知を致すは物に格るに在り   作:チュータツ

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物語の定番

□【賢人】アリシア・ノイモント

 

(やはり、魔法スキルの使える【賢者】よりも、魔法スキルの使えない【賢人】の方がスキルを使わない魔法の場合でも使いにくい)

 

薄々わかってはいたことだが、スキルだけではなくジョブそのものにもその行動に対する適性のようなものがあるのだろう。

ただ、様々な考察するときには【賢人】のジョブは便利なことも多い。

闘技場の結界の中であれば何度でも使い捨てのジョブクリスタルを使用してメインジョブを切り替えられるのも便利だ。

魔法について考察すると、同じような効果であっても属性によって魔力の使い方は異なるようだ。

単純に指向を与えて真っすぐ魔法を撃ちだすという部分だけでも火属性の《ファイアーボール》と水属性の《アクアバレット》では異なるので、他の魔法の構成を流用して簡単に新しい魔法を作り出すというわけにはいかないようだ。

ただ、同じ火属性の《ファイアーボール》と《ヒート・ジャベリン》では似通った部分も多かったのでこの辺りがとっかかりになるのだろう。

 

 

闘技場を後にし道を歩いていると、子供がぶつかってきた。

もっともスリをさせたりはしない。

しかしこのデンドロでは別にシナリオが作られているわけではないはずなのだが、あまりにも定番な展開をされるとそれも疑ってしまいそうだ。

ぶつかってきた子供を捕まえたのだが

 

「はーなーせー!」

 

「もう。なんでこんなことをしたんですか」

 

「みんなを守るためにはお金が必要なんだよ」

 

本当にベタな展開だ。

 

「放してもいいですが、その話詳しく教えてもらえますか」

 

「先に放せ!」

 

「はい」

 

だが、手を放したとたんに逃げ出した。

 

「ばーか、誰が教えるか、ばーか!」

 

まあ、そうなるような気はしたのだが。

 

「ばーか、ぶすー!」

 

よし、後をつけることにしよう。

 

 

子供の後をつけると孤児院へとたどり着いた。

死角からでも《パーセプション》でどちらに向かっているのかがわかるし、《フットワーク》で足音も消せるので後をつけるのは簡単だ。

......子供を尾行するとか何の自慢にもならないが。

 

「ただいまー」

 

「お帰り、どこ行ってたの。

まさか、また誰かの財布を狙ったりしてないわよね」

 

「しようがないじゃないか。

支払い期限は明日なんだぞ」

 

「だからと言って、他の人に迷惑をかけて言い訳がないでしょ」

 

どうやら保護者に怒られているようだ。

定番と違い孤児院は教会でもないし、保護者である職員もシスターではないが。

 

【クエスト【救済――ギデオンの孤児院 難易度:四】が発生しました】

【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】

 

まだ話も聞いていないのだがイベントクエストが発生してしまった。

......後をつけてきた以上初めからそうするつもりと判断されたのだろうか。

 

状況を整理しよう。

子供が財布を狙ったのは孤児院に支払いがあるから。

みんなを守るということは孤児院が借地で賃貸料を払えなくて立ち退きを迫られているとかだろうか。

もしくは土地を担保に借金をして、その返済だろうか。

難易度が四と低めなのは簡単にお金で解決できるからだろうか。

そう考えると借金もそこまで高いものではないだろう。

なんだか作為的なものを感じるが、最悪多少のお金でなんとでもなるのであれば、首をツッコむことにしよう。

そう決めてアリシアは孤児院を訪ねることにする。

 

「ごめんください」

 

「はい」

 

「あ、お前!なにし・・・」

 

「あー、わかりやすく言いますと、そちらの子供の被害者なのですが。

いや、未遂なので被害は受けていませんが」

 

子供に話させていると話が進まなそうなので、少し食い気味に説明する。

 

「それはなんとお詫びすればいいのか」

 

「いえ、被害もありませんしそれは別に良いのですが、何かお困りのようで、もしよろしければ相談に乗りますが」

 

自分で言っておきながら何だが、とっても怪しい感じになってしまった。

創作物の主人公達はこういう時どうしていただろうか。

 

