ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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一区切りが長くなりがち。
それでいいと思っている。


To the next target

「というわけでシンボリルドルフだ。好きに呼んでほしい」

 

早速というか、なんというか、手続きが終わるとシンボリルドルフさんはやってきた。

トレーナーも頷き、歓迎するような態度を取る。

 

「俺がブラックトレイターのトレーナーだ。こっちがブラックトレイター」

「俺はまだ納得してないぞ! なんで許可したんだよ、トレーナー!」

「わめくな。これは実績だ。シンボリルドルフを育てた期間があるというのはとても大きな実績。俺の目標に必要なものだ。それにお前の目標にも必要な人材だ。わかるだろう?」

「それはっ! そうかもしれないけどよ……」

「そういう思惑を持つのは止めないが、私のいないところで話してくれないか……」

 

シンボリルドルフさんは呆れたように言う。

そして、僕を挑発するように笑う。

 

「どうした、先輩。私をこき使ってやるんじゃなかったのか?」

「ぐっ……、わかったよ! いい子ちゃんじゃいられないようにしてやるよ、ルドルフ!」

「ああ、そうしてほしい。ラック先輩」

 

そういえば、僕って練習中もロールプレイしなきゃいけないの……?

ええい、できらあ!

 

 

 

とはいえ、トレーナーの言う通りではある。

リギルで思ったことではあるが、一緒に練習する相手がいるというのは大きなメリットだ。

 

「最後! もう一周!」

「はあああああああ!」

「うらああああああ!」

 

ターフを削るように疾走する僕とルドルフ。

勝敗は僕の勝ち。

だが、ギリギリだ。

なんという才能を持つウマ娘なんだ。

だからこそ、今だけでも負けられない。

対抗心から来るモチベーションが燃える。

それはルドルフも同じようで、僕を射殺さんばかりに睨む。

僕はそれに勝ち誇ったような笑みを向ける。

 

1歳年下に全力出して勝って勝ち誇るとか、恥ずかしくないの? と思うかもしれない。

だが、恥ずかしくない。

全然恥ずかしくない。

何故なら相手はシンボリルドルフだからだ。

才能だけで言えばシービーを超える逸材なのだ。

明日には負けててもおかしくない。

というか、シービーにもそうだが、僕が勝てているのが奇跡に近い。

 

ルドルフは「もう一本!」と叫ぶ。

僕はそれに応えることにした。

 

それが終わると、ルドルフは休憩に入る。

僕はルドルフにスポーツドリンクとタオルを投げつけ坂路トレーニングに入る。

ルドルフは驚いた表情で僕を見るが、無視。

 

「トレーナー、あれでは壊れるのではないか?」

「ああ、あのままだとな」

「なっ! どういうことだ!」

「あのままだとな、と言った。ギリギリで止めるさ」

「しかし、それに失敗したら……」

「あいつはそれを理解してやっている。それにちょっと限界を超えた程度なら大丈夫だ」

「大丈夫なわけが……」

「あいつはな、才能がない。まるでウマ娘に生まれたことが間違いだと思うほどにな」

「は? どういうことだ? 私はともかく、シービーは才能がないウマ娘に負けない」

「ああ、それはそうだろう。きっとお前たちはあいつの数倍の早さで強くなるさ」

「じゃあ、どうして……」

「あいつは本当に小さい頃からトレーニングをしていたんだ。それは走るだけじゃない。体作りに呼吸法などのテクニック、レース研究にコース研究。なんでもやっていた。ウマ娘が自身をトレーナーとして英才教育していたんだ。ちょっとやそっとじゃ壊れない」

「どうして、そこまで……」

「それは本人に聞け。そのストイックさは異常だ。それを才能と呼べるかもしれないが、俺は生物としての欠落としか思えないな」

 

走る。

走る。

登る。

登る。

呼吸を意識して、足運びを意識して、レースを意識する。

 

「そこまでだ!」

「もう一本!」

「終わりだ、ブラックトレイター!」

「もう一本だ!」

 

ぱんと頬を叩かれる。

あ、やべ。

やっちった。

トレーニングに夢中になるといつもこうだ。

トレーナーに頭を下げて、呼吸を整えながら歩く。

 

「すんまへん」

「はあ、集中力があるのは結構だがな」

「トレーナーがトレーナーで良かったよ」

「調子のいいことを言うな」

「はーい」

 

ルドルフのところに行くと難しい顔をしている。

なに、トレーナーにいじめられた?

