知を致すは物に格るに在り   作:チュータツ

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掲示板ネタを読むのは好みだけど、自分は使いこなせないのでこういう書き方にしました。


超級職

11月も中旬になり、各国のランキングが刷新されたとき。

王国の討伐ランキングに上がってきたひとつの名前が<マスター>達の間で話題となった。

正確にはその人物の名ではなく、その人物が就いていたジョブの名前がである。

賢聖(ソートマスター)】・・・始めは【剣聖】や【拳聖】、【槍聖】などと同じく上級職だと思われたその名前も【適職診断カタログ】には載っていないことから、ひとつの疑問が湧きあがった。

下級職である【剣士】から派生した上級職が【剛剣士】と【剣聖】になるように、上級職である【賢者】からは【大賢者】と【賢聖】の2種類の派生した超級職があるのではないかというものである。

このことはSNSや掲示板を大きく騒がせた。

 

[うわ~。超級職羨ましいな]

 

[っていうか、アリシアって誰なんだよ。さっさと情報出せよな]

 

[やっぱり強力な魔法が使えるようになるのかな?]

 

[あ~。【大賢者】がすでに埋まっているとか考えず、そっちを狙っておけば良かった]

 

[実は【賢者】じゃなくて【賢人】系統の超級職だったりして]

 

[学者系統が討伐ランキングに入るわけないだろ定期]

 

実際には学術院には情報が伝えられていたのだが、その情報は他の<マスター>には伝わっていなかった。

 

□【賢聖】アリシア・ノイモント

 

少し甘くみていたかもしれない。

アリシアは今まで特に他の<マスター>と関わりを持たずにいたので気づくのに少し時間がかかったのだが、まさかここまで大騒ぎになるとは考えていなかった。

超級職とは言っても基本的には学者系統であり、それは他の<マスター>からはどちらかと言えばあまり見向きもされていなかった系統である。

もっとも最近は一部の<マスター>が<Infinite Dendrogram>についての情報収集のためにこの系統に就いていろいろと調べているようなのだが。

積極的に情報を回さなかったために、彼らの間で勝手に想像を膨らませて誤情報が独り歩きしてしまった。

こうなってしまってはいまさら掲示板に正しい情報を公開したとしても嘘情報としてしか扱われないだろう。

リアルの世界ではデンドロ内とは異なり《真偽判定》はないのだから。

元々アリシアは他の<マスター>に比べて高レベルではあったが、それは高難易度のジョブクエストを多くこなしてきたからであり、モンスターの討伐数はそれほど多いわけではなく討伐ランキングに名を連ねることはなかった。

それが【賢聖】に転職してからすぐにハロウィンイベントが始まり、これ幸いと【賢聖】のレベリングも兼ねて大量のモンスターを狩って回った。

その後【紅蓮術師】【白氷術師】【黒土術師】等に転職して、様々な敵とも渡り合えるように多くの属性の魔法を覚えて回ったりもした。

その過程で倒したモンスターの数はそれまでの比ではないほど多く、唐突にランキングへと入り込んだ形となった。

 

(ランキング更新のときに名前を載せないようにしておけば良かった)

 

とも思うが、もはや後の祭りである。

とりあえず遅ればせながら<DIN>へとやってきて情報を売ることにした。

とりあえず《真偽判定》の使える世界で情報を正しく扱ってもらう必要があった。

この際、金額は二の次である。

 

 

「あ、おい。コイツだ!」

 

<DIN>へと入ると同時に一人の<マスター>が声を上げる。

それを無視して受付に問いかける。

 

「すみません。特にアポイントとかは取っていないのですが、情報を売らせていただきたいのですが」

 

「はい。どういった情報でしょうか」

 

「おい!無視すんな!」

 

「今話題になっている超級職についてですね」

 

「おい!」

 

いい加減無視を続けることはできないらしい。

 

「ふぅ。なんでしょうか」

 

「やっぱり、お前が噂の【賢聖】だろ。

どうやって転職したのか教えろよ!」

 

情報屋の前でいい度胸である。

受付からも怒りが上がっているのを感じるが、本人には届いていないらしい。

 

「はぁ。ここは情報屋ですよ。正確には新聞社ですが。

その目の前で客から情報を脅し取ろうとする行為がどれだけ愚かかについて頭が回らないのですか」

 

