知を致すは物に格るに在り   作:チュータツ

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<UBM>戦

初めに目を合わせたシーモアが即死した。

 

「相手を見ちゃダメ!!」

 

アリシアが慌てて警告を発するも

 

「え?」

 

続いてブレイドが突然の事態に対応できず即死した。

 

「《ブラインドネス》」

 

急いで全員に闇属性の【盲目】を与える魔法を使い全員の目を封じる。

 

「え?なになに?」

 

イキナリのことにキティがパニックを起こし、そこに【カトブレプス】が襲い掛かった。

それをディカルドの【アビリディアブラダ】が何とか防いだ。

 

「何だ?これは!?」

 

「目を合わせると即死する<UBM>です!

それを防ぐために魔法で目を封じました」

 

「そういうことね。なら」

 

目を封じられほとんどのものが動けなくなる中、【アビリディアブラダ】が自動で【カトブレプス】と打ち合う。

だが・・・

 

「くぅ」

 

鞭の先端がギリギリ音速の域に到達している【アビリディアブラダ】と、音速を軽く超えて動く【カトブレプス】では速度に差があり、次第に対応できなくなってくる。

 

「《クリムゾン・スフィア》」

 

それを補うためにアリシアも()()を次々と放つが、当てることはできなかった。

 

「はぁっ、はぁっ」

(魔法が上手く収束しないっ。速度も上がらない・・・)

 

自力で魔法を組み立てる場合の最大の欠点。

自力で組み上げ制御する以上、冷静に魔力をコントロールする必要がある。

しかし、アリシアも突然の事態に焦りを禁じえず、冷静さを失っていた。

 

(超級職の私がなんとかしないといけないのに・・・)

 

そうこうしている内に【カトブレプス】がディカルドの腕を落とした。

その事実に焦りが募る。

 

「はぁっ、はぁっ」

(呼吸が落ち着かない・・・)

 

そうして乱れた呼吸を意識したときに唐突に重要なことを思い出した。

 

(『あんまり呼吸を乱すんじゃねぇよ。

呼吸が乱れると余計身体が疲れる。

呼吸が乱れると思考が鈍る。

お前身体を動かしながらでも魔法を使いたいんだろ』)

 

そのままディカルドに襲い掛かる【カトブレプス】を炎弾で邪魔をしてから、声を上げる。

 

(『いいか。呼吸を整えるコツを教えてやる。

まず両足を肩幅に開き・・・』)

 

「コオォォォォッ!」

 

鋭く口から息を吐く。

そして鼻からゆっくりと息を吸う。

 

《息吹》。

正確にはスキルではなくただの呼吸法の技術のひとつ。

こういったときに呼吸を整えるのには最適であり、呼吸が整うと自然とアリシアの心が落ち着いてくるのを感じる。

その動きを隙と見たのか、腕を落とし戦闘力を失ったディカルドは後回しでも良いと思ったのか、【カトブレプス】がアリシアに襲い掛かり

 

「《ストーン・ウォール》」

 

......目の前に唐突に石壁が現れて慌ててそれを回避する。

そこに待ち構えた小さな()()が【カトブレプス】のコアを撃ち抜いた。

 

【<UBM>【死視迫兎 カトブレプス】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【アリシア・ノイモント】がMVPに選出されました】

【【アリシア・ノイモント】にMVP特典【陰視邪鏡 カトブレプス】を贈与します】

 

また、勘違いをしていた。

護らなければと考えるから対処が後手に回るのだ。

後手に回るから焦りが生まれ、相手の素早い動きに対して上手く行かなくなる。

そうではなく誰かと一緒にいる場合でも一人の場合と基本は同じなのだ。

相手の動きに合わせて対処を考えるのではどうしても対応が一歩遅くなり、攻撃を当てることができない。

そうではなく、隙を誘い相手の動きを誘導してそしてそこに攻撃を置いておく。

結局のところそれが重要なのだろう。

そうして、相性が良いとも言い切れない初めての<UBM>をアリシアはなんとか撃退したのだった。

 

(そうだ、まだ今なら・・・)

 

まだ戦闘開始から1分も経っていない。

急いで《ブラインドネス》を解除して恵子へと呼びかける。

 

「《リザレクション(蘇生魔法)》は使えますか?」

 

