すぎて練習するだけの時間とMPが足りなくて・・・」

 

「ん?」

 

「ラキトスさんも知っていると思いますが、私の<エンブリオ>は自分の周囲のことを把握することができます」

 

それは聞いていた。

その能力を使い学者の間ではかなり活躍しているとも。

ティアンであるラキトスからすれば羨ましい能力である。

 

「自分の周囲を把握できると言うのは正確ではなく、当然自分自身のことも把握することができます。

なので、魔法を使用するときのMP(魔力)の動きなども把握することができますし、それを自身で再現するときにスキルの場合とどう違うのかも把握しながら修正をかけて行くことができるのですが」

 

「・・・お前もあちら側の人間だったか」

 

<マスター>がティアンよりも技術で劣ると言ったのは誰だ。

確かに己の才覚のみで成しているのではないかもしれないが、<エンブリオ>の能力を上手く使い、アリシアはすでにラキトスよりも先の領域へと至っていた。

 

「この能力を使うためにもMPを使用します。

一度把握したからと言ってすぐにそれを再現して見せるほどの才能は自分にはありません。

なので、繰り返し練習するしかないのですが、魔法を使うたびにもMPを消費しますし、MPが全然足りなくて・・・」

 

「・・・それは嫌味か。

・・・いや、他人の才能に嫉妬しても仕方がないな」

 

正直羨ましい限りである。

自分の届かなかった師匠や妹弟子の領域へこの少女は足を掛けているのだ。

だが

 

「それなら王都の南にあるギデオンの街へと行って見ることをおススメする。

あそこにはいくつも闘技場があるのだが、興行として行われる決闘の他に貸し出しなども行っているからな。

闘技場にはその機能として中で起こったことを巻き戻すことや、内部時間を加速させることなどができるからお前のその練習にはピッタリじゃないか?

いろいろなことが巻き戻ってしまうからスキルの取得や転職の条件を満たすと言ったことには使えないが、お前がやろうとしているのは“スキルを取得する”のとは違うからな」

 

「なるほど。ちなみに借りるのにはいくらくらいかかるのでしょうか。

高いのであれば先に王都でお金を稼いでから行きたいのですが」

 

アリシアは稼いだ端から魔法を覚えるのに使っていたから、今はたいしてお金を持っていないのだろう。

 

「それはあまり心配要らない。

どの闘技場を使うかでも多少変わってくるが1時間5000リルもあればだいたい借りられるだろう。

その程度なら今のお前ならすぐに稼げるだろう?」

 

「たしかに。ボスモンスターを倒して【宝櫃】が手に入れれば少なくとも一回で10万リルくらいにはなりますし、その程度ならなんとでもなりそうですね」

 

「そこで稼ぐ方法としてボスモンスターを倒すとあっさり言う辺り、他のティアンが聞けば卒倒しそうな話だけどな」

 

「初めは大変でしたがもうだいぶ慣れましたよ。

<墓標迷宮>さまさまです」

 

そう。<墓標迷宮>に行けば簡単にボスモンスターに会うことはできる。

ただ、ティアンであれば普通は上級職に就いていたとしても亜竜級を倒すのすら苦労するのだが。

 

「まあ、それなら王都である程度稼いでからギデオンに向かうがいい。

闘技場のレンタルもそうだが、ギデオンで決闘なんかを見るのも良い勉強になるんじゃないか。

もっとも決闘ではなかなか魔法使いが活躍することはないが」

 

「そうですね。自分ならどのように戦うかを考えるだけでもいろいろと参考になりそうです。

本当にありがとうございました」

 

そう言ってアリシアは去って行った。

【賢者】としてすべての魔法を教え切った以上、もうあまりここに来ることは少ないだろう。

スキルを使用せずに魔法を使えるようになってきていると言うのは驚きだった。

【賢者】に限らず魔法使いを目指すのであれば誰もがあこがれる領域。

多くの者が挫折し、ラキトスであってもそのことに生涯をかけたとしても、おそらくはそこまでたどり着くことはないだろう。

それを魔法を使い始めてからわずか4か月であっさりと到達しそうな少女に、嫉妬しないわけがない。

だが、だからと言ってその足を引っ張るような真似はしたくない。

師匠や妹弟子やあの少女のような表に立って目立つ存在に自分が成れなかったとしても、師匠に胸を張れる自分ではいたいものだ。

そうであれば、彼女を支えるアドバイスくらいはしても良いだろう。

「エンノシタノチラカモチか」

そういうのも悪くはないかも知れないとラキトスは考え出していた。




この主人公もまた一種のラーニング型。
ただし、他者のスキルをコピーしたり奪ったりするのではなく、<エンブリオ>の補助を受けてスキルを学習(ラーニング)して自身の技術へと昇華させるタイプ。
<エンブリオ>のスキルが増えていくわけではないので、このことで<エンブリオ>のリソースを圧迫することはない。
確知日進の“日進”はこういったことを表しているのかもしれない。

独自解釈と捏造設定
魔法について:
通常のジョブスキルで覚える魔法はあらかじめプログラムが組まれたアプリのようなものである。
一部の才能のあるものはそこからソースコードを読み取り、自力で再現できるようになる。
さらに才能のあるものはプログラムコードを改竄することで魔法を改良できるようになる。
さらに才能のあるものは一からプログラムを組んでオリジナル魔法を作り出すことができる。
ただし、その魔法を実行するためには、プログラムを実行可能な機械語のような形式に変換するコンパイラのみたいなものが必要であり、通常は魔術師系統のジョブの器がこれを担っている。
そのため、メインジョブが魔術師系統以外の場合には仮にプログラムを自力で組むことができたとしても普通は魔法を使うことができない。
一方、過去の【龍帝】黄龍人外はプログラム言語を使用するのではなく、直接実行できる機械語のような状態のまま直接一から魔法を作り出すことができたバケモノでもある。
なお、アリシアは機械語で直接新しい魔法を作り出すことはできないが、実行可能な魔法が機械語に変換される前後どちらの状態も【アカシックレコード】で知っているため、魔術師系統であればプログラムを改良できるようになるし、メインジョブが魔術師系統でなくても変換後の機械語をそのまま真似ることはできるという設定。
プログラムを改良できるようになるのはまだこれからですが。
プログラムというのはあくまで例えですが。
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