ウマ娘とかいう種族に転生した話   作:史成 雷太

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実はこの小説は最後まで書ききっていて、その間に閑話を入れているような状況なのですが、いつも切るところを迷ってます。


Summer brings me to my destiny

さて、とは言ってもこれからもトレーニング三昧だ。

現在は7月が終わり、夏休みが始まる。後、3、4ヶ月の猶予はある。

ここどれだけ実力を上げれるかでクラシックどころか、これからのレース生涯を左右するのだ。

と、言ったところで、トレーナーに声をかけられた。

 

「合宿をするぞ」

「合宿?」

「ああ、せっかく授業がないからな。本当だったら疲労の関係でジュニア級はしないのだが、お前は特別製だからな。死ぬ気で鍛えるぞ」

「……わかった!」

「それに夏頃になると本格化が始まる。それに慣れる必要がある」

「ついに来たか、本格化!」

「ああ、まあ、皐月賞終わってもこない場合もあるが」

「怖いこと言わないでくれます?」

 

とはいえ、僕のズルが本格的に強いな。

ずっと鍛えられるのは高いアドバンテージだ。

……まあ、それをしなければシービーには勝てないんだけど。

 

「そういえば、ルドルフは? どうするの?」

「あー、本人に聞くか?」

 

といったところでトレーナー室にルドルフが入ってくる。

 

「私の名前が聞こえたが?」

「ああ、ルドルフ。合宿をしようと思うんだが、一緒に来るか?」

 

そういうと、ルドルフは目頭を揉むような仕草をする。

 

「来年か?」

「今年だ」

「誰の?」

「俺の」

「何故?」

「トレーニングだ」

「バカか?」

「天才だ」

 

そういうと、とんでもなく大きなため息を吐く。

 

「ジュニア級の夏は疲労を溜めるわけにはいかないんだぞ? これからとんでもなく大切なレースが待っている。臥薪嘗胆、プレッシャーに耐えトレーニングをしないという選択が正しいんだ」

「来るのか? 来ないのか?」

「……行こう。合宿所はトレセン学園がいつも使っている場所なのだろう? 生徒会長の仕事として先に見に行くことにする」

「よし、雑用確保!」

「おい!」

「そういえば、生徒会の方は上手く行っているか?」

「……まあ、そうだな。確かにあの仕事量は大変だ。シンザン会長はどうしてあれを一人でやろうと思ったのかわからないが……まあ、一人でできてしまっていたしな……」

「会長とは仲良くしているか?」

「ああ、まあな。君の話を聞こうとするとはぐらかされるけどな。一体何をしたんだ?」

「最強とか言われてるマルゼンスキーをレースでぶっ倒したかったから会長を脅してレース作らせた」

「…………は?」

「ちゃんと勝ったぞ?」

「待て待て、じゃああの新しくできたシンザン記念はそんな理由でできたのか!? というか、脅したって、会長の何の弱みを握っているんだ!?」

「うるせえな。本人に聞け」

「おい!」

「ところで、俺の蹄鉄知らない? ……まあ、合宿のために買いだめするか」

 

ということで、僕たちは合宿に行くことが決まった。

 

 

 

「で、どこで合宿するんだ?」

 

トレーナーが運転する車の中、僕は荷物を抱えながら聞く。

 

「ああ、海岸沿いに合宿所があるんだ。そこでやる。砂浜は足に負担がないからな」

「ふうん、ダートは苦手なんだが」

「苦手で済むのがすごいところだ。ダートでも重賞はいけるんじゃないか?」

「ダートはダートの王がいるからな。俺はてっぺんがいいんだ」

「まあ、今更言うことでもないか」

 

僕は窓から顔を出す。

気持ちいい。

夏の暑さと海岸の涼しさが風となって包んでくる。

 

「ルドルフはトレーニングするのか?」

「ああ、ルドルフは基本自由行動だ。トレーニングするならしていいし、生徒会としての仕事もあるだろう」

「そういうことだ。悪いな」

「いいさ、来なくったって良かったんだ。その真面目さに脱帽するくらいだ」

「まあ、それ以外なら手伝うさ」

「どうした、嫌に従順じゃないか」

「……君は気づいてないかもしれないが、あのトレーニングは異常だからな? トレーナー君は確かにウマ娘を壊すと言う噂もあながち嘘ではないぞ?」

 

まあ、ハードなのは知っているが。サイボーグって呼ばれてるし。

でも、他のとこの練習なんて見ないからな……。

 

「そうなのか、トレーナー?」

「前も言ったが、壊れる前にやめさせている。確かに、あのトレーニングについて行けるのはシンボリルドルフくらいだ」

「ふーん、ルドルフ」

「なんだ?」

「ありがとな?」

「バカにしてるのか?」

 

ルドルフは偏見に満ちた目で僕を見る。

しくしく、そんな子に育てた覚えはあるし、意図的でした! ごめんね!