「あ、はい。成功率は高くはありませんが」

 

「ダメ元で構いません。お願いします。

二人とも即死で損傷がないですから、成功する確率は決して低くはないと思います。

【蘇生可能時間経過】がありますので、急いでお願いします」

 

「あ、私の歌で成功率を底上げするわ」

 

そうしてキティが補助へと回る。

 

(こんなことなら蘇生アイテムを準備しておくんだった)

 

と思っても持っていないのは仕方がない。

普段はソロでしか動かないので必要性を感じなかったのだ。

蘇生は彼女たちへと任せておくしかないだろう。

その間にアリシアはディカルドの腕を拾い、ポーションで繋げられないか試みる。

こちらならば自分で使うことも想定して準備していたものがある。

残念ながら魔法スキルによる蘇生は片方しか成功しなかったものの、幸い恵子の必殺スキルでもう片方の蘇生もできたようだ。

また、ディカルドの腕も比較的綺麗に落とされたためかポーションでなんとか繋げることに成功したのだった。

そうしてギリギリパーティーの立て直しに成功した。

 

 

「結局あれはなんだったんだ?」

 

クレーミルに一泊した後、王都への帰りの馬車の中でブレイドがそう尋ねてくる。

 

「そうですね。まずはこちらを」

 

説明の前に特典武具のメガネを見せる、

 

「<UBM>討伐時のMVP特典で手に入るって話の特典武具か。これが?」

 

「普通特典武具は<UBM>の特徴を引き継いだものになります。

この特典武具も今回の<UBM>と同じように《目死忌視》という即死効果のある邪眼が使えるものなのですが」

 

「え?それってヤバくない?」

 

「正直言って危険極まりないです。

あまり人前で使えるものではないですね」

 

目を合わせるだけで相手を殺せる特典武具である。

そんなものを持っていることを知った他の<マスター>がどういう反応を返すのか想像に難くない。

 

「<UBM>の成り立ちについては想像しても仕方がないです。

今回のあれは【マーダーラビット】がベースになった<UBM>ですね。

それが進化してその特典武具のような即死効果のある邪眼を手に入れたようです。

正確には目を合わせた相手に【即死】だけでなく【気絶】、【呪縛】も複合したさらに強力なものだったみたいですが」

 

《即死耐性》で対策を取ったとしても、他の状態異常にかかってしまう。

そういうイヤらしいものだったようだ。

特典武具の方はそれぞれ個別に分かれて、どれか一種類ずつしか使えなくなっているが。

 

「相手を見ない。

もしくは《即死耐性》で死ななかったとしても、動きが封じられる。

そういったまともに動きにくく制限された中で超音速で動くモンスターと戦わなければならない。

<UBM>のコンセプトとしてはそんな感じなのでしょう。

そして、おそらく今月初旬に事件になっていた原因の片割れでもあります」

 

「事件?」

 

「今月初旬にあの森林で正体不明の死亡事故が頻発していたのです。

死んでも復活する<マスター>の証言でも何が起こったのか分からなかったという。

私はその事件の調査を行い今回のものとは別の<UBM>・・・

こちらは姿を消したまま相手を切り裂くモンスターを倒したのですが、どうやら実はもう一体<UBM>が居てそれが今回の相手だったということなのでしょう」

 

首をはねられた遺体はこちらが原因だったのかもしれない。

あるいは<マスター>にも【カトブレプス】と遭遇したものはいたのだろうが、それは報告として挙げられていなかったのかもしれない。

こちらの相手は一見すると《即死耐性》さえあればなんとかなりそうなウサギに見えるわけで、自身で特典武具を狙いに行くために情報を隠していた可能性も考えられる。

 

「なるほど、それで昨日・・・」

 

「はい。冒険者ギルドに報告し直しに行っていました」

 

先に倒した方も原因のひとつだったので、特にアリシアの落ち度としては扱われなかったが。

 

「だけど、僕たちも報奨金を分けてもらってよかったのかい?」

 

「ええ。今回は私一人で戦ったわけではありませんし。

それにこう言うと嫌味に聞こえるかもしれませんが、このくらいの金額ならまたいくらでも稼ぎようがありますし」

 

事件に関係した<UBM>の討伐ということで一応追加の報奨金が出たが、あらかじめ確認されていた危険種ではないため、賞金首の懸賞金と比べてそこまで高額ではなかった。

 