 

「ラック先輩は……」

「先輩はいらない。ガラじゃねえからな。どうしてもっていうなら様をつけろ」

「はあ、ラックは、どうしてそこまでやるんだ?」

「はあ? どうして? 何がだ?」

「トレーニングだ。そこまでやらなくてもいいだろう?」

「あのな、お前バカか? ああ、バカだったか」

「答えてくれ」

「いやだね。はい、先輩命令。タオルとドリンクボトル片しておけ」

 

僕はそう言って、使っていたものを投げつける。

心が痛むぅ。

だが、徹底しなきゃいけないのだ。

ごめんな、ルドルフ……。

 

大人しく運んでいくルドルフを見ながらトレーナーに言う。

 

「……もう7月だけど出るレースはどうする?」

「そうだな、ステップレースとトライアルレースがあるが、どちらを狙うかによって変わってくる」

 

ステップレースとトライアルレースとは言わば前哨戦だ。

ステップレースはいわば、目標の大きいレースに出るために出走条件の賞金を稼いだり、調整をすること。

トライアルレースとは、G1級のレースには優先出走権というのが存在し、そのトライアルレースに勝利することで目標のG1レースに出走できるというレースだ。

つまり、ステップレースはいくつかこなさなければならないが、トライアルレースはそのレースに1回勝利すれば出走できるということだ。

クラシック路線最初のレースは皐月賞。

そして、皐月賞のトライアルレースは弥生賞、スプリングS、若葉Sだ。このうちの1つにでも勝利すれば出走できる。

正直、悩む。

確かにトライアルレースに出れば直行で皐月賞に出走できる。

だが、同時に負けたら賞金が足りずに出れない可能性も出てくる。

賞金は稼いでおきたい。それは皐月賞のためでもそうだし、個人的にも賞金は欲しい。

だが、トライアルレースじゃなくステップレースに行くというのは悪役としてどうなのだろうか。

僕の描く悪役は強くて、倒せないかもしれないと思わせるほどの強敵だ。

うーん、どうしよう。

 

「まあ、今すぐ決めなきゃいけないというわけではない。デビュー戦が終わったとはいえ、まだ出れるレースもあるわけじゃないんだ。どちらにせよ、秋まで待つことになるからな」

「そうだね、りょーかい」

 

僕は存分に悩むことにした。

 

 

 

「シービーはどうするの?」

「アタシは調整してトライアルレースに出る。弥生賞かな」

「弥生賞か……」

「弥生賞来て! とは言えないからなぁ」

「どうして?」

「だって、そこでアタシが勝って賞金足りなかったら皐月賞出れないじゃん」

「勝つこと前提かい。まあ、でも、僕としても次シービーと走るなら大きいレースが良いかな」

「でしょー。まあ、でも弥生賞に来てもいいとも思うし。アタシに合わせてレース変えなくてもいいんじゃない?」

「うーん、確かにシービーの出るレースを見てレースを変えてはいるけど、それはシービーだけじゃないから。回避をすることはなくても、一番ダメなのは皐月賞に出れないことだから。保険は大事よ」

「負けたら終わりなレースを2回も走っておいてよく言うよ」

「2回も走ったからだよ」

 

僕たちは食堂で昼食を取りながら駄弁っていた。

 

「そういえば、ルドルフはどう? 元気?」

「元気元気。いやぁ、ストレス溜めさせちゃってるのは申し訳ないと思ってるけど、やめられはしないからなぁ。今は会長の所にいると思うよ」

「ルドルフは強い?」

「強いよ。三冠、僕の次はルドルフだと思う」

「アタシの次は、ね」

「「ははは」」

「まあでも、本当に強いよ。ルドルフの夢は難しいけど、あの強さを持ってるならルドルフ以外では叶えるの無理なんじゃない?」

「へぇ? アタシとどっちが強い?」

「シービーが強いよ。でも才能はルドルフが上」

「ふーん?」

 

シービーはわくわくした表情をする。

心底楽しそうな顔を見てきっとこれこそがシービーの強さだよなぁと思う。

シービーは勝った負けた強い弱いに拘るが、重きを置きすぎない。どんなことがあっても折れることはないのだ。

 

「でもね、シービー」

「なに? 今はアタシの方が強いから落ち込まないでって?」

「いや、将来もルドルフが強いとは限らないからね」

「うん?」

「もし、ルドルフにライバルが出来なかったらきっとシービーの方が強い」

「あはは、確かに!」

 