最近は僕の悪役ロールを信じ切ったのか、褒めてもお礼を言っても反対の方向の意味で取るようになった。

僕は気が楽になった。

タオルとか持ってきてもらったのにお礼を言えないのが地味に辛かったから……自己満足だけど……。

 

「でも、合宿所って他にもいるのか?」

「ああ、リギルはいるし、他のチームもいるな。ジュニア級はいないだろうが……」

「へえ? じゃあ、ジュニア級の子ってトレーニングできないんじゃないか? チームだったらトレーナーはそっちに割かれるだろうし、待っているジュニア級は暇じゃないのか?」

「専属契約は離れることはないが……まあ、確かにそうだな。とはいえ、チームにはサブトレーナーがいる。リギルには……確か5人はいたはずだ」

「すげえな。だけど、それなら合宿についてって普通のトレーニングすりゃいいのに」

「それはダメだ」

「何でさ」

「先輩のトレーニングで感化された未成熟のウマ娘の末路なんて一つだろう?」

「……そりゃそうか」

 

確かに先輩頑張ってるのに自分たちだけいつも通りだと、やりすぎちゃうよなー。

わかる。

 

「しかし、トレーナーチームのことに詳しいな? やっぱり、専属でもそういうの勉強するんだ?」

「……ああ、まあ、それはそうだな」

「なんだ、知らないのか?」

「ん? 何がだ?」

「トレーナー君は……」

「ルドルフ。関係のないことを言うな」

 

トレーナーがルドルフの言葉を遮る。

ルドルフは目を細める。

 

「……私はいいが、忠告しておくぞ」

「なんだ」

「話しておくべきだ。例えどんなでも君たちの信頼関係は見ていればわかる。だが、それを隠しておくことに意味なんてないぞ」

「……わかっているさ」

「なんだよ、置いてけぼりか?」

「また今度、話す」

「ま、いいけどよ」

 

と言ったところで車が止まる。

合宿所についたようだ。

 

荷物を下ろしながら周りを見渡すと、そこには見事な建物が立っていた。

豪華絢爛ではないが、高級旅館といった風の建物だ。

 

「なんだよ、トレーナー! いいとこ取ってんじゃねえか!」

「どこを見ているんだ。お前はこっちだ」

「あ?」

 

トレーナーが指さすとそこにはボロ小屋のような建物が建っていた。

見間違いかと思って、トレーナーの指からどこを指しているのか今一度確認する。

ぴぴぴぴぴ、ぴん! ボロ小屋!

まるでうちの孤児院みたいだ!

 

「ここでも貧乏かぁ」

「文句言うな。デビュー戦の賞金もないんだからな」

「くっそー! 仕方ねえか……」

「賞金はもう使ったのか? ちょっとやそっとじゃ使える量じゃないと思うが……」

「ああ、こいつは学費と……こじ、じゃない。……そうだ、自分の像を立てるって言って詐欺に引っかかったんだ」

「おい」

 

言い訳下手くそか?

僕をどんなキャラにしたいんだよ。

ルドルフちゃん? いつも信じてないんだから、今信じなくてもいいんだよ?

 

「……詐欺は悪いことだ。残念だったな……」

「うるせえなあ! いいじゃんか、三冠取ったやつらは建てられてんだろ! 先行予約だったんだ!」

 

なんでこんな辱めを受けてるの?

覚えておけよ、トレーナー。

 

「……それより、いいのかよルドルフは。こんなボロでさ」

「まあ、思うところもあるが、ここを利用するチームも出てくるだろうからな。今年はこちらで我慢しよう」

「俺だって来年は向こうがいいぞ……」

「無駄話してないで、さっさと準備しろ。一日だって無駄にはできないんだからな」

「りょーかーい」

 

僕はやけくそ気味にその建物に入ることにした。

中は意外とというべきか、ちゃんと綺麗にはされていた。

掃除の心配はなさそうだ。

 

荷物を置いて、準備をする。

忘れ物はないし、予備もある。

体操服に着替え、ルドルフに声をかける。

 

「おいルドルフ。そういえば、ここの……ってルドルフ?」

「なんだ?」

「なんだじゃねえ。仮にも先輩だぞ。部屋に入る時は言え。ナチュラルに声かけちまったじゃねえか」

「確かにそうだが、私の部屋でもある」

「いや、お前の部屋じゃねえだろ。もう生徒会長になったつもりか? 仮にそうでも私物化するな」

「いや、そんなことはしない。相部屋なんだ」

「あい……べや……?」

 

よみがえる孤児院での記憶。

『ブラック! なんだよ、その耳! おもちゃはちゃんと片づけないといけないんだぞ!』

『僕はウマ娘っていってててってってて!? 引っ張るな!』

『ブラックぅ、ブラックのお布団におねしょしちゃった……』

『うん、大丈夫だよ? 一緒に謝りに行こうね? 今日はソファで寝るから泣かないで?』

『ブラックー? もう、ブラックはやんちゃなんだから。ズボンに穴開いてたから縫っておいたわよ』

『いやそれしっぽの穴! 僕の一張羅!』

 

るどるふとあいべやってこと?

そんなにお金ないの!?

 

「そんなにお金ないの!?」

 

口に出しちゃった!

