知を致すは物に格るに在り   作:チュータツ

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不正疑惑

[くそう。アイツ絶対不正してやがる]

 

[不正って?]

 

[ハッキングかなにかとか?]

 

[運営の人間と組んで情報を貰ったとか]

 

[だってそうじゃないとおかしいだろ。

俺の<エンブリオ>の弱点を初見で破ったんだぞ]

 

[それって単にお前の<エンブリオ>がショボかっただけじゃね?]

 

[そんなわけあるか。

戦っている間に気づくならともかく、最初からバレることはあり得ねぇ]

 

[そういや、あいつ初めからお宝の位置を知ってたみたいな動きしてたぞ]

 

[事前にイベントアイテムで場所の確認してたんじゃね?]

 

[あそこには元々<UBM>がいて、何人もの<マスター>がずっとそれを見張っていたわけだから、それはない]

 

[じゃあやっぱり情報の不正入手か]

 

[それなら、早くから超級職を持ってる理由にもなるな]

 

[ああ、あれな。

俺もずっと怪しいと思ってた]

 

[通報しました]

 

[運営もさっさと対処しろよな]

 

 

 

□【賢聖】アリシア・ノイモント

 

年が明けて2044年。

元旦には初詣に行ったりと挨拶したりと何かと忙しかったが、2日には時間が取れたので理子はデンドロにログインをした。

 

1日から始まった新年イベントも残りわずか。

いつものように北西の高レベル帯のモンスターが現れる地域へと赴き、そこで多数のネズミ型モンスターを倒して回った。

 

 

王都に帰ってくると、何か様子がおかしい。

ときどき他の<マスター>がアリシアのことを睨んで来たりするが、身に覚えはない。

 

「アリシアちゃん、ちょっとちょっと」

 

そうして学術院に向かって帰っていると、途中でキティ・シャリアンに話しかけられる。

彼女は以前遺跡案内のときに護衛で一緒になった<マスター>だ。

 

「お久しぶりです。どうされました」

 

「ちょっとこっち・・・」

 

そうしてひとつの飲食店の個室へと連れられて行った。

 

 

「・・・ということで連れてきたわよ」

 

「ひさしぶりだね」

 

そこではブレイド達護衛のときのパーティーが揃っていた。

 

「・・・新年会ですか?」

 

「ああ。パーティーを組んでいると言っても、住んでいる地域はバラバラでリアルで会うことはできないからね。

こうしてデンドロ内で新年会をしているというわけさ。

もっとも昨日までは新年イベントの方にかかりっきりだったけど」

 

「いい儲けになりましたね」

 

「で、そこに向かっているときにたまたまアリシアちゃんを見かけたから連れてきたってわけよ」

 

「でも、それなら私はお邪魔じゃないですか?」

 

「いや、実はこちらも聞きたいことがあってね。

キティが連れてきてくれたのはちょうど良かったよ」

 

なんでも、<マスター>の間ではアリシアが不正を行っているということで噂になっているらしい。

しかし......

 

「ある程度このゲームをやってきた人なら、そういった不正が難しいことはわかるんじゃないですか?

確か調査を仕掛けた合衆国の企業が逆に壊滅したって話もあったような・・・」

 

その企業テクノロックがデンドロの調査を行ったとはっきりとニュースで伝えられたわけではないが、ゲーム会社と言う意味では競合しているし、タイミング的にもそういう噂が立った。

 

「それも明確にそうだったって証拠も無いしね。

あとは君が運営と癒着したって話とか」

 

「そっちはもっとないですよ。

私の側はともかく、一個人を優遇するメリットが運営側にはありません」

 

「そうだろうな。

まあ、嫉妬にかられた連中が立てた自身の想像だけが根拠の噂だ」

 

「しかし、厄介ですね。

この手の噂は一度そうだと信じられてしまうと、覆すのが難しいですし・・・。

反論は逆効果にしかならないでしょうし、ほとぼりが覚めるのを待つくらいしか対策が浮かびません」

 

それは現実でのカンニング騒動のときにも味わったことだ。

 

「だが、運営側もこんな噂を立てられては困るだろう?

そちら側で対処してくれるんじゃないか?」

 

「どうでしょうか。

今まで通り、運営はなにもしないような気がしますね。

このゲーム今までに相当な量のクレームが寄せられているはずなのに、完全に放置ですし」

 

初期の狩場問題から始まり、不満が寄せられていないとは考えにくい。

だが一度もそれらに対して対処がなされたという話は聞かない。

不満をあえて残している可能性すら考えられる。

どういった感情が<エンブリオ>に影響を及ぼすのかわからない以上、自然と出てくるこうした嫉妬心なども逆にあった方が良いと考えている節もある。

 

「とりあえずは<DIN>に正確な情報を売っておくとかですかね」

 

信じない人は<DIN>の情報であっても信じないだろう。

しかし、それでは<DIN>の信用問題にかかわるのだから、積極的に動いてくれるだろう。

 

「あとは偽名ですね。

しばらくは街中では《偽装》スキルを使って名前をシア・クレセントとでも偽っておくことにします」

 

アリ()()の後半部分を使うのと、ノイモント(新月)クレセント(三日月)に変える。

安直かもしれないが、この程度でも十分に効果はあるだろう。

《偽装》の方も高レベルの《看破》《心眼》などでは見破られるかも知れないが、それを気にしだすとキリがない。

 

「私はもともとそれほど目立つ容姿はしていませんし、こちらは髪形を変えて眼鏡をかける程度でもいいでしょうか。こんな感じで」

 

髪を適当に結い上げて、眼鏡をかけると大分印象はかわるはずだ。

 

「ともかく教えていただき助かりました。

知らなければ対策の立てようがありませんでしたし」

 

「気にするな。困ったときはお互い様だ」

 

「こっちからもその噂は間違っているって、働きかけておくわね」

 

彼らのような<マスター>と知り合いになれたのはかなり運が良かったと言える。

他人がどう思おうが関係ない。

ずっとそう思っていたはずなのに、なんだか少し救われた気がした。

前のときもちゃんと味方を作っておけば良かったのかもしれない。




さすがに【ギデオンマスク・レプリカ】を使うのは逆に目立ちすぎる。

突然ですが、次回でラストです。
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