□【賢人】アリシア・ノイモント
「おぬしにはここから南東へ向かったところにあるカルデ村で起こっている異変の調査をしてもらう」
「なんだかすごく難易度が高くなっていますが?」
「ふむ。順番に話そうかの」
ことの始まりは一週間ほど前。
村人の1人が急激に【衰弱】し始めた。
しかし、ステータスを見ても特に病気にかかった様子もなく、しばらく安静にしているとすぐに回復し始めた。
かと思えば別の者が【衰弱】し始める。
こういったことが繰り返されるので、王都まで調査依頼が出され何人も現地へ赴いたのだが、誰にも原因がわからなかった。
「レベルの高いものも、低いものも同じように【衰弱】するらしいの」
「<流行病>の類はどうでしょう?」
「それだと病気だとすぐにわかるからの。
そういった病気ではないらしい。
また、この症状はカルデ村の外にはまったく広がっておらん」
「ああ。なるほど。
死ぬような状況になったりしていないから、学術院の方に調査依頼が出されているのですね」
「正確に言えば誰も死んでおらんかった。
じゃの。どうも今朝がた1名亡くなったらしい」
「そうですか。それで受付の方が慌てていたのですね。
可能性として高いのは何らかの<エンブリオ>を使った<マスター>による愉快犯か実験か暴走ですか」
「その辺りじゃろうな。
未確認の<UBM>なんかも考えられるが、そうであればほとんど死んでいないというのが不可解じゃしな。
じゃが、おぬしの<エンブリオ>であれば、そういったものであってもわかるじゃろう?」
逆にこういったことを調べることに特化した固有スキルが無ければ、例え上級職の奥義であったとしても難しいだろう。
「確かに私向きですね。
わかりました。すぐに向かいます
・・・っとそうだ。カドモス様は王族の関係者に伝手がありますでしょうか」
「ん?流石におぬしの<エンブリオ>が優秀でも、王族や王城を調べるのは感心せんぞ」
「いえ、そうではなくちょっと扱いに困るものを手に入れて、できれば王族の関係者の人に引き取って貰いたいと考えてまして。
なるべく王族に近い人で、決して王族を裏切らないような人とお会いしたいのですが」
「おぬし何を手に入れたのじゃ・・・いや、聞かない方が良さそうじゃの。
わかった。これでも一応王立学術院のトップじゃからな。
ある程度は融通を利かせようぞ」
「では、よろしくお願いします。
じゃあ私の方はさっそくカルデ村へと行ってきます」
「頼んだぞ」
◇
■【???】
それはただの蚤だった。
動物から動物へ飛び移りながら血を数だけの小さな蟲。
ただそれだけのたいして知能もない存在......だったが
【デザイン適合】
【存在干渉】
【エネルギー供与】
【設計変更】
【固有スキル《
【固有スキル《
【スキル《気配遮断》付与】
【スキル《隠蔽》付与】
【スキル《偽装》付与】
【スキル《生体探査》付与】
【死後特典化機能付与】
【魂魄維持】
【<逸話級UBM>認定】
【命名【潜蚤吸命 インライフリー】】
ある日突然力を得た。
とは言え蚤は蚤。
例え上級ボスモンスター相手であっても、相手に悟られず生命を吸い取ることができるようになったが、それでも近くに次の獲物がいない状態で死ぬまで吸い取ってしまえば共倒れになってしまう。
そのため、そこそこ生命を吸い取ったら相手が死ぬ前に次の獲物に飛び移るのを繰り返していた。
そうして魔獣から魔獣へと移動していたのだが、ある日毛色の違う獲物に飛び移ってしまう。
それは集落を作っていた。
強いもの、弱いものが混ざっていたが、移動先に困ることはなかった。
そしてある日......誤って一人の獲物を殺してしまった。
魔獣と比べてはるかに弱いその獲物は【衰弱】した状態に身体が耐えられなかった。
減りすぎた生命力は時間を置いても回復することはなくそのまま死んでしまった。
そうすると蚤へと大量の経験値リソースが流れ込んできた。
その獲物が弱かったために限度を誤っただけなのだが、魔獣とは異なり大量の経験値が得られたこと、そして何よりもその獲物が死んでも移動先に困らなかったこと。
それに気を良くした蚤は一人二人と死ぬまで生命を吸い取っていき......五人目から吸い取っている最中に唐突に身体を掴まれた。
