知を致すは物に格るに在り   作:チュータツ

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遺跡

□【暗闇術師】アリシア・ノイモント

 

「え?遺跡に案内して欲しい・・・ですか?」

 

<DIN>に【賢聖】の情報を売った少し後、【大考古学者】レイト・モンドが尋ねてきた。

 

「ええ。先日過去の【賢者】が使っていたという遺跡をあなたが発見したでしょう?」

 

そう、先日アリシアはひとつの遺跡を発見していた。

 

 

話はランキングが更新される少し前に遡る。

高認の試験も終了し、あとは発表を待つのみとなり気兼ねなくデンドロにログインしたある日。

アリシアには再び調査依頼のクエストが直接発注されていた。

ただし、冒険者ギルドから。

 

□【黒土術師】アリシア・ノイモント

 

【難易度八【調査依頼ー<イーノス森林>】

 

「私はまだそこまで冒険者ギルドの依頼数をこなしていませんので、難易度八は受けられないはずですが」

 

「ええ。ですが特例です。

あなたは調査に関しては非常に有力な<エンブリオ>をお持ちとか。

その力をお貸しください」

 

「ええと。とりあえずお話だけ聞かせていただくことは」

 

「はい、もちろんです。では説明させていただきます。

ここ王都から北西に向かったところに城塞都市クレーミルという街があります。

そこの北東にある<イーノス森林>場所で正体不明の死亡事故が起こっています」

 

「・・・それは普通にモンスターに殺されたのでは?

クレーミル付近と言えばかなり高レベルのモンスターが出現すると記憶しておりますが」

 

「いえ、そこで死亡したあと数日後に復活した<マスター>の話でも何が起こったのかまったく分からなかったらしいです。

モンスターによるものと言う可能性は高いですが、あそこに出現するモンスターのレベルが高いとは言え、何をされたのか高レベルの<マスター>達に気づかせないほどではないはずです」

 

「そうなると<UBM>・・・」

 

その中でも《隠蔽》に特化したもの。

単純に強いだけであれば何らかの情報が得られているだろう。

あるいは隠蔽に特化した<マスター>によるPKの可能性もあるが。

 

「はい。その可能性が高いです。

なので、あなたにはそれを調べていただきたく思います。

討伐できなくてもその情報を持ち帰っていただけるだけでも構いません」

 

「最悪死亡することまで想定して、そこから復活したときに情報が得られれば御の字と言うことですか」

 

「ええ。<UBM>の可能性が高いと言うことで、毎日のように<マスター>が挑んでいるようなのですが一向に成果が得られていませんので」

 

まあ、ひと昔前であればともかく、今の自分であれば討伐できる可能性も高い。

最悪死亡したとしても情報を入手できればそれなりに報酬が得られる。

アリシアはこの依頼を受けることにした。

 

「承知しました。このクエスト受注させていただきます」

 

「ありがとうございます。

詳細についてはクレーミルの冒険者ギルドで聞いてください」

 

そうしてアリシアはクレーミルへと向かった。

 

 

【賢聖】アリシア・ノイモント

 

そうして、<イーノス森林>へとやってきたのだが

 

(結構広いから出会えるかどうかは運次第かな)

 

クレーミルの冒険者ギルドで聞いた話では遭遇位置というのはそれなりに広範囲に跨っていた。

前回の調査依頼の時は村の中だけと調べる範囲が狭かったうえに、【衰弱】している対象がわかっていたので調査としては楽だった。

しかし今回は調査範囲としては<イーノス森林>全域である。

超級職へと転職してからすぐに第五形態へと進化したアリシアの<エンブリオ>だが、それでも把握できる範囲は160メテルほどである。

当然<イーノス森林>全域を把握するには能力不足であり、その分歩き回ることで補うしかない。

発動中は常時MPが減少するのも長時間探索するのであればネックになる。

把握範囲を自分で調整はできるスキルではあるが範囲を広げるほど当然MPの消費が大きくなる。

そこでアリシアはこれをパルス状に使用することで消費を抑える技術を編み出していた。

あとはそれぞれの死因についてだが、パーティーで遭遇したもの達の話だと突然身体が真っ二つに裂けたらしい。

他にも首が飛ばされたティアンの遺体が見つかったこともあるらしい。

《殺気感知》や《危険察知》などのスキルには反応があったらしいので、そこに何かがいたことは間違いがないそうだが、そのパーティーの持つ上級職の《隠蔽看破》でも相手の姿を発見することはできなかったそうだ。