「いえ、見ず知らずの方に相談に乗ってもらうようなことではありませんので」

 

「えー。いいじゃん。この女に払ってもらおうぜ」

 

「この子は!」

 

客の目の前でイキナリお尻を叩かれる子供。

その辺でやめて欲しい。

子供が変な性癖に目覚めたらどうするのだろう。

 

「その辺でやめてください。すみません。

相談に乗りましょうかとか軽く言ってしまって。

ただ単に中途半端に話を聞いたので、このまま放置するはモヤモヤするだけなのですが」

 

「はぁ。わかりました。

ではここで話をするのも何なので、上がってください」

 

ようやく話を聞かせて貰えそうだ。

 

 

「と言うわけで、返済期限が明日になってしまいました。

今までなんとかやりくりをしていたのですが、どうすることもできず」

 

だいたいのところの話を聞かせてもらった。

ただ少し気になるのは

 

「この孤児院って個人経営なのですか」

 

「はい。他の地域には領主様直営の孤児院もあるのですが、治安の悪いこの地域には作られず」

 

まずは収入の減少が主な原因のようだ。

今までは善意で冒険者や闘士のティアンが寄付をしてくれていたらしいのだが、<マスター>の増加により効率の良い依頼を持っていかれだしたり、決闘で勝てなくなったりして寄付する余裕が無くなったようだ。

次に生産職等で土地を求める<マスター>も増加しており、地価上昇に合わせて賃貸料も上げられてしまったようだ。

治安の悪いこの地域であっても気にせず求める<マスター>もいるらしい。

 

(<マスター>が原因というのを見ると確かに放っては置けないな)

 

ただ......この場合、完全に寄付頼りで自分達で収入を作れていないのが致命的である。

 

「この地にこだわりとかありますか?

他の地域の孤児院に入れてもらうとかは?」

 

「他の土地でも良いのですが、他はもっと高くて。移るのは難しいです。

他の孤児院も余裕があるわけじゃないので、私たちを受け入れる余裕はないみたいですし」

 

「ですよね」

 

できるのなら初めからやっているのだろう。

創作物の主人公であれば何か新しい事業を始めて経営を立て直せるのだろうが、アリシアにはすぐにはアイディアが浮かばない。

リアルの技術はすでにほとんどデンドロ内でも使われており、それを活かした創作物のようなチートは使えなかった。

支払いも20万リル程度らしく、アリシアなら立て替えることも簡単なので、ひとまずはなんとかなるだろう。

ただ、今後のことを考えると収入を得る方法も考えておく必要があるだろう。

 

「この家をいろいろと調べても構いませんか?」

 

「あ?てめぇ、やっぱりもの取りだったか」

 

「あの、構いませんが、この家には金銭的価値のあるものはありませんよ。

あればとっくに売っていますし」

 

「まあ、私は一応学者ですから、一般的には価値が無いように見えるものでも価値を見出せる可能性もありますので。

ものによってはちゃんと買い取りますよ」

 

創作物の定番通りなら、そういった発見でなんとかなることもあったはずだ。

 

「わかりました。好きなだけ見てください」

 

「えぇ?コイツの事信用すんのかよ」

 

なんだかこの子供には嫌われているようだ。

 

「それでは遠慮なく」

 

早速《パーセプション》の範囲を広げる。

【アカシックレコード】も上級<エンブリオ>である第Ⅳ形態に到達することで、把握できる範囲は50メテル程度にまで増えた。

この孤児院全体を把握する程度は簡単だ......と思ったのだが

 

「なるほど」

 

この家には地下があった。




デンドロ二次創作ではなく、異世界系物語の方の定番。
スリの子供と困窮した孤児院。
大抵は主人公が異世界の知識を活かして何か事業を始める。
デンドロだとチェシャが先に広めているのでそれは難しいが。

アリシアの<エンブリオ>も上級まで進化している。
TYPEはエンジェルテリトリーへ。
スキルは増えず《パーセプション》での把握範囲の限界が広がった。
範囲は自分で調整できるが広げれば広げるほど消費MPは大きくなる。
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