英語ができないので、サブタイはグーグル先生に翻訳してもらいました。たぶんこれからもそうです。
できないのに何故英語なのかというと、かっこいいからです。
「印象に残ったウマ娘ですか」
シンボリルドルフはその質問に少し悩む。
無敗の三冠ウマ娘、永遠なる皇帝、唯一の絶対と名の多い彼女であるが、現在は中央トレセン学園の生徒会長をしている。そんな中で受けた取材の時に聞かれた質問だった。
「そうですね。名ウマ娘というのはたくさんいます。それが速さなのか、強さなのか、それとも駆け抜けたストーリーなのか……」
それを語るシンボリルドルフは言いながらも迷っているようだった。
トウカイテイオーは? と聞かれ、頷く。
「確かにトウカイテイオーは気にかけていたウマ娘でした。その柔軟さからくる速さは歴代のウマ娘でもできない芸当でしたし、なによりも私を慕い、同時に私を楽しませてくれるほどの成長をしてくれた。これからのトゥインクルシリーズ、ドリームシリーズには必須と言えるほどのウマ娘です」
しかし、とシンボリルドルフは続ける。
「しかし、いや、恥ずかしい話なんですけれど、私もウマ娘ですので、やはり一緒に走ったウマ娘や、憧れた上の世代に強い印象を抱きますね」
というと、ミスターシービーやマルゼンスキー、シンザンなどですか? と記者が名立たる名バの名前を出す。
「そうですね。やはりトゥインクルシリーズの時は心躍るものがありました」
ですが、と言って記者に遠慮がちに笑う。
「ですが、あなたがあえて出さなかった名前のウマ娘がいますね?」
その言葉に記者は動揺する。それは図星であったからだ。
シンボリルドルフは夢想するように視線を上げる。その表情は楽しい思い出を思い出しているようで、同時に少しの後悔をしているようだった。
「ブラックトレイター。このトゥインクルシリーズの汚点と呼ばれる彼女です」
シンボリルドルフは椅子の背もたれに寄りかかる。
歴史ある生徒会長の椅子はギシリと音を立てた。
「世紀の大悪党、魔王、三冠ウマ娘の天敵……ああ、人気投票二桁常連なんて呼ばれてましたよね。記者さん、今日は時間がありますか?」
そう言われて記者は頷く。
むしろ、シンボリルドルフの時間を少しでも多く取ってこいと言われていたので、願ったりかなったりの話だった。
「じゃあ、今日はブラックトレイターの話をしましょう。私も全て知っているわけではないし、きっとこの話をしたら彼女は怒るだろうが、彼女を知っている人はもう少ないですしね」
シンボリルドルフはニコリと笑う。
「私が一番印象に残っているウマ娘……ブラックトレイターの知る限りを話しましょう」
生まれ変わり、というのを信じていたわけではなかった。
けど、死ぬ直前には来世では幸せになりますように、なんて思ってはいた。
でも、本当に生まれ変わるとは思わなかった。
記憶はある。
もう前世ということになるが、不思議なほどにくっきりと覚えていた。その所為で小さい頃から子供らしくはなかったが、孤児ということもあって特に気にされることでもなかった。
だが、その恩恵を受けるよりも、むしろ弊害の方が大きかった。
ウマ娘、という存在がいる。
女性しかいない種族で、すさまじい身体能力を持ち、ひとたび走れば時速60キロを超えると言う。特徴は馬耳としっぽを生やしており、皆容姿端麗ということだ。
ちなみに、そのような人間の上位種のような存在がいる代わりに、馬が存在しない。
僕はそのウマ娘になっていたのだ。
生まれ変わった、と言うがそもそも人じゃなかったということだ。
色々と大変だった。
力は強く、物は壊すわ自分は怪我をするわで精神は大人だというのに、周りとは怒られた回数の桁が違う。
しかも、ウマ娘というのは人と同じく会話をするし頭も良いというのに、本能が強いのだ。走りたい、勝ちたいという気持ちが強すぎるのだ。
最初はその本能を抑えようとした。
けれど、それは抑えられるものでもなく、子供らしい激情になって現れる。大泣きしたり、怒りとなったのだ。
次にそれを無くそうとしたが、調べたところそれは一生付き合っていくものだと知った。大人になったり妊娠をすることである程度は抑えられるらしいが、今できることでもない。
それまではウマ娘用の公園や走るための公共施設などもあるらしい。そこで解消するのが一般的とのこと。
僕はその事実を知るまでに結構な時間とコップと箸を費やした。
教えてくれよとは思わなくもなかったが、孤児院では初めてのウマ娘で向こう側も戸惑っていたらしい。