そう考えると上級職のスキル程度では見破ることが困難なほど高度な隠蔽を行う<UBM>である可能性が高く、ティアンや対処できる<エンブリオ>を持っていないマスターではまず対処が難しいだろうことがわかる。

なるほど、特例を出してでもアリシアへ依頼が来るわけである。

 

そうしてしばらくの間探していると

 

(見つけた・・・。

【透瞑躯蟷 インビンジブル】巨大カマキリの<UBM>か)

 

どうやら光や音など波の性質のものを完全に透過する特性を持っているらしい。

完全に透過するために自身からも何も見えず何も聞こえなくなるが、それを《生物探知》《気配感知》等のスキルで補っているようだ。

そのため相手からも気配等を感知するスキルが有効になるのだろう。

一方、物質を透過することはないようだ。

 

(これって雨の日に遭遇していたら、一発でわかっただろうな)

 

雨が弾くところからその居場所が丸わかりになるだろう。

ぬかるんだ地面に足跡も残りそうである。

その他霧や煙などを使った方法でも居場所がわかるはずだ。

アリシアでなくても対処は可能だったかもしれない。

その前にアリシアに情報が回ってきたのは、ある意味運が良かったとも言える。

【インビンジブル】はこちらのことに気づいているようで、アリシアの進行方向へとゆっくり移動している。

しかし、アリシアがその存在に気づいていることはわかっていないようだった。

そのままアリシアが近づくのを待ち構え......

そして、

 

「《クリムゾン・スフィア》」

 

唐突に発生した()()にコアを撃ち抜かれて倒された。

 

【<UBM>【透瞑躯蟷 インビンジブル】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【アリシア・ノイモント】がMVPに選出されました】

【【アリシア・ノイモント】にMVP特典【瞑姿黯套 インビンジブル】を贈与します】

 

ある意味前回の<UBM>よりもはるかに楽な相手であった。

純粋な戦闘力については今回の方がずっと強かったのだが。

相手が待ち構えてくれたおかげで気づかれないようにゆっくりと魔法の構築もできたので、大した苦労もなく倒せてしまった。

これで依頼も完了である。

想定外にあまりにも簡単だったため、多少の申し訳なさを感じつつアリシアはその場をあとにした。

 

 

そうした帰り道。

他のモンスターにも遭遇する可能性もあるため、<エンブリオ>による周辺把握は続けてながらの戻っていたのだが。

 

「おや?」

 

その途中で地面の下深く数十メテルほどの場所に小さな遺跡があることがわかったのだった。




なお、初めから地中深くに作られたのではなく、初めは浅いところに作られていたのが長い年月で埋もれていった形である。
圧力は・・・おそらく頑丈に作られていたのだろう。

設定
【透瞑躯蟷 インビンジブル】
本文中にあるように姿を隠したまま行動できる<UBM>。
高い攻撃力を持ち、姿を見られていなければダメージが三倍になる《不意打ち(スニーク・レイド)》も持っているため、たいていの相手を一撃で真っ二つにできるやっかいな<UBM>だった。
相性の問題であっさりと倒されたが。

【瞑姿黯套 インビンジブル】
伝説級特典武具
ケープ(外套)
装備補正:MP+50%
装備スキル:《無蝕透瞑(インビンジブル)
《無蝕透瞑》
唯一の装備スキル。
MPを消費して透明化し、光や音など波の性質のものを完全に透過する。
完全に透過するため発動中は所有者からも何も見えないし、何も聞こえない。
隠蔽とは異なりただ透明化するだけなので発見されても姿が現れることは無く、姿を消したまま戦闘を行うことができる。
気配が遮断されるわけではないため気配等を感知するスキルは通用するが、《気配遮断》と組み合わせるとほとんど居場所がわからなくなる。
光や音による攻撃に対して無敵化できる側面もあり、アリシアはこの用途で使うことが多い。
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