「その通りです。

得られた情報はこちらで精査してからお売りしますので、それまでお待ちください」

 

「なんでだよ!情報なんて今どきネットでいくらでも手にはいるだろ。

そんなもんから金を取るのかよ!」

 

どうやら本当に頭が回らないらしい。

 

「あなたはどうやらお客様ではないらしいですね。

お引き取りを」

 

その<マスター>はそのまま追い出されていった。

なんだかあとで逆恨みされそうな気もするのだが。

 

「ではお客様、こちらへお越しください」

 

「あ、はい」

 

とりあえず案内にしたがってついていくことにする。

 

 

「さて超級職の情報をお売りいただけるとのことですが」

 

「はい。気づいてはいると思いますが【賢聖】についての情報です」

 

早速取引を開始することになった。

 

「その前に《真偽判定》は使えますか?

《偽装》等をお疑いなら、必要であれば【契約書】を使用しても構いませんが」

 

「そちらは大丈夫です。

情報の真偽については正しく扱いますよ」

 

そう言ってちらりと隣の<マスター>を見る。

おそらくは《真偽判定》以上に正確な真偽を確かめる手段を持っているのだろう。

【アカシックレコード】を使用すればその辺りもわかるが、情報屋で使ったことがバレればただではすまないだろう。

 

「では早速【賢聖】のことについて。

まず初めに話しておかなければならないのは【賢聖】は皆さんが考えているような純粋な【賢者】系統の超級職ではありません。

【賢人】と【賢者】の複合超級職ではありますが、どちらかと言えば学者系統の側面の方が強く、思考を扱うことに特化した超級職です」

 

「ああ、ジョブ名からひょっとするとそうじゃないかとは思っていましたが、やはりなのですね」

 

そう、文字通り“思考の達人(ソートマスター)”というのがこのジョブの特徴だ。

知識の王(キング・オブ・ナレッジ)”とは別の学者系統と言うべきだろう。

 

「なので、別に強力な魔法スキルを覚えるわけではありません。

ただし・・・思考を補助するスキルを使いながら1から自力で魔法を組み上げて使うことは可能です。

ここが【賢者】系統でもある理由ですね。

つまり、強力な魔法スキルを覚えるわけではありませんが、自身の才覚次第では強力な魔法が使える可能性があります」

 

おそらくは多くのものが抱いている疑念に対するのはここのことだ。

もっともアリシアの場合は完全に新しい強力なオリジナル魔法を作っているわけではなく、まだ元々ある魔法を改良して組み上げて使っているに過ぎないのだが。

 

「さて、次に転職条件ですね。

こちらは私がすでに就いている以上あまり意味のない情報ではありますが。

一つ目は【賢人】と【賢者】のカンスト。

二つ目は《高速思索》《思考分割》《高速演算》等の思考系スキルを10時間以上使用した日が100日以上あること。

三つ目はジョブスキルではなく思考制御のみで魔法を発動させること。

これらの条件が満たされると【賢聖】への転職クエストを学者系統のジョブクリスタルから受けることができるようになります。

転職クエストの詳細は省きますが、ジョブスキルの使えない状態で思考速度、記憶力、魔法制御、発想の柔軟性が求められるものでした」

 

明かせる情報はここまでだ。

 

「私の手札を晒すことになりますので、【賢聖】の固有スキルに関する情報は控えさせてください。

ほとんどは思考に関するスキルですが。

別に全ての情報を明かさなければならないわけでもないですよね」

 

「・・・・・・

あ、はい。そちらは結構です。

やはり、超級職と言うのは条件が難しいのですね」

 

「まあ、知ってさえいれば達成不可能な条件というわけでもないですけどね。

情報をどのように取り扱うかについてはお任せいたします。

できれば<マスター>達がその気になれば入手可能な形にしていただければと思います。

ここで大事なのは情報の信憑性ですし」

 

わざわざ<DIN>にきたのはそのためである。

おそらくは学術院の方からもいずれ情報が出てくるようになると思うが、それが<マスター>に信じてもらえるかは別問題である。

 

「では、よろしくお願いします」

 

そう言ってアリシアは<DIN>を後にした。

 

 

□【大記者】カーソン

 

「どうだった?」

 

カーソンが同伴した<マスター>であるサトリに尋ねる。

 

