知を致すは物に格るに在り   作:チュータツ

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特典武具

□【賢王】カドモス・アイレス

 

「さて、今回手に入れた特典武具ですが」

 

「その前にお主、その目はどうしたんじゃ」

 

ここに来てからアリシアがずっと目を閉じているので気になった。

 

「今回の実験では<マスター>が死んだら特典武具がどうなるのかも知りたいと思って・・・。

ついでにこの機会に【盲目戦士(ブラインド・ファイター)】に就くために目は潰しました。

死ねば失った指も目も治りますし、丁度いいかと思って」

 

【盲目戦士】は視力を失ったものが他の五感で視覚を補うためのジョブだ。

ティアンでも就いているものがいるためロストジョブにはなっていないが、転職するためには【失明】している必要があるため、条件としては厳しめのレアジョブとなっている。

 

「お主、その辺の開き直りがすごいな」

 

「前に目の前での自害を求めた先生が言える話じゃないですよね」

 

クラシスがツッコむ。

 

「話を戻しますね。今回手に入れた特典武具は【吸余蚤飾 インライフリー】というものです。

装備スキルとして《気配遮断》《隠蔽》《偽装》の他に未開放スキルというものがありました。

これは条件を満たすと解放されるスキルのようです。

まあ、条件は私の《アイデンティファイ》で分かりますので、すぐに解放したのですが」

 

「相変わらず便利じゃな。お主の<エンブリオ>は」

 

「はい。自分で言うのもなんですが、正直言ってズルいですよね。

解放されたスキルは《余剰吸蓄(サープラスサッカー)》という固有スキルでした。

HP、MP、SPが全快状態からの回復余剰分を吸収して貯めて置けるスキルのようですね」

 

「え?それって実質無限に回復できるようなものじゃないですか」

 

「ええ。このスキルだけでも他の人に対する大きなアドバンテージになりますね」

 

アリシア自身もこの特典武具はかなり優秀だと思う。

 

「で、まず実験したいのは私が死んだ場合に特典武具がどうなるのかということですね。

ティアンが死ねば特典武具はどこかに消えるそうですが、<マスター>が死んだ場合にどうなるのかについてはまだ聞いたことがないので」

 

「いやいやいや。それで特典武具を失ったらかなり勿体なくないですか?」

 

「まあ、そうなったら勿体ないですが、今後もし死の選択を迫られたときにこのことを知っているかどうかは大事だと思いますし。

それに他の装備品は死んだあともついてきますし、特典武具は譲渡不可アイテムとなっていますから、失われる可能性はきわめて低いと思いますね」

 

「まあ、アリシア自身が納得しておるならそれでいいじゃろ」

 

「あとは死んだときに固有スキルで貯めて置いたHP、MP、SPがどうなるのかについても気になるところです」

 

とりあえずの検証としてはそんなところだろうか。

 

「そういや、今回はどういう風に死ぬのですか。

また前と同じように・・・」

 

「いえ、今回は<マスター>だけが使えるという《自害》というスキルを試してみようと思います。

さすがに胸を刺すのは文字通り死ぬほど痛いし、死ぬほど苦しかったので・・・。

できれば二度と味わいたくないです」

 

「普通は一度だって嫌ですけどね」

 

「じゃあ、【魔法カメラ】を回すから特典武具をそのテーブルの上に置いた状態で死んでみてくれ」

 

「わかりました。それでは・・・」

 

するとアリシアは一瞬で消え去った。

ログアウトとも似ているが、あとに残された大量のアイテムがそれとは違うことを物語っている。

それと

 

「特典武具は一緒に消えたな」

 

これが持ち主の下に戻るのか、それとも消え去ってしまったのかは次にアリシアが戻ってくるまでわからないだろう。

 

 

そして3日後

 

「さて、確認してみたところ特典武具は私の手元に残っていました。

また貯めて置いたHP、MP、SPについても貯まったまま維持されるようですね」

 

目も指も元に戻ったアリシアがそう言う。

もっとも【盲目戦士】をメインジョブにした場合、常に【盲目】の状態異常になるのだが。

 

「あとは復元するという特典武具を壊したときに、どのように元に戻って行くのかを調べたいですね」

 

「まあ、そんなところじゃろうな」

 

「どういう風に壊しますか?ハンマーでも持ってきます?」

 

「いえ、この特典武具の強度はそこまで高いわけではないので、素手で壊します。

こんな感じで」

 

そう言いながらヘアピン状の特典武具をポキンと折った。

 

それをテーブル上に置き、【魔法カメラ】で撮影を続ける。

 

「しかし、復元には時間がかかりそうじゃな。

その間お主はどうするんじゃ」

 

「その間は溜まっている情報をレポートにでもまとめるとしますよ。

ギデオンに行ったり、カルデ村へ行ったりとしたあと、指を失っていたのでここのところ久しく書けていませんし」

 

とくにカルデ村の異変については調査依頼だったのに詳しくまとめていない。

一応、口頭では説明してはいるのだが。

 

「ふむ。その間特典武具の方はいろいろと弄っても構わんかの」

 

「お好きにどうぞ。装備は私にしかできませんけどね」

 

カドモスは大きく折られたものとは別に細かい傷などを付けて復元を確認したいらしい。

 

 

どこまで復元できるのかを確かめるために、一度は粉々まで粉砕された。

それも数日がかりで復元できたが、その際に固有スキルで貯まっていたHP、MP、SPは失われていた。

 

 

□【賢者】アリシア・ノイモント

 

特典武具についても調べ終わり、王城からアイテムボックスが届けられたりとしていろいろと身の回りのものが充実してきた。

【盲目戦士】もカンストし、多くの汎用スキルも獲得できた。

そして10月も下旬に入り、【賢者】のジョブについてもカンストが近づいて来たある日、また<墓標迷宮>でレベリングを行っているとき、ひとつのアナウンスがアリシアに届いた。

 

【【賢者】のジョブレベルが100に到達しました】

 

(カンストのアナウンス?他のジョブのときにはなかったような・・・)

 

【条件解放により、【賢聖(ソートマスター)】への転職クエストが解放されました】

【詳細は学者系統への転職可能なクリスタルでご確認ください】

 

思いがけず、超級職の転職条件が満たされたのだった。

 




捏造設定
【盲目戦士】
転職条件が傷痍系状態異常の一つ【失明】である下級職。
《聴覚強化》《触覚強化》《嗅覚強化》《味覚強化》《危険察知》《殺気感知》《聞き耳》《反響定位》《振動察知》《嗅覚探査》など視覚以外の感覚による感知・察知・探知能力が強化される。
多くの汎用スキルを覚えるが、ステータスはほとんど上昇しない。
周辺把握に優れている主人公の<エンブリオ>ではあるが、範囲の狭さをカバーするためにはこういったスキルも欲しい。

【吸余蚤飾 インライフリー】
逸話級特典武具
ヘアピン型の髪飾り(アクセサリ)
装備補正:HP+10%、MP+10%、SP+10%
装備スキル:《隠蔽》《気配遮断》《偽装》《余剰吸蓄(サープラスサッカー)
《余剰吸蓄》
【インライフリー】の固有スキル。
所有者のHP、MP、SPが全快時の回復余剰分を特典武具が吸収し、ストックしておくことができる。
ストックした分については所有者が任意で使用することができる。
元は未開放スキルであり、開放条件は所有者の最大HP、MP、SP分過剰回復が行われること。
全快状態で3日ほど経過すれば自然と開放される比較的緩い条件。
初めが未開放状態だったのはおそらく、いろいろなことを知りたいというアリシアのパーソナルにアジャストされた結果だと思われる。
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