初めてのことに蚤は足りない知能で混乱する。
自分は誰にも認識されないはずだ。
なのにこの相手は完全にこちらを狙って捕まえにきた。
慌てて《蚤の跳躍》を使用して転移して逃げようとしたが......間に合わず、そのまま蚤は意識を消失した。
◇
□【賢者】アリシア・ノイモント
【<UBM>【潜蚤吸命 インライフリー】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【アリシア・ノイモント】がMVPに選出されました】
【【アリシア・ノイモント】にMVP特典【吸余蚤飾 インライフリー】を贈与します】
上手くいったようだ。
カルデ村に到着したアリシアは急いで【アカシックレコード】で周囲の把握と【衰弱】している者の詳細の把握を行い、この異変の原因が隠蔽に特化した一体の<UBM>にあることを突き止めた。
だが、それを一撃で倒すためには【賢者】としての魔法スキルしか覚えていないアリシアでは火力が足りない。
小さな蚤とは言え腐っても<UBM>であり、普通の魔法ではたいしてダメージも与えられない。
一撃で倒せなければ《蚤の跳躍》で逃げられてしまうだろう。
そして警戒されてしまえば二度目のチャンスはない。
そこでアリシアはここ連日練習していた魔法の改造を実戦で使用することにした。
使用する魔法は《ヒートジャベリン》。
よりMPを込めて熱量をより多く。
大きさを小さく小さく絞ってより密度を高く。
そうして、貫通力を高めた魔法により<UBM>のコアを撃ち抜き一撃で倒すことに成功した。
......もっとも指の間で発動したために、指が三本完全に炭化して崩れてしまったが。
「【賢者】様・・・その指」
「ああ、魔法の制御に失敗した自業自得なので気にしないでください。
それよりも原因は取り除きましたよ」
指にポーションを振りかけながらそう言う。
「本当ですか?いったいなにが?」
「生命を吸う<UBM>が原因だったようです。
隠蔽に特化していたために今まで誰にも見つからなかったみたいですね。
ほら」
そうして獲得した特典武具を見せると納得してもらえた。
「はぁ・・・。しかし考えようによっては<UBM>に襲われたにしてはこの程度の被害で済んだのは運が良かったのかも」
「それでも間に合わず5人ほど亡くなってしまいましたが」
「それは【賢者】様のせいでは無いですよ」
人が亡くなった悲しみは身近であったこの人の方がアリシアの比ではないだろうに......。
とは言え、アリシアにはもうできることは無いのでこの場に残っても仕方がない。
「では、私は報告もしなければなりませんし、戻りますね」
「わかりました。できれば今度は普通に訪れてくださいね。
歓迎しますので」
「はい。それでは」
そのまま、村を後にした。
◇
「ただいま戻りました」
「おう。どうだった・・・
って、どうしたんじゃ。その指は」
「少しヘマをしまして。
まあ、私は<マスター>ですから後で戻せますので問題はありません。
それよりも原因は<UBM>でしたよ」
「そうじゃったか。で、倒せたか」
「はい。これが特典武具です。
・・・で、なんですが」
「ん?」
「折角手に入れた特典武具なので、これで実験しませんか?」
折角の<UBM>戦だが一瞬で終わってしまった。
アリシアの能力がこの手のタイプとは相性が良いので。
独自解釈と捏造設定
魔法の圧縮について:
圧縮をかけるほど破壊力と貫通力は上がる。
同じ熱量であっても体積が小さいほど温度が高くなるように。
ただし、それで
損傷を与える体積が小さくなる分、場合によってはダメージが減ることもあり得る。
しかし、貫通力が上がるのでコアを撃ち抜く上では非常に有用である。
【アカシックレコード】でコアの正確な位置がわかるアリシアにとっては、HPを削り切るよりも、これでコアを撃ち抜く方が基本戦術になっていく。
振りかけるポーション
傷痍系状態異常の回復に特化したポーション
患部にかけることで出血等の状態異常を通常の服用するポーションよりも早く回復させる
代わりにHPの回復量はそこまで多くない