「少なくとも嘘はまったく言っていませんね。

本人も言っていたように全部を話したわけではないですが」

 

サトリの使う【誓廉欠魄 エンマ】は目の前で嘘を吐いた相手の最大HPを減少させる<エンブリオ>である。

嘘に対するペナルティの大きさもそうだが、もしそうなればそのリソースの動きからサトリにも嘘が吐かれたことがわかるようになっている。

 

「どちらかと言えばむしろ多く情報をくれた感じではないでしょうか。

あそこまで情報をいただけるとは思いませんでしたし」

 

「そうだな。これでこの騒動もひとまず落ち着けば良いが」

 

そうならない気がする。

特に入口で騒いでいた<マスター>のようなものはさらにひっかきまわしそうな予感がする。




かなり早い時期の超級職の取得。
当然他の<マスター>からの妬みは大きいと思われる。

捏造設定
賢聖(ソートマスター)
賢人賢者複合超級職
ジョブスキル:
《思考加速》
SPを消費して思考速度を加速させる。
スキルレベルが高くなるほど効果も大きくなる。
《高速思索》と異なり装備制限は無いが、【賢聖】をメインジョブにしていなければ使用することはできない。
《並列思考》
SPを消費して複数の物事を思考能力を落とさずに同時に考えられるようにする。
スキルレベルが高くなるほど効果も大きくなる。
《思考分割》と似ているが、あちらがシングルコアでマルチタスクの処理を行えるようになるのに対して、こちらはマルチコアで処理できるような感じ。
《魔法演算》
組み上げた魔法を発動可能な形に変換する固有スキル。
プログラムに対するコンパイラのような役割。
変換の性能自体は高く、全ての属性に対して変換が可能。
模擬演算(シミュレート)》奥義
複数の情報から物事を予測演算する。
もとの情報量が多いほど予測精度は上がる。
オリジナルの魔法を組み立てるときに使用することが多いが、未来予測などにも使用できる。
備考:ジョブ名の通り思考の達人を示す超級職。
賢人系統の内知識ではなく思考に特化した派生職である。
《思考加速》《並列思考》は頭脳を強化する身体操作の一種であり、使用中は継続してSPを消費する。
これらのジョブスキルが無くても似たようなことが行えるものもいるが、そういったものがこのスキルを使用した場合にはさらに性能が強化される。
また魔法学者の一面もある賢者から派生した魔法職でもあり、ジョブスキルによるオートではなく、マニュアルで魔法を組み立てることができる。
ただし、通常の魔法職とは異なりジョブの器としてはコンパイラの役割が無いためか、サブジョブにある魔法スキルもジョブスキルとしては直接使用することはできない。
ステータスはMPが特に高く、思考強化に使用するSPや思考速度に影響するAGIもそこそこ伸びる設定。


【誓廉欠魄 エンマ】
TYPE:ワールド 
到達形態:Ⅴ
スキル:
嘘つきは滅亡の始まり(ジョウハリキョウ)
嘘に対するペナルティを与える結界を張る。
展開したテリトリー内で嘘を吐いたものは、最大HPが一定割合で減少する。
《真偽判定》で判断しているわけではなく、<エンブリオ>による判定であるため、《真偽判定》を誤魔化すスキルを持っていたとしても効果は発動する。
ただし、《真偽判定》と同じく、対象が真実だと信じている場合は誤情報だったとしても発動しない。
削ったHPは<エンブリオ>にリソースとして保管される。
減った最大HPは対象がデスペナルティになるか、【エンマ】の<マスター>がデスペナルティになるか、【エンマ】の必殺スキルを使用するかで解除される。
嘘つきは下も抜かれる(エンマ)》必殺スキル
一度でも嘘によって《嘘つきは滅亡の始まり》を受けた相手が対象。
《嘘つきは滅亡の始まり》で貯めたリソースよりも最大HPが低い相手を即死させる。
これも最大HPを減少させるスキルであるため、ブローチは発動しない。
複数回嘘を吐いて最大HPが半分以下になれば、必然的にこの必殺スキルで即死させられることになる。
実際には他の人が嘘を吐いた分もリソースに使用するため、HPが半分以上残っていても死亡する可能性が高い。
リソースをすべて使用するため(オーバーキルでも)、必殺スキルを使用するとこの対象以外の相手はすべて最大HPが元にもどる。
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