他の人との会話⇒敬語
独り言、頭の中、家族との会話⇒普通
地の文⇒三人称
のつもりです。
【内臓損傷】【出血】
・・・・・・
【致死ダメージ】
・・・・・・
【《ラスト・コマンド》効果時間終了】
【パーティ全滅】
【蘇生可能時間経過】
【デスペナルティ:ログイン制限24h】
◇
□日富理子
「・・・・・・ハッ」
アナウンスが流れた直後、理子はベッドの上で目が覚めた。
ダラダラと冷や汗が流れ、心臓も激しく鼓動を打っている。
「・・・ふぅ」
だがそれも気持ちが落ち着くと共に、徐々に収まってくる。
ヘルメットのディスプレイを見るとペナルティ中を示す表示がされていた。
胸を刺したときの痛みも、血が流れていく感触も、身体が冷えていく感覚もすべて覚えている。
「なるほど。これが死ぬ感覚か・・・。
っと、そうだ。記録」
今回はログインする前に自身の様子を録画していたし、心拍の記録も取っていた。
それらを確認していると、ふと夕食の準備の時間が迫っていることに気づいた。
「その前にシャワーを浴びて着替えようかな」
シャツが身体に張り付いていた。
夏場であることも影響しているのだろうが。
◇
シャワーを浴びながら考える。
今回の実験はカドモスの依頼があったことが切っ掛けではあるが、理子にとってもいろいろと得られた情報がある。
まず、痛覚は遮断しておいた方が良いと言うこと。
実際に自分で行ってみると痛みが激しすぎてまったく動けなくなり、思考も回らなくなった。
創作物の主人公たちは痛覚をオンにすることが多いが、理子の場合は同じようにはいかないのだろう。
今まで大きな怪我をしたことがなかったため分かっていなかったが、あれほどとは思わなかった。
これではいざと言うときに痛みが邪魔をして動けなくなる危険性がある。
次に【蘇生可能時間経過】のアナウンス。
話では蘇生魔法や蘇生アイテムなども存在するが、その成功率は高くないと言うことであった。
これはおそらく「蘇生可能時間」と言うものとも無関係ではないだろう。
<マスター>だからこそあのアナウンスが分かったが、もし仮にティアンにも同様のアナウンスがあったとしても、死亡したティアンにはそのことを伝えることができない。
ごく一部の蘇生に成功したティアンの場合にはアナウンスの前に生き返るので、そのことを知ることは無いはずだ。
そう考えるとティアンには蘇生可能時間についてあまり知られていない可能性がある。
また、今回の件から考えて 蘇生可能時間 はかなり短いと思われる。
この件についてはログインしたときにまたカドモスと相談する必要もあるだろう。
最後にリアルの自身の身体の反応。
録画を見るとログアウトして目が覚めるまでまったくの無反応であった。
あれだけ苦しい思いをしていたにも関わらず、リアルの身体にはまったくうなされている様子すらなかった。
目が覚めた時には激しく打っていた鼓動も、心拍の記録を見るとそれもログアウト後の反応だとわかる。
ログアウトしてすぐには時計を見る余裕もなかったが、ディスプレイに表示されていたペナルティ時間との対比から考えて間違いないだろう。
<エンブリオ>で自身のアバターを調べたときにも予測はしていたが、ログイン時の思考はリアルの身体ではなくすべてアバターが行っていることになる。
おそらくは内部時間の加速やAGIや《高速思索》等のスキルによる思考速度の上昇などもアバターだからこそ可能なのだろう。
もっとも思考する頭をアバターに移す方法などまったく原理が予測つかないが。
(<無限エンブリオ>・・・)
アバターを調べたときに分かった製作者のこと。
<エンブリオ>と言うからにはおそらくアリシアにも移植されたアレとも関係しているのだろうが。
あからさまなオーバーテクノロジーで作られたこのゲームも、やはり普通の手法で作られたものではないのだろう。
もっともその情報も<エンブリオ>で、つまりゲーム内で手に入れたものである以上、それもまたゲームの設定と言われてしまえばそれまでだが。
「まあ、深く考えすぎても仕方が無いか。
気にはなるけどそれを暴くのがゲームをしている目的と言うわけでもないし」
分かれば良し。
分からなくても大して問題では無いのかもしれない。
健康被害は無いし、脳波と言う個人情報を取られているのだとしても、たかが一介の元女子高生のそれにそこまでの価値があるとも思えないのだし。
あまり深く気にするのはやめることにする。
◇
「ねぇ。結構ゲームにハマってるみたいだけど勉強は大丈夫?」
夕飯時に母が聞いてくる。
「うん。大丈夫だよ」
これは本当である。
現在、午前を勉強の時間、午後をゲームの時間に当てており、ゲーム廃人のようなログイン時間をしている理子だが、《思考分割》《高速思索》《高速演算》のスキルにより思考の一部を脳内で復習するのに使用しており、デンドロ内では3倍の時間があることも含めて考えると、むしろゲームを始める前よりも捗っているとさえ言えた。
「たぶん今年で合格できるから、明日出願するね」
いつもなら午後をゲームの時間に当てているが、どの道ペナルティにより夕方までログインはできない。
だったら、その分をやるべきことに回した方が効率が良い。
「ゲームをしたいと聞いたときは勉強するのをやめたのかと思ったけど、そんなことはないのね」
「まあ、学校をやめてからゲームしかしていませんというのもあまりにもアレだし。
・・・まあ、結局ゲーム漬けの毎日を送ってるのは間違いないから、胸を張って言えるようなことでもないけど」
「ゲームは楽しい?」
「楽しいよ。中は完全にこことは違った世界になってて、この世界のものではない本ばかり集められた図書館とかもあるんだよ」
冷静に考えるとそれだけでも普通ではない。
それだけのオリジナル書籍を出版することを考えると、いったいどれだけの作者が必要なのか想像もつかない。
「それならよかった。あなたはまったくゲームの類をやろうとしなかったから、そういうのに興味がないのかと思ってたけど」
「別に興味がなかったわけじゃないよ。
ただ、それ以上に他にやりたいこととの兼ね合いがあっただけで」
そう。そういった創作物を読んだ時からずっと興味は持っていた。
そして今はそれらと同じような世界の中で遊んでいるのだ。
それを考えると......
「ん?」
だが、折角創作物のような世界にいけるのに、同じように遊んでいるとは言い難いことにいまさらながら気づいた。
捏造設定
《思考分割》
【哲学者】で覚えるスキル。
思考の一部を別のことを考えることに割り振るセンススキル。
《高速演算》
【
計算速度が速くなる。
《速読》
【司書】で覚えるスキル。
文字を読む速度が速くなる。