隠し部屋。
RPGでは定番ものであり、それを発見するとその段階では普通入手できないちょっと強い装備品が手に入ったりする。
ただし、今回の場合正確にはこの家ではなく、街の地下を走っているものだったが。
「すみません。ちょっと庭に穴を開けても良いですか?」
「え?急になんでしょう」
「どうやらここは下に地下通路が走っているみたいなので、ちょっと調べてみたくて」
街に知られていない地下通路。
きな臭いもので無ければ良いが。
「私は構いませんが、ここは借地なので」
「でしたら、後で埋めておくので大丈夫です。
じゃあ開けさせてもらいますね」
さっそく庭に出て穴を掘ることにする。
もっともシェベルを使うわけではなく
「《ピットフォール》」
少し魔法を改良して斜めに穴を掘る。
「おお、ねーちゃんすげぇな」
「あ、離れていてくださいね。
《ヒートジャベリン》」
10メテルほどの深さの地下通路まで通路を作った後、攻撃魔法を撃ち込んでおく。
中にはそれなりの数のネズミがいるようだったのだ。
その後魔法で空気を送り込んだあと、地下に入る。
「危ないから絶対に入ってこないでくださいね」
「おう、わかった」
「・・・すいませんが、穴を見張っておいてください」
「はい。わかりました」
「いや、入らねぇって」
念のため保護者にお願いしておく。
◇
地下に入ると【ジャイアントラット】のドロップが落ちているので、拾っておく。
「さてと」
まずは外壁側に向けて歩いていくことにする。
いくつかの分かれ道があった後しばらく歩き、位置的に街の外までたどり着くと出口らしき場所が見つかった。
もっとも出口も完全に埋まっていたのでそのままにしておく。
分かれ道も《パーセプション》で確認した感じだとそれぞれ小部屋のようなものが作られているようだった。
自分で確認しても良いのだが、ゴキブリのような蟲が繁殖しているようなので、入るのは遠慮したい。
しかし、このような状態ということは違法な組織が地下に秘密基地を作っているとかではないようだ。
ということは、都市国家時代の王族の隠し通路なのだろうか。
「ん?」
入ってきた穴を超えて今度は街の中心地の方へ向かうと途中にひとつだけ扉の無い小部屋があった。
隠し部屋である。
仕掛けを解いて中に入ると、他の部屋と違い比較的綺麗な状態だった。
もっとも何百年も放置されていたため、だいたい朽ちているのだが......
(この指輪だけ朽ちていない)
指輪型アイテムボックス。
それも破損耐性のついたそれなりに頑丈なものであり、取り出しにロックがかかっているタイプだが。
《アイデンティファイ》で解除コードを読み取りロックを解除すると、中には一冊の日記が入っていた。
(あ・・・これはヤバいかも)
いそいで日記をアイテムボックスへと戻し、それを持って部屋を後にする。
危ないものではあるが、上手く交渉に使えば今回の問題は解決できるかもしれない。
◇
その後その先も確認したところ、これは都市国家時代の隠し通路だろうことがわかった。
全部は確認していないが。
とりあえずそのことは誰にでも話すわけには行かないので
「穴は埋めておきますが、ここから地下に行けることは誰にも言ってはいけません。
もしそれを守っていただけるのであれば、口止め料としてしばらくの間孤児院を維持できる100万リルを渡しますがいかがですか?」
「え?良いんですか?」
「マジか。それなら・・・」
「あまり欲をかくと破滅しますよ。
先に言っておきますが、このことが他に漏れて困るのは私よりもむしろそちらの方です」
「え・・・?」
子供の方はこちらの弱みを握ったと勘違いしていそうなので、釘を刺しておく。
「もし仮に、勝手をやって自滅したとしても私は知りません」
「すみません。
この子のことはちゃんと見張っておきますのでよろしくお願いします」
「はい、それでは100万リル渡しますね」
上手くいけば根本的に解決できるかもしれないが、今それを言ってぬか喜びさせても仕方が無いだろう。
当面はそれでやりくりしてもらうことにしよう。
◇
ギデオンでの魔法練習もある程度できたので、アリシアはその後王都アルテアへと帰ってきた。
帰りは【ホバーボード】があったので、かなり楽ができたし速く移動することもできた。
さすがに山道を登るときには使用できなかったが。
そして久しぶりに学術院に顔を出すと、受付から直接ジョブクエストが依頼が発注されたのだった。
【異変調査 【賢王】カドモス・アイレス 難易度:八】
街の地下にあるのは使われなくなった下水か怪しい組織か王族の脱出経路という設定。
他にも何かあるかもしれないけど。
備蓄なども多少はあった。蟲が湧いていますが。
脱出経路ならどうして八番街方向にって気もするけど、実際にはいくつかの方向に向けて作られていそうな気もする。
一か所だけだとそちら方向から攻め入られたときに詰みそうなので。
子供は実はいい奴......とかではなく、ただのクソガキだった。