ともあれ僕はそういう施設を利用することにした。
ところで、僕には双子の姉妹がいる。
その双子である『エーちゃん』もウマ娘だった。
病気がちだけど、天真爛漫で活発な女の子。それが僕の姉だった。
エーちゃんは僕のことをビーちゃんと呼び、いつも連れまわった。施設を利用する時はいつもエーちゃんの後ろにいた。
そこで気づいたことがある。
それは名前についてだ。
僕たちウマ娘は名前を持って生まれてくる。それは和名であってもカタカナで表されるし、結構長い名前が多かったりする。
そして、その名前に聞き覚えがあったのだ。
共用施設で仲良くなった子と憧れのウマ娘の話になった時だ。
僕は歴史上のウマ娘を思い浮かべたが、エーちゃんはテレビでやっているような芸能人(とこの時は思っていた)のウマ娘の名前を挙げる。うちの孤児院にはテレビはないが、エーちゃんは何度か入院していて病院にあるテレビで見たウマ娘の話をしたのだ。
テンポイント、という名前が出た時に僕は時が止まったような衝撃があった。
そのウマ娘は『アリマキネン』で優勝したのだと言う。
馬の代わりにウマ娘がいる世界、明らかに人名ではないウマ娘たち、そして有馬記念。
そこまで聞いてようやく僕はウマ娘が僕が前世で活躍した馬と似た存在なのだと気づいた。
それから僕は有名なウマ娘を調べた。
僕は競馬には詳しくなかったが、競馬好きな友人がいたから名前だけは知っていたのだ。
セントライト、トキノミノル、そして、現最強ウマ娘、シンザン。
競馬以外でもナポレオンと共に活躍したマレンゴ、呂布と同時に名をとどろかせたセキトなども知った。
そこまで知って僕は疑問に思った。
あれ、じゃあ、僕は?
ウマ娘の子たちはきっと無名でも前世の世界と同じ名を持つ馬がいただろう。エーちゃんだってそうだ。僕は詳しくは知らないが似たような名前を持つ馬を聞いたことがある。……記憶が定かではないが。
けど、僕はどうなのだろう。
友達から聞いた名馬の中には僕の名前はなかったし、そもそも僕の名前は普通馬にもつけるような名前じゃないと思う。
もしかしたら。
もしかしたら僕はウマ娘として欠陥品なのではないのか?
眉唾な話ではあるが、ウマソウルというものが存在しそれによってウマ娘たちは名前を持つ。僕はわかるが、それはきっと前世の世界の馬のことだ。けれど、人間の魂と知っている限り存在しない名前を持つ僕は何なのだろうか。
僕は僕について悩んだ。
……ことはなかった。
前世の馬がなんだというのだ。そもそも僕は人間だったし、競馬もあんまり知らんかった。名馬の名前でもないし、使命があるわけでもない。別に劣等感もなかった。この世界では前世の世界なんて知っている人いないしね。
精々がウマ娘として将来どうしようかなと言った程度だ。
だけど、競馬……この世界でのトゥインクルシリーズ(他のシリーズもあるらしいが)はあまり褒められたものではないらしい。
人気エンターテイメントの一つとして挙げられるが、それでも日本ではその体制が整っていないという印象だ。
僕はそれについて酷く残念だという気持ちになる。
これからきっと名馬たちが名をあげることになる。
シンボリルドルフ、オグリキャップ、ナリタブライアン、トウカイテイオー、ディープインパクト……いつの時代の馬だったのかもわからないが、それを語る友人のキラキラとした目は覚えている。
『馬にはドラマがあるんだ。一生懸命に走って、馬たちはわからないだろうけど、その姿に俺たちは夢を見るんだ。もちろん、金を賭けるっていう側面もあるけど、そのドラマなしに金は賭けられないよ』
その言葉は印象に残っている。
エーちゃんは日ごろから「あたしは正義のヒーローウマ娘になるんだ!」と言っていた。
あたしたちみたいな貧乏なウマ娘を救うんだと。そして、世界一のウマ娘になるんだ、と。
病院で見た特撮ヒーローの影響を受けているようだった。
そして、そのためには中央トレセン学園にはいる必要があるんだと目を輝かせながら語っていた。
僕はそれを聞きながら、ああそういう将来もいいかもね、なんて言った。
だけど、エーちゃんの願いは叶うことはなかった。
僕らの孤児院は貧乏だった。
加えてエーちゃんの病気を治すためにお金が必要だった。
孤児院の院長はURAというトゥインクルシリーズを運営するウマ娘のための団体に懇願する。
「きっとこの子は大成する。だからお金を恵んでください」と。
だが、URAはそれに応えることはできなかった。
単純に金銭が足りないのだ。