 

「そういうことなんだろう。流石の私も専属契約の者たちがいくら活動資金があるのかは知らないが……」

「ルドルフはそれでいいのか? 今からでも向こうに変えてもらえばいいんじゃないのか? 個人で出す分には大丈夫だと思うぞ?」

「なんだ、私と相部屋は嫌か?」

「嫌じゃないけど……」

「じゃあ、いいじゃないか」

「ルドルフは耳引っ張ったりおねしょしたりしっぽ穴縫ったりしない?」

「私をバカにしているのか?」

 

だ、大丈夫そうだ。

ま、まあ、そういうことならいいか。

 

とりあえず、準備終わったし行こう。

 

砂浜に出るとトレーナーが待っていた。

そして、隣にはリギルのメンバーもいた。

 

「お待たせ、トレーナー」

「今来たところだ」

「カップルか」

 

あぶない。

いつものノリでコント始めるところだった。

ルドルフが突っ込まなければまずかったな。

 

「で、どうしてリギルが?」

「ああ、合同トレーニングを受けてくれた」

「まじ? 受けてくれたんだ?」

「ああ、うちのブラックトレイターに勝てる可能性があるのはマルゼンスキーだけだなとつぶやいたら、こうなった」

「うん。天然?」

「……作戦通りだ」

 

それはこっち見て言いな?

グラサンかけてても誤魔化せねえからな?

 

ともあれ、リギルとのトレーニングはありがたい話だ。

しかも、全員がシニア級以上。

やはり強い相手とのトレーニングが一番ためになる。

一番実力が伸びたと実感したのは会長とのトレーニングだったから間違いない。

 

トレーナーはそれに、と続ける。

 

「それに、リギルだけじゃない。チームカノープスも参加だ」

「カノープス?」

「ああ、トレーナーは新人だが、飛び級してきた天才敏腕トレーナーだ」

「へえ、そのチームメイトは?」

「カツトップエースとキョウエイプロミス。あとはニホンピロウイナーがいるな。ニホンピロウイナーはお前の世代だ。まあ、今回来ているのはキョウエイプロミスだけだが」

 

とそこで東条トレーナーが声を上げる。

 

「チームリギルの東条だ! 先ほど、予定変更で合同合宿となった! チームリギル、チームカノープス、そして、ブラックトレイターだ! お互いに高め合うことでトレーニングの効率を引き上げる! ということで、お互いに自己紹介だ!」

 

東条トレーナーがそう声を上げると、まず最初にリギルが声を上げて自己紹介をする。

その中にはマルゼンスキーもいる。

マルゼンスキーは自己紹介が終わると僕にウインクをしてくる。

砂浜も相まってまぶいチャンネーだ。

 

そして、それが終わると、東条トレーナーがこちらを見る。

僕は頷いて声を上げる。

 

「ブラックトレイターだ! 俺のことを知らねえやつはいねえだろうが、言わせてもらう! 目標は天辺! だから、レベルの低い相手とはトレーニングはしない! 必死でついてくることだ!」

 

そう言えば、ざわざわとリギルが騒ぐ。

それを東条トレーナーが一喝し、今度はトレーナーに目線を向ける。

 

「ブラックトレイターのトレーナーだ。よろしく」

 

それだけを言ってトレーナーはルドルフに視線を向ける。

ルドルフは自分が? という顔をしたが大人しく前に出る。

 

「シンボリルドルフです。先行入学ということで参加させていただいています。トレーニングに参加する時間は少なくなってしまいますが、先輩の胸を借りるつもりでやらせていただきます!」

 

やだ、いいこ……。

どうしてこんな問題児二人にこんないい子がついているのかしら?

あ! 問題児だからか! ははは!

 

そして、次はカノープスに入る。

カノープスからは鹿毛の髪を短く切ったがっしりとしつつも長身のウマ娘が出てくる。

 

「キョウエイプロミスです! プロミスって呼んでください! 目標はジャパンカップ制覇です!」

 

さわやかに自己紹介をする。

しかし、僕の時か、それ以上のざわめきが起こる。

実はそのジャパンカップ、日本のウマ娘が優勝したことはないのだ。しかも、連対すらない。なので、プロミス先輩が優勝したのなら、大偉業になる。

ジャパンカップはURAが「世界に通用するウマ娘をつくり上げる」というのを目標の元、創ったレースだ。

なので、海外勢の枠が多く、しかも欧州のG1が軒並み終わり、オフシーズンに入るためブリーダーズカップ、凱旋門賞などを取ったウマ娘がやってくることがあるのだ。

ちなみに、ジャパンカップ、実は世界でも片手に入るほどに賞金が高い。

そんな理由も相まってこのレースに優勝できれば僕たち日本勢は世界に手が届いたことを意味するのだ。

プロミス先輩の志はとんでもなく高い。

 

そして、カノープスのトレーナーが最後に出てくる。

 

「カノープスのトレーナーです。まだまだ若輩者ですが、みなさんの一助になれたらと思っていますので、よろしくお願いします」

 

明るめの髪型をした男性だった。優しい表情をしているしイケメンだ。リギルのウマ娘たちも黄色い声が上がる。

 

「さあ、自己紹介も終わった! では、早速だがトレーニングに向かう!」

 

 

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