□【司祭】アリシア・ノイモント
「愛闘祭?もうそんな時期なのですね」
12月上旬。クリスマスも近づいて来ており、デンドロ内でもハロウィンと同じように何かのイベントが期待され始めたころ、カドモスからお祭りの話を聞いた。
「うむ。年に一度この時期にギデオンで祭りがあるのじゃよ。
お主もあの地に対して無関係というわけではあるまい」
たしかにあの国の最後のお姫様であり、この国の初代王妃となったフレイメル・ギデオンの日記を見つけたのはアリシアである。
そのこと自体はカドモスは知らないはずなのだが......。
「折角の祭りじゃ。お主も行って遊んでくると良い。
何を焦っているのかは知らないが、お主最近必死になりすぎじゃろう。
少し息抜きしてくると良い」
言われてみれば、あの孤児院がどうなったのかも気になる。
そうしてアリシアは久しぶりにギデオンへと出かけた。
◇
愛闘祭。
それはこの国の初代国王が初代王妃と結婚を賭けて行った決闘『嫁取り決闘』に由来するお祭りである。
そのため決闘都市であることもあり、お祭りの中で決闘や告白が繰り広げられたりもする。
このお祭り間に決闘プロポーズを申し出て、その相手が負けてプロポーズを受け入れるが流行っているのだとか。
□【賢聖】アリシア・ノイモント
そうした浮ついた空気の中、アリシアは八番街の孤児院跡を見に行くことにしていた。
(・・・愛闘祭でも第八闘技場は使われていないのか)
せっかくなのであとで借りることにしよう。
そうこうしているうちに孤児院跡までたどり着いた。
「すみません。
こちらには孤児院があったと記憶しているのですが」
「ああ。ごめんね。
こちらは領主様の管轄の施設になったので、今は孤児院は六番街の方に統合されたよ」
「そうなのですね。ありがとうございます」
(無事領主の管理下に置かれるようになったのね)
まずは一安心である。
そのまま六番街の方へ向かうとそこでは炊き出しのようなものがやられており、そこで孤児院の子供たちはお手伝いをしていた。
「あっ、そこは俺の場所だぞ」
アリシアからスリをしようとした子供は相変わらず生意気そうではあったが。
直接会っても恩着せがましい感じになりそうなので、そのままそこをあとにする。
四番街の方へ向かうと例の店にまた行列ができていた。
なんでも祭りの間だけ買い物なしでもガチャを利用可能にしているらしい。
「これをください」
店の中で《空中跳躍》の付いた優秀な靴を見つけてそれを購入した。
必要レベルが500と高いがアリシアであれば問題なく装備できる。
さすがにアレに並ぶ気にはなれなかったので、すぐにそこをあとにした。
その後バザーなどを見ながらゆっくりと祭りを楽しむ。
「あ。これ美味しいかも」
なんでもギデオン焼きというピザに似た料理だった。
円形に焼いたものを12分割した形がギデオンの街に似ているからこの名前がついているらしい。
もっとも載っているのはトマトソースではなく、ハチミツであったが結構チーズとも合って美味しかった。
二番街では演劇をやっていた。
ちょうど愛闘祭の元になった嫁取り決闘の話のようだ。
「なぜ【アルター】を使わない!
私はあのときからずっとこのときを楽しみにしていたのに!!」
「あなたの夫となるためのこの戦いで、私は【アルター】を使わない。
それは二つの信念によるものだ」
「それはなんだ!」
「私は愛する人の始まりに、傷を刻むつもりはない。
そして・・・私は、あなたの愛を……拾った力で得ようとは思わない!」
「!!」
そうして、舞台は決闘へと移っていく。
(ひょっとすると・・・)
自分を倒した相手にしか嫁がないという公言。
アズライトとの決闘をずっと望んでいた。
アズライトは国王ではあるが、もともとは一介の冒険者でしかなかったはずだ。
初めは王女であるフレイメルとは身分がまったく違っただっただろう。
(『心配せずとも、初代王妃は不貞など働いていないよ。』)
たしかにその通りかもしれない。
舞台では決闘も終わった。
アズライトは【アルター】の力無しで決闘に勝ち、二人は幸せな結婚をして終生愛し合っていたと締めくくられた。
◇
そしてアリシアは今回の目的のひとつである中央闘技場へと向かっていた。
このお祭りの間、中央闘技場ではイベントとして決闘王者と戦うことができるらしい。
もっともランキング戦ではないので、もし仮に勝ったとしても決闘ランキング1位になるわけではないが。
「これは討伐ランカーでも参加は可能ですか?」
「もちろん可能です。
イベントのルールとして制限時間は5分。
もし5分間生き残ることができたなら景品も用意してありますよ」
「ではこちらが参加料です。
よろしくお願いします」
「はい。確かにお預かりします。
では順番をお待ちください」
ギデオンに来て初めての決闘に挑戦することにした。
【カトブレプス】戦は何気に初めてのギリギリな戦いだった。
それをなんとか乗り切ったアリシアもいろいろと思うところがあった。
周りから見るほど深刻な話でもないですけど。
せっかくの祭りなのにぼっち。
しかも根っからのソロ気質なので、その寂しさにも本人は気づいていない。
ギデオンの街がピザに似ているというのはどこかで見たことがある気がする。
それを模したギデオン焼きというのを勝手に名物料理として出してしまった。
チーズとハチミツを合わせるのは完全に私の好みです。
お祭りの買い食いなら、こういう甘いものの方がウケるかなって想像もあります。
劇の台詞はほとんどそのまま原作の通りです。
ここはアレンジのしようがなくって。