僕は話を変えることにする。

 

「そうだ、一緒にトレーニングするの、いつにする?」

 

そう言うと、シービーは人差し指を唇に当てる。

 

「んー、じゃあ、今日!」

「え、今日?」

「うん、今日」

「トレーナーには言ってあるの?」

「ないよ?」

「……じゃあ、今日しよっか」

「うん!」

「そうだ、誘えるかわからないけど誘ってみたい人いるんだけどいい?」

「もちろん!」

 

 

 

放課後、僕たちはターフに集まっていた。

メンバーはトレーナーと沖野トレーナー、僕とルドルフとシービー。

そして、マルゼンスキー先輩と東条トレーナーだ。

 

「おいおいおい、シービーお前こういうことはちゃんと言え? な? リギルが来るなんて聞いてないぞ?」

「えー? いいじゃん。それにアタシメンバーは聞いてなかったし」

「そうだぞ、ブラックトレイター。ちゃんとこういうことは事前に言うんだ。トレーナーの俺が知らないのは問題だろう?」

「えー? いいじゃん。……じゃなくて、いいだろ? 練習するなら強い相手だ」

「二人は私とマルゼンスキーが来るのは反対だったのか? ん?」

「「滅相もない」」

 

トレーナーたちが首を振る。

仲良くてなにより。

 

「あなたがシンボリルドルフちゃん?」

「初めまして、そういうあなたはマルゼンスキーさん?」

「ええ、そうよ! ラックちゃんから聞いているわ」

「ほう、どんなことを言っているのか、聞いてもいいですか?」

「それはね……」

「マルゼンスキー。あまり無駄口を叩くな」

「あらら、怒られちゃった。……ふふふ」

「なんだ? 文句でも?」

「いーえ? ワイルドなラックちゃんも素敵よ」

「……どうも」

 

マルゼンスキー先輩には悪いが、口調や呼び方はこういう方向性で行くことにした。事前に了解をもらっている。

嫌われ役になるだろうと言ったら悲しそうな顔をしていたが、呼び捨てにしてもいいかと聞いたら嬉しそうにしていた。普段からそう呼んでほしいとも言われた。

 

「ラック、先輩になんて口を聞いているんだ」

「俺も、お前の先輩だが?」

「いいのよ、シンボリルドルフちゃん。私、距離取られたら悲しいわ。シンボリルドルフちゃんも固い口調で話さなくてもいいからね?」

「……わかった。じゃあ、遠慮なく。私のこともルドルフと」

「わかったわルドルフちゃん」

 

こちらも挨拶が終わり、トレーナーたちがどんな練習をするのか、話し合うのを待つ。

その間にシービーが話しかけてくる。

 

「それにしても、良く誘えたね。忙しかったんじゃない?」

「まあな。ちょっと無理言ったことは……いや、俺が勝ったんだからな。勝ちは勝ちだし、言うことを聞くのは当たり前だ。今日はリギルは休みだったしな」

「またそういうことを言う……」

「あはは、そうね! ルドルフちゃん、いつか私の仇を取ってー!」

「なるほど。いつかと言わず、今日取ろうか」

 

今日はシービーのゲートの苦手をどうにかする会なのだ。

スタートが一番得意なのはマルゼンスキーだ。

実はシンザン会長も誘っていたのだが、流石に忙しかったらしい。

仕事を投げ出して来そうだったので、どうにか押しとどめてきた。

 

トレーナーたちはトレーニング内容を決めたらしい。

トレーニング用のゲートを引っ張り出すように言われる。

シービーはげんなりしていたが、今日はこういうトレーニングだって。

 

「今日はシービーのゲートの練習に付き合ってくれるそうだから、スタートの練習を重点的にやろうと思う」

 

沖野トレーナーが代表で話す。

そして、ゲートから少し離れたところに立つ。

 

「200m走だ! ゲート入りからやっていくから、内枠外枠を順番に回していくぞ!」

 

僕たちは頷いた。

 

「よろしい! では準備運動!」

 

 

 

スタートダッシュ。

それはとても重要なものだ。

どう重要なのかを説明する。

 