「まあ、大変だったけど懐もあったまったし、いいじゃん」

 

「うむ。レベルが上がって装備も新調したいところだったので助かる」

 

「私としては無事に遺跡の情報が持ち帰れるのが嬉しいですね。

帰ったら皆さんに報酬をお支払いしますね」

 

レイトも無事に守り切り、こうしてなんとか遺跡案内のクエストをクリアしたのだった。




《クリムゾン・スフィア》の描写が炎弾になったり光弾になったりしているのは、収束圧縮具合の違いの差。
高圧縮されて超高温になると赤熱から白熱に様相が変化するという設定。
すでに紅蓮(クリムゾン)とはとても言えないものであり、別のモンスターとの戦闘で使って見せたとき、このパーティーからツッコミを受けた。

捏造設定
《ブラインドネス》
【盲目】を与える闇属性魔法。
盲目だから闇属性なのではなく、生物に直接影響を与えるから闇属性。
敵である【カトブレプス】にはレジストされた。
冷静になれば敵にも確実に影響を与えられる濃霧などの魔法の方が良かったかもしれないが、このときはアリシアも焦っており、とっさに少し前に覚えた魔法が思い浮かんだ。

《ストーン・ウォール》
石壁を作る地属性魔法。
攻撃を防いだり、視界を塞ぐ障害物として利用したりする。

《リザレクション》
司教で覚えることができる蘇生魔法。
超級職のものと比較すると成功率はそれほど高くない。


【軼身胴帯 メギンギョルズ】
TYPE:エルダーアームズ
到達形態:Ⅳ
スキル:
鎚振るための力の帯(メギンギョルズ)》必殺スキル
ステータスが倍化する
備考:シーモアの<エンブリオ>
ステータス補正と装備補正が高い腰帯。

【饒舌汰鞭 アビリディアブラダ】
TYPE:ガードナー・アームズ
到達形態:Ⅴ
スキル:
《自動迎撃》
一定範囲内に入った敵および敵の攻撃を自動で迎撃する。
《自動追撃》
攻撃を避けられた後、自動で追尾する。
攻撃時に追撃をするかの選択ができる。
《自動口撃》
正論で相手の痛いところを付く。
精神攻撃は基本。
備考:ディカルドの<エンブリオ>。
意志が宿り自分で喋る自動鞭。
かなりの毒舌。

【捨嘆珠鳥 カラドリウス】
TPYE:テリトリー・ガードナー
到達形態:Ⅴ
スキル:
《病魔平癒》
状態異常を吸い取り回復させる。
快癒万能霊薬(エリクシル)】でも治らない<流行病>等も治せる。
《成聖卵》
吸い取った状態異常が一定値に達すると聖卵を産む。
復活祭(カラドリウス)
産み出された聖卵を使用して、蘇生や部位欠損の修復を行う。
備考:斎藤恵子の<エンブリオ>
状態異常を吸い取る小鳥。
吸い取った状態異常が一定値になると卵を産む。
出典は異なるが、何故かモチーフが卵から復活祭と繋がっている。


【死視迫兎 カトブレプス】
伝説級の<UBM>
目を合わせるだけで相手を即死させる。
即死しなくても、動きを縛ることができ、複数の状態異常対策が必要になる。
目を合わせないというのが一番簡単な手段ではあるが、その状態で超音速で動く相手と戦うのは至難の業である。
超音速であるため音で相手の位置を判断するのも頼りにならない。
本文中では相性が良いとも言い切れないと書いたが、少なくとも相手を見ずに戦うための最低条件をアリシアは満たしているため、他よりもはるかにまだマシと言う程度には相性が良かった。
【マーダーラビット】という【パシラビット】の進化先のモンスターがベースになっている。

【陰視邪鏡 カトブレプス】
伝説級特典武具
度の入っていない眼鏡(アクセサリ)
装備補正:AGI+30%
装備スキル:《目死忌視》
《目死忌視》
MPを消費して発動する。
【即死】、【気絶】、【呪縛】から一つ選択した状態異常を目を合わせた相手に与える。
備考:目を合わせた相手を即死させる特典武具。
元の<UBM>がAGI特化だったためか、何気にAGIも上昇する。
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