エーちゃん一人を救うなら、全国にいるウマ娘を救うことになる。それはできないと。そこまでの余裕などどこにもないと。
きっとそれは仕方のないことなのだろう。
振れる袖もないなら仕方ない。
僕は自分の無力感に悲しむことしかできなかった。
そうしているうちにエーちゃんの病状は悪化する。
エーちゃんと最期に話したことは覚えている。
僕が病室をのぞくとベッドで寝るエーちゃんは窓の外を見て、鼻歌を歌っていた。
「エーちゃん」
「ビーちゃん! きてくれたんだ!」
「うん。調子はどう?」
「ちょーし? だいじょうぶ!」
「そっか」
「はやく走りたいなぁ」
「きっとすぐに走れるようになるよ、いい子にしてたらね」
「もう、ビーちゃんもせんせーといっしょのこと言う!」
「院長先生の言うことを聞かないとね」
「ちぇー」
エーちゃんはそれから自慢するようにテレビをつけて、レースを見せてくれる。
大好きなテンポイントの映像だ。
「あたしね、テンポイントみたいになって、それでそれで、さんかんウマ娘になって、正義のウマ娘になる!」
「うん」
「そんでもって、世界一のウマ娘になるんだ!」
「なれるよ、エーちゃんなら」
「そう? ビーちゃんもそう思う?」
「思うよ。エーちゃんは足、速いもんね」
「でしょー!? ビーちゃんも走ればいいのに」
「僕は……向いてないんじゃないかな?」
「そんなことないよ! ビーちゃんなら世界で2番目のウマ娘になれるよ! あたしがほしょーする!」
「そっか、エーちゃんが保証するなら、なれるかも」
だからさ、とエーちゃんは僕の手を取る。
「だからさ、そうなったら世界一のレースで一緒に走ろうね」
「……うん、わかった」
「約束ね!」
「うん、約束」
そう言って僕らは小指を結んだ。
僕は卑怯なやつだ。
それが叶わないと知りつつ、約束をしたのだから。
それからエーちゃんは病態が急変し、あっさりと亡くなってしまった。
僕は今までどうして生まれ変わったのかを考えていた。
こうしてウマ娘という存在を知って、自分がウマ娘だということを理解して初めて思ったことがある。
欠陥品である僕。
馬の名前のない僕。
生まれ変わった理由は後続のウマ娘のための道を創り出すためなのではないか? いや、後続だけじゃない。走り切ったウマ娘たちも『自分たちが走った道だ』と胸を張れるような道にすることが僕の生まれ変わった理由。
僕はウマ娘に生まれたのだから。
『ブラックトレイター』はそう思った。
でも、どうすればいいのだろうか?
トゥインクルシリーズの体制は整っていない。それは暗い部分があるというよりかは、そもそも整備がなっていないという感じだ。いや、知らないだけで黒い部分はあるのかもしれないが。
マルゼンスキーという馬の話を聞いたことがある。
すさまじく速く、強い馬だったという。だが、外国産馬ということで出れるレースが限られていたのだ。
大外枠でもいい。賞金もいらない。他の馬の邪魔もしない。だからマルゼンスキーを日本ダービーで走らせてくれ。
そう騎手は語ったと言う。
ブラッドスポーツと言われている競馬としては国産馬と外国産馬の違いを出すのは理解できる。
しかし、トゥインクルシリーズは競馬と違ってそのような括りの問題はないはずなのに、出場の縛りなどがある。
原因はおそらく単純な金銭問題だ。
重賞と呼ばれる由緒あるレースにはとんでもない賞金が出る。
ジャパンカップなどではなんと3億円だ。しかも、1着だけで3億円だ。
しかし、前世の世界とは違い、トゥインクルシリーズでは賭けをしていない。つまり、金の集まりが悪いのだ。
外国のウマ娘が賞金を持って帰ってしまったらそりゃ日本には残らない。
そのような事情があって、出場の制限があるのだろう。
僕はそう予想した。
解決にはどうすればいいのか。
色々なやり方があるだろうが、頭の良くない僕には足りない金が集まるほどに人気のエンターテイメントになればいいのではないかという発想しか生まれなかった。
トゥインクルシリーズを盛り上げていこう、ということだ。
そのためにはスターウマ娘が必要だ。
圧倒的カリスマを持ったウマ娘が必要だ。
ならば、僕が成るしかないだろう。
最強のウマ娘に。
見ていてくれエーちゃん、僕はやってやるぜ!
「アタシの名前はミスターシービー。よろしくね」
と思っていたら、スーパースターウマ娘と同期でした。
エーちゃんの本名は公開されるかは未定です。
でも、たぶん予想はつくんじゃないかな。
ヒントはその所為で史実改変をタグに入れるか迷ったことです。