レースというのは人間の陸上の短中距離走とは違い、レーン分けがされていない。だから、レース中の走る場所というのが大切になってくる。

追い込みをするウマ娘であってもだ。

では、どう位置を確保するのかというと、それはスタートとパワーだ。

パワーはイメージがしやすいだろう。単純に押しのけるのだ。接触は禁止されているが、パワーを鍛えれば自分がよろけることがなくなる分、相手がよろけるスペースに入り込みやすいのだ。

そして、スタート。

こちらも単純な話だ。誰よりも速くスタートすれば走りたい位置を選べるのだ。先頭から後ろに下がるのは容易だが、後ろから先頭に行くのは難しい。というか、それができるのであれば100%勝てる。レースの最後にそれをすればいいのだから。

 

ガシャンとゲートが開く。

スタートし、すぐに終わる。

順位はマルゼンスキー、僕、ルドルフ、シービーだ。

内枠、外枠が入れ替わり、順位が変わっても僕とマルゼンスキーだけ。ルドルフとシービーの順位は変わらない。とはいっても、僕の勝率は2割くらいだ。

本当にたまにシービーがロケットスタートをかますことがあるが。

 

「うぅ~むずい!」

「確かに、これは、練習としてもきついな」

「私も、ちょっちきつくなってきたわ……」

 

意外とこのトレーニング、気力を使う。

スタート前は張り詰めた状況だ。なんだったらレース中よりも神経をとがらせている。

それをずっとなんて、確かにきついだろう。

 

「というか、ラックは本当にゲート好きだね……」

「別に、好きじゃないが……」

「でも、ここまで疲れてないのは異常ね……」

「ゲートに食われるわけじゃないんだ。開いたら出る。そのタイミングを計る。それに慣れるよう心掛けるんだ」

 

偉そうに言うが、僕はひしひしとプレッシャーを感じていた。

ルドルフ、異常に飲み込みが早い。

というか、スタートダッシュで多少遅れても追い抜かそうとしてくる。

シービーは全然上手くならないが、ルドルフはとんでもないスピードで成長している。

僕が悪役やってるけど、ルドルフの方が似合うんじゃない?

成長する魔王とか絶望的だし。

……まあ、そうなったら誰も勝てなくなってウマ娘にとっては暗黒時代になるかもだけど。

夢を与える存在になるか、絶望を与える存在になるかは世代によって変わる。ルドルフと同じ代はきついだろうな。

 

延々とそれを繰り返していく。

そして、練習終わりの時間が近づいてくる。

 

「よーし、ラスト!」

 

ゲートが開く。

そして、僕は驚いた。

ルドルフが僕よりも、マルゼンスキーよりも先にゴールしたのだ。

 

ルドルフはそれを確認する。

 

「~~っ!」

 

そして、嬉しそうにガッツポーズをした。

これがデビュー前のウマ娘か?

とんでもない時代に生まれたな、僕……。

 

ルドルフはこちらへ振り返る。

 

「どうだ、勝ったぞ! ラック、最後は私の勝ちだ!」

「……勝ったのは一回だ。フロックで喜ぶな」

「だが、勝ちは勝ちだと言ったのはラックだ」

「あーもう、うるせえなわかったよ! 頑張ったな、ルドルフ」

 

そう言って、頭をガシガシと撫でる。

するとキョトンとこちらを見る。

あれ?

そういう流れじゃない?

失敗した?

 

すると、にやにやとしながらマルゼンスキーとシービーが寄ってくる。

 

「私も~何度もラックちゃんに勝ったんだけど~なでなでしてくれないのかしら~?」

「アタシも~偶然とはいえ勝った時が何回かあるんだけど~なでなでしてくれないの~?」

「ええい、黙れ黙れ!」

 

それでなでなでするなら僕は誰になでなでしてもらえればいいんだ!

 

今日のトレーニングとして言えば、シービーは少しゲートに慣れ、ルドルフがスタートが得意になったという結果で終えた。

僕?

僕はすでにコンセントレーション(集中)は得意なんです。

まあ、さらにちょっと上手くなったかなといった具合。

 

でも、最初の地固めはほぼ上手く行くようになったと思う。

 

 

 

さて、そんなトレーニングをしつつ、7月の後半にようやく僕はレースを決めた。

 

「それで、ラックはどのレースに出るんだ?」

「ああ、若葉Sに出ることにした」

「ほう、トライアルレースか」

「そうだが、そうじゃない」

「というと?」

「ああ、トライアルレースとステップレースに出ることにした」

「……少し思っていたことがあるんだが……」

「なんだ? 言いたいことがあるならはっきりしろルドルフ」

「君は少し頭が悪い所があるな?」

 

な、何故バレた!?

いや、わかる。

確かにレースに出まくるぜ! とだけ宣言すればそうだ。

 

「お、俺は、学業もおろそかにしていない。テストも、上位をキープしているぞ!」

「……怒るところで動揺しないでくれ。……それで? どういう流れなんだ?」

「……ふう。ああ、そうだな。説明しよう」

「ぜひ」

「弥生賞、スプリングS、若葉S。違いは何かわかるか?」

「うん? 距離は2000、1800、2000……まあ、右回りは同じだな。後は、ああ、若葉Sだけ阪神レース場だな」

「違う! いいか、俺は若葉Sに出る。だが、このレースだけ違うことがある。それはグレードだ!」

 

ばばんと仁王立ちで言う。

そう、弥生賞、スプリングSはG2だが、若葉SだけOPなのだ。

グレードが低いのだ。

 

「……あのな、ラック。若葉Sはトライアルレースだ。だから、ほぼ確実にグレードじゃ計れない難易度があるんだぞ?」

「知ってるよ。シービーは弥生賞に出ると言った。きっとやつなら勝つだろう……ゲートは不安だが。そこで俺がOP戦だけの勝利で行くのは格が落ちると言うもの」

「中央のOP戦というのはそれだけで価値あるものなんだが……」

 

うん、それはそう。

全くその通り。

 

「だから、俺が出るのはG1レース! ホープフルSだ!」

「……そのための出走条件はどう満たすんだ?」

「G3レースの東京スポーツ杯ジュニアSに出る」

「つまり、東京スポーツ杯ジュニアS、ホープフルS、若葉S、皐月賞の順でいくのか?」

「そうだ。悪くないアイディアだろう?」

「……11月後半、12月後半、3月前半、4月前半だ。調整はどうするんだ?」

 

言われるとわかっていた僕は意地の悪い笑みを浮かべる。

ルドルフは真顔になる。……元々真顔みたいなものだったが。

 

「調整? 全部調整だ。G3もG1も、皐月賞の調整として使う。まあ、1位を取れてれば若葉Sは必要ないんだが、トライアルレースから逃げたと言われるのも癪だからとりあえず出る」

「レースをバカにしてるのか?」

「バカに? いいや? レースは俺を称えるための道具さ」

 

吐き捨てるようにそう言って、トレーナーに振り返る。

 

「いいよな、トレーナー?」

「ああ、大丈夫だ」

 

どれだけ保険をかけてもレースはわからない。

だから、できるだけ賞金を稼げるように調整したのだが、一番の不安要素は若葉Sだ。

3月の後半から4月の前半のスパンは短い。

だが、怪我さえしなければ僕は回復が異常に早い。

ズルを最大限に活用して僕はレースをするのだ。

じゃないと勝てないし。

 

ともあれ、最初の東京スポーツ杯ジュニアSは絶対に勝ちたい。

何故なら、賞金や皐月賞出走条件とは別にやりたいことがホープフルSにあるからだ。

 

「そうと決まれば取材の準備だ」

「取材?」

「そうさ。俺が出るレースを全員が待ち遠しく思ってるだろうからな。言ってやるのさとりあえずG1を取りたいからホープフルSに出るってことと、力を示すために若葉Sに出るってな。ルドルフ、誰か取材受けてくれそうな記者はいるか?」

「……いてもそんな不純なこと書かせられん。紹介しないぞ」

「それなら俺が知っている」

「お、トレーナー! 流石だ! どんなやつだ?」

「前回の取材で書かれた記事でお前を一番バッシングしていたやつだ」

「いーいねえ! それじゃ、取材を受けといてくれ!」

「わかった」

 

ルドルフが頭を抱える。

だが、目標が決まればやる気も上がるというもの。

 

「よし、トレーニングだ! ルドルフ! シューズとドリンクの準備だ!」

「ん? 君が自分で用意していたのではないのか? ここにはなかったぞ?」

「は? いやしてないが……まあ、予備があるからいいか。行くぞ、ルドルフも手伝ってもらうからな」

「……まあ、チームメンバーだからな……」

 

こうして僕のクラシックへの挑戦が始まった。

 

 




いつも「これ、こういう意味なんだよな? 競馬まじわからん」ってなりながら書いてます。

ちなみにグレードは今のものを採用しています。
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